喪中の新年の正しい挨拶と注意点について。
年賀状が届いた時は返すべきか返さないべきか?

  • 2020.06.14

法事・法要

新年の挨拶は、何事もなければ「明けましておめでとうございます」以外の言葉が口から出ることはないでしょう。
しかし、喪中となると話は別で、故人に配慮した表現を工夫しなければなりません。

現代においては、周囲もそこまで喪中の習慣について厳しくとがめる場面は少ないものと思いますが、やはり年配の人などは気にすることも多く、できるだけ失礼のないように振る舞いたいところです。

この記事では、主に新年の挨拶に関する基礎知識と注意点・年賀状の対応について、喪中の状況で取るべき対応をご紹介します。

喪中時における、新年の正しい挨拶の仕方

故人を亡くし喪中を迎えている家族にとって、新年はおめでたいものではありません。
よって、周囲の謹賀新年ムードに対して、お祝いのニュアンスが感じられるような言葉で回答するのは避けたいところです。

「おめでとう」という言葉を避けて挨拶する

新年の挨拶は、至る所で行われます。
当然、多くの人は「明けましておめでとうございます」の挨拶から始まりますから、自分が喪中である場合、そのことを悟らせるべきか、それとも悟られないようにすべきか、色々と気を回す場面に遭遇することでしょう。

まず、自分自身が喪中となった場合、新年の挨拶を必要とする場面では「おめでとう」という言葉を使わないようにするのが礼儀です。
返答する場合も「今年もよろしくお願い致します」など、祝いの言葉を口に出さず回答するのがマナーです。

仕事の関係者に対しては、とりあえず自分の立場は置いておき、会社に属する社員の立場で例年通りの挨拶を行います。
会社にとっては、今年も無事に新年を迎えられたわけですから、それ自体はおめでたいことだからです。

喪中は、あくまでもプライベートな話であって、公の場に無理やり持ち込むものではありません。
公私混同を控えて対応しましょう。

初詣や神社へのお参りはしない

新年は、家族・親戚・友人等の挨拶ばかりが必要となるわけではありません。
例えば、初詣・折を見ての神社へのお参りなども、家々で重要な行事の一つに数えられます。

お参りに関しては、一般的に喪中の時期は避けるべきと考えられています。
しかし、これは厳密に言うと若干異なり、喪中の中でも忌中(四十九日を過ぎるまで)は特に控えるべきとされているに過ぎません。

これは、神社が死という「穢れ」を嫌うことから生まれた風習で、穢れというのは「気枯れ」にもつながり、故人の死で気持ちが枯れている状況が神社から敬遠されています。

よって、神社へのお参りに関しては、忌中を過ぎてから行うのが正解です。

ちなみに、忌中に願掛けなどを行いたい場合は、お寺に足を運ぶとよいでしょう。
お寺で参拝することは全く問題ありませんから、初詣も差し支えありません。

結婚など祝事の報告も避ける

たまたま結婚式の予定を入れた年に家族が亡くなった場合、次の年は喪中となります。

このとき、本来なら年賀状で結婚報告を諸々に済ませようと考えていた人は、年賀状が出せなくなるため、せめて官製ハガキで結婚の報告だけでも行おうと考えるかもしれません。

こちらも、基本的には祝い事に該当するため、結婚報告の内容のみで送付することは避けるべきです。
ただし、寒中見舞い・暑中見舞いといった形で、季節の挨拶が主になり、その中で結婚を報告するにとどめる場合は、問題ないものと判断されます。

ハガキの種類については、市販されているものを使えば問題ありません。
できるだけシンプルに、明る過ぎないデザインを選びましょう。

ちなみに、今年が喪中であることを知らせる「喪中ハガキ」の中で、自らの結婚について報告するのはNGです。
スペースを考えても、限られた枠内に書き綴るには限界がありますから、面倒でも寒中・暑中見舞いとは別個に送りましょう。

喪中時における、新年の挨拶で気を付けたいこと

喪中の折、多くの人と新年の挨拶を行う中では、何かと気を遣う場面が多いかもしれません。

特に、自分が喪中であることを知らない人と会話するケース、相手が喪中であることを知らずに話しかけるケースなどは、ちょっとした行き違いが円滑なコミュニケーションを阻害してしまうおそれがあります。

続いては、喪中時における新年の挨拶において、自分が喪中の場合・相手が喪中かもしれない場合という2つの立場から、コミュニケーション上で気を付けたいことをいくつかご紹介します。

大抵の場合、あなたが喪中かどうかを知らない人が大半

一般的な会話の場面を想像すると、大抵の場合、相手はあなたが喪中かどうかを知らないケースがほとんどですし、わざわざ確認もしません。
よって、喪中である受け手自身が、どうやってその場を難なくやり過ごすかを考えなければなりません。

プライベートで友達・知人の家を訪問する場合、年賀状のやり取りがあって、自分が喪中であることを知っているなら、特段気にしなくても向こうが気を遣ってくれるでしょう。

しかし、現代では年賀状のやり取りをしない人も増えてきているため、事情を知らない人が何の気なしに「明けましておめでとうございます」と言葉をかけてくる場面は、容易に想像できます。

まずは、この点を理解した上で、相手に対して不快感・不謹慎という気持ちを持たないよう、気持ちを切り替える準備が必要です。
些細な表現はあまり気にせず、会話を進めようという気持ちが大切です。

