最後の準備として行う「終活」について。
独り身の場合で終活をする際のポイントと注意点
終活と聞くと、自分のためというよりは、残された家族のために行うイメージがあります。
しかし、独り身の人にとっては、家族がいる人以上に自らの死を考える機会が大切になってきます。
生きているときは自由気ままでも、死が近づいてくるとともに不安が心に寄り添います。
命の順番を考えたとき、自分のことを支えてくれた親もいなければ、すでに家庭を持つ兄弟姉妹を頼ることも厳しくなります。
まして、一人っ子となった場合は、天涯孤独のまま生涯を終えることもあるのです。
だからこそ、死ぬ前から死に近づく自分の将来を考えておかなければ、思い通りの死を迎えることが難しくなってしまいます。
そこで今回は、独り身で終活をする意味や、終活を進めるためのポイント・注意点をまとめてみました。
誰にとっても他人事ではない、最期のことを考える一助になれば幸いです。
独り身で終活をすることの意味とは
独り身でいるということは、誰にも気兼ねせずに生きていることを意味します。
それなのに終活を検討するのは、他ならぬ自分自身のためです。
以下に、独り身で終活をすることの意味について、主なものをご紹介します。
自分の未来を想定して準備を進められる
よく「人は生まれてくるときも死ぬときも一人だ」という言葉を聞きます。
これは、決して間違いではありませんが、実際のところ社会人は他人との関係性から逃れることができません。
それは、実際に亡くなる際も同様で、老いる過程でどうしても他者の助けを必要とする場面に遭遇するのです。
世話をしてもらう場面が増えていくうちに、やがては自力でできることが限られるようになり、最終的には呼吸さえ自力でできなくなる可能性さえあります。
ここで重要なのは、死にゆくあなたの世話を「誰が」してくれるのか、ということです。
家族がおらず独り身であれば、配偶者・子ども・親類に頼むことは現実的でなく、何らかの形で身の振り方を決めておかなければなりません。
結局のところ、きちんと自分の今後を考えておかなければ、病院をたらい回しにされたり、思うような環境で暮らせなかったりするリスクに遭遇する危険性があるのです。
自分で想定される範囲で、今後必要になるであろう自分の世話を、介護サービス等も含め依頼できるように準備を進めておけば、少なくとも近い将来の不安は少なくなります。
人生を「生ききる」ことをイメージできる
突発的な事故や病気などに遭遇してしまったなら、それは仕方のないことですが、身体が元気ならできることはたくさんあります。
終活を進める中で、当面の生活における不安が消えたなら、あとは自分の人生を自分らしく生きることにエネルギーを注げます。
終活を始めると、結果的に断捨離に近いことを行います。
自分にかけた高すぎる保険料の解約や、暮らしやすい住まいを選ぶことなど、自分の周りを最適化すべく動くようになります。
その過程で、残りの人生をしっかり生き抜くには、どのようなことが大切なのかをイメージできます。
他の誰でもない、自分だけの生き方を、自分でプロデュースできるのです。
他人に迷惑をかけない死に方を選べる
終活を始めることは、自分だけでなく、自分以外の不特定多数に与える迷惑を最小限に抑えることにもつながります。
老人や単身世帯の、ワンルームマンション等での孤独死が問題になっていますが、それを防ぐために老人ホームへの入居を決めたり、介護訪問サービスなどに加入したりと、前向きな選択ができます。
保険の意味で準備をしておくと、いざという時に世話をしてくれる人たちの対応がスムーズです。
逆に、ある日いきなり脳や身体に障害が残るようなことがあれば、その後自分の身の振り方を決めてくれる人は周りにいない可能性があります。
自分の死や不慮の事故による後遺症を想定して、どこで死ぬのか・どこに世話をお願いするのかを考えておくことは、とても大切なことなのです。
独り身の終活を効率よく進めるためのポイント
終活は、あらかじめゴールを決めておかなければ、やることがまとまらず時間だけが過ぎていきます。
もちろん、自分の心臓が止まるまでは人生は続いていきますから、あまりに四角四面に決めても状況は刻一刻と変化していきます。
そこで、独り身の終活を効率よく進めるためには、具体的にどのようなことに気を配るべきなのか、ポイントをいくつかご紹介します。
将来的に一人でいて「何に困るのか」を考えておく
まずは、独身のまま暮らしを続けていると、将来的に何に困るのかを想定しておきましょう。
自分の今後の世話をしてくれる人が見つかるかどうかも大切ですが、やはり終活において不安になるのは「葬儀」の問題です。
身寄りがいなければ、自分が亡くなってから葬儀を誰かに頼ることができませんから、事前に葬儀社などに依頼することとなります。
ただ、お墓や死後の世界に興味がない人であれば、各自治体による直葬の後、公営の共同墓に骨壺が埋められる形でも不安はないでしょう。
あるいは、病気や脳の問題により、不自由な状態で長生きしてしまうことに不安を感じる人もいるはずです。
