お彼岸の料理と言えば、「おはぎ」と「ぼた餅」?
お彼岸料理の基本やルールとマナー&タブーを紹介

  • 2020.02.21
  • 2020.04.17

法事・法要

お彼岸と言えば、おはぎやぼたもちをお供えするものと知っている人は珍しくありません。
しかし、お彼岸にふさわしい「料理」があることを知っている人は、それほど多くないのではないでしょうか。

お彼岸は日本独特の風習で、仏教における修行期間の一つであるため、料理もその影響を受けています。
四角四面にルールを守る必要はありませんが、知っておくと料理のレパートリーを増やせますし、ヘルシーなメニューですから健康維持にも役立ちます。

今回は、修行の一環でもあるお彼岸料理について、決まりや基本的なマナー・タブーについて触れつつ、おすすめの料理をご紹介します。

そもそも、お彼岸料理って何?

多くの人にとって、そもそも「お彼岸料理」というジャンルを意識する機会は、あまりないのではないでしょうか。
しかし、どんな料理のことを言うのかが分かれば、何となくイメージが湧くはずです。

基本は精進料理

お彼岸は、六波羅蜜(ろくはらみつ)と呼ばれる修行をおさめ、御仏の境地に至ることが本来の目的です。
よって、料理の決まりを挙げるとするならば、その基本は精進料理となります。

精進料理とは、簡単に言えば「殺生・煩悩を避けるための食事」で、主に植物由来の食品を使って調理が行われます。
ただ、単なる菜食というわけではなく、一定のルールに基づいて料理をお供えするため、最低限の知識は必要です。

一汁一菜~三菜をベースに

お彼岸料理では、お寺で作るような料理のクオリティは求められませんし、お盆のような飾り物が必要になるわけではありません。
しかし、お供え物(お膳)の内容は、宗派問わずある程度共通しています。

お膳の上に置く料理は、お膳の空間を五方に分けると、以下のような配置となります。

  1. 左前にご飯もの
  2. 右前に汁もの
  3. 中央に漬物
  4. 左後ろに煮物
  5. 右後ろにあえ物、酢の物

お彼岸の期間中は、中日とそれ以外の6日で量を分けます。
中日(春分の日・秋分の日)は一汁三菜を基本とし、それ以外の日は最低でも一汁一菜・一汁二菜をお供えします。

できれば、自分たちも同じメニューで食事を摂り、身体によい食生活を意識しましょう。

「生臭もの」を使わないこと

お彼岸料理のルールとして守るべきことは、あくまでも精進料理に準ずる、という点です。
具体的には、肉類・魚介類のような「生臭もの」を一切使わずに、料理をしなければなりません。

仏教の教えでは、自分たちが生きていくのに無益な殺生をしてはならない、と説かれており、命を授かっている動物が天寿を全うできるよう、動物性の食材を避けて料理を作ります。

普段、肉料理・魚料理に慣れている人にとってはつらいかもしれませんが、野菜中心の生活は、身体のデトックスにつながるメリットもあるため、修行と割り切り取り組みたいものです。

また、野菜の中でも「精力のつく」ものは、煩悩を刺激し修行を妨げるものとして、精進料理で忌避されます。
具体的には、ネギ・ニラ・ニンニクなどの植物が該当します。

ちなみに、厳密に規定すると、にぼし・あごだし・かつおぶしといった、魚介の出汁もNGです。
昆布や干しシイタケなどを用意しておきましょう。

お彼岸料理としてよく見る料理とレシピ

お彼岸料理の基本的な部分を理解した上で、次に、お彼岸料理としてよく見る料理の種類と、そのレシピについてご紹介します。
春・秋といった季節ごとに、精進料理と言えばこれ、といった定番料理のレシピをご紹介します。

