遺言書の有効・無効の判断について。
どういう内容・ケースでどんな時に変わるのか

  • 2022.05.19

相続・遺言

遺言書というものは、それを書いた遺言者の意志を相続人に伝えるために用いられます。
そのため、遺言書の有効・無効という判断を他者が下すことは、一見必要のない行為に思えます。

しかし、文書に法的効力を持たせるためには、支離滅裂な文章ではいけませんし、特定の誰かだけが得をするような内容でも認められません。
仮にそれらが有効と認められたとしても、相続人は混乱を極めますから、やはり所定の書式・法律に沿ったものでなければなりません。

この記事では、遺言書が有効とされる場合・無効とされる場合について、具体的な内容やケースについて解説します。

基本的に有効と認められるケースや内容

遺言書で問題になるのは、どちらかというと細かい決め事が多いという点で、文書や数字などのチェックが苦手な人にとってはミスに至るトラップが数多く存在しています。

しかし、遺言書は、法律試験の問題に出てくる文章のように、複雑な構造になっているわけではありません。

よって、有効と認められるケース・内容がどのようなものか理解していれば、書かれている内容で無効になる例は少ないでしょう。
まずは、最低限以下の内容を押さえておくことで、無効になるケースをある程度避けることができるはずです。

相続人が亡くなっていないこと

そもそも論になってしまいますが、財産を引き継いでほしい人がすでに亡くなっている場合は、当然ながら遺産相続はできず、その遺言書は無効になります。
ただ、その一件が引っかかっただけなら、遺言書の他の部分は有効です。

このような事態が起こる原因の一つとして、一度作成した遺言書を見直していない状況が考えられます。
遺言書を作成してから時間が経過している場合、そのままにせず内容を見直してみましょう。

遺言書の書き方のルールにのっとって書かれていること

遺言書を法的に有効なものにするためには、内容以前に書き方が重要です。
家庭裁判所で行う検認についてもそうですが、重要なことは遺言書の形状であったり、加除訂正の状態であったりします。

遺言書として効力を発揮するためには、求められるルールを守った上で、文書を作成しなければなりません。
例えば、以下のような条件は、遺言書を作成する上で必ず守らなければならないものです。

自筆していること(自筆証書遺言の場合)

自分で遺言書を書く「自筆証書遺言」は、その名の通り自筆であることが求められます。
パソコン・コピーなどによる作成は無効となるため、注意が必要です。
ただし、カーボン紙などを使って複写されたものに関しては、筆跡鑑定ができるため有効とされます。

日付が書かれていること

遺言書には、具体的な日付を書くことが必要です。
年月日まで特定されなければ無効となるため、例えば「令和○年○月吉日」のような書き方は認められません。

ただ、必ずしも年月日を書かなければならないわけではなく、日付を特定できる情報があれば、誕生日や定年退職日などを書いても有効となった例があります。

誕生日の場合は、その時点で何歳になるのかを書いておけば、他の情報と見比べて日付を特定できるとされています。

遺言書を書いた日と、遺言書に書かれた日にちが異なるケースでは、誤記であることが判断できれば有効になります。
その場合、他の資料から明らかに誤記であると判断できなければなりません。

ちなみに、カレンダー上ありえない日付(9月31日など)の場合は、大きな問題とはならず、有効とみなされるケースが多いようです。

氏名を必ず記載すること

遺言書には、誰が書いているのかをきちんと署名することが必要です。
ただ、戸籍上の氏名でなければならないという理由はなく、例えばペンネームなどでも良いものとされます。

芸能人や作家など、人物が特定できる範囲であれば問題ないと考えてよいでしょう。

押印や訂正印が確認できること

遺言書には、署名だけでなく捺印が必要です。
実印ではなく認印でOKですが、スタンプ印は認められないとされます。

押印する場所は署名の近くであることが一般的ですが、絶対にそうでなければならないという決まりはありません。
例えば、本文への押印を失念しても、封筒の封じ目に押印されていれば、有効とされた例が見られます。

また、何らかの理由で文章を訂正した場合は、訂正箇所を二重線で消した後、訂正箇所に押印されていなければなりません。
その後、正しい言葉に書き直し、余白に訂正箇所・字数を書いて、その近辺に署名します。

ちなみに、指に朱肉を付けて印鑑の代わりに押す「指印」でも有効になります。

成年後見人及びその家族の利益になる内容でないこと

何らかの理由で、被相続人に成年後見人が選任されているような状況では、遺言書の作成はできません。
多くの場合、重度の認知症などの状況が想定されますが、以下のような条件を満たしていれば、遺言書の作成は可能です。

