葬儀後に戸籍謄本が必要になるって本当?
どんなケースで必要なのかと取得や取り寄せの注意点

  • 2019.10.04
  • 2020.04.17

葬儀, 相続・遺言

戸籍謄本と聞くと、パスポート取得時や婚姻届を提出する場合など、官公庁で重要な登録を行う際に必要な書類としてイメージする方が多いと思います。
しかし、この戸籍謄本は、葬儀後にも必要になってくる書類の一つです。

今回は、葬儀を終えた後、戸籍謄本を使用する主な手続きと、取得・取り寄せの際の注意点についてご紹介します。

故人の死後、戸籍謄本が必要な各種手続き

故人が亡くなった後、具体的にはどういった場面で戸籍謄本が必要になるのでしょうか。
以下に、主なものをご紹介します。

遺言書に関する手続き

故人が遺言書を残していて、全文を自筆で書いた自筆証明遺言・公証人が遺言の存在を証明する秘密証明遺言などを開封する場合に必要です。
なお、公証役場で公証人に作成してもらった、公正証書遺言の場合は必要ありません。

戸籍謄本に必要な内容は、故人・相続人全員・受遺者が該当します。
受遺者とは、遺言によって財産の相続を受けるものとされている人のことを指します。

提出先は家庭裁判所(故人の住所の管轄)で、開封・閲覧していない遺言書の原本と一緒に提出します。

遺族年金に関する手続き

遺族年金に関する手続きは、国民年金・厚生年金それぞれで異なりますが、いずれの場合も戸籍謄本が必要です。
仮に夫が亡くなったケースで妻子がいた場合を一例とすると、遺族基礎年金を請求できます。

必要な戸籍謄本は故人のものを用意し、故人の居住地の管轄となる市区町村で、国民年金窓口に行って手続きします。
その他に必要な書類としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 死亡診断書のコピー
  • 国民年金遺族基礎年金裁定請求書
  • 故人の年金手帳
  • 源泉徴収票
  • 印鑑
  • 振込先口座通帳

これは死亡から5年以内に行う手続きのため、その点に注意が必要です。

名義変更に必要な手続き

故人が亡くなってから、故人の所有していた土地・建物などの不動産を相続する場合、各種名義変更が必要です。
不動産の場合は登記簿、預貯金は通帳、株式は名義人、自動車は所有権といったように、名義変更を必要とする所有物に応じて手続きが必要です。

必要な戸籍謄本は、故人と相続人全員のものが基本となり、その他の必要資料は所有物に応じて変わってくるという流れです。
提出期限が定まっているものもありますから、早めの準備が必要です。

相続税に関する手続き

相続する財産について計算し、基礎控除額を上回る結果になった場合に必要となります。
故人と相続人全員分の戸籍謄本を用意し、故人の住所の管轄となる税務署に提出します。

相続税にも納税期限があり、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10カ月以内と決まっています。
戸籍謄本・申告書の他には、身分証明・印鑑証明書などの書類を求められますから、手続き前に税務署などに確認しましょう。

生命保険料の請求手続き

故人が生命保険に加入していれば、死亡保険金を請求するために、戸籍謄本を用意する必要があります。
必要な戸籍謄本は、故人・保険金受取人のものになります。

契約していた保険会社に提出し、死亡してから2年以内が提出期限です。
他に提出する書類は、主に保険会社関連のものが多く、死亡保険金請求書・保険証券・死亡診断書などが必要です。

故人の戸籍謄本を請求する方法

市役所などで故人の戸籍謄本を手に入れるためには、普段取り寄せる戸籍謄本では足りません。
故人の最終的な本籍地の役所まで出向き、「一生分」の戸籍謄本を揃えたいと伝える必要があります。

故人という事情を勘案すると、保険金・遺産を受け取る人との関係を明確にしなければならないため、一生分の戸籍謄本を必要とするのは理解できるところです。
しかし、一生分の戸籍謄本を集めることは、想像以上に大変なことです。

というのも、運良く亡くなった自治体の中で一生を終えたなら、一つの市町村で話が済みますが、大抵の場合は田舎があったり、地方から上京してきていたりと、故人の昔住んでいた場所は全然違うところというケースも珍しくないからです。

とはいえ、何とかして戸籍謄本を手に入れなければ、次の手続きに進むことはできません。
そこで、故人の戸籍謄本を手に入れる方法について、いくつかの状況にわけてご紹介します。

窓口で手に入れる方法

最初に考えられるのは、窓口に足を運んで手続きを行う方法です。
この場合は、各自治体にある戸籍謄本の発行手続きに必要な書類を書いて、窓口の人に「故人の出生から死亡までの戸籍を取れるだけ欲しい」旨を伝えましょう。

基本的に、窓口の方は慣れているため、相続手続きで戸籍が必要であることを理解してくれるはずです。
最初に手に入るのは直近の戸籍ですが、そこから引っ越しなどがあった場合は、より昔の戸籍にさかのぼって集める必要があります。

よって、地元で長年暮らしてきた人ならまだしも、各地を転々としてきた人であれば、各都道府県・市区町村の戸籍謄本を探すことになります。
おそらく、初めて故人の戸籍謄本を取得する場合は、その役所で取れた最も古い戸籍謄本を基に、次に請求すべき自治体を教えてくれるはずです。

代理人を経由して手に入れる方法

遺族が仕事で忙しい場合は、代理人を経由して戸籍謄本を手に入れることも考えられます。
各自治体で委任状を用意しているため、それを市役所等で受け取るかダウンロードするかして、遺族・代理人それぞれが必要な箇所に記入します。