そのような場合は、こまめに体調管理を行いつつ、万一に備えて終の棲家・かかりつけの病院を決めておくなどの配慮が必要です。
身の回りに残すものを最小限にして、暮らしも最小限を目指す
人は、死んでしまったら、現世での財産を持ち帰ることはできません。
そのため、できるだけ身の回りを身軽にして、やがて来る死に備えたいと考える人は多いようです。
実際のところ、単身世帯が必要とするものは、それほど多くありません。
衣・食・住の全てにおいて、一人という単位が基本となりますから、あまりに多くのものを抱え込んでいても、かえって処分が追い付かなくなるリスクがあります。
年齢とともに食も細くなっていきますから、若い時分に比べて食費もかかりません。
一人で暮らすわけですから、広い部屋も要りません。
体形が大きく変わらないのであれば、服の買い替えもそこまで頻繁にはなりません。
加齢に伴う生活の変化に合わせて、自分にとって本当に必要なもの・不要なものを見極めることが求められます。
終活を始めるのなら、常に自分の環境の変化を想定し、有事に備えて荷物を減らしておくことが大切です。
エンディングノートをまとめる
捨てるもの・残すものをまとめようにも、何から始めてよいのか戸惑う人もいることでしょう。
考えやイメージを整理できないなら、エンディングノートをまとめるというのも一手です。
エンディングノートというのは、自分が死ぬまでの間に、自分自身・遺族に向けて自らの情報を書き残すノートのことです。
用途は様々で、自分史を書きつづるために使う人もいれば、資産に関する情報をまとめるために使う人もいます。
独り身の場合、家族に書き残すというよりは、自分の人生を振り返る目的で書く人が多いものと推察されます。
しかし、細々とした情報を取りまとめておけば、仮に誰かが葬儀を担当することになっても手間が省けます。
生前お世話になった人に財産を与えたい意向があるなら、それを遺言書と一緒に保管しておけば、財産の全てが国に帰属することはありません。
自分の意思をしっかり伝えるためにも、元気なうちに書き記しておくことをおすすめします。
独り身で終活する際の注意点
家族がいる場合と違い、たった一人で「死」というものについて考えていると、多くの人は気が滅入ってしまうはずです。
精神的な負荷を自分にかけないためにも、独り身で終活する際は、できるだけ「他者」の存在を感じながら進めていきましょう。
家族や友人がいるなら、死について一緒に考えてみる
独り身とはいえ、まだ会社・組織に属しているなら、全く友人・知人がいない状況ではないはずです。
もし、終活について話ができる人が近くにいるなら、終活を意識した段階で、積極的にコミュニケーションをとることをおすすめします。
自分の意思をノート・遺言書にまとめるだけでは、最悪誰の目にも触れない可能性があります。
身体が動くうちに、いろいろなことを相談できる人を作っておくことをおすすめします。
財産がある場合、何もしなければ誰が法定相続人になるのかを知っておく
一口に独り身と言っても、全くの天涯孤独である場合もあれば、単に単身世帯というだけで親族は存在しているというケースもあります。
よって、現時点で自分が亡くなった場合に、自分の遺産は誰が相続することになるのか、一度チェックしてみましょう。
もっとも可能性が高いのは、父母・祖父母がいない場合は兄弟姉妹です。
兄弟姉妹がすでに亡くなったのなら、甥・姪っ子が相続の対象となります。
また、特定の誰かに相続を検討しているなら、その意向を遺言書に書いておく必要もあります。
自分の周囲の人間関係・親族関係を洗い出し、最善の選択肢を選びたいところです。
自分の死について深刻に考えすぎない
死について考えることは、時として不安を不用意にあおる結果につながります。
特に、夜遅く一人で考え込んでいると、死を身近に感じて怖くなってしまうという話はよく聞かれます。
死を考えることがストレスになってうつを患い、最悪「悩むくらいなら自分で人生を終える」などと、とんでもない方向に思考が進んでしまう可能性もあります。
配偶者など、同居している家族がいなければなおさらです。
死を迎えるにあたって状況を整理することと、自分の死について延々と考えることは、似て非なるものです。
あくまでも、自分に何かあった時のことを考えるにとどめ、残りの人生をいかに楽しむかにシフトすることが大切です。
この記事のまとめ
独り身という立場で終活を進める際は、意識して自分に関係する他者の存在を気に掛ける必要があります。
死に向けての覚悟は決まっても、自分が死んだ後で誰に迷惑をかけ、誰に財産が届くことになるのか、全く気にしないまま死を迎える可能性もあります。
せっかく自分がいつ死んでもいいように準備を進めたとしても、葬儀担当者や相続人などが、肝心な情報を見つけられなければ意味がありません。
自分がこの世を離れたとき、残された人に不安を与えないよう準備することが、巡り巡って自分に返ってくることを忘れないようにしましょう。