お盆や年末年始の帰省時期は相談のチャンス?
親と葬儀などの終活についてしっかり話すのがおすすめ
お盆・年末年始の折に実家に帰ると、親と将来のことを話し合う機会は多いと思います。
老い先短い人生を考えたとき、誰しも自分の身の振り方をどうすればよいか考えなければなりません。
親の立場からすると子どもには極力迷惑をかけたくないと思うでしょうし、子の立場からするとできるだけ親が満足のいく死に方になるよう取り計らいたいと考えるはずです。
何の計画もなく死を迎えるよりも、何らかの形でお互いがきちんと死に向き合えるよう、しっかりと今後のことを話し合っておく必要があります。
そこで今回は、帰省の折など親が元気なうちに話して決めるべきことについて、いくつかまとめてみました。
命の順番を考える
親の死について具体的なことを考える前に、言う側・聞く側それぞれに心の準備が必要です。
親子それぞれの寿命について考えたとき、命の順番では親が先に死ぬケースは自然なことではあるものの、元気なうちから自分の死について考えることは、誰しも簡単なことではありません。
子どもとしても、いつか親がいなくなることを想定しておかなければなりませんが、それがいつになるのかは誰にも分かりません。
そこで、親子お互いの立場から、それぞれが持つ死についての考え方を共有しておくことが大切です。
「もしもの時」について話をすることは不謹慎ではない
家族の死に関するテーマは、誰しも口を閉ざしてしまいがちですが、もしもの時について話をすることは決して不謹慎なことではありません。
人間の死亡率は100%であり、その時期が遅いか早いかの違いでしかないのですから、やがて来る終わりの時について親子で話をまとめておくことは有益なことです。
どちらかというと、親の側から口を開いた方が、子どもとしても話しやすい側面はあります。
子どもの側から「もしお父さん・お母さんが死んだら……」と話を始めるのは、死んで欲しいと思っていると勘違いされることを恐れるため、心理的な抵抗感が強いはずです。
しかし、親に自覚がないのなら、子どもの側から一歩前に踏み出すことが大切です。
死を意識する年齢を一概にまとめることはできませんが、還暦を過ぎた段階で自分の今後を想定することが、親世代にとっては大事なことです。
健康に何らかの不安を感じている場合も、親子で時間をとって今後について話してみるとよいでしょう。
親が死んだとき困るのは子どもたち
親が亡くなった後、葬儀をあげたり遺産相続に関する手続きを行ったりするのは子どもたちです。
よって、事前に実家のことや親が死んだ後のことについて話し合っておかないと、子どもにとってはその分負担が増えることになります。
よって、子どもの側に危機感があれば、親と相談することは自然なことです。
しかし、親の側からすると「自分はまだまだ現役」というイメージを持っているケースは珍しくなく、そこで意見の相違が生まれてしまうこともあるようです。
子どもとしては、まずはそのような親の意向を受け入れつつも、誰しも将来はどうなるか分からないことをきちんと伝え、前向きな話し合いが望める雰囲気作りをすることが大切です。
大事なものがどこにあるのか情報を共有する
死後のことについて前向きな話し合いができる状況ではなかったとしても、少なくとも実家に大事なものがいくつかあるはずですから、それらがどこにあるのか情報を共有しておくことはやっておきましょう。
親が生存していたとしても入院がちであったり、認知症などの理由から施設での生活にシフトしたりするケースは十分考えられますから、それを理由に聞いておくのがベターです。
身辺整理をするにせよ、一から全部遺族が探し出すのは手間がかかってしまいます。
そのため、貴重品に関する簡単なメモだけでも用意できれば、万一親が忘れてしまったときも安心です。
可能であれば、親子一緒に身辺整理をしておくと、親子ともども体力的に無理がない時期にまとめられます。
力仕事や記憶が重要になってくることは、親の自信を過信することなく、親子で協力して早めに済ませることをおすすめします。
専門医やかかりつけの病院に関する情報
生前のうちに、親が過去にかかった病気に関する情報は知っておきましょう。
専門医の情報しかり、かかりつけの病院しかり、親の健康状態について知らないという状況は、緊急時の対応を遅らせます。
親の死に対するリスクだけでなく、病状によっては生き残った場合のリスク管理も重要になってきます。
万一親が倒れたとき、すぐさま対応できるよう、準備をしておくにこしたことはありません。
葬儀をどうしたいのか聞いておく
親子の気持ちを終活に向けたら、次はより具体的な内容に踏み込んでいきます。
親が亡くなったとき、葬儀をどのように進めるべきかを考える段階へと進んでいきます。
プランによる違いこそあれ、葬儀は比較的大きなイベントになりますから、きちんと細かい部分まで確認しておくことが必要です。
連絡する親族や友人
まずは、親が亡くなったときに備えて、誰に連絡するのかリストを作っておきましょう。
親族はどこまでに連絡するのか、親しい友人はいたのかなど、電話番号や住所などを過去に届いた年賀状からまとめていきます。
