よく聞くけれど実はわからない人も多い「宗派」
宗派の基礎や違いと特徴や自分の宗派の確認方法
「あなたのお家の宗派は何ですか?」
こう聞かれて、きちんと答えられる人は、果たしてどのくらいいるのでしょうか。
自宅にお仏壇がある家であれば、おそらく答えるのはそう難しくないでしょう。
しかし、本家にのみお仏壇がある家・そもそもお仏壇を持ったことがない家などは、宗派という概念さえ知らないことも珍しくありません。
しかし、ちょっとしたポイントを押さえておけば、自分の宗派や菩提寺の当たりを付けることは難しくありません。
今回は、いまさら聞けない宗派について、確認方法や各宗派ごとの特徴に触れつつご紹介します。
本当にいまさらだけど……宗派って何?
まずは、宗派という概念についてお伝えします。
誰しも日本史の授業でなぞったことがあると思いますが、宗派とは日本では主に仏教の教義上の違いを示す概念です。
一つひとつを細かく掘り下げていくと、おそらくそれぞれの宗派で一冊以上の本ができてしまうため、ここでは概要のみご紹介します。
同じ宗教の中での分派が「宗派」
宗派という言葉の意味は、同じ宗教の中での分派を示すものです。
仏教における根本的な信仰の対象は仏陀(お釈迦様)ですが、その教えは深淵かつ膨大なもので、教義・信仰対象が多様化しました。
日本において、その分派は宗派と呼ばれるようになり、それぞれに独自の考え方・文化が生まれました。
歴史的経緯から数多くの宗派が生まれており、現代でも新興宗教の原点となっています。
日本における代表的な仏教の宗派は十三宗派
日本史で取り扱う宗派から考えてみると、日本における代表的な仏教の宗派は十三宗派と言われており、それぞれに特徴があります。
すなわち、下記の通りになります。
- 天台宗
- 真言宗
- 浄土宗
- 浄土真宗
- 臨済宗
- 曹洞宗
- 日蓮宗
- 時宗
- 黄檗宗
- 法相宗
- 律宗
- 華厳宗
ですが十三宗派と言われていますが、上の7つの宗派が特に代表的な宗派になります。
宗派の名前だけを知っていても、自分の家がどの宗派なのかを知ることは難しい場合があり、多くの場合は過去帳や仏壇に配置されている仏具・ご本尊などで確認することになります。
仏壇が自宅や実家にない場合が問題で、親族との関係も薄いようなケースでは、そもそもどの宗派が供養にふさわしいのかを自分たちで考えなければなりません。
ご先祖様もある話ですから、細かくこだわるなら除籍謄本を紐解き、ルーツを探る作業も必要になるでしょう。
宗派の確認は、各家の歴史を紐解く作業でもあることから、情報がなければないほど確認作業に時間がかかるものと予想されます。
新興宗教も元となった宗派がある
いくつかの新興宗教は、先に挙げた十三宗派の教義が基盤になっています。
神道やキリスト教も含めれば、実に膨大な量の新興宗教が、大元の教えを基に教義を構成しています。
仮に、自分の家が新興宗教の信者であり、教義に基づいた供養を行っているならば、特段問題はありません。
しかし、一度信仰を離れ、それから家族が亡くなった場合、大元の教えを知っておくと宗派選びの参考になるでしょう。
日本のみならず世界的に影響力を持つ創価学会であれば、日蓮宗(日蓮正宗)の教えが原点となっています。
他にも、仏教の各宗派をルーツとする新興宗教は多いため、各教の教えをたどれば答えが見つかるはずです。
自家の宗派を確認する方法
続いては、比較的かんたんに自家の宗派を確認する方法について、かいつまんでご紹介します。
全てが当てはまるとは限りませんし、菩提寺の都合によるイレギュラーケースもありますが、基本的には各宗派の教義に沿った「シンボル」があるかどうかを確認することで、答えが見えてくるでしょう。
仏壇やご本尊から紐解く
自宅に仏壇があるなら、その仏壇のデザイン・ご本尊から宗派を紐解くことができるでしょう。
以下に、十三宗派のうち特に認知度の高い七宗派に絞り、各宗派ごとの基本的な仏壇の選び方・ご本尊から、宗派を推測できるポイントをご紹介します。
天台宗
天台宗で選ばれるお仏壇は、古いデザインなら唐木仏壇・新しいものではモダン仏壇などが選ばれます。
もともと、自由度の高い深みのある特徴を持っていて、他のどの宗派とも違いが少ないのが特徴と言えるかもしれません。
ご本尊についても同様で、中央には坐位の阿弥陀如来・もしくは釈迦如来を配置するものとなっていますが、お寺によって異なる場合もあります。
後々、各宗派の宗祖になった人が学んだ宗派であることから、解釈の自由を許す懐の深さがあります。
真言宗
真言宗も、天台宗と同様に、唐木仏壇・モダン仏壇などが選ばれます。
大日如来をご本尊とするため、他の宗派に比べると比較的分かりやすいかもしれません。
また、脇侍には弘法大師と不動明王を配置します。
実家や親族の家に不動明王像があったら、真言宗の可能性を考えましょう。
浄土宗
浄土宗では、仏壇に関する決まりは特にありません。
比較的小さな仏壇やモダン仏壇を選んでも、特段引け目を感じることはありませんし、信仰に何ら影響を与えることもあります。
