自分の事は自分で決めたい人向けの「生前戒名」。
生前戒名の基礎や通常の戒名との違いなどについて

多くの日本人にとって、戒名は自分が死んだ時にお坊さんが付けるもの、という印象があります。
しかし、仏教徒の目線で考えると、戒名は本来、修行を開始する生前に付けるものです。

現代人の中には、仏教徒の本来の意味合いを知ってか知らずか、生前に戒名を付ける人が増えてきているようです。
今回は、現代における生前戒名の概要や一般的な戒名との違い、生前戒名を付けるメリット・デメリットについてご紹介します。

生前戒名と戒名の違いとは?

本来、生前戒名も戒名も、同じ戒名であることに変わりはありません。
ただ、生前に菩提寺などから命名してもらうという点で、一般的に広く知られている戒名と異なる点がいくつか存在します。

以下に、生前戒名と一般的な戒名の違いについてご紹介します。

ある意味、戒名の本来の形が「生前戒名」

戒名は、故人が死後の暮らしに困らないように付ける「あの世の名前」として理解している人が多いでしょう。
しかし、戒名の本来の意味は「これから自分は仏教に帰依します」というもので、これから修行を始める(戒律を守る)僧侶に向けて付けられます。

僧侶ではない人に戒名を付けることは、本来であれば馴染まないのかもしれません。
しかし、死後に向かう世界は仏教における「極楽浄土」ですから、その地に応じた名前が必要であるものと考えるのは自然なことです。

この戒名を、僧侶と同じタイミングでいただこうとするのが生前戒名であり、在家信者は修行こそ必要としないものの、生前に菩提寺などにお願い・お布施をすることで生前戒名を付けてもらうことができます。

終活が活発化してきたこともあり、その一環としてあらかじめ行おうと考える人が増えてきているようです。

日本で広まっている「戒名」の意味合い

日本では、戒名と聞くとどうしても抹香臭いイメージがあるように思いますが、いざ亡くなった際、どの宗教に面倒を見てもらうのかを考えると、やはり多くの人が仏教を連想することでしょう。

それは間違いではなく、エンディング・データバンクの統計によると、実に77.5%の人が仏式の葬儀を選んでいるという結果が出ています。

戒名も、さながら当たり前のように葬儀のプログラムに組み込まれており、戒名を付けないという選択肢は原則として存在しません。
また、戒名の内容によって金額も増減し、はた目には分からないランクも厳然として存在しています。

ただ、希望する戒名を授けてもらえるかどうかは菩提寺の都合であり、必ずしもお布施の金額に応じた名前になるとは限りません。
そのような中、事前に自分の希望に近い戒名を付けることを目的として、生前戒名を考える人は増えているようです。

人生のゴールが見えてきた人向け

一度生前戒名を付けてしまうと、めったなことでは別の名前にすることはできません。
そのため、例えば30~40代のような若い時期に生前戒名を付けた結果、後悔の残ることになりかねません。

よって、生前戒名という選択肢を選ぶのであれば、必然的に「ある程度人生のゴールが見えてきてから」になるでしょう。
ライフプランを考えて、そろそろ人生をいつ終えるのかを考えなければならない、という時期に、生前戒名の準備を進めるのがベターです。

生前戒名を付けるメリット

続いては、生前戒名を付ける際のメリットについてご説明します。
予算面・自由度の面に加えて、あまり気にする人は少ないかもしれませんが、功徳の面でもプラスに働くという特徴があるようです。

お布施が安い

生前戒名は、一般的な戒名を決めるケースと比べて、菩提寺などに包むお布施が相対的に安くなるという利点があります。
菩提寺側の心理としては、檀家が存命のうちにまとまったお布施が入る点・高い信仰心を評価する点などが、お布施の金額に反映されているものと推察されます。

実際に生前戒名を付けた檀家の事例が少ないこともあってか、全国的な相場を確認するのは難しいものの、位の低いものなら数万円単位からOKが出ることもあるようです。

ただ、誰でも平等に希望する戒名がもらえるとは限らず、やはりここでも菩提寺との信頼関係は大切になってくるでしょう。

ちなみに、インターネット上で戒名の生前予約にかかるお布施を公表しているお寺もあり、金額が分かりやすくなっている好例もあります。
半額以下になっているケースもありますから、死後面倒をかけないようにする意味でも、戒名をしっかり付けておきたいと考える人にはおすすめです。

戒名の自由度が高い

戒名は、仏門に帰依している場合を除き、全て自分で構成することはできません。
一口に戒名と言っても、自分の位牌に刻まれる戒名は、合計で9~10文字にもなる長いものです。

院号・道号・戒名・位号と、基本的な要素にも、それぞれ意味が設けられています。
それを理解しないまま、いい加減に戒名を付けたとしても、仏教観にそぐわないものとして住職に却下されるでしょう。

とはいえ、住職に「どうしてもこの文字を入れたい」という希望を伝えれば、おそらくはそのリクエストに応えてくれるでしょう。
その点は、死後に付ける戒名と比較して、自由度が高いものと言えます。

