よく聞く「喪中」とは?喪中を改めておさらい。
喪に服すの意味や期間と忌中との違いなどの基本を解説

  • 2020.05.31

法事・法要

家族や親戚が亡くなった場合、どこの家でも「ウチ(あの家)は今年喪中だから……」といった話題が出ると思います。
しかし、実際に喪中がどのような意味を持ち、正しい期間がいつまでなのかを聞いてみると、家族間でも答えがバラバラだったりします。

また、忌中のように紛らわしい期間・名称もあるため、それぞれの名称が指し示す期間・意味合いを正しく知らなければ、知らず知らずのうちに恥をかいてしまうことも。
この記事では、喪中にスポットを当てて、喪に服すことの意味・喪中の期間・忌中との違いなどについて、基礎知識と合わせて解説します。

喪中の意味と似たような表現について

喪中という単語の意味を正確に説明できる人は意外と少ないもので、しばしば似たような表現と誤解していることがあります。
まずは、喪中とはどんな意味なのか、似たような単語・表現との違いを説明しながらご紹介します。

喪中とはどのような期間か

喪中とは、古くは儒教から来ている概念と言われ、故人の死を偲ぶ期間として設けられています。
具体的には、死者を弔う気持ちから、慶事・祝い事の類に一切参加しない習慣を指します。

このような振る舞いは「喪に服す」と言い換えられることが多く、古くから日本で続いている習慣の一つです。

また、喪中には二つの意味合いがあり、一つは「忌」・もう一つは「服」という概念です。
忌には「忌まわしい」というニュアンスが込められていて、期間中に穢れを周囲に移さぬよう、外部との接触を断つという考え方から成り立っています。

これに対して服は、亡くなった人に哀悼の意を示すことを意味し、故人を失った辛さから立ち直るための期間として捉えられていました。

「忌中」って喪中と同じ意味?

喪中と似たような時期・表現の中に「忌中(きちゅう)」というものがあります。
こちらはよく混同されがちですが、喪中に比べると期間は短く、仏教では四十九日法要までの期間が該当します。

仏教的価値観では、死者の魂は死後七日ごとに裁きを受け、最終的に四十九日の段階で次の行き先が決まるとされます。
ただ、この考え方は仏教と神道が習合したことで生まれたという見方もあり、必ずしも仏教独自のものとは言い切れないようです。

表現を見る限り、本来は「穢れを外に出さないための期間」だったものと推察されますが、いつしか故人の大難を小難にするための供養期間になりました。
死を忌み嫌うのではなく、死に寄り添う日本人ならではの優しさが、変化に関係しているのかもしれません。

喪中に似た表現の意味と違い

喪中に似た表現は、忌中以外にもいくつか見られ、厳密に言えばそれぞれの意味は違います。
以下に、似たような表現で意味が違う単語をいくつかご紹介します。

弔慰(ちょうい)

人の死を悼む気持ちを表す単語で、死者の弔い・残された遺族を慰めるなどの意味も持ちます。
同じ読みの「弔意」と使い分けるケースが多く、遺族に哀悼の意を伝える際には弔意が用いられ、遺族を慰める意味合いでは弔慰が用いられます。

単語が広く社会で使われているケースとして、社員の家族や親戚が亡くなった場合に会社が休暇を認める「弔慰休暇」や、死者を弔う・遺族を慰めるために支給するお金の「弔慰金」などが挙げられます。

追惜(ついせき)

亡くなった人を悼み、惜しむことを指します。
弔電の商品名に使われていることもあり、集会で「○○さんを追惜する会」といった名称にも用いられます。

ただ、現代では使用される例はそれほど多くないようです。

追悼(ついとう)

追悼には、故人の生前をたどりながら、その死を悲しむ気持ちを表明する意味合いがあります。
特定の期間を示すものではないため、喪中に比べると適用される範囲は限定的で、例えば「追悼式」のような形でイベントの名称に用いられることが多いようです。

喪中の期間とタブーについて

喪中は期間を示す単語でもあり、各家庭で一定の期間が喪中となります。
しかし、この期間と言うのは本来家族の中でも期間が違うため、現代では非常にややこしい考え方の一つとなっています。

喪中とは、具体的にいつからいつまでを指すのか

喪中とは、家族が故人を失った悲しみから立ち直るための期間であり、原則としてその家の家族・もしくは家族だった人のみに適用されます。
しかし、喪中は家族全員にこそ適用されますが、その期間は立場によってまちまちです。

例えば、日本において喪中期間は以下のような形で定められています。

故人との続柄が「配偶者」13か月
故人との続柄が「父母」13か月
故人との続柄が「子供」3~12か月
故人との続柄が「祖父母」3~6ケ月
故人との続柄が「兄弟姉妹」3~6ケ月

もともとは、明治時代に布告された喪中の期間が原点となっており、そこから地域の慣習・故人との関係性に応じて期間が変動したものと推察されます。
ただ、多くの家庭では具体的な期間について知る家族は少なく、何となく一年単位・家単位で喪中を区切っていることが多いようです。

