檀家を辞めたいと思った時の辞め方。
皆が辞める理由と実際に辞めるメリットとデメリット

  • 2020.02.14
  • 2020.04.17

葬儀, 法事・法要, お墓

単身世帯が増え、仏教観が薄らいでいる現代では、お寺の檀家になるという考え方も古いものになりつつあります。
お墓の後継者がいない・都心部へ引っ越しするなど、様々な事情でお寺との関係が負担となっている家は増えてきています。

確かに、離檀することによって、経済的・時間的な余裕が生まれる一面はあるでしょう。
しかし、離檀料や離檀に伴うお墓の移動など、無視できない負担もあることに注意しなければなりません。

今回は、多くの家で離檀を考える理由と、辞めるメリット・デメリットに触れつつ、できるだけスムーズに離檀する方法についてまとめてみました。

各家が離檀に至る理由とは

本家を離れた家の多くは、檀家・離檀という言葉を聞いても、あまりイメージできないかもしれません。
しかし、分家であっても初代が祖父母の世代であれば、亡くなった後のお墓は父母世代、やがては子世代・孫世代が引き継いでいくことになります。

このとき、特定のお寺と付き合いがあったとしても、お墓が市営墓地などにある場合は、檀家とは言えません。
檀家というのは、菩提寺が所有する墓地を使用する権利がある家のことであり、そこまで深い付き合いでなければ檀家とは言えないのです。

よって、檀家を辞めるということは、土地にあるお墓も手放す(移動する)ことを意味しているため、菩提寺にとっても大きな話になります。
にもかかわらず離檀を決断するのは、それ相応の重大な理由があってこそと言えるでしょう。

家族の死去に伴い実家を手放す

実家で暮らしていた父母が亡くなり、実家に誰もいない状況になってしまった場合、自分が仕事を辞めて引っ越せるかどうかが問題になります。
会社との距離が離れている場合、リモートワークなどを除いては、同じ会社で働き続けるのは困難なケースが多いものです。

このような状況下では、必然的に実家を手放すことを検討しなければなりません。
また、お墓に通うのもままならないことから、遺骨を自分が暮らしている近くに移動したいと考えて、離檀を決断するという事情も十分考えられます。

跡継ぎがいない

日本では、独身世帯・DINKS世帯が増加傾向にあります。
首都圏では、そのような事情によるものなのか、単身者・ファミリー向けのみならず、二人世帯で過ごすのに適した「コンパクトマンション」のシェアが増えているという統計も出ています。

言い換えれば、地方から上京して首都圏で仕事を見つけた人が、そのまま終の棲家を首都圏で決めてしまう状況が発生しており、跡継ぎとなる子どもを作らない選択肢を選んでいるケースが増えているのです。

このような状況下では、実家との関係が途切れた段階・実家の家族が首都圏に引っ越した段階で、墓を継ぐ者がいなくなります。
それでも、毎月・毎年のお布施を包み、菩提寺に供養をお願いするというのは、不合理に思えても無理はありません。

こうして、離檀を検討する家は、今後も増えることが予想されます。

経済的な理由

家族構成の変化だけでなく、経済的な理由も、檀家を辞める大きな理由となります。
檀家になると、特定のお寺との付き合いがない場合と比較して、何かと出費がかさんでいきます。

自分たちのご先祖様を供養してもらう際のお布施だけでなく、お寺で行われるイベント・本堂の修繕費など、お寺を維持するにあたって必要になる費用を都度包まなければなりません。

もちろん、寄付をするかどうかは任意ではあるものの、やはり半分義務のような扱いになるのは疑いのないところです。
古い造りのお寺であれば、檀家に100万円単位の寄付を求められるケースがあるという話も聞きます。

ここまでくると、一般家庭には相当な負担となりますから、離檀を検討しても何ら不思議ではありません。

離檀することのメリット

離檀すると、今まで菩提寺に費やしていた費用や時間に加え、精神的な自由度にも変化が生じる傾向があります。
それらの要素は、一般家庭にとっては概ねメリットとして考えてもよいでしょう。

ランニングコストがかからない

檀家になると、諸々のお布施だけでなく、毎年かかる「護持費」を納める必要がなくなります。
護持費とは、平たく言えば菩提寺に供養やお墓の清掃などをお願いするにあたっての管理費であり、墓地の管理運営費用として菩提寺が檀家から預かるものです。

ただ、一般的なお寺であれば、高くても数万円程度で済みますから、どちらかというとお布施の方が負担に感じるという意見も見られます。
いずれにせよ、檀家を辞めれば菩提寺に支払うお金がなくなりますから、その分だけ家計に回すお金が増えることになります。

拘束時間が減る

地域によって、お寺は地元の様々な行事を取り仕切っている場合があります。
また、檀家など、お寺と深い付き合いがある人は、行事の運営要員として駆り出されることも珍しくありません。

地域社会への貢献という意味では素晴らしいことですが、やはりプライベートを削られてしまう点は否めません。
よって、離檀すると拘束時間を減らせる一面は確かにあると言えるでしょう。

