遺言書作成を依頼した時の費用の相場について。
自筆証書と公正証書での違いなどについても解説

  • 2023.12.14

相続・遺言

遺言書と聞くと、基本的に自分で書いて保管するイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし、法的な要件を満たした遺言書を作成するには、正しい遺言書の知識が必要になるため、自分一人で作成すると遺言書が無効になってしまうおそれもあります。

遺された家族がトラブルに巻き込まれないようにするためには、専門家に遺言書作成を依頼したり、プロのアドバイスを受けたりして、法的に正しい遺言書を作成する必要があります。
ただ、さすがにタダで専門家に依頼することはできませんから、ある程度費用の相場観を理解しておくとスムーズです。

この記事では、遺言書の作成を依頼した場合の費用相場について、自筆証書・公正証書のケースに触れつつご紹介します。

遺言書の作成を依頼した場合の相場観について

まずは、遺言書の作成を専門家に依頼した場合の、一般的な相場観についてお伝えします。
自筆証書・公正証書それぞれでサービスの内容が少し異なり、遺産の額に応じて費用にも違いがありますから、主にそれらの点にフォーカスしながらご紹介します。

依頼する場合、公正証書が基本となる

専門家に依頼して遺言書を作成する場合、公正証書作成を依頼するケースが主流です。
公正証書は、公証人が自分の希望に沿った形で、法的に正しい形式の遺言書を作成してくれる方法ですが、これをプロに代行してもらいます。

具体的には、文案を弁護士などの専門家に作成してもらう形となり、費用も複数の名目で発生します。
文案を作成したことに対する作成手数料・証人を紹介してくれた場合の証人手数料については、自分で公正証書作成を公証人に依頼した場合も発生しますが、それに加えて専門家に支払う報酬が加わります。

継承させる遺産の額に応じて手数料等が変わる

プロに依頼した際の価格体系ですが、こちらは継承させる遺産の額・つまり財産の額に応じて価格が変わります。
そもそも、公正証書遺言の作成手数料は、財産額が100万円以下なら手数料5千円・1,000万円を超え3,000万円以下なら2万3千円など、金額が決まっているのです。

これは、かつての弁護士報酬でも同様で、最低でも300万円以下の相続で20万円の手数料が発生していました。
相続させたい遺産がどのくらいの価値になるかによって、支払う金額に影響が出ることに注意が必要です。

自筆証書の場合は添削してくれるサービスがある

ある程度価格体系が決まっていて、それなりの出費を覚悟しなければならない公正証書とは違い、自筆証書は添削を頼めるサービスがあります。
こちらは良心的な金額となっていて、安いものなら数千円で依頼できます。

単純に結果を伝えてくれるだけでなく、遺言に関するアドバイスをしてくれるサービスもありますから、自分一人で考えるのが不安な人は試してみるのもよいでしょう。

安い場合は数千円~3万円台から、高い場合は100万円近くかかることも

遺言書作成の依頼は、依頼内容がどうかというよりも、誰に頼んだかで金額が左右する傾向にあります。
ワンストップサービスで、添削だけを安く済ませたい人にとっては、数千円で受けられる添削サービスに魅力を感じると思います。

しかし、きちんとした遺言書を作成しておかないと後々トラブルが生じるリスクがあるなら、専門家が「事前にリスクを検討して作成した遺言書」を用意しておきたいと考える人は多いはずです。
このような場合に、行政書士・司法書士の知見が求められ、支払う報酬の価格帯は3万円台からとなっています。

さらには、自分が亡くなった後で、トラブル・骨肉の争いが起こる可能性が高い場合は、第三者の目線で遺言者の意志を実現する遺言執行者を立てることを考えます。
この任にあたることができる人は限られており、専門家では弁護士が担当するケースがほとんどで、金額も数十万円になるケースは珍しくありません。

ちょっと変わったところでは、信託銀行に遺産相続の手続きを代行してもらう方法もあります。
組織が相続を代行してくれるため、代表者が亡くなるおそれがある個人事務所に依頼するよりも安心できますが、100万円単位で費用が発生するため、誰でも選べる選択肢とは言えないでしょう。

自筆証書の添削をお願いする場合の詳しい相場観

自筆証書に関して専門家の知恵を借りる場合、文章そのものを作成代行してもらうというよりは、自分が書いたものを専門家の目線から添削してもらうという流れが一般的でしょう。
その場合、どのくらいの金額を見越しておけばよいのか、ある程度の相場観をご紹介します。

親しい人に頼むなら無料かもしれないが……

専門家にこだわらないのであれば、遠縁の親族や親しい人に頼んで、アドバイスを受ける方法があります。
ただ、遺言書を書いたことがある人・故人の遺言について理解がある人から話を聞けるとは限らないため、情報の信ぴょう性には不安が残ります。

このような問題は、無料だからといって親しい人に頼るよりも、専門で担当しているプロに話を通した方が確実です。
特に、もめる可能性が少しでもあるなら、将来に備えて弁護士に話を通しておくことをおすすめします。

