似ているようで違う遺書と遺言書について。
それぞれの違いや特徴・効力など知っておくべきこと

  • 2022.01.31

終活・準備

遺書と遺言書は、しばしば混同されることがある文書です。
意味合いは似ているものの、文章の自由度や、誰にあてて書いたのかが異なり、区別して覚えておく必要があります。

もし、自分が亡くなった時に備えて遺書を書いているなら、それは法的に何の効力も持たない文章となってしまうかもしれません。
法的効力を持っているのは遺言書の形式ですから、自分の意志を自由に書き記すだけでは、何ら効力を発生しないことに注意が必要です。

この記事では、遺書と遺言書の違いについて、それぞれの違いや特徴・効力などについてまとめています。
現代になって登場した、遺書に似た性質を持つエンディングノートについても解説していますから、各文書の違いを把握する参考にして欲しいと思います。

遺書は、死に向かう人が書き残した文書のこと

遺書を残した著名人は数多く、その内容も書式も自由なものです。

よって、人の心を強く揺さぶることはできても、残念ながら日本の法律で内容が保護されるわけではなく、必ずしも書かれている希望を誰かが叶えてくれるとは限りません。

遺書を書くこと自体に意味がないわけではありませんが、具体的な法的効力を持たない点に注意が必要です。

日本では、死を覚悟した人・自殺者が書き残した文書を遺書と呼ぶ

一般的に、日本での遺書とは、死を近々で覚悟した人・自殺者が書き残した文書のことを言います。
また、死刑執行に処される前、自分の偽らざる気持ちを書き記したものも、遺書として扱われる場合があります。

法的に重視されるのは、例えばいじめを苦にして自殺した少年少女が残した遺書で、誰に何をされたのがなどが明確に書かれていれば、それをもとに裁判が行われたり、加害者が逮捕されたりすることがあります。

不治の病・突発的な事故によって死を覚悟した際にも、遺書を残すケースがあります。

比喩的に、自分がいつ死んでもいいように自分の想いをまとめたものも該当する

遺書には、例えば自分がいつ死んでもいいように、自分が思っていること・考えていることをまとめたものもあります。
文書というよりも書物・書籍といった方が近く、芸能人や科学者・哲学者などが遺書代わりに残すケースがよく見られます。

「自分の作品を世に残す」というよりも、自分がこの世に思い残すことのないよう、文章を書いて書物としてまとめるといったニュアンスが近いかもしれません。

作品の形態は人それぞれで、現代であればブログを使って代理人が執筆者の死について報告するケースもあります。

古くは、辞世の句・死ぬ前のお願い・自己分析などを記していた例も

もう少し古い時代・いわゆる文豪と呼ばれる人たちが生きていた時代には、人の心を打つ様々な遺書・作品が発表されていました。

自らの病と死に向き合い作品を発表し続けてきた俳人・正岡子規は、病牀六尺という随筆を死の二日前まで書き残しており、後世まで「死を写生した」作品として多くの人に読まれています。

第二次世界大戦の時代、死に向かう特攻隊員が家族や国を想い詠んだ辞世の句は、現代でも多くの人の心に突き刺さります。
また、世界的ベストセラーになったアンネの日記は、結果的に遺作となってしまったものの、生きることに悩む多くの人を勇気づけました。

現代にも引き継がれている「ノーベル賞」は、ダイナマイトの発明家であるアルフレッド・ノーベルによって創設され、そのきっかけは彼が残した遺書でした。

このように、遺書には様々な意味合いが含まれており、それは時として法律では相手にならないほどの救いと感動・行動力を人類に与えてくれます。

遺言書は、死に向かう人が自分の財産について分与方法を記した文書のこと

遺書には様々な意味を持たせることができる反面、遺言書は法的にきちんと書き方が決まっています。
また、基本的には遺族が困らないよう自分の財産を分け与える方法を記すのが目的であるため、遺書のような自由度はないものと考えてよいでしょう。

法的効力が発生する点で、遺書と大きな違いがある

遺言書は、民法で遺言として残せる内容が定められており、所定の書式を満たすことで法的効力が発生します。
要するに、遺言書に書かれていることを遺族がきちんと実行するよう、日本の法律がお墨付きを与えている形となっています。

もちろん、遺留分のように配偶者や子供などが一定額を受け取る権利はありますから、必ずしも相続に関するすべてを遺言書通りに行う必要はありません。
ただ、意図的に遺言書を隠したり破棄したりした場合は、その人は相続人としての資格を失いますから、決して形だけの書面ではありません。

書式が決まっていて、どのような内容でも遺言書と認められるわけではない

残念なことに、遺言書の中には法的効力が発生しないものも多いのが現状です。

というのも、自筆証書遺言の場合は遺言者がすべて自筆しているという事情もあり、定められた書式を満たしていないことから、遺言書として認められない事例はよくあることなのです。

