仏教以外でも法事や法要ってあるの?
キリスト教や神式での49日などの法事や法要の種類
日本で主流となっている宗教は仏教のため、多くの日本人にとって、他の宗教に関する情報・知識に乏しいのは致し方ない部分があります。
しかし、親しかった人が故人となり、キリスト教・神道を信仰していた場合、どうすればよいか戸惑う人も多いはずです。
この記事では、そのようなことを防ぐため、キリスト教・神式における「仏教の法事・法要と同等のイベント」について、その概要をご紹介します。
今後、日本に移民が入ってくると、海外の宗教観を学ぶ場面にも遭遇する可能性があるため、まずは仏教以外の宗教を知るきっかけになれば幸いです。
キリスト教における法事・法要の種類
キリスト教では、仏教のような法事・法要を行う考えは基本的になく、死は神のもとに召されるという考え方をします。
あらかじめ救済される人は決まっているという教派もあれば、善行を積んで救済に導かれると説く教派もあり、同じキリスト教の中でも考え方に差異があります。
ただ、いずれの場合も法事・法要に相当する「追悼」という概念があり、故人の安らかな眠りを生者が受け入れるために必要な儀式と理解されています。
カトリックで行われるのは「追悼ミサ」
カトリックで法事・法要に相当するのは、追悼ミサです。
日本的な言い方では「追悼式」などと呼ばれることもあります。
ミサを日本語に訳すと儀式となり、故人の死後に教会で行われます。
原則として、亡くなった日から3日目・7日目・1ヶ月目に教会で行われる儀式で、家族・親族・友人・知人などと一緒に追悼ミサを行います。
ただし、3日目・7日目の追悼ミサは、場合によっては省略されるケースもあるようです。
また、一周忌と同様の儀式もあり、故人が亡くなってから1年後には「死者のための記念のミサ」が行われます。
その後の儀式については、教会・遺族の意向によってミサが行われることもあり、概ね命日から10年を経過するごとに開催されます。
追悼ミサで行われるイベントの内容としては、聖歌斉唱・祈祷・聖書朗読などが主で、茶話会なども行われます。
プロテスタントで行われるのは「記念集会」
プロテスタントでは聖書を信仰の対象とするため、儀式というよりは礼拝に近い集会が行われます。
集会は記念集会と呼ばれ、こちらは故人が亡くなってから1ケ月後に、故人が所属していた教会・自宅で行います。
記念集会はこれで終わりではなく、1年後・3年後・7年後という区切りで、命日(昇天記念日)に教会で行われることが多いようです。
集会の内容ですが、教会で行うか自宅で行うかによって、多少の違いがあります。
教会の場合、セレモニーの内容が定められると、人々は讃美歌を歌い、牧師の説教の後で故人に祈りを捧げます。
自宅の場合は、牧師・親族・知人や友人が集まり、祭壇に十字架・遺影を飾ってから祈ります。
キリスト教にも宗派・教派といった分類がある
日本にいると、あまり気にする機会はありませんが、キリスト教にもたくさんの宗派・教派といった分類があります。
それをあえて大きなくくりで分けると、東方教会・西方教会・プロテスタントという三つの柱があります。
仏教と異なるのは、経典が基本的に「聖書」に基づいている点で、特にプロテスタントは聖書のみが信仰の対象となっています。
さらに、各教会の方針によって考え方・儀式の流れも変わってくるため、出席時に素人判断で準備を進めるのはおすすめしません。
同じキリスト教というくくりだけで、故人への供養や祈りについて考えると、思い違いをしてしまう可能性があります。
自分がキリスト教を信仰していないのなら、集会での振る舞いについて、教会や知人に質問することをおすすめします。
神式における法事・法要の種類
神式では、法事・法要に相当する儀式も行われています。
キリスト教と比較すると、日本には神社が至る所にあるため、身近に感じられるかもしれません。
しかし、実際に細かく見ていくと、やはり仏教と違う点が見つかります。
以下に、概要と注意点をご紹介します。
神式で行われるのは「霊祭(れいさい)」
仏式における法事・法要について、神式では「霊祭・式年祭(しきねんさい)」と言います。
故人の死後100日目までに当たる儀式は霊祭、1年目の命日以降に行われる儀式は式年祭と区別されています。
日にちに関して、霊祭は細かく定められており、
- 翌日祭
- 十日祭
- 二十日祭
- 三十日祭
- 四十日祭
- 五十日祭
- 合祀祭
- 百日祭
という形で執り行われます。
死後何日目かをカウントして儀式が行われ、その意味では分かりやすいでしょう。
これらの中で特に重要なのは、十日祭と五十日祭で、それぞれ仏教では初七日・四十九日に該当する祭です。
近親者・友人・知人を招くのは、概ねこの時期となります。
また、式年祭は
- 一年祭
- 三年祭
- 五年祭
- 十年祭
- 五十年祭
とあり、一年祭~五年祭までは、近親者・友人・知人を招き、神官に祝詞をあげてもらいます。