弁護士は法律事務所によってまちまち

弁護士に支払う報酬は、その法律事務所によってまちまちです。
弁護士報酬規程の縛りがあった時代は、どの法律事務所でも大きな違いはなかったのですが、現代では弁護士・法律事務所によって報酬が違います。

ただ、かつての報酬規程に従って報酬を決めているケースも珍しくないことから、相場観を判断する参考にはなるでしょう。
概ね、10~20万円が一つの基準になりますが、財産が大きくなると100万円を超えてしまうこともあります。

また、作成依頼以上のことを頼む場合、遺言執行者になって欲しい・訴訟対応をお願いしたい場合などは、より多くのお金がかかるものと考えておきましょう。
逆に、経済的に負担が大きい人のため、格安でサービスを提供している事務所もありますから、遺言書・遺産相続問題で親身になってくれそうな事務所を探す努力は惜しまない方が賢明です。

行政書士・司法書士に依頼するなら3万円台から

同じ法律家でも、行政書士・司法書士に依頼した場合は、多少金額を安く見積もってもらうことができます。
弁護士報酬規程のように、法律で明確に定められている金額があるわけではありませんから、比較的柔軟に事務所を選べます。

価格設定は、相続させる遺産の額に応じて変わってくる場合と、作業ごとに金額が変わってくる場合とに分かれます。
サービスの質が価格設定の違いにつながっているとは限らず、あくまでも各事務所のスタンスによって決まっている点に注意が必要です。

価格帯は概ね3万円台からで、郵送で一度だけ添削してもらう場合は、2万円台で完了するケースもあります。
遺言書の保管までワンパッケージで行う場合、6~20万円ほどの金額を設定している事務所もあります。

添削専門サービスを使う手もある

自筆証書に限って言えば、あえて士業の事務所にこだわらず、比較的安価な添削専門サービスを使う手もあります。
定額制を取っているところの中には、5千円という良心的な金額でサービスを運営しているところもありますから、遺言についてそこまで深刻な事情を抱えているわけではない人は、気軽に相談できます。

ただし、相続させる遺産の額が大きい場合・争いの火種になりそうな問題を抱えている場合は、アフターケアも含めて専門家に依頼することをおすすめします。
あるいは、公正証書の依頼に切り替えるのも一つの手です。

公正証書の作成代行をお願いした場合の詳しい相場観

専門家に遺言書の作成を依頼する場合、どちらかというと公正証書遺言の作成代行を依頼する方が一般的です。
確実に法的効力を発揮する遺言書が作成できるため、遺言書の作成自体に自信がない人は、公正証書を選んだ方が確実です。

行政書士・司法書士は7万円以上を見越しておくとよい

公正証書は、単純に文面を作成して終わりではなく、公証人役場での保管・証人の立会など、複数の手数料が発生します。
それらを見越して金額を計算すると、最低でも7万円以上はかかるものと考えておいた方がよいでしょう。

難易度が高いケースと判断された場合、司法書士は多少料金が高くなる傾向にありますが、行政書士は一律でプランを用意しているところが多いようです。

弁護士は弁護士報酬規程を参考にしているかどうかで変わる

公正証書の作成代行に関しても、やはり弁護士報酬規程が一つの基準になっているため、相対的に司法書士・行政書士よりも価格は高い傾向にあります。
財産が大きければ大きいほど、依頼するメリットは大きくなりますが、単に正しい遺言書を作成するためだけに弁護士を頼るのは、ややもったいないケースです。

預金と自宅の相続だけであれば、概ね20~30万円といったところですが、遺産が大きいと300万円近い価格まで跳ね上がることもあります。
ただ、裁判沙汰になるようなリスクがある内容の遺言なら、今後のことも考えて弁護士に頼っておいた方がよいでしょう。

信託銀行に頼むのは、一般人にとって現実的ではない

組織で個人の遺言をサポートしてくれる信託銀行は、一般人にとってあまり現実的な金額とは言えません。
銀行にもよりますが、オプションなしの基本プランで100万円からのスタートとなっているところが見られ、かなりの資産がなければ依頼するメリットは少ないでしょう。

また、お金がかかっている割には対応できる範囲も狭く、信託銀行では財産・相続に関する事項だけしか執行できず、認知に関すること・未成年後継人に関することなどは、サービスの対象外です。
裁判への対応もできないので、何かトラブルがあれば結局弁護士に依頼することになり、費用対効果を考えると弁護士に依頼した方が早いかもしれません。

この記事のまとめ

自筆証書・公正証書両方のケースにおいて、作成時に専門家への依頼ができます。
法的効力の担保という意味では公正証書に分があるものの、自筆証書であっても正しく書かれている内容であれば、問題なく検認を受けることができます。

どちらを選ぶかは、遺言を用意する事情によって変わってきますが、確実に遺言を執行して欲しい場合・自分の死後なんらかの親族トラブルが発生するリスクがある場合は、できるだけ専門家に相談した方が確実です。
自分の用意できる予算・相続させたい遺産の額に応じて、後悔の無いよう事務所・サービスを選びましょう。

  • 公開日:2023.12.14

テーマ:相続・遺言

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