もし、余命宣告されたら何をどうすべき?
慌てないためにも知っておきたい終活の基本

当たり前の話になりますが、私たち人間の死亡率はどんな人間であろうとも、必ず100%になります。
寿命の差こそあれど、人は誰でも必ずいつか死を迎えます。

死というものがいずれ受け入れなければならないことと分かっていても、いざその時を迎えたとして実際に落ち着いていられる人は、ごくわずかです。

余命宣告の場面もその1つで、多くの人が突然の宣告に当惑し、時にはショックにうちひしがれてしまうこともあるはずです。
将来を悲観して当人が自暴自棄になってしまったり、家族の側もサポートすることが精神的に難しい状況に追い込まれたりするケースは、往々にして存在します。

しかし、いくら医学が進歩したとしても、人間のハッキリとした寿命は誰にも分かりません。
自分がいつか死ぬことを想定し、いざその時を迎えても覚悟を決められるように、準備できることは準備しておかなければなりません。

今回は、余命宣告を受けた場合に、いわゆる「終活」の基本として、自分や家族・身の回りの人のためにしておきたいことをご紹介します。

余命宣告を受けた時点でできること

健康診断後や不調に伴う検査後に、重大な疾患が見つかり余命宣告されたとき、その段階でできることは何なのでしょうか。
想像できることは、余命宣告を受けた段階で、身体はある程度言うことを聞く状況だということです。

よって、理性と体力のあるうちに重大な決断を進めていかなければなりません。

まずは家族・親族に連絡する

検査結果を聞く際に、配偶者が一緒にいるケースは多いと思います。
しかし、できれば夫婦二人の間だけで話をまとめるのではなく、子どもや両親・親族などに連絡しておいた方がよいでしょう。

特に、余命という概念については、懇切丁寧に説明しなければなりません。
医師が余命宣告を行う場合、その人にとって完璧な寿命の残数を算出しているわけではなく、あくまでも過去の患者のデータに基づいて寿命を計算しているに過ぎません。

よって、単純に余命1年と診断されたとしても、1年以上生きられる可能性もあれば、半年で亡くなってしまう可能性もあるのです。

余命宣告を受けた側は、事態の深刻さにどうしても落ち込んでしまいがちです。
しかし、家族や親族はあなたがいない未来を生きなければならない宿命を背負うわけですから、できる限り残り時間のことや将来のことを共有しておくべきです。

現状の余命や、医師と検討した今後の方針などを率直に伝え、自分のいない未来に備えてもらえるよう迅速に連絡しましょう。

医療・介護の方針を決定する

余命宣告を受けた後は、自分がどのような医療を受けようと考えるのか、最期のときはどの場所で迎えたいのかなど、意思をはっきりさせておきましょう。
がん治療を例にとると、保険適用外の治療を受けるかどうかも考慮しなければなりません。

本人の意思はもちろんのこと、経済的な事情も勘案して、治療方針を決めていく必要があります。
延命措置をどうするのか、一時在宅での療養に切り替えるのかなど、最終的に死を迎える状況を想定してプランを検討したいものです。

保険会社に連絡する

保険の種類によっては、先進医療を受けるお金を受け取れる場合があります。
そのため、保険の内容を確認してお金が受け取れるようであれば、手続きを進めていかなければなりません。

契約によっては、余命6ヶ月以内の宣告を受けた際、死亡保険金の一部を生前に受け取ることができる「リビングニーズ特約」に加入している場合があります。
保険屋の言う通りに加入しているような場合は、生命保険の内容をもう一度確認してみましょう。

本格的な終活として行うこと

続いては、周りに極力迷惑をかけることなく、自分の人生を終えるための終活として行うことについてご紹介します。
終活では、自分が死ぬ状況を想定しつつ、自分の終えるべきことを確実に済ませていきます。

主に遺族に対する配慮を想定したものですが、自分自身の死に対する覚悟を決める意味でも、終活にはしっかり向き合いましょう。

財産整理・遺言状の作成

遺される家族のことを考えたとき、やはり最初に問題となるのは財産状況です。
そもそも、自分にはどのような財産があるのかを把握しなければ、相続時に遺族に無駄な手間をかけることになります。

そこで、財産の保有状況について目録を作るところから始め、具体的にどう処分・相続するのかを決めていきます。

財産の種類としてイメージしやすいものは、主に預貯金・有価証券・不動産・保険などが挙げられます。
また、珍しい美術品・骨董品・ヴィンテージカー(車)といった、価値の高い動産も含まれるでしょう。

自分の意識があるうちに、できるだけ整理を速やかに行っておくことが賢明です。
相続でもめやすい資産があるなら、現金化して数字で取り分が見えるようにする工夫も必要です。

自分名義で行っている契約の解除

生活していく上で、自分の名義で契約しているものは数多くあります。
代表的なものとしては不動産や銀行口座が挙げられますが、もっと細かいところなどを見ていく必要があります。

例えば、様々なクレジットカード、携帯電話の契約や各種ポイントにまつわるものやプロバイダ契約など、みかえしてみると相当な数が該当します。

毎月の支払いがあるサービスであれば、生前のうちに名義変更や解約を行っておくと、遺族の手続きが減ります。
また、どうしても生きている間サービスに加入していなければならない場合は、アカウント名・ID・パスワードを家族に伝えるようにしたいものです。