喪に服す間、やってはいけないことがある

喪中の期間は、単純に心の中で故人を偲ぶだけでなく、具体的に「その期間でやってはいけないこと」があります。
以下に、主な喪中のタブーについてご紹介します。

年賀状は送らない

よく「ウチは喪中だから、今年は年賀状を送らない」という話を聞きます。
喪中の時期は祝い事を避けるため、「新年あけましておめでとうございます」と新しい年を祝う年賀状の送付は控えます。

しかし、このことは多くの他人が知らない話で、家族や親戚のみ知っていることですから、年賀状をもらった家に「喪中ハガキ」を送って、自分の家が喪中であることを伝えます。

例外として、ビジネスシーンでは喪中にかかわらず法人として年賀状を送るケースもあります。

お年玉

お年玉は、新年のお祝いとして子供に手渡すものですから、こちらも祝い事として避けるべき行為です。
ただ、さすがに「喪中だから子供にお年玉を渡さない」とは言えませんから、いわゆるポチ袋に入れて渡すなどの配慮をすれば問題ありません。

結婚式などお祝い事への参加

あまり気にしない家庭が多いものの、原則として喪中の時期はお祝い事全般の参加がNGとなります。
よって、結婚式・祝賀会・パーティーのような席には参加せず、自宅に友達や仲間を招くことも控えます。

こちらは、地域や家庭ごとに考え方が違い、喪中でも普通に近所づきあいでカラオケに行く家庭も見られます。
相手方が配慮してくれるかどうかによって出欠を決めるのも、迷った時の一つの方法です。

現代では形骸化しており、法律で義務付けられてもいない

喪中期間は、確かに明治時代に布告されているものの、現代では形骸化した考え方になっています。
布告自体がすでに撤廃されていて、特段法律で喪中期間や義務などが定められているわけでもありません。

よって、あくまでも慣習として存在しているだけであって、各家庭が順守すべきものではなくなりつつあります。
この点をどう認知するかによって、喪中の意味合いも変わってくるでしょう。

喪中のとらえ方は宗教・家庭によって様々

各家庭ごとの価値観・宗教観によって、喪中のとらえ方にも違いがあります。
以下に、主な宗教について喪中に関する考え方をご紹介しつつ、現代の実情についても触れていきます。

浄土真宗には「往生即成仏」の概念がある

仏教におけるほとんどの宗派では、忌中・喪中の概念に基づき死を悼む習慣があります。
しかし、浄土真宗では「人間が亡くなったら、その魂は阿弥陀如来に救済されて仏となる」と考えられており、この概念は「往生即成仏」と呼ばれます。

死後の苦しみ・審判から離れて成仏できることから、悼むことも特別な供養をすることも必要ないという立場を取ります。
よって、浄土真宗では、特段喪中・忌中については気にしなくてよいとされます。

キリスト教圏には「喪に服す」概念がない

キリスト教は、キリストの救いを信じることで神に導かれ、天国に行けるものと考えます。
そのため、死は決して悪いことではなく祝福されるべきことで、天国に行けば故人と再会できるとされます。

よって、そもそも喪中の習慣・喪に服すという概念がなく、故人の死を悼む期間は特段設けられません。
ただ、教会でお別れ会・故人を偲ぶ会を開くことはあります。

喪中の親等がどこまでなのか知らない家庭も多い

喪中が関係してくるのは、遠い関係といっても祖父母ならびに兄弟までです。
これを親等で表すと、2親等までが喪中の対象範囲に含まれることになります。

ただ、このように喪中とする関係を一律に決めてしまうと、特に仲が良かった甥・姪はどうなるのかなど、個々のケースがおざなりになってしまいます。
このあたりは常識の範囲で判断するほかなく、特に親しい間柄であれば喪に服すこと自体は自由と言えます。

これは、喪中期間の長さにも言えることで、配偶者や父母は大きく期間は変わりませんが、祖父母・兄弟・子供になると、とたんに話が変わってきます。
短い場合は3ケ月、長い場合は6ケ月・12カ月にもなるわけですし、しかも各家庭で考え方が違うとなると、周囲もどう期間を理解してよいか分からないはずです。

そのため、喪中であることは、当の家族が周囲にアピールしなければならず、そこまでして喪に服す意味はないと判断し、年賀状等は気にせず送るという家庭も増えてきています。

そもそも、年賀状さえ送らなくなるご時世ですから、喪中と言う習慣自体、寿命はそう長くないのかもしれません。

この記事のまとめ

喪中の過ごし方は、年々変化してきています。
古くは失った家族のことを思い返す期間として大事にされてきましたが、現代では考え方自体をよく知らない家庭もあります。

宗教によっては、そもそも喪中という概念さえないケースもありますから、一概に期間や過ごし方を決めることもできません。
しかし、基本はあくまでも基本ですから、自家の事情に即した形で覚え・引き継いでいくことが、故人に対する何よりの供養となるはずです。

  • 公開日:2020.05.31

テーマ:法事・法要

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