家族が亡くなったときは、誰しもあたふたしてしまうものです。
そんな中でスムーズに連絡をとろうとすると、一からハガキなどをあたるのは時間がかかります。
一つひとつ親に確認しながら、電話で連絡する相手、事後報告でよい相手をまとめていき、親しい人から順番に連絡できるよう整理しておきましょう。
人数が多い場合は、エクセルでまとめておくと編集が楽です。
斎場とプラン選び
斎場選びは、親が亡くなってから急いで選ぶより、親自身で場所を決めた方が圧倒的に楽です。
よって、親自身がノープランだという場合は、最寄りの斎場について情報を取り寄せ、本人に決めてもらうことをおすすめします。
葬儀に関するこだわりがない人であれば、基本的には葬儀屋がすすめるプランの中から予算に応じて選ぶ形になると思います。
必要であれば、事前に葬儀費用を積み立てられるプランもあるため、今後に不安があるならこまめに積み立てるという方法もあります。
近所にある斎場を選ぶか、親族や友人が集まりやすい斎場を選ぶかは、当人の意識によります。
子どもの立場としては、まず希望を確認し、それを満たすことのできる斎場や葬儀屋を選ぶことが肝要です。
お墓の有無
お墓をどうするかについては、親が最初に入るのであれば、そもそもお墓自体が必要かどうかを議論するところから始まります。
一度お墓を建ててしまうと、その後の管理が大変になることもあって、現代の流れとしては都市部を中心に敬遠される傾向にあります。
本家の墓に入るならそれでもよし、最初の墓に入るなら今後のお参りも含めてどうするのかを検討しておきたいところです。
幸いにして、現代では埋葬についても数多くの方法があり、自宅に遺骨を安置する手元供養や海・山への散骨など、墓の建立や納骨堂以外にも幅広い選択肢があります。
家族にとって負担のない方法を、親子が生きている間にきちんと話し合っておくことをおすすめします。
スムーズな終活を子どもが先導する
親は、心のどこかで自分が死んだ後のことを考えてしまうものです。
しかし同時に、自分の死について素直な気持ちで考えることも、人によっては難しい場合があります。
親が持つ死に対する不安を和らげる意味で、子どもが果たす役割は決して少なくありません。
安心して旅立てるよう、子どもが先導する気持ちで終活をサポートしてあげましょう。
まずは「もし何かあったらどうする?」という問いかけから
子どもの側から言いにくい部分はあるかもしれませんが、まずは直接的な言い方を避け「もし何かあったとき、どうすればいいかな?」といった形で、親に何かあったときの対応を相談してみましょう。
理想の終活というものは、その人に応じて考え方も違います。
同じ時間を共有した親子であっても、生死に関する考え方が大きく異なることは珍しくありませんから、親子で意見を出し合うことが大切です。
とはいえ、終活に関するイベントやセミナーをことさらに勧めるのは、かえって親の気持ちを急速に死に向かわせる可能性もあります。
あくまでも、帰省の際に日常会話の延長として、終活に関する話を切り出しましょう。
死ぬ前にやり残したことはないか確認する
終活について話をする場合、死に向けて淡々とすべきことをまとめていくよりも、死ぬ前にやり残したことはないかどうかを確認するスタンスの方が建設的です。
- 夫婦水入らずで旅行に行きたい。
- 食べたかったものをお腹いっぱい食べたい。
- 死ぬ前に会っおきたい兄弟がいる
- 新しいことを勉強したい。
「後悔のないように」とぼんやり考えていると、次第にやってみたかったこと・やるべきことなどが頭に浮かんできます。
それを、親子で解決していくにはどうすればよいかを考えると、建設的に終活を進められるでしょう。
希望をまとめる場合、終活ノートをつけるという方法もあります。
書く内容は自由であり、死ぬまでにやっておきたいこと、家族に向けて伝えておきたいこと、財産管理にまつわることなどを時間のあるときに書き記していきます。
子どもの立場からは、親に対して「こういった方法があるみたいだよ」と伝えるにとどめ、将来的に親が用意する考えを固めたようであれば協力しましょう。
お墓があるなら話もしやすい
お盆や年末年始に、実家で墓参りをするようなことがあれば、その折に話をするのは自然なことです。
一通り済ませたあと、故人の話で盛り上がった際に、そういえば……という流れで今後のことを相談するのもよいでしょう。
親しかった親戚・友人の葬儀に参列した折も、同じような話をするにはよい時期です。
誰かの「死」に触れた瞬間は、誰しも死を意識するものですから、さりげなく話題にしてみると無理がありません。
急に自分たちの死について語られると、やはり肉親であっても多少の不安が残ります。
できるだけ、自然なタイミングで話ができる環境を選ぶことが大切です。
この記事のまとめ
肉親の終活に関する話は、どうしてもシビアになりがちです。
しかし、死んでからでは遅い話もたくさんありますから、帰省の際にはできるだけ込み入った話をしておきたいところです。
忘れてはいけないのは、親の終活をサポートすることは、親孝行の一つであるという視点です。
親が満足のいく人生を過ごせるよう、一度しっかり親子の時間をとってみてはいかがでしょうか。