供養の自由度が高くなる

檀家になると、そのお寺の宗派に信仰が固定されます。
つまり、毎日のお勤めや捧げもの・法事の段取りなど、供養の流れがある程度制限されるのは、致し方ないことでした。

生前故人が無宗教であったとしても、宗派の考え方にのっとって供養しなければならず、それが故人や家族にとって窮屈に感じてしまうことは想像に難くありません。
しかし、檀家を離れると供養への自由度が増し、仏壇のデザインやご本尊・仏具などについて、家族の感性・信仰のエッセンスを加えやすくなります。

仏壇については、現代においてそこまで形式にこだわるお寺は少ないものの、菩提寺の側で「推奨する仏壇」があってもおかしくありません。

また、ご本尊はお寺の意向に沿うのが基本ですから、浄土真宗ならほぼ間違いなく阿弥陀如来といったように、相場が決まっていてその意向に沿わなければなりません。

このような取り決めにつき、自分は阿弥陀如来よりも地蔵菩薩の方に気持ちが傾いている、お仏壇のデザインはもっとシンプルにしたいといったように考えている人にとっては、離檀することで信仰の自由を反映できるようになります。

宗派としてのタブーを咎められる心配がなくなり、お坊さんに気兼ねなく色々なものを飾れるようになるでしょう。

離檀することのデメリット

離檀しないメリットは、離檀するデメリットと直結しています。
今まで菩提寺頼りで行ってきたことにつき、自分たちで対応しなければならないため、それを負担に感じるようなら離檀は早まった選択かもしれません。

離檀という極端な方法を考えなくても、永代供養・合祀などの方法で解決できる問題もあります。
以下に挙げるデメリットを確認した上で、最善の方法を検討しましょう。

何か仏事で困ったときに頼れる人がいない

諸々の事情で檀家を辞める場合、今後の葬儀・法事など、各種仏事でその都度お坊さんを呼ばなければなりません。
新しい檀家契約を別のお寺と結ぶつもりがないのなら、都度派遣サービスなどを利用することになるでしょう。

ちょっとしたことなら今までの経験で対応できるかもしれませんが、イレギュラーが生じた時に、全く段取りが分からない状況に陥ることも十分考えられます。
今後、何度か仏事を執り行う立場になることが想定されるなら、全てが終わった頃の状況を見て判断しても遅くはないでしょう。

お墓を別に移す必要がある

檀家契約を結んでいるなら、菩提寺の敷地にお墓が建てられている・菩提寺が運営する納骨堂を利用しているなどの状況が考えられます。
このような場合、お墓や遺骨を別の墓地に移動させなければなりません。

一時的・あるいは永続的に手元供養とすることもできますが、一度決めてしまうと後戻りできないため、慎重な判断が必要です。
まずは離檀の相談をして、自分たちが問題に感じている部分につき別の解決策があるならば、その提案を確認した上で決断しましょう。

離檀の話がまとまってからも、遺骨をどこに安置するのか・墓石を片付ける際の費用をどうするのかなど、家族・菩提寺・親族などに相談することも考えておきましょう。
自家が本家の場合、離檀するなら分家である親族の側で契約を継続したい、という声が挙がるかもしれないからです。

関係者との話が一通りまとまった段階で、新しい墓地・納骨堂などと契約を結び、手続きを済ませたいものです。

離檀料は意外と重たい

離檀する際に必要となる菩提寺が多いのは「離檀料」です。
今までお世話になったことを示すお布施の一つとも言え、檀家契約における契約解除手数料といった意味合いにも取れます。

問題は、離檀料が「必ず支払わなければならないものかどうか」です。
結論から言えば、離檀料に関する契約を書面で取り交わしているなどの事情がない限り、本来は義務ではありません。

ただ、一般的には法要3回分の額を支払うことが慣例化しており、3~20万円程度の離檀料を求める菩提寺は少なくないようです。

離檀料については、トラブルに発展する例も見られ、お寺の中には相場よりもはるかに高い離檀料を要求されたり、遺骨を移動させるのに必要な書類の発行に応じなかったりするケースもあるようです。

お寺側の目線で言えば、長年の顧客を手放すことにつながるわけですから、何とかしてそれを避けたいと思うのは無理からぬことです。

もちろん、法的な取り決めのある問題でない限り、相場を大きく超えた金額は正当な請求と言えませんから、お断りすればよいだけです。
また、寺院の本山に相談することで、事態が好転することも考えられます。

悪質な場合、裁判で争うことも考えられますが、法的には行政書士を間に挟んでの減額措置・減額交渉などが現実的な手段とされています。
よって、かなり高額な請求でない限り、大きな問題には発展しにくいのかもしれません。

可能な限り穏便に済ませたいと考えるのは当然ですが、決して一人で抱え込むことなく、多くの人を巻き込みながら冷静に事を進めましょう。

この記事のまとめ

現代において、離檀はメリットの大きな選択肢の一つですが、昔からお世話になっている菩提寺を離れるだけあって、障害も少なからず存在します。

菩提寺としても、現実的な目線で見れば収入が減るわけですから、離檀という究極の選択以外に、檀家・菩提寺お互いにとってメリットのある選択肢を提案してくれるかもしれません。

離檀を決める場合、後の世代に禍根を残さないためにも、できるだけ菩提寺とのコミュニケーションをしっかり取ることをおすすめします。
もちろん、実家や親族の事情を確認しつつ、離檀を決断することが大切です。

  • 公開日:2020.02.14
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:葬儀, 法事・法要, お墓

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