簡単なようで意外と難しい葬儀の女性の化粧。
陰口を叩かれたり恥をかかないメイクの基本とマナー
葬儀は故人・ご遺族に対してお悔やみを申し上げ、冥福を祈る場です。
そんな中で派手な立ち居振る舞いをすることは、故人の死を祝うかのような印象を与えるため、好ましいことではありません。
また、昔から葬儀は親族たちが集う社交場としての意味もあることから、大人の女性として持つべき最低限のマナーも試されていると考えてよいでしょう。
地域によってはざっくばらんな考え方をしているところはあるものの、やはり葬儀のメイクにも一般常識として押さえておいた方がよいポイントがいくつかあります。
今回は、葬儀における女性の化粧マナーについて、メイクの基本やNGポイントなどについて紹介してみたいと思います。
メイクアップはパーツごとに考え「シンプル」が基本
NGケースを挙げていく前に、葬儀に臨む際の基本的なメイクについてご紹介します。
総じて言えることは「シンプル」に「落ち着き」を与えるイメージのメイクが望ましいという点です。
眉は落ち着いた仕上がりをイメージ
顔立ちによっても違いはありますが、ペンシルタイプで仕上げるとくっきり仕上がってしまうため、パウダータイプのアイブロウを使うと自然な感じに仕上がりやすくなります。
特に、普段から眉毛をすべてそり落としている人は、細眉にすると描いていることが周囲に分かりやすく、どことなく強気を感じさせる顔立ちになってしまいがちです。
周囲に自分を溶け込ませるメイクを考えると、多少ぼやかした方が印象は良くなります。
目元は色がポイント
目の周囲に関して言うと、特に気を付けなければならないのは「アイシャドウの色」です。
つけること自体は問題ありませんが、原色系の黄色・赤・青・緑など、派手に見える色は選ばないようにしましょう。
無難な色としては、ブラウン・ピンクが妥当なところです。
また、ラメ入りも派手な印象を与えますから、葬儀では避けましょう。
その他、目を華やかに目立たせるマスカラは不要ですし、ビューラーを使う必要もありません。
ただし、まつ毛が長く下向きの場合、整える範囲で使う分には問題ありません。
カラーコンタクトを付けようと考える人はいないと思いますが、目が不自然に大きく見えたり他の参列者に違和感を与えますから、原則葬儀の場では避けましょう。
ただし、自由葬で参列者の服装に何らかのコンセプトがある場合は、その限りではありません。
頬は明るくならないように
頬はどうしても明るい色にしようと意識しがちですが、葬儀の席ではチーク自体塗らなくても大丈夫です。
とはいえ、人によっては明らかに血色が悪く見えてしまうものですから、肌に近い色を薄くぼかす程度に塗る分には問題ないでしょう。
頬は見えやすい部分であることから、どうしても手を加え過ぎてしまうと明るい印象を与えてしまうため、慎重に塗るようにしてください。
口元は多少なら色味をつけてもOK
本来、葬儀の化粧は「片化粧(かたげしょう)」と呼ばれており、薄化粧が基本となります。
そのため、葬儀に参列する場合は口紅をつけるのはご法度とされてきました。
口紅をつけないのは「悲しみのあまり紅をひくこともできない」という心境を表していると言われ、そのような理由から口紅は原則避けなければなりません。
しかしながら、時代も変わり現代では口紅に関する考え方も変わりつつあります。
口紅をまったくつけないのも、それはそれで不健康だと判断される場合があります。
よって、赤・ピンク・オレンジのような華やかな色を避け、ベージュ・ブラウン系統の落ち着いたものを選び、ツヤを抑えた色味を使います。
明るい色しか手持ちにない場合は、口元にファンデーションを塗り、その上から口紅を塗ってティッシュで軽く押さえましょう。
ネイルは葬儀になじまない
爪も女性にとっては悩ましい部分だと思いますが、基本的に何もしていない人は切って整えるだけですから簡単です。
ただし、ネイルをしている場合は、原則落とすのが基本です。
すぐに自分でネイルを落とすのが難しい場合は、ベージュ系のマニキュアを上塗りしてごまかしましょう。
葬儀が終わったあと、除光液を使って落とせばOKです。
髪留めの色は黒がベター
髪型は人によって違うため、ヘアスタイルによっては髪留めを使った方が邪魔にならない場合があります。
一般的に、弔事は耳よりも下で髪をまとめることが多く、上でまとめてしまうとヘアスタイルによっては華やかな印象を与えてしまいます。
ショート・セミロング程度の長さなら、特段髪留めを使わずにそのまま参列しても差し支えありません。
ロングヘアの場合は一つにまとめ、黒・茶色のゴムや髪留めを使います。
前髪が長くなってしまった場合は、ピンを使って留めましょう。
お辞儀をする機会がどうしても多いため、髪が落ちることのないようにしたいものです。
葬儀の席において「派手さ」は厳禁
基本的な化粧のマナーや色味が分かったところで、続いてはNGケースについて、いくつかまとめてみたいと思います。
葬儀の席におけるルールは、基本的に「派手でない」ことが求められます。
そのため、見た目的に明るさやキラキラした印象を与えるメイクは避けなければなりません。
以下に、各パーツごとの注意点を挙げていきます。
目は口ほどにものを言う
目元は顔の印象を大きく左右するパーツです。