ただ、ご本尊は阿弥陀如来の「舟立」と呼ばれる種類を祀ることになります。
脇侍は「阿弥陀三尊」と呼ばれる組み合わせが基本で、観音菩薩・勢至菩薩を安置します。
実は、浄土宗の脇侍の種類は他にもあり、例えば「高祖・善導大師、宗祖・法然上人」の組み合わせなども見られます。
お寺によって異なるため、見極めの種類は阿弥陀如来とその他の組み合わせを確認するとよいでしょう。
浄土真宗
浄土真宗で分かりやすいのは、金仏壇が家にあるかどうかです。
黒塗りの中に金が映える豪華絢爛な仏壇が実家にあって、阿弥陀如来がご本尊なら、十中八九、浄土真宗と考えてよいでしょう。
ただ浄土真宗においても厳密に分ければ本願寺派・大谷派の違いがあります。
ざっくりとした見分け方としては、金一色の場合は本願寺派、朱や赤系が入っていると大谷派の可能性が高いです。
今の日本で最も多く全国に広まっている宗派の一つであることから、地域やお寺により独特のルールがあります。
浄土真宗であることが分かったら、その時点で近くに住んでいる親戚に確認を取るのが確実です。
臨済宗
禅宗の一つで、あまりきらびやかな仏壇は選ばない傾向にあるようです。
唐木・モダン仏壇が該当するでしょう。
ご本尊は、基本的には釈迦如来となりますが、決まったご本尊というものもないことから、仏壇・ご本尊だけでは判別しにくいかもしれません。
脇侍で判断するなら、達磨大師・無相大師/文殊菩薩・普賢菩薩の組み合わせなどが分かりやすいでしょう。
曹洞宗
仏壇・ご本尊の傾向は、臨済宗とほぼ同じと考えてよいでしょう。
脇侍は、常済大師・承陽大師の組み合わせが見られます。
日蓮宗
日蓮宗の場合、仏壇よりもご本尊が特徴的です。
中央に大曼陀羅・右側に鬼子母神・左側が大黒天と、仏教世界では珍しい顔合わせです。
また、掛け軸の前に日蓮上人のご本尊が置かれていることから、非常に分かりやすい取り合わせとなっています。
菩提寺について調べる
見た目で宗派をすぐに確認できるシンボルが見つからない場合、過去帳があるなら書かれている内容を、アドレス帳があるならお寺の名前と電話番号が書かれているかどうかをチェックしましょう。
原始的な方法ですが、そこに何らかの表記があれば、過去に菩提寺とつながっていたことが分かるはずです。
そもそも実家にも仏壇がないなら、本家に確認してみましょう。
また、本家とのやり取りが途絶えているなら、自分で宗派や近所のお寺にについて調べ、今後やり取りが楽になりそうな方法を選ぶのが賢明です。
現代では、葬式を挙げるにあたって必ずしも檀家契約を結ぶ必要がなく、ネット上の僧侶派遣サービスで事足りる場合もあります。
様々な方法を検討した上で、自由に宗派を決めましょう。
お墓で調べる
ご本尊やお仏壇の種類だけでは、どうにも特徴がまとまらないという人は、お墓の形やお経などで確認する方法があります。
本家や親戚のお墓を参考に、以下の例から宗派を推測してみましょう。
天台宗
天台宗は、その懐の深さから、他の宗派とかぶるところもあります。
多くの場合、「南無阿弥陀佛」・「○○家先祖代々」などの文字が墓石に彫られ、後者の場合は頭に梵字が彫られているお墓も見られます。
梵字の種類も様々で、大日如来・阿弥陀如来・地蔵菩薩などを意味するものが選ばれるようです。
真言宗
真言宗は、「南無大師遍照金剛」・「○○家先祖代々」などの文字が墓石に彫られ、こちらも後者の場合は頭に梵字が彫られている場合があります。
密教の大日如来を示している梵字で、日本語読みでは「ア」となります。
浄土宗
浄土宗は、「南無阿弥陀佛」・「○○家先祖代々」などの文字が墓石に彫られ、後者の場合は「キリーク」と読む梵字を入れる場合があります。
梵字に金箔を入れることもあるようです。
浄土真宗
浄土真宗は、「南無阿弥陀佛」・「倶会一処」などの文字が墓石に彫られます。
倶会一処という言葉は聞き慣れないと思いますが、これは一蓮托生と似たような意味で、阿弥陀仏の極楽浄土に往生した人は、浄土の仏・菩薩たちと同じ場所で出会えるという意味です。
臨済宗・曹洞宗
臨済宗・曹洞宗などの禅宗は、「南無釈迦牟尼佛」・「○○家先祖代々」などの文字が墓石に彫られます。
後者の場合は、文字の頭に「円相」と呼ばれる丸い輪を彫り、完全な悟りの境地を表しています。
日蓮宗
日蓮宗は、「南無妙法蓮華経」・「○○家先祖代々」・「○○家の墓」などがお墓に彫られます。
家の名前を入れる場合は、その前に「妙法」と入れることもあります。
この記事のまとめ
自分の家の宗派が分からない状況に陥った場合は、最初に近所で知っていると思われる人に相談するのが賢明です。
もちろん、家族・親族に相談することも大切です。
しかし、どうやら身内に知っている人がいないことが分かった場合は、新しく菩提寺や僧侶との関係を作ることも考えておきたいところです。
少々面倒かもしれませんが、各宗派の教義やご本尊・歴史などを紐解いて、自分がしっくりきた教えの宗派を選ぶのがよいでしょう。