基本的には、依頼する側の住所・氏名と、委任する人に依頼したい書類(戸籍謄本)を書いたら、代理人の住所・氏名を書いて完了です。
自治体によっては、他にも記載事項がある可能性もありますから、取得時に確認しましょう。

また、代理人が市役所に足を運んだ場合、代理人の本人確認を求められます。
よって、市役所等に足を運ぶ際は、運転免許証など身分を証明する書類も必要になります。

郵送で取り寄せる方法

戸籍謄本の取得を繰り返していると、より古い戸籍にまでさかのぼるうち、現住所からかなり離れた都道府県の市区町村に対し、戸籍謄本をお願いすることも想定しなければなりません。
この場合、市区町村に郵送で請求することになります。

郵送で請求する場合、各自治体で郵送申請の方法が定められています。
所定の戸籍請求用紙を各自治体のホームページからダウンロードした後、中身を埋めていきます。

それに同封する書類としては、運転免許証のコピーなど本人確認ができるもの、最初に取得した戸籍謄本のコピー(故人との関係を証明するため)、定額小為替、返信用封筒(切手も貼る)などです。
定額小為替という言葉を初めて聞く方もいると思いますが、こちらは郵便局で購入できるもので、郵便局で換金できる「小切手の簡易版」と考えておくと分かりやすいでしょう。

多くの場合、市区町村で金額が指定されているため、必要な分だけ定額小為替を購入し、あとは同封するだけです。
自分が定額小為替を受け取った場合も、それは郵便局で換金できますから、覚えておくと何かと便利です。

故人の戸籍謄本を取得する際の注意点

故人の戸籍謄本を取得するためには、場合によってはかなりの時間がかかることを覚悟しなければなりません。
そもそも故人がどこで生まれ、どこで育ったのか、家族も詳しく知らないというケースは珍しくないからです。

戦争を経験している世代になると、戦後のゴタゴタもあって、色々な土地を動き回っている人は少なくありません。
記憶違いをしていたり、そもそも地名が変わっていたりすることもあるため、あらかじめ時間がかかることを想定してスケジュールを立てましょう。

窓口に直接出向くべきか、郵送で済ませるべきか

間違いなく取得できるのは、受付と話ができる窓口です。
必要書類に不備がなければ、訪れてからすぐに手に入れられるため、旅行気分で窓口に出向くのも一つの方法です。

しかし、近所にある市役所等であればまだしも、海を挟んだ地域になると、忙しい中窓口に足を運ぶのは現実的ではありません。
よって、2~3回目の戸籍謄本請求の段階になった場合、ほとんどの人が郵送という選択肢を選ぶはずです。

せっかく郵送を選んでも、必要な書類を間違えたり送った書類に不備があったりすると、その分時間もかかりますから、必ず送付する前に入念に確認しましょう。

故人の一生が分かればよい

戸籍謄本をもらう場合は、あくまでも「故人の一生」が分かる範囲で構いません。
つまり、故人について、出生地から死亡地までの流れが分かるように、戸籍謄本を集めます。

故人だけでなくその家族にまでさかのぼると、今度は「除籍謄本」というものも必要になってきます。
しかし、相続においてそこまでの情報を必要とする場合は稀なため、まずは戸籍謄本の範囲で故人の情報を集めましょう。

紛らわしい!銀行で言われる「除籍謄本」

先に話が出た除籍謄本と戸籍謄本とは、似たような名称ではあるものの、意味合いは全く違います。
そして、相続関連の資料を集めている中で、時々紛らわしい表現をされるのが除籍謄本です。

戸籍謄本に記載されるのは、出生・転籍・分籍・婚姻・離婚・養子縁組といったように、夫婦と未婚の子どもの情報です。
これに対して除籍謄本は、子どもなどが新しい戸籍に移動することにより、最終的にその戸籍に誰も存在しなくなったものを指します。

簡単に説明すると、父・母・子どもがいて、子どもが別の街に転居していなくなり、母が亡くなって、最後に父が亡くなった場合、その戸籍には誰も人が残らなくなります。
こうして、戸籍という枠組みの中に誰一人として残らなくなったとき、それは除籍謄本へと移行します。

これが、本来の除籍謄本が持つ意味なのですが、実務の場面ではやや違った理解で説明されることがあります。
例えば、銀行などの金融機関で「除籍謄本をもらってきてください」と説明されたら、それは正しい表現ではない場合があります。

全ての方が戸籍から抜け、閉鎖されたものを記したものが戸籍謄本です。
よって、相続人が生存して故人と同じ街で暮らしていたなら、戸籍が除籍謄本になっているとは限りません。

この場合に銀行側が言いたいのは、

「亡くなられた方が『死亡によって除籍』となったことが記載されている、戸籍謄本を取ってきてください」

ということでしょう。
紛らわしいですが、おそらく本当に除籍謄本を持って行っても困惑されるため、事前に上記の旨を確認しておきましょう。

この記事のまとめ

故人の戸籍謄本を集めるのは、思いのほか骨が折れる仕事です。
せっかく届いたと思ったら、さらに別の場所にも問い合わせなければならないことも珍しくなく、場合によっては故人の本籍地が家族と違うこともあります。

あまりに手間がかかるようなら、司法書士・行政書士などに相談し、手続きを代行してもらう方法もあります。
日常生活に支障をきたさない範囲で必要書類を集められるよう、何らかの工夫は必要になるかもしれません。

  • 公開日:2019.10.04
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:葬儀, 相続・遺言

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