春のレシピ

春のお彼岸では、さわやかな季節感を取り入れた料理が作られます。
春ならではの旬を取り入れた料理としては、以下のようなものが見られます。

ふきの煮物

天然のふきは、3月~初夏に旬を迎えます。
みずみずしさとほろ苦さが、春の息吹を感じさせます。

材料
  • 【材料】ふき 4本
  • 【材料】がんもどき 4個
  • 【出汁】昆布だし 400cc
  • 【調味料1】みりん 大さじ1
  • 【調味料1】砂糖 大さじ1
  • 【調味料1】しょうゆ 大さじ1
  • 【調味料1】塩 適量
  • 【調味料2】味噌 30g
  • 【調味料2】砂糖 大さじ2
  • 【調味料2】料理酒 大さじ1
  • 【調味料2】みりん 大さじ1
  • 【調味料2】塩 適量
作り方
  1. ふきに塩をまぶしてすり込み、まな板の上でゴロゴロと転がす。それから水にさらして皮をむき、4cmほどの長さに切る。
  2. がんもどきの両面に熱湯をかけ、油を抜く。※(熱湯に1~2分くぐらせてもよい)
  3. 下ごしらえがおわったふき・がんもどきを鍋に入れ、昆布だし400ccを加えて中火でひと煮立ちさせる。ひと煮立ちしたら調味料①を加え、落し蓋をして弱火で5分ほど煮込み、一度火を止めて冷ます。
  4. 別に小鍋などを用意し、調味料②を弱火で混ぜていく。
  5. ふき・がんもどきを器に用意し、その上から手順4でこしらえた味噌をかける。

菜の花のかき揚げ

菜の花が持つほろ苦さを、一緒に入れた野菜の風味がカバーしてくれ、とても上品な味に仕上がります。
野菜はお好みで、きのこやごぼうを加えます。

材料
  • 【材料】菜の花 1/2束
  • 【材料】きのこ 30~50g or ごぼう 1本 ※きのこ・ごぼうはどちらか片方でよい
  • 【天ぷらの衣用】玉子 1/2
  • 【天ぷらの衣用】酒 大さじ1
  • 【天ぷらの衣用】冷水 120~130cc(2/3カップ)
  • 【天ぷらの衣用】酢 小さじ2
  • 【天ぷらの衣用】小麦粉 100g
  • 【天つゆ用】みりん 50cc
  • 【天つゆ用】しょうゆ 50cc
  • 【天つゆ用】昆布だし 250cc
  • 【薬味・その他】大根おろしなど 適量
  • 【薬味・その他】小麦粉 適量
  • 【薬味・その他】油(揚げ油)
作り方
  1. ごぼうの皮をそぎ落とし、ささがきの状態にする。それから水を入れたボウルに入れ、15分ほど置いて水気を切る。きのこを使う場合は、まいたけなどを小さくほぐして使う。
  2. 菜の花を、2~4cm幅で刻む。また、これらの手順の間に小鍋に天つゆの材料を入れ、ひと煮立ちさせる。
  3. 天ぷらの衣の材料を混ぜ合わせる。このとき、小麦粉はふるいにかけておくこと。
  4. 材料に小麦粉を軽くまぶした後、できた衣をつけて揚げ油で揚げる。天ぷら鍋を用意するのが難しい人は、フライパンに1cmほどの油を入れ、裏返しながら揚げてもよい。焦げ目がつかないようカラッとした状態が理想
  5. 天ぷらを器に盛ったら、天つゆに大根おろしなどの薬味を添えて出来上がり。

秋のレシピ

食欲の秋と呼ばれるように、秋野菜は旬の宝庫です。
美味しい野菜・食材がたくさんありますから、春以上に美味しい料理が食べられるでしょう。

里芋の煮物

里芋は、品種によって旬の時期がずれるものの、基本的には秋口から正月までの時期が旬となります。
簡単な手順で作れておいしいため、普段の食卓にもおすすめです。

材料
  • 【材料】里芋 300g
  • 【煮汁】昆布だし 400cc
  • 【煮汁】しょうゆ 大さじ2
  • 【煮汁】みりん 小さじ4
  • 【その他】唐辛子 適量
作り方
  1. 里芋の皮をむき、ぬめりを取るため下茹でする。
  2. 鍋に煮汁と里芋を入れ、ひと煮立ちさせる。その後弱火にして落し蓋をして、10分ほど煮る。
  3. 落し蓋を外し、好みの濃さに仕上がるまで煮詰める。10~15分が目安。
  4. 器に盛りつけ、好みに応じて唐辛子を適量つまむ。

