公正証書遺言で遺言が無効になる場合とは?
どういう時に無効になり、注意しておくポイントも

  • 2024.05.04

相続・遺言

公正証書遺言は、遺言の形式の中でも非常に信頼度の高いもので、第三者が遺言書の作成に携わり、原本も公証人役場で保管されます。

自筆証書遺言のように、開封後に法的効力のない文章であることが発覚するおそれがなく、作成後には写しももらえますから、時間が経過してから一度書いた内容について再検討することもできます。

専門家が作成に携わっている以上、それが無効になるリスクは低いものと考えられますが、過去には裁判で無効とされたケースもあります。
この記事では、公正証書遺言を作成した後、遺言が無効になってしまうケースと、注意すべきポイントについてお伝えします。

公正証書遺言が、過失によって無効となるケースは考えにくい

冒頭でお伝えした通り、公正証書遺言の作成には公証人という法律のプロが携わっています。よって、書式や内容の面で無効になるケースはまずないものと考えてよいでしょう。

まずは、公正証書遺言の概要をあらためて確認し、どのくらい信頼性の高い遺言なのかを再確認していきます。

そもそも、公正証書遺言は相続トラブルの回避に使われる

公正証書遺言の作成に携わる専門家は公証人と呼ばれ、裁判官・検察官・法務事務官など、法律を生業としてきたプロフェッショナルが担当します。

法律に精通した人材が、遺言者の意志・希望を確認しながら遺言書を作成してくれるため、安心して遺言書を作成できます。

また、公正証書遺言を作成すると、その遺言書はそのまま公証役場で保管され、自筆証書遺言のように検認も必要としません。

また、保管場所が自宅ではないことから、紛失のリスクもなく、誰かが盗んで偽造したり、一部の内容をすり替えたりすることもできません。

自分で遺言書を作成・保管するよりも安全に、自分の意志を書面にしたためておくことができます。相続させる予定の財産によって、手数料の金額は変わってきますが、それでも弁護士に依頼するよりは良心的な金額になっています。

公証人を介せば、聴覚・言語障害がある人でも遺言が作成できる

遺言書を遺すことを考えている人は、必ずしも健常者だけであるとは限りません。
年齢を重ねたことで、視覚・聴覚や言語能力に異常が発生している人であっても、遺言書を作成する必要があるケースは少なくありません。

会話・手話など、何らかの形でコミュニケーションをとることはできても、文章が上手く作成できない可能性もあります。
そのような人に対しても、公証人役場では門戸を開いています。

例えば、病気やケガなどの事情から公証役場まで足を運べなかった場合であっても、公証人に出張を頼んで、自宅もしくは病院で公正証書遺言を作ることもできます。

遺言者が文字を書けず、自分で署名ができない場合は、公証人が署名のできない理由を付記すれば問題ありません。どのような人であっても、きちんとした遺言書が書けるよう、公証人役場は機能しているのです。

証人も用意するため、信用性の高い遺言になる

公正証書遺言の作成には、2名以上の証人が必要です。
証人になれる人の条件は決まっていて、誰でもよいというわけではないため、信用性の高い遺言になります。

もし、身近な場所で適切な証人が見つからない場合は、公証役場の側で証人を紹介してくれます。公証役場によって、誰が証人になってくれるかは変わってきますが、やはり職務として法律に携わった人が担当するケースが多いようです。

謝礼に関しては、証人一人あたり5,000~10,000円となっています。
この金額を高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、自分で足を使って信頼できる証人を探すより、安く済むことも十分考えられます。

それでも公正証書遺言が無効になってしまうケース

ここまで手をかけて公正証書遺言を作成したとしても、残念ながら無効になってしまうケースがあります。

件数としてはそれほど多くないものの、遺言者の体調・精神状態によっては十分当てはまる可能性がありますから、念のため頭に入れておきましょう。

遺言を作成する段階で「遺言能力」が遺言者になかった

分かりにくい部分なのですが、遺言書を書くためには、遺言者に「遺言能力」が備わっていることが重要です。

これは、法的に有効な遺言書を書くための能力とも言い換えられ、どのような文章が遺言で、どのような形式で書けば法的効力があるのかを理解できる能力を指します。

具体的な例をあげると、15歳未満の人が書いた遺言書は、親権者など法定代理人がOKを出しても無効となります。

ただ、この点については、公証人を通じて遺言書を作成する公正証書遺言において、公証人がミスを犯すケースはまずないものと考えられますから、本人や家族が年齢を偽った場合を除いて問題になることは少ないでしょう。

遺言能力の有無を問われる主なケースは、遺言者の側に意思能力がないと判断された場合です。認知症などの理由により、意思能力がない中で公正証書遺言を作成したことが分かれば、後々になって遺言能力が否定されることがあります。

