よく聞く初盆や新盆とは?
お盆との違いや特徴と迎えるための準備や注意点
お盆は一般的に実家へ帰省する時期として知られますが、家族の誰かが亡くなってから初めて過ごすお盆は、遺された家族にとって特別なものがあります。
一般的に、人が亡くなってから初めて迎えるお盆のことを「初盆」あるいは「新盆」と言い、普段のお盆とは異なるしきたりが存在します。
今回は、初盆・新盆について、特徴・一般的なお盆との違い・準備すべきもの・注意点などをご紹介します。
初盆は故人との関係において一度きりの仏事ですから、執り行う側も参列する側も、後悔のないように祈りを捧げましょう。
初盆とは何か
まずは、初盆とはどのような状況を指すのか、概要をご説明します。
お住まいの地域によって開始時期も異なるため、その点にも注意しましょう。
故人が亡くなり、四十九日の法要を過ぎてから初めて迎えるお盆
初盆を厳密に定義すると、仏事の「四十九日」を過ぎてから、初めての年に迎えるお盆のことを言います。
よって、亡くなった時期によっては次年度に繰り越されることもあります。
例えば、亡くなった時期が7月~8月にあたる場合、四十九日を過ぎるという条件を満たせないため、原則として初盆とはなりません。
もちろん、それ以降に亡くなった場合も、お盆の時期を過ぎているので同様です。
初盆の供養は盛大に行う
初盆を迎える際、家族にとって初めてという場合はもちろんですが、亡くなった故人にとっても「お盆に里帰りする」のは初めての経験になるでしょう。
よって、故人が迷わず実家に帰れるよう、初盆では盛大に供養を行います。
親族だけでなく、故人と関係が深かった人にも連絡を入れ、法要に近い状況で供養が行われます。
来客のために諸々の準備をしなければならず、初盆だけで使われる仏具を用意したり、お坊さんの手配をしたりと忙しくなります。
新盆には、2つの意味があることに注意が必要
初盆と同じ意味で使われることの多い「新盆」という表現は、厳密に言うと2つの意味があるため、勘違いしないように両方の意味を覚えておくと安心です。
これは、お盆の時期が地域によって違うことに原因があります。
もともと、明治時代に入るまでは、お盆の時期は太陰暦で示されていて、7月13~15・16日ころがお盆の時期でした。
しかし、明治時代になってから、欧米列強と足並みを揃えるために太陽暦が導入され、7月は農作業の繁忙期になってしまいました。
農作業に影響をきたすことから、一部地域では時期を1ヶ月遅らせて、8月13~16日をお盆としてみなすようになりました。
こうして、一年の中で2期のお盆が生まれたのです。
2期のお盆は、7月のお盆を新盆・8月のお盆を旧盆として区別するようになったため、新盆と聞くと7月のお盆を指しているものと勘違いされる可能性があります。
初盆だから7月に行う、ということはなく、あくまでも各地域ごとに決まった時期を選べば問題ありませんから、その点に注意が必要です。
初盆を迎えるにあたって準備すること
初盆には人がたくさん集まり、お坊さんの読経もあるため、家や仏壇につき「人を招いて問題ない状態」に整えなければなりません。
また、初盆に用いられる仏具の用意も必要ですから、事前準備を徹底することが肝心です。
仏壇のお手入れ
仏壇には、ご先祖様・故人の霊を宿す位牌があり、さらにはご本尊が控えています。
そのため、お盆かどうかを問わず、仏壇はきれいに保たれているのが基本です。
とはいえ、日々忙しく過ごす中では、なかなか細かい部分まで目が行き届かない家庭も多いでしょう。
そこで、初盆を一つのタイミングとして、仏壇・仏具のお手入れをします。
唐木仏壇・金仏壇・モダン仏壇など、仏壇のデザインによって掃除できる範囲は決まってきます。
木材を使う多くの仏壇では、水拭きするとかえって状態が悪化する恐れがあるため、乾拭き・筆はたきでホコリを払いましょう。
仏壇のホコリについては、水分よりも気にしない人が多いと思います。
しかし、ホコリは湿気を吸うため、梅雨の時期などはカビの原因にもなります。
お盆の時期も蒸し暑さは厳しいですから、できるだけ細かいところにも手を入れ、12日の夕方頃には清掃を終えている状況が理想です。
白提灯は目印として大切なもの
初盆にのみ用意する仏具として「白提灯」があります。
これは、初めて帰ってくる故人の霊が、無事に実家までたどり着けるよう、目印にするためのものです。
時期を問わず飾る盆提灯とは違い、こちらは1つだけ用意します。
白提灯を選ぶ際に気を付けたいのは「紋様」です。
市販されている白提灯には、きれいな紋様がデザインされているものもありますが、そちらは初盆で用いません。
紋様のない白提灯は、値札などに「白紋天提灯」などと書かれているものを選べばよく、色付きの柄がないことを確認します。
白提灯を手に入れたら、軒先や縁側のように、故人が空や外から見て分かるようなところに吊るします。
マンションのような集合住宅では、外に吊るすのが現実的でない場合もあるため、そのような場合は仏壇の前に吊るしましょう。
また、提灯ですからロウソクなどを使って火を灯すこともできます。