  • 一時的に処分能力(遺産を管理したり、処分したりする能力)が回復していること
  • 医師2人以上の立合いがあること
  • 医師の側で「判断能力が一時的に回復していた」旨の記載、署名押印がなされていること

このケースの注意点として、成年後見人やその家族にとって有利になる内容と判断された場合は、原則としてその遺言書は無効となります。

ただし、成年後見人が被相続人と親子関係にあったり、夫婦のどちらか・兄弟姉妹が成年後見人になっていたりする場合は、遺言書は有効になるケースがほとんどです。

その他、公序良俗に違反していないこと

遺言書に書かれている内容は、あくまでも財産・身分に関することが認められるに過ぎず、それ以上の内容が認められるわけではありません。
例えば「自分が死んだら娘の今後が心配だから、○○と結婚して欲しい」などという条件は法的効力を持ちません。

また、いわゆる不倫関係などを維持するために遺産を相続させるような記述や、犯罪行為を助長するような記述に関しては、当然ながら認められません。
ただし、婚姻関係にない内縁の夫・妻に対する遺産相続や、隠し子の認知に伴う遺産相続は認められます。

無効と認められる・推察されるケースや内容

遺言書は、社会的に見てまっとうな内容であり、財産・身分に関することが所定の書式で書かれている限り、有効になるものと考えられます。

逆に言えば、無効になる・あるいは無効になるものと推察されるケースは、何らかの理由で「ふさわしくない」・「正しくない」と過去に裁判所が判断したことになります。

以下に、遺言書が無効と判断された、主なケースについてお伝えします。

遺言書にミスがあると、その遺言書は無効である

先にお伝えした通り、遺言書は所定の書式を守らなければ、有効であると判断されません。
大きなミスがあると、その遺言書は無効となるため、作成する際はこまめに文例を見ながらチェックポイントを作ることをおすすめします。

ただ、検認では遺言の内容自体にチェックを入れることはありませんから、まずは形式に沿っているかどうかをチェックするだけで十分です。
内容の有利・不利を確認して欲しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。

遺言能力を持たない人が遺言書を書いている場合もNG

遺言書が有効と認められるためには、遺言がどのような意味を持っていて、法律上の効力にどのようなものがあるのか、遺言者が理解している必要があります。これを遺言能力と言い、遺言能力の有無は裁判などになった際に争われる要素の一つですから、この点にも注意が必要です。

もし、遺言者が亡くなる前に認知症になっている状況であれば、その遺言書が「いつ」書かれたのかが問題になります。
認知症と診断された時期が10年前で、遺言書を書いた時期が5年前なら、本当にそれは本人が書いたかどうか疑わしいと判断されるかもしれません。

ちなみに、遺言者が15歳未満である場合も、遺言能力があるとは認められません。

筆跡に怪しい部分があるケースは疑われる

筆跡に関しては、これまでいくつかのケースで有効かどうかが争われており、無効になったケースも数多く存在します。

この点について、最高裁判所の判例では、視力を失ったなどの理由から他人の補助が必要な場合は、それだけで「自筆能力がない」と判断することはないとしています。

具体的には、以下のような条件が満たされていれば、他人に手を添えてもらいながら書いた自筆証書遺言は有効だと示しています。

  • 被相続人が遺言書を作成した時に自筆能力を有していること
  • 他人の添え手が、始筆・改行の際や行間を整えるときなど「遺言者の手を用紙の正しい位置に移動させる」にとどまること
  • 遺言者の手の動きが遺言者の望みに任されていて、添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであること
  • 筆跡から、添え手をした他人の意志が介入した形跡のないこと

しかし、現実には、上記の条件に当てはまるケースを証明するのは難しい上、文字の出来にムラがあるとみなされた結果、無効になった例も見られます。
本人の筆跡と相違がある場合、基本的には認められませんから、公証人以外の代筆は止めた方がよいでしょう。

複数人の遺言が書かれている遺言書も認められない

遺言書は、基本的に遺言者一人だけを対象としたもので、他の人の遺言書を同封することは認められません。
また、1枚に複数人の遺言者が署名・捺印している遺言書も認められません。

この場合、遺言書自体は1通でも、中身が2部構成になっているようなものであれば、亡くなった遺言者の部分だけを有効とするケースも認められます。

この記事のまとめ

遺言書には所定のルールがあり、検認では主にその点を確認します。
そこでミスがあると法的効力がないものと判断されますから、まずはその点をきちんと把握しておくことが大切です。

また、遺言書に遺言者の意志が反映されていることが疑わしい場合・特定の誰かだけが得をする状況が想定される場合なども、その有効性が問われます。

有効・無効それぞれのケースをよく理解して、家族が戸惑わないよう遺言書を作成しましょう。

  • 公開日:2022.05.19

テーマ:相続・遺言

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