墓じまいを実際にする時の手順や流れはどうなる?
実際に必要となる手続きやその流れと料金や費用について

  • 2021.07.05

お墓

自分でお墓を建てたことがない人・墓じまいをしたことがない人は、お墓に関する各種手続きや費用感・料金の相場が分かりにくいものです。

特に、ご先祖様が建ててくれたお墓を引き継いでいる場合は、基本的に建立した人が土地の権利を得て墓石を立てていますから、よほど古い資料が残っていない限り、お墓を建てた状況の詳細は分からないはずです。

墓じまいを行う場合、お墓を片付けることと、新しいお墓を準備することを、ワンセットで考えなければなりません。
大まかな手続きの流れや費用感を理解しておくことで、自分たちにとって必要十分なプランを練ることができるでしょう。

この記事では、墓じまいを行う前に知っておきたい、各種手続きの流れと必要な費用・料金についてお伝えします。

墓じまいの進め方について

墓じまいとは、要するに「今あるお墓を片付ける」ことを言いますが、ただ墓石を片付けて借地を更地にすればよい話ではありません。
遺骨をどこに安置するのか、今までの菩提寺との付き合いはどうするのか、公的な手続きはどうするのかなど、悩みごとは尽きません。

行き当たりばったりで手続きを進める前に、墓じまいの基本的な進め方について理解し、それから自分たちはどうするのかを考えるのが効率的です。
以下に、一般的な墓じまいの手続きの流れについてご紹介します。

まずは身内の意見を固めよう

お墓の関係者にアプローチする前に、まずは家族や親族間で、身内全体としてお墓をどうするのか考えましょう。
家族だけでなく、故人との関係性が深い人と相談することが大切です。

誰もが納得する墓じまいは、真剣に検討すると意外と大変なものです。
できるだけ多くの人の意見を聞いて、そもそも墓じまいをするのかどうか、しないならどんな方法があるのかを検討します。

一度お墓を更地にしてしまったら、二度と同じ場所で墓参りができなくなってしまうかもしれません。
家族の引越しによって、遺骨が海を渡るようなことがあれば、お墓参りに行ける人も少なくなるでしょう。

もし、墓じまいをしてから別のお墓を建てることを考えていないなら、別のお墓に遺骨を安置するか、他の誰かが引き継ぐかを考えなければなりません。
墓じまいした後のことを事前に考えておけば、迷いなく手続きを進められますから、最初が肝心と思ってしっかり話し合いましょう。

役場・埋葬元・改葬先と書類をやり取りする

墓じまいをどうするのか話し合いが済んだら、いよいよ実際に行動を起こしていきます。
この段階でやらなければならないのは、お墓の関係者に話を通すことです。

まず、現在遺骨を安置している場所の管轄となる市区町村の役所に行って、新しい場所に遺骨を安置するための申請をします。
その際に「改葬許可申請書」という書類が必要になります。

こちらの書式は、市区町村でそれぞれ違いますが、書くべきことはほとんど同じです。
墓で眠っている故人の情報と、埋葬元・改葬先の住所などです。

埋葬元・改葬先の管理人から、署名や捺印をもらう欄もあるため、まずは改葬許可申請書をもらってから次の手続きを進めていきます。

現在お墓を建てている埋葬元には、これから別の場所で遺骨を安置する旨を伝え、きちんと遺骨が埋葬されていたことを証明する「埋葬証明書」をもらいます。
また、新しくお墓を建てる・納骨堂に遺骨を安置することを考えているなら、納骨先で「受入証明書」をもらいます。

この時、改葬許可申請書にも一緒に記入・捺印してもらえば無駄がありません。

書類が一通り揃ったら、再び役場に足を運んで書類を提出します。
すると「改葬許可証」を発行してもらえますので、ようやく埋葬元(墓地)から遺骨を移動できるようになります。

