今更聞けない「香典返し」の基本とマナー
金額の相場や失礼に当たらないお返しとは?
葬式に参列した際、後日ないし当日にもらえる「香典返し」ですが、存在は知っていても細かいことが分からないという人は多いものです。
特に、実際に喪主の側に立ってみるまで、何を送るべきなのか・金額の相場はいくらなのかなど、裏側の事情をほとんど知らなかったというケースも珍しくありません。
もっとも、多くの場合は葬儀社が取り扱っている商品の中から選ぶため、香典返しの内容については特段知らなくても困りません。
しかし、いざ本番を迎える前には、きちんと相場や失礼にならないモノを押さえておかないと恥をかくでしょう。
そこで今回は、香典返しについて基本的なことをまとめてみました。
すでにある程度知識がある方も、葬儀に参加したことがない方も、一度目を通してみてくださいね。
香典返しについて基本のおさらい
まずは、そもそも私たち日本人が持っているこの「香典返し」という習慣について、基本的な部分をおさらいしてみましょう。
仏教的な習慣としては、言葉に深い意味が込められていることも珍しくありませんが、香典返しはおよそ言葉通りの意味としてとらえて差し支えないでしょう。
香典返しとは、香典をいただいたことに対するお礼のこと
香典返しとは、喪主・遺族側が、葬儀の参列者からいただいた香典に対する「お礼の気持ち」を示すため、参列者に渡すものです。
香典自体は参列者側が弔意を示すものであり、古くは供養・葬儀のお手伝いをすることが弔意を示す行為でした。
やがて、その習慣は「香典(お金)」や「供物(贈り物)」という形に姿を変えますが、本質的には故人を弔い、遺族へのお悔やみの気持ちを伝える習慣として理解されています。
そして、遺族側はその心遣いに感謝し、せめてものお礼として香典返しを参列者に渡します。
香典返しを渡すタイミングは、遺族の周囲が落ち着いてから
香典返しを渡す場合、多くの地域では葬儀に関する一通りのセレモニー・法要が終わってから、弔いを終えたことを伝えるタイミングで送ります。
具体的には、四十九日の法要を済ませたタイミングで、挨拶状と一緒に香典返しを送り、その中で法要が完了した旨を報告するというのが一般的です。
香典返しの準備を進めるなら、初七日が終わった段階から準備を進めておくと、後々の手間が省けます。
さらに言えば、葬儀社との打ち合わせの中で、いただいた香典の金額ごとに香典返しの品をあらかじめ決めておくのもよいでしょう。
なお、ここで言う「挨拶状」というのは、葬儀・お通夜に参列してくれた人へのお礼状ではありません。
お礼状はむしろ、葬儀が終わってから早めに出す必要がありますから、注意が必要です。
香典返しに関しては、地域によって例外もある
香典返しの習慣は、全国的にそれほど大きな違いはありませんが、例外的にタイミングや金額に差が生じるケースもあります。
以下に、主なものをご紹介します。
北海道を中心に広まる新しい習慣の「即日返し(当日返し)」
あらかじめ決めておいた一定金額分の香典返しを、お通夜・告別式の席で「参列者から香典を受け取った段階」で手渡す習慣を、「即日返し」または「当日返し」と言います。
もともとは、北海道で一般的な習慣でしたが、次第に各都市圏でも広まるようになりました。
この方法は合理的で、商品選びの手間が省けますし、一律の金額の香典返しで済むため非常に対応が楽です。
ただし、あまりに高額の香典をいただいたときは、後日改めて丁寧に差額分の香典返しをする場合もあります。
また、この方法では個人単位で香典返しを渡す場合があり、結果的に金額がかさばる可能性もあります。
逆に、参列した分だけしか香典返しは出ないため、返品の面倒さは省けるでしょう。
香典を手渡す際には、一緒にお礼状も入っていることが一般的ですし、必要であれば領収証を切ってくれるケースもあります。
香典の額を少なくする代わりに、香典返しを辞退する「新生活」
群馬をはじめとする北関東に広まっており、香典の額を少額にする代わりに、遺族から香典返しを辞退するという「新生活」という文化があります。
これは、新婚生活を始めた夫婦向けの制度ではなく、第二次大戦直後の混乱期に香典を包むのは大変だろうから、せめて負担は少額にしようという考え方から始まりました。
一時期は全国的に広まった習慣で、香典の額も1,000~5,000円程度となっています。
不祝儀袋の左わきに「新生活」と書くことで、主旨を理解してもらえます。
ちなみに、この「新生活」という文言を書き忘れてしまうと、遺族側がハンカチ・靴下をお返しにくれる場合があります。
せっかく気を遣ったのに、かえって気を遣われてしまうのは申し訳ありませんから、書き忘れないようにしましょう。
香典返しの基本的な相場観
続いては、香典返しを選ぶ際の、基本的な相場観についてご紹介します。
ある程度金額は決まっており、香典と違い人間関係を基準に金額を類推する必要がないことから、計算は比較的楽になるはずです。