自筆証書遺言の場合を例にとると、最低限以下のポイントは押さえておかなければなりません。
もちろん、文章の中身も重要ですから、一度専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

  • パソコンやワープロを使わず、全文を自筆で作成(財産目録は除く)
  • 本人の署名と押印は絶対に必要で、夫婦共同での遺言は無効
  • 作成日を自筆で記載する
  • 訂正がある場合は、所定の訂正方法を守る
  • 遺言書が複数枚にわたる場合は、書類のつなぎ目に契印を押す
  • 作成が完了したら、封筒に入れて封印する

訂正方法については、ただ二重線を引くだけではなく、押印してその横に正しい文字を書きます。
遺言書の末尾には、例えば「20行目4文字削除6文字追加」といったように、どこを何文字修正したのか追記しなければなりません。

また、契印というのは、それらが一式の書類であることを示すための方法で、複数のページにまたがるよう印影を残します。
枚数に応じて押し方が変わってくるため、文章が長くなるようなら注意が必要です。

自分事ではなく、残された家族に向けての文書である

遺言書はその性質上、自分事を記すというよりも、残された家族に向けて残した文書と言えます。
また、内容も具体的にまとめる必要があり、血がつながっていない人物を相続人に指定する場合は、家族に対する心配りも要求されます。

遺言書を作成する場合、遺書よりも守るべきもの・考えるべきことが多いので、それぞれの性質を理解した上で作成しましょう。

「エンディングノート」は遺書?それとも遺言書?

遺書ほど深刻でなく、かといって遺言書のような効力を持たないものに、エンディングノートがあります。

比較的最近になって注目された文書の一つで、遺書とも遺言書とも言えない部分があるものの、家族に自分の意志や想いを伝える方法として、終活などで用いられます。

基本的に法的効力はないので、遺書に近い

エンディングノートは、遺言書のような法的効力を持たない文書であることから、その性質としては遺書に近いでしょう。
ただ、現実的な情報もいくつか書き記すため、単に自分の内面を家族に分かってもらうための文書とは言えません。

例えば、財産目録の代わりに資産に関する情報を記したり、延命治療を希望しない旨を書き記したり、希望する葬儀の形式をまとめたりするのに使います。
もちろん、家族に対する感謝の気持ちを記すのに使っても、まったく問題ありません。

遺書に比べると、前向きに自分の意志を家族に伝える面が強い

もともと、エンディングノートは終活に用いられる要素が強い文書のため、遺書とは死の見つめ方が違います。
どちらかというと、前向きに自分の意志を家族に伝えるため、ノートをまとめる性質が強いものです。

あまり堅苦しくない内容でまとめることもでき、生年月日や生い立ちなど、家族が知らないようなことも書き記してあげると、一つの読み物として楽しんでもらえるかもしれません。

感謝の気持ちを家族それぞれに伝えることで、家族はいつでも自分がノートに記した時の気持ちを共有してくれることでしょう。

相続に関する細かいことは遺言書で明確に記さなければなりませんが、その基本的な方針をエンディングノートに書き記しておくことは問題ありません。
自分の死後、家族を混乱させないためにも、遺言書の収納場所や開示する際の手順などを書き記しておくのもよいでしょう。

書き方・内容は自由

エンディングノートの作成にあたっては、それほど多くのものを必要としません。
極端な話、パソコンで文書を作成し、かんたんに製本してもよいのです。

ただ、市販のエンディングノートを購入すると、自分の書きたいことを書きやすくなります。

市販されているエンディングノートには、自分史を書き記せるもの・医療に関する情報を書き記すのに特化したもの・段階別にまとめる内容を分けられるものなどがあり、自分や家族のニーズに合わせて選べます。

もちろん、書き方や内容は自由ですから、思うままに内容をまとめられます。
ある意味、遺言書を作成する前段階として、エンディングノートをまとめるのも一案です。

この記事のまとめ

遺書と遺言書は、名称こそ似ていますが、実際にはその意味するところ・内容は大きく違います。

どちらも死を覚悟して書いたものではありますが、遺書は自分の内面が強くにじみ出ているのに対し、遺言書は公的な意味合いを持つ文書としての性質が強くなります。

遺言書は、誰もが速やかに書けるものではありませんから、エンディングノートなど分かりやすく情報をまとめられるツールを使って、作成前に自分の気持ちと合わせて情報の整理を試みるのもよい方法です。

家族に向けて用意するのであれば、所定の書式で遺言書を書き、しかるべき場所に保管したことを、エンディングノートで伝えてあげましょう。

  • 公開日:2022.01.31

テーマ:終活・準備

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