新しいお墓・納骨堂などに遺骨を運ぶ

実際に遺骨をお墓から取り出す前に、お坊さんを呼んで「閉眼供養」を行います。
墓石に宿る御仏・ご先祖様の魂を抜く儀式とされており、これを行って初めて墓石はただの石になり、墓地を更地にすることができます。

菩提寺があるならお坊さんに依頼し、いないのであれば同じ宗派のお坊さんに依頼するのがスマートな流れです。
近所のお坊さんにこだわりがないなら、お坊さんを派遣してくれるサービスに依頼すると、お布施に包む金額が安くなる場合があります。

お墓の片づけは、墓石の解体工事と墓地の更地化を行って完了します。
石塔や灯籠など、お墓のスペースにあるものは、基本的に全て解体して処分されます。

続いて、コンクリートでできた基礎部分を解体し、残った土を処分して整地します。
災害で崩れないよう、現代のお墓では鉄筋コンクリートによる施工が行われているお墓も多いのですが、こちらの解体は追加料金が発生するケースも多く見られます。

比較的最近になって建てられたお墓の場合、お墓の造りによっては金額が膨らむことも想定しておきましょう。

取り出した遺骨は、新しい改葬先に納骨するまで、自宅などで保管しておきます。
すぐに準備ができるなら、そのまま安置して開眼供養をお願いするのもよいでしょう。

遺骨を安置したところで、墓じまいは完了となります。

墓じまいにかかる各種費用の相場観

続いては、古いお墓から新しいお墓に遺骨を移動するケースを想定して、一般的な墓じまいにかかる費用の相場観をご紹介します。
お墓がある地域によって費用が違うものから、そもそも正確な金額の相場というものがあるかどうか分からないものまで、墓じまいにかかる費用は多様です。

行政手続き

墓じまいにおける行政手続きのゴールは、改葬許可証をもらうことです。
これがないと、お墓から遺骨を取り出して新しい安置先に遺骨を移動できませんから、順序を考えて確実に進めなければなりません。

改葬許可証をもらうためには、改葬許可申請書・埋葬証明書・受入証明書という3枚の書類が必要です。
改葬許可証も含め、それぞれを発行してもらう際の相場観は、以下の通りです。

改葬許可申請書

申請書のため無料

埋葬証明書

有料だが、墓地によって金額が違う。
300~1,000円程度だが、墓地によっては5,000円以上かかることもある。

受入証明書

無料の場合と有料の場合がある。
料金相場は埋葬証明書とほぼ同じ。

改葬許可証

書類が揃えば無料でもらえる。
ただし、一部自治体では有料の場合があるため要確認。

閉眼供養

閉眼供養の際、お坊さんにお支払いするお布施の額は、概ね3万円~10万円が相場です。
こちらは明確に相場があるわけではなく、菩提寺との信頼関係や、お坊さんの派遣サービスの価格帯に応じて変わってくるでしょう。

安く済ませるなら、そこまで親しくないお坊さんに頼めば節約できますが、いつもお世話になっていたお坊さんには、感謝の気持ちを込めてそれ相応の金額を包むのが礼儀です。

お墓の片づけ

もともとあったお墓を片付ける際の費用は、石材店によって金額が変わってくるため、相見積もりを取って判断することをおすすめします。
金額を決める要素となるのは、墓石のサイズや墓地の広さ・撤去に伴う作業工程などで、㎡単位で金額が設定されているところが多いようです。

金額の相場は、1㎡あたり8~20万円といったところで、墓地が広くなるほど金額も増えてしまいます。

中には5万円という良心的な値段でサービスを請け負っているところもありますが、こちらも実際に墓地を見てみないと見積もりが出せないため、必ずしも安くなるとは限らない点に注意が必要です。

離檀料

墓じまいの中でも、おそらく一番分かりにくい費用で、相場があるようでないお布施の一つです。
菩提寺の墓地を借りてお墓を建てていて、そのお墓を墓じまいする場合に包むものです。