基本は「半返し」
香典返しを選ぶ際のルールはとても単純です。
「各参列者からいくらもらったか」に応じて、香典返しの金額を決めていきます。
10,000円の香典をもらったら、5,000円相当の香典返しを選ぶといったように、香典の半額で計算して品を選べば差し支えありません。
もらった側は、その香典返しがいくらなのかを知らない・もしくは気にしないケースがほとんどですから、理論上はより安い金額を選んでも差し支えありません。
しかし、同じ葬儀社を使ったことがある人が参列していた場合、金額の差に気付かれるリスクはあります。
そこで変な噂が流れると、人間関係に支障をきたしてしまうリスクもありますから、やはり半返しのルールは覚えておいた方がよいでしょう。
「1/3返し」などの例外もある
先に挙げた新生活や即日返しなどの場合は、そもそも当日の段階で香典返しを完結させるというのも、決して間違いではありません。
その場合、金額としては結果的に「1/3返し」のような中途半端なものになりますが、参列者も嫌な気はしないでしょう。
また、一家の大黒柱が急に亡くなった場合などは、1/3返し・香典返しをしないという選択肢も認められます。
この場合は、事情をお礼状・挨拶状に書き記しておけば、決して悪い意味で解釈はされないはずです。
あまりに香典が高額な場合は半返しにこだわらない方がよい
香典の額があまりに高額になると、半返しを検討するのが難しい場合もあります。
50,000円・100,000円といった大金になると、親族や会社などの「葬儀の足しにして欲しい」という気持ちも込められていると考えるのが自然です。
この場合は、結果として1/3返しになってしまったとしても、その葬儀社で取り扱いのある高額の品を選ぶようにします。
半返しにこだわり、仮に10,000円の高級品を5セット送ったとしても、果たしてそれが参列者にとって嬉しいかどうかは微妙なところです。
あまりかさばらない高級品を、厳選して送ってあげた方が、かえって喜ばれるはずです。
お金やお店にこだわらず、柔軟に対応しましょう。
香典返しにはどのようなものを選ぶべき?
実際に香典返しを選ぶ際、どのようなものを選ぶと喜ばれるのかを知っておくと、時間と労力の短縮につながります。
葬儀社の担当者に相談するのも一手ですが、自分の中にある程度答えを持っておくと、手間取らずに選ぶことができるはずです。
基本的な考え方としては「後に残らない」ものを選ぶ
香典返しに選ぶものとしては、消耗品が基本となります。
言うまでもありませんが、葬儀の記念に盾を送ったとしても、何の役にも立たないし喜びようもありません。
特に、お茶・コーヒー・海苔といった商品は鉄板で、長い間保存できることから喜ばれます。
次いで人気なのが石鹸・台所洗剤などですが、これは各家庭によって嗜好が違うため、センスが問われるところです。
地域によっては、お菓子・砂糖を選ぶケースもあります。
いずれにせよ、相手がもらったときに「ありがたい」と思うものを選ぶことが大切です。
自由に好きな商品を選べるカタログギフトも喜ばれる
消耗品というところから発展して、参列者側が欲しい品を自由に選べる「カタログギフト」を選ぶ方法もあります。
食品・洗剤だけでなく、嗜好品・革製品・食器など、実に様々な品の中から選べます。
カタログギフトのランクも金額に応じて決まっており、それぞれの値段相応の品から選べるようになっているものの、品数が圧倒的に多いので、もらった人は嬉しいと思うでしょう。
もちろん、自分で品定めをして送るべきだという意見もありますが、総じて評価は高い選択肢です。
商品券はケースバイケース
カタログギフトよりも直接的な香典返しとしては、商品券があります。
金額がはっきりしているので、半返しかどうかなどが一目で分かりますし、期限内なら自分の好きなタイミングで欲しいものを手に入れられます。
既存の価値観にとらわれない、無宗教葬・自由葬などの形式であれば、ギフト的なスタンスで香典返しを考えるのも、一つの選択肢かもしれません。
ただ、逆に金額を悟られるのが嫌だという人もいますし、あまりに直接的で品がないと考える人もいます。
目上の人の場合はなおさらで、年代によっては「現金に現金を返すようなもの」と不快な気持ちにさせてしまうリスクもあります。
一般葬など、不特定多数に香典返しを送る場合は、商品券よりは形のある物を選んだ方が無難です。
この記事のまとめ
香典返しは、葬儀に参列した立場、葬儀を運営する立場、それぞれが少なからず気を遣う習慣です。
それだけに、基本を知っているのと知らないのとでは、対応に大きな差が生まれます。
半返し・1/3返しという概念を理解しておくだけでも、香典選びの時間や手間を短縮できます。
また、地域性もある話ですから、自分がお住まいの地域にはどのような習慣があるのかを知っておくことも大切です。
参列者の年代も考えつつ、受け取った側が違和感のない品を選ぶことを心がけましょう。