お盆のお仏壇の御供えの基本とマナーについて。
御供えを供える時や下げるタイミングと注意点など
お盆の時期は、多くの家庭で家族が集まり、昔話に花が咲きます。
親戚や友人など、人をもてなす機会は珍しくないため、食べ物やお菓子もたくさん並びます。
そこで気になるのが、ご先祖様にどのようなものを御供えするのか、という点です。
いつもと同じご飯とお線香だけでは、ご先祖様に捧げるには足りないかもしれません。
また、御供えしたものは、いつ・誰が・どのように食べることが許されているのでしょうか。
今回は、お盆の御供えに関する基本的なマナーについて、供え時・下げるタイミングなどの注意点に触れつつご紹介します。
お仏壇に御供えする際の基本・マナーについて
まずは、お仏壇に何かを御供えする際の、基本的なマナーについて考えてみましょう。
お盆の時期に御供えしなければならないもの・お盆でしか見かけないものに触れつつ、各種取り揃えるものや注意点などをご紹介します。
「五供(ごく)」という概念を知ろう
ほぼ各宗派共通の考え方として、御仏やご先祖様・故人に御供えするものを、仏教では「五供(ごく)」としてまとめています。
その名の通り5種類の御供え物が存在し、それぞれに意味があります。
お香
お線香をたくのは、仏様・ご先祖様など、すでに肉体のない存在は香りを食べると言われているからです。
また、煙は現世と浄土とをつなぐ役割を果たすとも言われ、他の御供えをした後で線香に火をつけます。
各宗派・お寺によって、線香のあげ方が若干異なるため、事前にお寺の住職などに確認しておきましょう。
ただし、基本的には普段のお勤めと同じような形で構いません。
お花
どのお仏壇にも仏花を飾りますが、大抵の場合、左右両脇に仏花を生けるための花立があります。
地域によっては、お仏壇の前・庭先・玄関先などに「盆棚」という祭壇を設けます。
花の種類としては、一般的な仏花として白菊などが人気です。
しかし、地域でその時期にとれる花を選ぶこともあります。
また、選ぶ際のタブーもいくつかあり、代表的なものは「本数・トゲの有無・色」などです。
仏花は、同じだけの本数が揃った花束を1対用意するのが基本となっていて、偶数にしてしまうと「割り切れる」という意味合いになり、縁起が悪いとされています。
トゲがあって美しい花と言えばバラですが、こちらはトゲだけでなく香りも強いため、手を傷つけたり部屋に香りがこもったりして、お仏壇に飾るにはふさわしくありません。
初盆の場合は、花の色を全て白で統一するところも見られます。
交換のタイミングは枯れてからですが、水は毎日取り換えましょう。
灯明(とうみょう)
ロウソク・灯籠など、お仏壇に光を灯すものを言います。
仏教において、光は智慧の象徴であり、闇を照らし迷いをなくすために用いられます。
ロウソクは、他の御供え物を御供えした後、線香に火をつける際に火を灯します。
また、現代では火事などの原因になるため、お祈りを終えた後、ロウソク消しなどで火を消します。
この時、注意点としては火を消す際に「口で吹き消す」ことはマナー違反という事を覚えておきましょう。
本来、お盆の時期は明かりを絶やさないことが望ましいため、可能であればLED製の照明などを用意して明かりを灯しておきましょう。
浄水(じょうすい)
毎日、新鮮なお水を御供えすることで、死者の喉を潤すという意味があります。
また、透き通った水は浄土の象徴とされ、一部宗派を除いてはお水を絶やさず捧げます。
丁寧に供養するなら、御供えの水はお仏壇に祈りを捧げるタイミングで都度交換します。
水の種類については水道水でよく、特段湧き水・浄水器などにこだわる必要はありません。
飲食(おんじき)
家族の食事と同じおかず・炊き立てのご飯を、精霊棚(しょうりょうだな)という、お盆のために作る棚に用意します。
朝昼晩に供え、本来は精進料理を出すのが習わしでした。
これを「霊供膳(りょうぐぜん)」と言い、現代では故人の好きなものを出しても構いません。
また、お寺や地域によって、献立が厳密に決まっているところもあります。
「精霊棚(しょうりょうだな)」を作って御供えしよう
お盆の時期は、ご先祖様や故人の魂をお迎えするため、精霊棚と呼ばれるお盆専用の棚を用意します。
盆棚と呼ばれることもあり、かつては多くの家庭で毎年用意していましたが、現代では初盆に限るケースが多いようです。
精霊棚は、お仏壇の前に小机・台などを設置し、ゴザなどを敷いて簡易的に棚を作ります。
古くからある作り方を模したものも、お店や通販で購入できるようです。
普段よりもスペースを使えるため、果物やお菓子をたくさん御供えできます。
また、キュウリの馬とナスの牛も飾りますが、これは昔から言い伝えられている「ご先祖様の乗り物」です。
馬・牛が選ばれた理由については、行きは馬の背に乗って早くご先祖様がいらっしゃるように、帰りは牛の背でゆっくりこの世を離れられるように、という説が広く知られています。
より丁寧に供養するなら、無縁仏となったご先祖様や、その他の霊の出入りに対応するため、ナスを使った「水の子」と呼ばれる御供え物を作ります。
水の子は、ナスをさいの目に刻み器に入れ、そこに洗米を混ぜて水を満たしたものです。