かぼちゃのいとこ煮

日本人には馴染み深い、ぜんざいのようなおかずです。
かぼちゃとゆであずきの素朴な甘さが、秋の味覚を感じさせてくれます。

材料
  • 【材料】かぼちゃ 300~400g
  • 【材料】ゆであずき 100g
  • 【煮汁】水 200cc
  • 【煮汁】砂糖 大さじ1
  • 【煮汁】しょうゆ 大さじ1
  • 【その他】片栗粉 小さじ1
作り方
  1. かぼちゃの種・わたを取り、食べやすい大きさにかぼちゃを切る。皮はむかなくてもよいが、好みに応じてむいてもよい。
  2. 煮汁を鍋に移し、一度沸騰させる。それから切ったかぼちゃを皮を下にして並べ入れたら、蓋をして15分程度煮込み、かぼちゃを柔らかくする。
  3. 別の鍋を使い、手順2で使った煮汁を50ccほど移し、その中にゆであずきを加える。片栗粉を水(小さじ2ほど)でといてから混ぜ合わせ、沸騰させてとろみをつける。
  4. かぼちゃを器に盛り付けたら、とろみをつけたゆであずきをかけて出来上がり。

定番の料理

先に挙げた、春・秋の季節感を重視したメニューだけでなく、法要などでは定番となる料理もいくつか存在します。
さつま揚げが入った彼岸そば、小豆のお赤飯、お寿司などが挙げられます。

本来、お寿司は殺生にあたり、魚を使ったネタは忌避されます。
しかし、五目寿司やいなり寿司は、具を選べば生臭ものを避けられるため、法要の席でも違和感なく用意されるようになりました。

法要に出席する際は、どのような料理が出てくるのかを覚えておくと、自分が料理を作る際のレパートリーを広げることができます。
定番となる筑前煮やけんちん汁、高野豆腐を使った料理もおいしいですから、まずは気軽に料理を作ってみてはいかがでしょうか。

「おはぎ」と「ぼたもち」の違いについて

お彼岸で話題になるのが、お供え物である「おはぎ」と「ぼたもち」の違いです。
現代では、どちらも混同されていますが、もともとは別のものとして理解されてきました。

以下に、おはぎとぼたもちを巡る違いについて、いくつかの視点からご紹介します。

季節による違い

素人目にはよく分かりませんが、おはぎとぼたもちは名前が分かれているため、名称の段階から別物であったことが分かります。
共通しているのは、それぞれが「季節の花」を模して作られたお菓子だということです。

まず、ぼたもちを漢字で書くと「牡丹餅」となります。
牡丹は春から梅雨の時期にかけて花を咲かせるため、春をイメージするものとして、牡丹がモチーフになったものと考えられます。

これに対して、おはぎは「御萩」となり、萩の花は夏~初秋に咲きます。
ただ、観光地など、9月頃に咲く地域が多いことから、秋の花というイメージがついたものと思われます。

春と秋、それぞれの美しい花を模して捧げる意味で、おはぎとぼたもちは生まれたと言えるでしょう。

材料による違い

おはぎとぼたもち、それぞれで名前が違うということは、もともと形状も違ったものと推察されます。
それは、材料として使う「餡子(あんこ)」の違いで分かれている場合があります。

一般的には、ぼたもちは粒あん、おはぎはこしあんを使って作るものとされます。
どちらかというと、おはぎの方が高級感があるイメージですが、古くは真逆だったという説もあります。

いずれにせよ、餡子の種類で雰囲気・大きさも変わってきますから、現代ではあまり深く考える必要はないのかもしれません。

地域による違い

おはぎとぼたもちの基本材料は、米と餡子です。
しかし、地域・お店によっては別の材料を使うところもあります。

餡子以外の材料としては、きな粉が有名です。
しかし、ごまをまぶしたり、うぐいす餡を使って作ったりするケースもあり、一様ではありません。

特段作り方をまねる必要性はありませんが、地域に応じて材料・作り方が違う点を押さえておくと、カルチャーショックを受けずに済むでしょう。

この記事のまとめ

お彼岸料理は、修行の一環ではあるものの、現代人にとって馴染み深い料理も数多く登場します。
旬の野菜を贅沢に使った料理に、きっとご先祖様も舌鼓を打つことでしょう。

おはぎとぼたもちの違いは、あくまでもそのような違いがあることを理解するにとどめ、自分が住んでいる地域のルールに従えば問題ありません。
お坊さんのように厳しく取り組む必要はありませんが、お彼岸の一週間を有意義に過ごしたいなら、お彼岸料理を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 公開日:2020.02.21
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:法事・法要

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