メイクの方法次第で活発な印象を与えてしまうため、普段行っているメイクアップでは、葬儀には馴染まない場合があります。
眉で言えば、太い眉・短い眉になることは避けたいものです。
ペンシルを使いたい場合であっても、形を整える程度に留めておきましょう。
目元については、目がぱっちりと見えるメイクは避けましょう。
色味をせっかく抑えても目が主張していると、落ち着きがありません。
明るい雰囲気は違和感がある
肌の状態は、その人の体調を反映しているため、薄化粧によって不健康な印象を与えてしまうこともあります。
とはいえ、明るい色をのせるのは逆効果です。
ツヤ・ラメ・パール・明るい色を選んでしまうと、少しのせるだけでも葬儀の場では目立ちますし、それが違和感につながります。
周囲に配慮して頬のメイクを整えましょう。
口紅をつけない人が注意したいのは、口紅はダメだけどリップグロスならいいだろうと考えることです。
リップであってもツヤがあるものは明るい印象を与えるため、葬儀には馴染みません。
総じて「明るさ」を避けるメイクを心がけましょう。
香水も使わず、制汗剤も最小限に控えたい
女性の身だしなみの一つである香水ですが、こちらも葬儀の席では控えましょう。
そもそも、故人を弔うにあたり、基本的に香水をつける必要性はないはずです。
暑い時期で体臭が気になるようであれば、無香料の制汗剤や消臭スプレーなどを使うにとどめ、参列者が極力香りを感じないように注意しましょう。
気を付けたいのはむしろ口臭で、仕事帰りに参列した場合は疲れから臭いが漏れている可能性もあります。
歯を磨いたり、緑茶を飲んで口の中を潤したりするだけでも違いますから、こまめにケアを行いましょう。
フリスクのようなタブレットを口に含むのも、一定の効果が期待できます。
これだけはやっちゃダメ!葬儀のメイクに関するタブー
葬儀に関するOK・NGメイクの基準が分かったところで、最後に現代の葬儀メイクでタブーとされていることを、いくつかご紹介します。
中には諸先輩方がやっている例も見受けられますが、極力反面教師として覚えておきたいものです。
ノーメイクはかえって失礼
葬儀の席で薄化粧が理想的なら、そもそもメイクしないで「すっぴん」でもよいのではないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、これは現代においてタブーの一つです。
大人になる前ならまだしも、社会人になってからノーメイクで参列するというのは、下記の二重の意味で問題となります。
- 周囲により暗い印象を与える可能性がある
- 遺族以上に疲れた印象を与えてしまう可能性がある
葬儀の現場で誰が一番やつれているかと問われれば、当然最愛の人を亡くした喪主や遺族でしょう。
参列者よりもはるかに心がつらい状況で、立派な式を挙げようと頑張っている姿以上に参列者がやつれて見えたら、遺族の側もやりきれない気持ちになるはずです。
遺族に気を遣わせないためにも、最低限自分の顔は作っておく必要があるのです。
それが、大人の女性として大切な礼儀であると覚えておきましょう。
「ナチュラルメイク」は誤解しないように注意
よく、葬儀のメイクは「ナチュラルに済ませる」と紹介している情報サイト・冊子を見かけます。
ここで言うナチュラルは、一般的に言われる「ナチュラルメイク」とは違う意味であることに、注意が必要です。
普段のメイクとしてのナチュラルメイクとは、美しい素肌のような透明感・ツヤ感を実現するためのメイク方法です。
よって、誰かに「見せるための顔」を作る目的で、ナチュラルメイクをします。
これに対して葬儀のメイクは、誰かに「見られないための顔」を作ることが目的です。
これはもちろん醜い顔を作るという意味ではなく、周囲に配慮して目立たない顔を作るということです。
同じナチュラルという表現でも、目立つのか目立たないのかという違いがありますから、メイクをする場合はその点に注意が必要です。
どうしてもネイルが落とせないなら黒手袋をはめる
葬儀の席では、ネイルは原則落とすものです。
しかしながら、得てして葬儀などは急に参列しなければならない事態も起こりえます。
そうなった時、新しいネイルアートを仕上げてもらったばかりであったり、ラインストーンがついていたりする場合は、なかなか落とすのが難しいケースも生じます。
そこで、葬儀用の手袋を使ってネイルを隠すという方法があります。
黒いレースのついた手袋などが市販されています。
この場合、食事や焼香の際には手袋をはずすため、葬儀の席でネイルが完璧にバレないわけではありません。
しかし、お通夜をすませてすぐにおいとまするなら、特段周囲に目立ちませんし、何もしないよりは遥かにマシです。
一時的な対処法であることを理解し、サッと斎場を離れる分には有効な方法の一つです。
この記事のまとめ
葬儀メイクの基本は、薄くあっさりとしたメイクを心がけることです。
遺族のために「悲しみの表情」・「疲れた表情」を隠すメイクをするものと考えると、イメージが湧きやすいかもしれません。
自分の顔を見せるためではなく、自分の顔を葬儀の場で目立たなくするためのメイクですので、ナチュラルという言葉には注意をしておきましょう。
気遣いそのものが顔に出ると心得て、最期のお別れに備えましょう。