実際に終活をする際にかかる費用について。
生前整理や相続、介護に葬儀と何にどれくらい必要?
終活を行う場合、基本的には一人でできることがほとんどなので、プランを考えている範囲ならお金はかかりません。
しかし、生前整理・相続にはプロの力を必要とする場面も多く、介護・葬儀も同様です。
終活を進める中で必ず費用の問題は発生するため、あらかじめ自分や家族にとって有利な情報を仕入れ、できるだけ負担を減らすよう工夫することはできます。
むしろ、終活はそのような目的のために行われるため、きちんと費用に向き合うことはとても大切です。
お金についてきちんと下調べをして考えておけば、不本意な出費を減らすことができますし、遺族への負担も少なくなるはずです。
この記事では、終活における生前整理・相続・介護・葬儀など諸々の問題について、具体的にどのような問題に取り組むのか、どのくらいの費用がかかるのかについてご紹介します。
終活する人は何に取り組んでいるのか
まず、終活を考えている人が、主にどのような問題を見据えて取り組んでいるのか、その傾向を知りましょう。
主に、お金に関すること・モノに関すること・お墓に関することが、終活における大きな懸案事項となっているため、まずはそれらの問題に向き合うのが先決です。
保険など金融商品の見直し
自分が亡くなることを想定した場合、まず考えておくべきなのは、保険や貯金・金融商品の見直しです。
それぞれ、どのような点にフォーカスして考えればよいのか、ポイントをご紹介します。
保険
生命保険には、定期保険のように掛け捨てのものもあれば、終身保険のように一生続くものもあります。
終身保険に入っておけば、死亡時に遺族はお金を得られ、相続税対策にもなります。
重大な病気にかかってしまった場合に備え、医療保険に入っていれば、貯蓄を切り崩す必要もありません。
高齢化に伴い車を運転できなくなったら、自動車保険の解約をすれば、毎月のランニングコストを抑えられるでしょう。
このように、保険は年代によって重要度が変わってくるため、ライフプランを想定して都度必要な保険を取捨選択することが、終活では大切になってきます。
預金・金融資産
日本にはタンス預金という言葉があり、現金だけでなくタンスの中に使わないまま隠れている通帳が、どこかにしまってあるような家も珍しくありません。
そういった「使わずに残っている預金」や「もう使わない銀行の通帳」などを整理し、終活では最低限必要なものだけをまとめていきます。
金融資産も同様で、株式・外貨・仮想通貨など、一連の保有物で利益が出ているなら精算して利益を確定させたり、逆にそれらを誰にどれだけ相続するか決めたりしなければなりません。
クレジットカードも、本当に必要なものだけを厳選すれば年会費などのランニングコストを減らせますし、解約の手間を遺族にかけることがなくなります。
衣類や家具の整理
長年生きていると、どうしても服や家具など家の中にモノが多くなりがちです。
できるだけ早めに処分しておきたいところですが、思い出深いものも多いでしょうから、時間をかけて少しずつ処分することが大切です。
また、あまりにも多いようであれば、業者に依頼して一気に片付ける方法もあるでしょう。
死を迎える前に、できるだけ周囲を身軽にしておけば、それだけ周囲に迷惑がかからないものと覚えておきましょう。
お墓の準備
自分の遺骨を安置するためには、お墓や納骨堂などを用意する必要があります。
当然タダというわけにはいきませんから、手元供養など別の方法で済ませるかどうかも含め、遺骨をどうするか決めなければなりません。
こちらも少なからず予算が関係する話ですから、できるだけ多くの情報を収集し、何が家族にとって一番適しているのか計算しておきます。
生前墓を建てるなど、まとまったお金が必要なことを生前に準備しておけば、遺族の負担を減らすことができるでしょう。
生前整理にかかる費用
実際に終活を始めていくと、自分が死ぬ前にできる準備が大半を占めていることに気付きます。
そして、生前整理に関する費用は、お墓・相続に関することも含めると、意外と大きな割合を占めています。
続いては、生前整理に関する費用について、その平均額と大きな額が発生する要因についてご紹介します。
平均額は250万円を想定
マイナビニュースの調査によると、調査に応じた終活実施者の全体費用平均額は253.6万円で、生前整理に限れば254.5万円となっています。
このことから、概ね平均額は250万円ほどを想定しておけば、終活には差し障りないものとかが得てよいでしょう。
また、逆に全体の34.3%は「0円」と回答しており、ほぼ相続に際して心配事がない人も一定数存在していることが分かります。
お金を用意できなかったとしても、まずは自分たちでできることから、順を追って終活を進めることが大切だと言えるでしょう。
お墓・相続に関する費用が多くを占める
250万円というまとまったお金を終活で用意する理由は、やはりお墓に関する事情が大きな部分を占めるものと推察されます。