その他、機密性の高いデータなどを保持しているなら、会社や関係各位に連絡を取り、処分を検討すべきです。
死後迷惑をかけることのないよう、細心の注意を払って取り組みましょう。

葬儀の生前準備

歌手の小椋佳さんが、生前葬コンサートを盛大に行ったことは有名です。
ご本人は「葬式無用・戒名不要」と考えているため、そのような形で自分の人生に節目をつけたようです。

自分が生きている間に葬儀を挙げられるなら、遺族にかける負担も最小限に済ませられるかもしれません。
ただ、生前葬は家族の気持ちが追い付かない可能性もあるため、ここでは生きているうちに自分が死んだときの葬儀の準備を整えておくというやり方がおすすめです。

一口に葬儀と言っても数多くの手順があり、代表的なものだけでも下記のようになります。

  • 葬儀会社の選定
  • 会場選び
  • 遺影
  • 招待する親族などの選定
  • 参列者対応
  • 葬儀の形式
  • 費用の算出

これらを遺族が一手に引き受けるのは、精神的にも肉体的にもこたえます。
そこで、生前に葬儀の段取りや希望を家族に伝える時間を作れば、多少なりとも心の準備ができるというものです。

他ならぬ自分の家族のためにも、ディテールを細かく決めておくことをおすすめします。

まだ元気なうちにやっておきたいこと

終活は、葬儀の準備を終えたところで終わりではありません。
他ならぬ自分自身の心にも、ある意味「ケリ」をつける必要があります。

死して後悔することのないよう、自分の希望は最大限成立させられるよう努力したいものです。

身体が動くうちにやりたいことをやる

余命宣告された段階では、まだ比較的体力も残っており、身体の自由がきく状況だと思われます。
このタイミングを逃すことなく、自分がやり残したことがあれば、悔いのないように取り組むことをおすすめします。

余命の間に行ったことのない場所へ旅行したり、高級レストランで好きなものを食べたり、自分が満足のいくことをやってみましょう。
ある末期がんの患者さんは、余命半年と宣告された段階で、自分の車を整備しておよそ3ヶ月の間遊び歩いていたそうです。

結果、その患者さんは1年近く生きましたが、いつでも死ねるように遺言書も残し、身内や友人にもあいさつを全て済ませ、まるで祝福されるかのように亡くなりました。

ここまで極端な結果とはいかなくても、今の自分にできる限りやりたいことを続ければ、いつしか後悔も失われていくことでしょう。

終活ノートをつける

自分の死後、遺産についてどのような形で相続を決定するのかは、主に遺言状を介して遺族に公表されます。
しかし、自分の意識がなくなる前に、終活ノートという形で意思をまとめることも考えておきたいところです。

遺言状では、自分の死後どうするかについては言及できますが、自分が生きているうちに意思の疎通がとれなくなったときは、自分が死ぬまで遺言状は公開されません。

そこで、あらかじめ終活ノートに遺言書には書けないことをまとめておき、家族が悩まないようにするわけです。
具体的には、自分が要介護となった場合に誰が介護担当となるか、老人ホームの指定はどうするかなど、身の振り方を先に書いておきます。

病状が悪化したとき、延命するのかしないのか、自宅にいたいのか病院にいたいのかなども記しておきましょう。

あるいは、家族に対する感謝の気持ちをまとめたり、自分史をまとめたりして、精神状態を整えるためにノートをまとめるのもよいでしょう。
あなたの死後にノートの内容を読んだ家族は、いつもあなたのことを思い返してくれるはずです。

家族との時間、友人との時間を大切にする

人間の死には2種類あると言われています。

  • 肉体の死
  • 誰からも忘れ去られたとき

いわゆる肉体の死と記憶の死といった例で表されています。

世の中の偉人は、今なおその存在が語られています。
それはつまり、現代においても彼ら肉体はなくとも、彼らの存在は失われないまま、死なないまま尊ばれていることを意味します。

あなたが亡き後、家族が永遠にあなたのことを語り継いでくれているかどうかは、残念ながら定かではありません。
しかし、少なくともあなたと同じ時間を過ごした家族や友人は、あなたのことを覚えていてくれるはずです。

あなたもまた、余命が残っている間に大切な家族と一緒にいられたのなら、その思い出を胸に旅立つことができるはずです。
あなたのいちばん近くにいた人たちだからこそ、死ぬときも一緒にいることを心がけたいものですね。

この記事のまとめ

もし自分が余命を宣告されたとき、冷静でいられるかどうか想像すると、多くの人が難しいと考えるのではないでしょうか。
しかし、自分が困ることを一つひとつ解消していくと心が軽くなっていくように、死と向き合うことで不安を取り除いていこうと試みるのが終活です。

将来を悲観しても、何もよいことはありません。
むしろ、余命が分かった段階で、余命が分からない大多数の人に比べて、後悔のない死に方ができると前向きに考えることもできます。

できる限り冷静に、自分の死が周囲に及ぼす影響を計算して、今できること・やりたいことに精一杯取り組んでくださいね。

  • 公開日:2019.08.29
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:終活・準備, 相続・遺言, 介護・保険・医療

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