餓鬼となった霊は、食べ物が目の前で燃えてしまうため、それを防ぐために用意されたものと考えられます。
お墓に御供えする際の基本・マナーについて
次に、お墓参りで御供えをする際の、基本的なマナーについてご紹介します。
考え方としては、お仏壇と同様「ご先祖様・故人の魂」のことを考えたものを御供えするのが基本ではあるものの、家族など現世の人が処理できないものは御供えすべきではありません。
故人の好みとご先祖様への礼儀を考えよう
お墓参りの御供え物は、良くも悪くも定番化しているものが多く見られます。
お花なら、スーパー・ホームセンターなどで仏花がまとまっていますし、果物ならフルーツの盛り合わせ・お菓子なら盆菓子の盛り合わせなどを見かけます。
一見、そのような出来合いのものを選ぶのは、タブーを冒すこともなく無難に感じられます。
しかし、本当にご先祖様や故人が好んで食べていたのかどうか、一度考え直す必要があるでしょう。
生前果物が嫌いだった人に、スイカ・桃などを御供えしても、おそらく当惑するだけです。
誰かに対する捧げものであることを自覚し、四角四面に考えることは避けたいものです。
また、仮に故人が好きだったからと言って、好みの品ばかりで御供え物を準備するのは、後々処理に困る可能性があります。
故人がタバコ・酒好きだったとして、それをそのまま御供えしても、結局家族・親族は吸わない・飲まないなら意味がありません。
品を御供えした後、御供え物は仲良くみんなでいただくものです。
誰かが食べられない・楽しめないものを御供えすることは控えましょう。
御供えすべきでないものを押さえておこう
納骨堂などに遺骨が安置されているケースを除き、お墓は屋外にあります。
また、宗教にもよりますが、仏教の場合に御供えすべきでないものもあり、お墓参りにおける御供えのタブーを知っておかなければなりません。
まず、故人が特に好きだった場合を除いて、五辛(ごしん)と呼ばれる精力のつく野菜や、それを使った料理は御供えしない方が賢明です。
具体的には、ニラ・ネギ・ラッキョウ・ニンニク・ショウガ(サンショウ)などが該当し、知らず知らずのうちに多くの人が食べているため、注意したいところです。
また、肉や魚も御供えにはNGです。
殺生をイメージさせるだけでなく、暑さで傷みやすいという理由もあります。
なお、花の種類はお仏壇と同じで、トゲのないもの・匂いの強くないものを選べば問題ありません。
あまりに明るい色の花や、ヒガンバナなどのように毒を持つものは避けましょう。
御供え物を下げるタイミング・注意点について
御供え物に関する、基本的な考え方・マナーは分かりましたが、お盆の時期は御供え物を下げるタイミングが分からないことも珍しくありません。
日常のお勤めと同じタイミングで考えてもよいのですが、五供のような決まりごとが少ないお菓子・果物などは、いつまでも取っておくうちに悪くなってしまうケースが見られます。
以下に、お盆の御供え物を下げるタイミングや注意点について、主なものをご紹介します。
日持ちしないものを、いつまでも置いておかないこと
御供え物のお菓子と一口に言っても、数多くの種類があります。
お盆に御供えするなら和菓子が一般的ですが、供物の中にはゼリーのように日持ちするものもあります。
注意したいのは、果物やケーキ・まんじゅうなどの生ものです。
保存状態が悪いと、すぐに食べなければ傷んでしまうため、できるだけ早めに分け合って食べるようにしましょう。
長持ちするお菓子を用意するなら、落雁などがおすすめです。
御供え物はお裾分けする
御供え物にはたくさんの種類があり、お墓に足を運んでくれた人から、果物やお菓子の他、乾麺や海苔などをいただくこともあります。
これらを自宅に置いておいても、量が多数あれば使い切るのも大変ですから、色々なところにお裾分けするのがよいでしょう。
職場や友達の家に持って行けば、受け取った人も嬉しいはずですから、コミュニケーションの一環として手渡せば問題ありません。
ただし、すでにお仏壇・お墓に御供えしたものをお裾分けする際は、人によっては不快に感じる場合もあることを覚えておきましょう。
ゴミとして捨てるのはアリ?
現代で時々聞かれる話ですが、御供え物は仏様・ご先祖様などがいただいたものだから、人間は食べずにゴミとして捨てるという意見があります。
これは大きな誤りで、そもそも御供え物は捨てるためのものではなく、お参りに集まった人たちが食べることを想定して用意するものです。
よって、どうしても食べきれずに残してしまい、そのまま傷んでしまったものを除いては、きちんと食べ切るのが基本です。
御供え物をどうしても捨ててしまう場合でも、ご先祖様に感謝の気持ちを伝えることを忘れないようにしましょう。
この記事のまとめ
御供え物を用意する際は、その御供え物を捧げる方々のことだけでなく、自分たちがどう処理するかを意識することが大切です。
故人をしのぶあまり、誰も食べないようなものばかりを集めたとしても、その空間にいる人たちは楽しめないはずです。
御供えする際には、気持ちこそご先祖様・故人の方を向くべきですが、現世に生きる私たちの生活を考慮することも大切です。
13~16日の4日間、大切な時間を過ごすからこそ、常識を見失わないよう心掛けたいものですね。