一般的に、葬儀の際に菩提寺からいただく戒名は、故人の名前を一文字とって戒名に付けます。
しかし、生前位牌の場合、自分が好きな名前を入れることも不可能ではありません。

詳しくは要相談となりますが、死後すぐに名付ける場合に比べて、選択肢の幅は広い傾向にあります。
細かい話をすれば、予算に直結する院号・位号に関しても、事前相談することで希望を叶えられるかもしれません。

仏教徒であれば功徳を積む意味合いもある

現代人のイメージでは最近に思えるかもしれませんが、そもそも生前に戒名を付ける習慣自体は、決して珍しいことではありませんでした。
特に、生前に自らを供養するという文化は「逆修(げきしゅう)」と呼ばれ、死後にその縁者が供養するのに比べて7倍の功徳があると言われているのです。

仮説レベルで言えば、奈良県のような歴史のある地域では「逆修仏」とされる仏が岩肌に彫られている例が見られ、かなり古くから功徳を積む意味合いで逆修は習慣化していたものと推察されます。
中国では逆修に似た寿陵(じゅりょう)という考え方があり、生前にお墓を建てるようなことをすれば、かえって長生きすると言われるほどです。

生きているうちに、自らの余命を悟り死を意識することで、かえって限りある生を意味のあるものにしようと、無意識のうちに心掛けるのかもしれません。
いずれにせよ、お坊さんは生前のうちに戒名をもらうわけですから、それを考えると尊いことのように思えます。

生前戒名を付けるデメリット・注意点

続いては、生前戒名を付ける際のデメリット・注意点についてです。
生前のうちに戒名を付けるとはいえ、何度でも好き勝手に変えてよいものではなく、一度もらった名前を大事にすることが求められます。

また、現代ではマイナーな選択肢であることから、周囲の理解を求める必要がある点に注意しましょう。

付けてもらう場合は相手を選ぶ

生前戒名を付けてくれるサービスは、菩提寺に依頼するだけでなく、ネットを介して戒名だけをもらうという選択肢もあります。
この場合、付けてもらう際には相手をよくよく選ぶことが大切です。

生前戒名を予算の面から選ぶ場合、死後に戒名を付けるよりも安いという理由だけでなく、もっと他に安く戒名を付ける方法も同時に探しているはずです。
そのような中で、ただただ安さだけを追い求めれば、仮に菩提寺との契約関係がすでに存在しているならば、菩提寺との関係に傷が付きます。

菩提寺によっては、住職が付けた戒名でなければ、供養・納骨を受け付けないところもあります。
お金の面でネットを選ぶ場合でも、できればその前に菩提寺に相談した方が、今後の関係を壊さずに、ある程度予算を考慮して戒名を授けてもらえるはずです。

家族・親族への連絡は欠かさずに

生前戒名という習慣は、大多数の家族・親族にとって「意味が分からない」行為です。

懇切丁寧に事情を説明すれば、きっと分かってくれると思いますが、いきなり生前戒名を付けたと言って高額の支出を認めさせようとすれば、おそらく家族・親族のほとんどが宗教的な臭いを感じて疑いの目を向けます。

結果的に値段が安くなる・自分たちで好きな戒名を決められるなど、歴史的背景も含めつつメリットを説明することが大切です。
説明がしっかりなされていれば、おそらくメリットの方が大きいことに気付くはずですから、言葉を出し惜しみせず説明しましょう。

位牌は独自のルールを理解しておくこと

生前戒名を付ける場合、生前位牌も同時に作成する場合があります。
このとき、一般的な位牌とは文字の色付けに関するルールが違うため、忘れずに頭の片隅に入れておきましょう。

まず、戒名部分の2文字は、朱色で入れることになっています。
還暦の赤いちゃんちゃんこに代表されるように、朱色は不老長寿の象徴となっている色で、まだ生存している自分の寿命を延ばす意味合いで選びます。

また、没年齢・没生年月日は未定ですから、こちらも彫らずにそのままです。

やがて故人となったら、遺族が位牌の朱色の文字を金文字にします。
正確には、仏壇店などに依頼する形になるでしょうが、基本的には生前位牌を依頼した業者にお願いするのが無難です。

この記事のまとめ

生前戒名は、亡くなった後で戒名を付ける場合に比べて、予算・自由度・功徳の面でメリットの大きい選択肢です。
古来から縁起のよい供養の方法として知られており、今後日本でもより広まるものと予想されます。

しかし、まだまだ現代ではマイナーな選択肢ですから、なぜ生前戒名を選ぶのかを、家族や親族にはきちんと説明しておかなければなりません。
また、ネット上の安い選択肢ばかりにこだわらず、菩提寺との関係があるのなら、まずはそちらに相談するようにして、筋を通しましょう。

  • 公開日:2020.01.31
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:生前整理・遺品整理, 法事・法要, 仏壇・仏具

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