自分が起こした行動の結果について、きちんと判断できる能力があると認められなければ、その遺言書は無効となります。

もっとも、遺言者の遺言能力に疑問を感じた場合、公証人は質疑応答を行ってチェックを入れることがありますから、チェック機構そのものが存在しないというわけではありません。

遺言に何らかの不審な点があった

間接的には、障害や認知症などの理由から引き起こされるリスクがある問題ですが、遺言者の意志・家族の意志に沿わないような遺言書が意図的に作成されたおそれがある場合、その遺言書は無効となります。

例えば、遺言者の家族・同居人が健在にもかかわらず、まったく関係性が見えない人に全財産を渡そうとしているようなケースが該当します。

そもそも、どうしてそのような遺言を遺そうと考えているのか、明確な理由を遺言者本人の口から聞けない限り、遺言能力が認められる可能性は薄いでしょう。

また、遺言者の意志がしっかりしていても、誰かに脅された結果遺言を遺そうとしていることが判明したら、その遺言書は無効になります。

証人になれる人が証人にならなかった

公正証書遺言を作成するにあたり、証人は2名必要になります。
しかし、以下の条件に当てはまる人は、証人になれないルールがあります。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

未成年者

未成年者とは、遺言能力が発生する15歳以上ではなく、20歳未満の人を指します。
ただし、2022年4月1日以降は、18歳以上からが成年となるため、18歳未満の人を指すようになります。

推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

こちらに関しては、かなり込み入った内容となっていますが、要するに「遺産相続の対象になりうる人」は証人になれないという意味です。推定相続人というのは、相続の時点で最優先で遺産を相続できる権利を持つ人のことです。

公正証書遺言を作成する時点では推定相続人に含まれておらず、その後家族構成に何らかの変化が生じたことで推定相続人になった場合は、結果的にそうなったとしても問題はありません。

受遺者とは、本来遺産を受け取る権利はないものの、遺言によって財産を受け取る権利を得た人のことを言います。配偶者は夫婦のうち片方、直径血族とは親子・孫関係と理解すれば分かりやすいでしょう。

これらの人々は遺産相続の当事者になることから、遺言者の証人にはなれません。

公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

この違反が生じることはまずありませんが、公証人の家族や親族・使用人など、公証人と親しい間柄にある人は証人になることができません。

もし、証人になっていたことが発覚した場合、その遺言は無効となります。

遺言者との意思疎通が十分に取れなかった

障害のある人が遺言を遺そうと考えた場合、注意して欲しいことがあります。
それは、公証人が遺言者の意志を正しく理解できなかった場合、作成を断られる・もしくは後々無効になるおそれがあることです。

何らかの障害がある遺言者が、公正証書遺言を作成しようとする際に注意したいのは、公証人の理解力についてです。

公証人は、依頼者からの意向を確認して公正証書を作成する専門家ではありますが、障害を持つ人とコミュニケーションを図るプロではありません。

公証人が、遺言者の言いたいことが分からない・遺言者の意向を正しく伝えてくれているか分からない状況だと、それを理由に公正証書遺言の作成を断られてしまうおそれがあります。

万一の事態に備え、できるだけ遺言者の通訳を務める専門家を探して、公証人が話を理解できるような体制を整えることが大切です。

例えば、耳が聞こえないなら筆談をスムーズに進める・手話が分かる人を間にはさむなど、公証人に事情を理解してもらえて、コミュニケーションを代理する人が信頼できる存在であることを証明できれば、話はスムーズに進むでしょう。

公正証書遺言が無効になったら、遺産相続はどう進める?

もし、何からの事情で公正証書遺言が無効になった場合、法律にもとづいて遺産の分配が行われます。よって、受遺者に対して遺産を相続することができず、法定相続人のみの間で遺産のやり取りが始まります。

法定相続人に対して遺産相続が行われる場合、それぞれの取り分が決まっていますから、平等な配分が行われる反面、場合によっては不動産を手放さなければならないなどの問題に巻き込まれるおそれもあります。

また、仮に親族の誰かが遺言書無効の訴えを起こしたことで遺言が無効になった場合、裁判で骨肉の争いに発展する可能性が高くなります。

温厚だった家族が、お互いを疑い・ののしり合う関係にならないよう、遺言者は確実に自分の意志を遺せるように準備することが大切です。

この記事のまとめ

公正証書遺言は、作成の流れが定められていて、証人を用意するなど信用性も高い形式の遺言書です。法律のプロが遺言者の代わりに作成してくれているため、基本的な事由から遺言が無効になってしまうケースはほとんどないものと考えてよいでしょう。

しかし、残念ながら無効になってしまうケースは一定数存在しているため、万一に備えて無効になるケースを頭に入れて作成したいところです。

特に、障害や病気を抱えている人は、自分の状況を踏まえ、公証人とのやり取りを進めるのに必要な準備を怠らないようにしましょう。

  • 公開日:2024.05.04

テーマ:相続・遺言

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