こちらはハッキリとした相場を出すのが難しく、一般的には10~20万円ほどが相場となっていますが、しばしばトラブルの原因になります。
離檀というのは、お寺の経済状況に直結する話なので、いきなり話をされて戸惑い、お寺側が高額な離檀料を請求する場合があるからです。

檀家契約を結ぶ際、明確に離檀料が定められているならよいのですが、住職の感情で金額が決まってしまうこともあります。

ただ、契約が結ばれていない状況であれば、基本的に離檀料は支払う義務のあるお金とは言えませんから、弁護士を頼っての示談・本山への相談という形をとり、解決に向けて動くこともできます。

トラブルを避けるためにも、できるだけ早い段階で離檀の相談を行い、菩提寺側に準備期間を設けることが大切です。

墓じまいをした後にかかる各種費用の相場観

墓じまいを終えてから遺骨をどうするかで、その後の費用が変わってきます。
方法はその家々で異なりますから、大雑把に各種費用の相場観を押さえておくと、墓じまい後のことをイメージしやすくなります。

以下に、主な納骨方法の相場観をご紹介します。

新しいお墓を用意する場合

納骨先として、自分たちで新しいお墓を用意する場合、大きく分けて2つの選択肢があります。
合葬墓・永代供養墓を選ぶか、新しいお墓を建てるかです。

合葬を選んだ場合、お墓の管理が楽になりますし、1体あたりの費用も5~30万円と安価になります。
三十三回忌を迎えるまで遺骨が個別安置されるところもあるため、似たような合葬墓・永代供養墓でも、料金と安置方法は事前に確認しましょう。

自分でお墓を建てる場合は、墓地と墓石を取得して、きちんとしたお墓を建てなければなりません。
都市部では料金も高くなりますが、地方なら安価にお墓を建てられるところも多いため、相場観としては80~300万円といったところを想定しておくのがよいでしょう。

中には、50万円ほどで請け負ってくれるパッケージプランも見られますので、相見積もりを取って納得のいく業者に頼みたいところです。

納骨堂を用意する場合

納骨堂は、お墓を建てるよりも相場が安くなりますが、タイプによって金額の幅が広くなります。
小さいロッカー式なら10万円以下で借りられますが、機械式のように立体型の構造であれば100万円近くかかることもあります。

無駄なスペースは不要ですから、どのくらいの大きさがあればよいのか、事前に納骨堂を見学してから決めるとスムーズです。

その他の供養方法を考える場合

近い将来、親族の多くがお墓や納骨堂に足を運べなくなることが分かっているなら、子孫も含めてお墓にわずらわされない選択肢を選ぶ方法もあります。
例えば、散骨や手元供養がそれにあたります。

散骨する場合、自分で渡航して散骨するか、業者に依頼するかで金額が変わってきます。
また、国内で行うか、海外で行うかによっても、見積もる予算に違いがあります。

相場観として、国内なら20~50万円・海外なら50~100万円を考えておきましょう。

手元供養は、そのまま家の仏壇に位牌を安置するか、遺骨を使ったアクセサリーを作るかなど、供養方法に応じて料金が変わります。
ほとんどお金がかからないように済ませることもできますが、アクセサリーを作るなら50万円以上かかることも想定しておきたいところです。

この記事のまとめ

実際に墓じまいを始めるには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。
書類を準備して許可を取り、菩提寺に挨拶をして閉眼供養を行ってもらったら、お墓を片付けて新しい納骨先に遺骨を安置したところで終了です。

総額で考えると、安い方法を選んでもそれなりに料金が発生しますし、菩提寺との付き合いによって発生する費用もあります。
自分たちが墓じまいを行う場合にいくらかかるのか、個別の額ではなく総額でチェックできるようにしておくと、安心して予定を立てやすくなるはずです。

  • 公開日:2021.07.05

テーマ:お墓

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