というのも、葬儀は故人の希望がある程度反映されるため、安く済ませようと思えば直葬のような選択肢からも選べるからです。
しかし、お墓をきちんと建てる場合、まずは土地を探さなければなりませんし、墓石などを手配するのもまとまったお金がかかります。
さらには工事費用もかかるわけですから、100万円は下らない金額が請求されるのは容易に想像できます。
相続に関しても、遺産相続の準備をきちんとしておかないと、家族・親族間で骨肉の争いが生じるおそれがあります。
そして、せっかく遺言書を作っても、内容が無効と判断されれば元の木阿弥となってしまいます。
そのため、公証人や弁護士に依頼して遺言をきちんと執行できる状況を整えようとすれば、その分だけ費用は発生します。
費用感としては、概ね10万円ほどを見積もっておいた方がよいでしょう。
相続する額が高額なら、相続問題に強い税理士に依頼する分の費用も発生します。
遺産総額に応じて費用は変動するため、一定の相場というものはありませんが、相続税申告の金額を10万円ほどで見積もってくれる税理士事務所もあるようです。
家具や衣類の数によっては処分費も馬鹿にならない
身辺整理は、モノが多ければ多いほど大変になります。
しかし、生活を同じ場所で長く続ければ続けるほど、いつ買ったのか分からないようなものが次第に家の中にたまっていきます。
決意して一気に片付けなければ、どんどん数は増えていくばかりですから、できれば早いうちに・元気なうちに、こまめに片づけた方がお金も手間もかかりません。
ただ、気が付いたらどんどん物がたまり、もう自分ではどうしようもないと分かったら、遺品整理業者・片付け業者に依頼した方が早いでしょう。
料金は、整理が必要な物の量や部屋の広さによって変わってきますが、概ね15~30万円が一つの相場になります。
一軒家まるまる・4LDK以上などの広い部屋で、しかも半分ゴミ屋敷に近い状況になっている場合、さらに料金が膨れ上がる可能性がありますから、身辺整理は体力のあるうちに・早めの判断が勝負です。
介護・葬儀にかかる費用
自分の将来については、なかなか自分では想像できないものですから、どうしても介護・葬儀に関する話は後回しになりがちです。
しかし、いざお金が必要になった場合、もっとも工面が大変なのは介護・葬儀の分野です。
続いては、介護・葬儀にかかる費用について、どのくらいの金額を見積もればよいのかご紹介します。
介護も葬儀も、サービスを追求する分だけ料金がかかる点では同じですが、出費する期間が読めない点では、より介護についてシビアに判断する必要があります。
介護でかかる費用は、月額→年額の順に把握する
生命保険文化センターの調査(生命保険に関する全国実態調査・平成30年)によると、自宅介護を始める際にかかる「住宅改造・介護用ベッドの購入」などの一時的な費用は、平均で69万円となっています。
また、月額費用は約7.8万円という金額がランニングコストとしてかかるため、もっとも安価な在宅介護を想定したとしても、年間93,6,万円が飛んでいく計算になります。
条件にもよりますが、特定養護老人ホームになると+6~7万円、有料老人ホームになるとさらに10万円以上高くなる計算です。
まずは月額を押さえ、その上で自分に何かあった時、誰にどれだけ負担をかけずに対処できるかをシミュレーションすることが大切です。
葬儀にかかる費用は、故人の希望と予算をすり合わせて考える
葬儀の種類は、一般葬が主体だった時代から、家族葬など小規模なものに様変わりしています。
そのため、介護の事情と比較すると、まだ選択の自由があります。
一般葬なら数十万円~の価格帯となりますが、家族葬なら30~50万円、直葬に至っては15万円ほどで式が行えます。
介護で金額がかさみそうなら、それを踏まえて葬儀のグレードを下げるなど、終活で他の費用とのバランスを考えることも想定しておきましょう。
無理のない予算を組むためには支援制度を知る
少しでもお金を残しておき、無理のない予算を組むためには、国の支援制度について知ることが大切です。
具体的には、以下のような医療制度について理解を深めておくとよいでしょう。
- 医療費控除
- 高額療養費制度
- 指定難病医療費助成制度
- 自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)
- 心身障害者医療費助成制度
特に、高額療養費制度は、手術のスケジュールが分かっていれば素早く手続きができますし、一度大きなお金を支払っても後でお金が戻ってきます。
医療以外の面でも、家計を助ける助成制度は数多くありますから、できるだけ国の力を借りられるよう情報収集しておきましょう。
この記事のまとめ
自分がこの世を去ると、残したものは良くも悪くも遺族が背負うことになります。
少しでも生きる人の重荷を減らしてあげることが、死を自覚した者としての第一歩です。
また、自分自身が幸せに生きる上でも、何かあった時の備えをしておくことは大切です。
予算を決め、その範囲で無理なく楽しく暮らせるよう、できることを少しずつ進めておきましょう。