あまり過敏になる必要はない

相手が喪中かもしれない場合を考えてみると、考えれば考えるほど判断に迷う状況が多く、戸惑うものと思います。
交際を始めて日が浅い相手だと、出会ったタイミングによっては、相手の状況が全く分からないケースに遭遇することもあるからです。

まだ相手と距離がある場合、仮に間違えた(相手が喪中であることを知らなかった)としても、それだけで失礼だと判断されることはありませんから、指摘されたら素直に謝ればよいだけの話です。

もっとも、指摘する側も「すみません。実は私今年喪中で……」とわざわざ言う事は少ないでしょうから、あまりタブーを冒すことに過敏になる必要はありません。

どちらかというと重要なのは、相手方が喪中であることを「自分が知っている」場合かもしれません。

意識しなければ、毎年の習慣で「(明けまして)おめでとうございます」という言葉がつい口から出てしまうため、事前に相手の立場を頭・心に留める時間を作った方がよいでしょう。

そもそも、新年の挨拶に「おめでとうございます」というキーワードを入れる必要などなく、他にも

  • 昨年はお世話になりました
  • 寒くなりましたが体調はいかがですか

など、使い古されていて相手に好感を与える表現は数多くあります。
新年だからと固くならず、素直に感謝・敬意を伝えるよう心掛けましょう。

ビジネスシーンではニュアンスを読み取る

仕事上の関係では、あくまでも法人・事業主同士のやり取りになりますので、人格が違うものと考えて対応します。
つまり、新年の挨拶や訪問は、通常通り・例年通り行うのが原則です。

社長・重役が亡くなった場合は、会社の方針に従い喪中ハガキを送ることもありますが、万一それができなければ寒中見舞いで対応しましょう。

自分がこれから訪問する会社の社長・重役が喪中だと知っているならば、あえて祝い事を唱えてリスクを負う必要はありませんから、無難な「昨年は大変お世話になりました」といった挨拶で済ませた方が賢明です。

喪中で悩む年賀状のやり取り

日本では広く常識となっていますが、喪中の時期は年賀ハガキを出しません。
その代わりに出すのが「喪中ハガキ」で、年賀状とはややルール・書き方が違います。

出す時期については、年賀状に先駆ける形になりますから、その点にも注意が必要です。

まず「受け取る前に送る」ことを心がける

普段から年賀状のやり取りをしている人に対しては、その年賀状を受け取る前に喪中ハガキを送ります。
せっかく年賀状を受け取っても、通常通りに返信ができないため、事前にその点につき断りを入れるためです。

喪中ハガキは、通常の官製ハガキで出せば問題ありませんし、形式も比較的自由です。

一般的な文例としては、以下のような例が挙げられます。
なお、句読点を書き入れないのは、他の葬儀関連のハガキと同様です。

例文

喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます

本年○月に母 ○○が九十五歳にて永眠いたしました
永年にわたる御厚誼に深謝致しますと共に
明年も変わらぬ御交誼の程お願い申し上げます

令和○○年 ○○月 ○○日

住所:東京都台東区○○○-○○
電話:090-XXXX-XXXX
氏名:鈴木 一郎

最低限書くべき内容として、挨拶文・喪中の説明・結びの挨拶を入れておけば失礼にはあたりません。
投函の時期については、多くの家が年賀状を書き出す前の「12月初旬」が目安になるでしょう。

届いた場合は「寒中見舞い」で対応

前年から新しくお付き合いが始まった人の中には、おそらくあなたの家が喪中であることを知らない人もいるはずです。
そのため、良かれと思って年賀状が送られてくるケースもあるでしょう。

このような場合、喪中だからといって何の回答もないままにしておくと、まるで礼儀知らずと一蹴して無視したようなニュアンスを相手に与えてしまうおそれがあります。
そのため、寒中見舞いとしてお返事を出すのが丁寧です。

挨拶の文言としては「寒中お見舞い申し上げます ご丁寧な年頭のご挨拶をいただきありがとうございました」と伝え、その次に亡くなった家族の情報と、結びの挨拶を加えます。

東日本大震災で広まった「年始状」

喪中の状況下でも、近況報告を手紙で行うために広まったハガキの種類もあります。
年始状と呼ばれるもので、東日本大震災の状況下で広まったと言われています。

特徴としては、新年の挨拶である「明けましておめでとうございます」のような賀詞を使わず、挨拶のみで内容をまとめた点にあります。
文例としては、以下のようなものが挙げられます。

文例

謹んで年頭のご挨拶を申し上げます
昨年は大変お世話になりました
新しい年が○○様にとって穏やかな年になりますよう
心より祈念致します
本年も何卒よろしくお願い致します

年始状は、年賀状と同じタイミングで出しても差し支えないため、近況報告を目的に用いても差し支えありません。

この記事のまとめ

喪中の時期は、何かとナイーブに考えがちですが、何か間違いがあったからといって即座に裁かれるものではありません。

挨拶・ハガキなどは、普段とは違うルール・マナーがあるものの、覚えておけば間違いなく対応できることばかりですし、万一間違えても非礼を詫びればそれで終わる話です。

ただ、年賀状をもらったのに何の回答もしない・喪中なのに年賀状を出す・結婚報告を行うといったタブーを冒せば、常識がないと非難されるおそれもあります。
喪中という状況の中で、どのような対応が許されるのかを理解しておけば、そのような事態に陥ることを防げるはずです。

  • 公開日:2020.06.14

テーマ:法事・法要

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