しかし、火事のおそれもあるため、できれば電灯を使うなどして工夫したいところです。
精霊棚・盆棚
お盆の時期に、ご先祖様・故人をお迎えするために設ける棚を「精霊棚(しょうりょうだな)」と言います。
盆棚や霊棚(りょうだな)などと呼ばれることもあり、本来は毎年どこの家庭でも用意していたものですが、現代では初盆のみ用意する家が多いようです。
用意する方法としては、出来上がったものを購入する方法と、自分でこしらえる方法があります。
完成品を用いる場合、原則として四隅に竹柱を立てて作ったものを用意しますが、宗派やお寺の都合によっては、三段になった盆棚を購入することもあります。
自宅で簡易に作る場合、仏壇の前に小机・経台を置き、そこにマコモのゴザを敷いて飾り物を乗せる方法があります。
その上に、位牌・線香立て・花立て・ロウソク立て・りんなどの仏具を置きますが、それ以外にも準備するものがあります。
多くの人が想像するのは、割り箸などを刺して四本足に見立てた、胡瓜の馬と茄子の牛でしょう。
馬はご先祖様の霊を一刻も早くお迎えするために、牛はご先祖様にゆっくりとお帰りいただくために用意されます。
また、日本でのお盆は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれる仏事をルーツとしているため、ご先祖様を分け隔てなくお迎えするものです。
無縁仏・餓鬼のような霊が家にやって来たとしても丁寧にもてなせるよう、水の子というお供え物を用意します。
茄子を賽の目に刻み、洗米と混ぜて器に清水を入れれば完成です。
蓮の葉を器に入れ、水をたらした閼伽水(あかみず)を用意するところもあります。
いずれも、初盆でやって来た故人に恥をかかせないための習慣ですから、丁寧に準備しましょう。
初盆のスケジュール感
ここからは、いざ初盆を迎えた際に、どのようなスケジュールで物事を進めるべきかご紹介します。
現代において簡略化されている部分もありますが、本質的な部分は昔と変わりはありませんから、状況に応じて柔軟に考えながら取り組みましょう。
迎え盆と霊供膳
お盆初日のことを「迎え盆」と呼び、昼前にお墓参りを済ませ、御供えをします。
墓と家とが近かった一昔前は、お墓で灯した火を提灯に移して、家まで種火を持ち帰っていました。
現代では、車を使って行くような場所にお墓があることは珍しくなく、火種を車に乗せるのは危険なため、無理をして慣習を守る必要はありません。
自宅の庭などのスペースを使い、苧殻を折って積み重ねたものに着火し、焙烙(ほうろく)の上で迎え火を焚きます。
初盆の期間中、盆前に設けた精霊棚に、三度の飯を御供えします。
これを霊供膳(りょうぐぜん)と言い、ご飯を入れる飯椀・みそ汁やお吸い物を入れる汁椀・漬物を入れる高坏・煮物を入れる平椀・煮豆や和え物を入れる壺椀という、5つの容器を仏膳に置きます。
真言宗などを中心に、献立は精進料理とするお寺が多いものの、在家信者は比較的自由にメニューを組み立てられます。
献立が決められていない限り、故人の好きなものも含め、料理を御供えして差し支えありません。
棚経をお願いする
初盆は、法要同等の扱いとなり、通常のお盆の時期より丁寧な供養が行われます。
棚経(たなぎょう)と呼ばれる精霊棚の前での読経をお願いしたり、お坊さんと一緒に出席者を精進料理でもてなしたりします。
ただ、現代では施主・お坊さん・参列者それぞれが忙しいことから、時間を節約するため出前やケータリングサービスを使う家も多く見られます。
葬儀会社に依頼すれば、同様のサービスを受けられるところも見つかり、選択肢は豊富です。
注意すべきなのは、棚経の参列者の数をどうするか、という点です。
葬儀ほど多くはないものの、それなりの人数にコンタクトを取るため、日程の調整などに手間取る可能性があります。
できるだけ、故人と関係の深かった人を優先するようにしましょう。
お坊さんに包むものは、御布施・御車代がメインとなります。
仮に、自宅でのもてなしを断られた場合は、御膳料として5,000~10,000円程度を包みましょう。
送り盆
ご先祖様にお帰りいただくため、お盆の最後の日に、玄関などで送り火を焚きます。
こちらも迎え火同様、焙烙に苧殻を積み重ね、火をつけます。
初盆で使った白提灯は、このタイミングで一緒に燃やします。
火を焚けない場合は、菩提寺などに納めるのが一般的です。
この記事のまとめ
以上、初盆の特徴・準備・注意点などについてお伝えしてきました。
最後に、一部例外のケースについてご紹介します。
初盆の時期において、これらのような供養を原則として行わない宗派があります。
浄土真宗です。
浄土真宗のご本尊は阿弥陀如来であり、死後は全ての魂が極楽浄土に向かうとされ、信心していれば浮かばれない魂はないという考え方です。
よって、初盆だからと言って特別なことをする必要はありませんが、先祖供養とは別と考えるお寺・地域もあるため、故人を想う気持ちから念入りに供養する家も見られます。
最終的には、各家庭の気持ち次第で供養の中身は変わります。
基本はあくまでも基本として、自分たちが納得できる供養を心がけましょう。