十年祭は身内だけの式となり、五十年祭になって再び盛大に儀式を行います。
ニュアンスは仏教と似ているものの、若干の相違点がある
神道は、日本で認知されている身近な宗教の一つですから、主なニュアンスは仏教に近いものがあります。
しかし、詳しい内容を見てみると、やはり相違点がありますから、実際に法事・法要に参列する際には注意しなければなりません。
まず、神道における亡くなった人の魂の行き先は、仏教と違い浄土ではありません。
魂は御霊(みたま)と呼ばれ、幽世(かくりよ)と呼ばれる世界で子々孫々を見守ってくれると考えられています。
また、仏教で当たり前に見られる焼香という儀式は存在せず、代わりに玉串奉奠(たまぐしほうてん)が行われます。
そして、仏壇の代わりに用いられているのは祖霊舎(みたまや)と呼ばれ、家庭内での細かい儀式にも違いがあることに注意しましょう。
神社で霊祭・式年祭は行わない点に注意
仏教と神道の大きな違いは、死を弔う場所の違いです。
現代では斎場があるため、実質的にはどちらも同じような場所で故人を偲びますが、根本的にそれぞれの場所は違う管轄を持っています。
仏教は、人の死を看取る役割を長年引き受け、それに対して神道は、人が健やかに生きられるよう祈念し、厄を払う役割を担ってきました。
よって、基本的に霊祭・式年祭に関することは、自宅もしくは故人のお墓で行われるものと考えておきましょう。
霊祭・式年祭にあたっては、神社で儀式が行われないことを鑑み、余裕を持って参列者が自宅・お墓に集まれるよう準備することをおすすめします。
仏式との相違点について
ここまで、キリスト教・神道において、仏教の法事・法要に該当する儀式をご紹介してきました。
ここからは少し踏み込んで、キリスト式・神式が仏式とどのように相違しているのか、やや根本的な部分に触れていきたいと思います。
キリスト教に「供養」の概念はない
そもそも、キリスト教において、死は恐怖の対象ではありません。
カトリックにおいて、肉体の滅びは永遠の生命の始まりとされており、神の御許に召されるものと考えられています。
聖書においても、天国・地獄のような領域は説明されていますが、それは信仰の有無によるもの(神を信じるか信じないか)であり、キリスト教における神は、仏教のような慈悲が通じる相手ではありません。
よって、供養により生前信仰のなかった人が救われるという考え方はなく、天国と地獄は信仰の有無で厳密に分断されています。
つまり、キリスト教信者は亡くなった段階で天国に行けることを保証されているのであり、その意味ではあえてミサなどを行う必要はありません。
それでも儀式を行うのは、故人を偲ぶことで、今を生きている遺族・友人たちが故人の死を受け入れるためだと認知されています。
神道において、故人は先祖・神々と同格の存在である
神道では、原則として死を「穢れ(けがれ)」として忌み嫌います。
そのため、神社では死を扱わず、神官も故人の家やお墓を介して神となる故人と向き合います。
神道では、亡くなった人は御霊となり、先祖の神々の仲間入りをするとされています。
いわゆる「あの世」というのは神道において「幽世(かくりよ)」と解釈でき、黄泉の国もその世界にあるとされます。
そのような宗教感の違いもあり、日本人の多くが日常的に使っている仏教用語は、神道でNGワードとなるものも少なくありません。
例えば、よくお悔やみの言葉として使われる「ご冥福をお祈り申し上げます」という表現は、神道には冥途という概念がないことから仏教独特のものと考えられ、神道では使われません。
また、供養・成仏という表現も神道では用いませんから、神式の葬儀に参列する場合は言葉遣いに注意しましょう。
新興宗教の場合は違いも大きい
キリスト教に教派があるように、神道にも新興宗教も含め考え方の違いがあります。
一例を挙げると、天理教は神道の一派として存在していたため、その儀式や考え方は神道と近しいものの、独自の教えが根付いています。
天理教の死生観には、輪廻転生に近い考え方が含まれており、故人を「亡くなった」とは言わず「出直された」と言います。
また、お通夜にあたる式を「みたまうつし」と言い、しかも告別式以上に重要視されています。
葬式に関しても、神社ではなく天理教の教会に相談する必要があるため、神道とはほとんど別物と考えてよいでしょう。
これは、キリスト教系の新興宗教にも言えることですから、あまり聞かれない教会の名前を聞いた場合、関係者にマナーを確認した方が賢明です。
この記事のまとめ
キリスト教・神道それぞれに、仏教と同じく故人を偲ぶイベントが存在します。
しかし、仏教と比較した際に故人への向き合い方が異なり、それに伴い名称や時期・ルールにも若干の違いが見られます。
各宗教から派生した新興宗教も存在し、それらのルールはより独特のものとなっています。
自分にとって馴染みのない宗教の儀式に初めて参列する場合は、どのような流れでセレモニーが進むのかを事前に確認した方がよいでしょう。