知ってるようで、実は知らない「御焼香」
基本とマナーや正しい手順と注意点を解説します

  • 2019.08.08
  • 2020.04.17

葬儀

訃報は急に知らされるため、実際にお通夜・告別式に参列するタイミングになってから、あわててマナーを確認するという人は多いと思います。

親族として失礼のない振る舞いをしなければならないのはもちろんのこと、参列者側に立ったとしても、常識に沿った行動を心がけたいものです。

しかし、葬儀に参列する場面で独特の雰囲気にのまれてしまい、付け焼刃で覚えたマナーや手順を忘れてしまうことは珍しくありません。
特に忘れがち・うろ覚えになりやすいのが「御焼香」で、厳密に考えれば宗派によって一つひとつルールが違うため、実際の場面で混乱してしまうことも。

そこでこの記事では、なかなか一から知る機会が少ない「御焼香」の基本的なマナーや手順・注意点についてまとめました。
自分が知らなかった部分はもちろんのこと、知っていると思っていることにも目を通してみると、より深く記憶に定着するはずです。

そもそも「御焼香」とは

御焼香は、日本の葬式では一般的な光景です。
家族の葬式はともかく、会社で働く同僚の祖父母などの葬儀に参列した経験のある人は多いと思います。

しかし、なぜ御焼香が必要なのかを問われて、すぐに答えが出る人は少数派です。
そこで、そもそも御焼香が仏教でどのような意味を持つのかについて、以下にご紹介します。

御焼香にはいくつもの意味が込められている

御焼香は、主に仏式の葬儀で行われる習慣です。
死者に対して哀悼の意を捧げるため、あるいは死者に向き合う自分の心身を清めるため、香りを用います。

仏教発祥の地インドでは、お香によって腐敗臭を抑えることを目的として使われており、それが転じて宗教的な意味合いを持つようになりました。

日本では火葬の習慣が一般化しているものの、大陸では土葬の習慣を持つ地域も多く、インドではガンジス川に遺体を流す「水葬」という習慣もあります。
きちんと埋葬してもらえなかった遺体が腐敗すると、高温多湿のインドならすぐに強い腐敗臭が広がってしまいます。

こうして、もともとはインドで臭い消しとして使われていたお香ですが、日本に伝わるとお香は独自の発展を遂げ、武家社会では武士が悟りを開くための一助として用いられるほどになりした。

人に対して礼節を重んじ、自分に対して真摯に向き合う、日本人の古来の姿が思い起こされます。

故人は香りを食べ、煙を依り代にする

仏教では、故人は四十九日を迎えるまでの間「香り」を食べるものと説明されています。
また、現世で暮らす人々と死者とをつなぐものとして、お香の「煙」も重要視されました。

お盆の時期は、提灯に火を灯し、おがらを燃やして煙を焚き、ご先祖様の霊を迎え入れます。
葬式でも同じように、生きている私たちと死者とのコミュニケーションを、煙を介して行うのです。

こうして、御焼香の習慣は宗派を問わず広まり、今なお葬式で行われているのです。

自分の穢れを払う意味で香りを用いる

先ほど、インドではお香が死者の腐敗臭対策として用いられているというエピソードをご紹介しました。
その意味から転じて、仏教では香りが「お参りする人の心身を清める」ものとされていきます。

香りは体臭を消すために用いられることもあり、現代でも制汗剤や香水といった形で、香りにまつわる商品が販売されています。
かつて、その役割を担っていたのが「お香」だったのです。

死者と最期のお別れをする場面において、失礼のないよう振舞いたいという、ある種の美学を感じさせます。

御焼香の基本的なマナーの紹介

葬式においてなぜ御焼香が必要なのかを理解したところで、ここからは御焼香の基本的なマナーについてご紹介します。
基本的なルールは同じものの、作法が会場によって違ったり、御焼香する順番が決まっていたりと、細かな違いはあるものです。

全てをイメージして覚えることが難しくても、違いが分かっているだけでスムーズに対応できることもありますから、簡単に目を通してみてくださいね。

御焼香の回数・やり方は宗派によって様々である

御焼香の回数は、宗派やお寺によって異なります。
例えば、天台宗と真言宗は1~3回押しいただき焼香するなどと、具体的に決まっているのが原則です。

しかし、仏式の葬儀では、基本的に自宅の宗派の作法で御焼香が認められています。
また、参列者が多い場合は、御焼香を1回で済ませることも珍しくありません。

そこで、一般的な御焼香の方法を以下にご紹介します。

  1. 右手の親指・人差し指・中指の三本の指でお香をつまむ
  2. つまんだ指を額の高さまで上げる
  3. 指を香炉の上におろしたら、こするようにして香炉にくべる

回数に迷った場合は、1回で統一するものと覚えておくと分かりやすいでしょう。
遺族や祭壇に一礼するタイミングについては、御焼香のスタイルによって異なりますから、次の段落でご説明します。

会場によって違う御焼香のスタイル

御焼香のスタイルは、会場によって違います。
主に会場や参列者の数などに応じて決められますが、それぞれに特徴がありますから、柔軟に対応できるよう覚えておくと役立ちます。

立礼焼香

比較的規模の大きな葬儀場で取り入れられるのが「立礼焼香」です。
立った状態で御焼香を行うスタイルで、葬儀場に向かったら、遺影の前に焼香台が置かれています。

お坊さんがお経をあげている際に、参列した順番に一人ひとり御焼香をするケースもあれば、お通夜が始まる前に各参列者が焼香を済ませるケースもあります。

前者の場合は、自分の番になった段階で祭壇の手前まで進み、遺族に一礼します。
その後は祭壇の前まで進み、遺影に向かって一礼し、祭壇近くに置かれている焼香台で御焼香を済ませます。

もし、夫婦で参列した場合、別々ではなく一緒に進み、御焼香は個別に行うのが一般的です。
ただ、そこまで細かく取り仕切っていることは少なく、その時々で柔軟に対処して差し支えありません。

後者の場合は、お坊さんがお経をあげている際に「回し焼香」をすることもありますから、回し焼香の項目についてもお読みください。

座礼焼香

葬儀場の中でも小さな会場や和室などで葬儀を行う場合、座礼焼香となるケースが多いようです。
祭壇・焼香台ともに正座したときの高さに合わせられているため、座っての御焼香となります。

一連の流れは立礼焼香と変わりませんが、焼香台近くまで来たときの対応が若干変わります。

順番が来たら座る場所までは立って歩いて移動し、遺族に一礼する際には正座して一礼します。
それから祭壇に向かって一礼し、座ったまま焼香台まで進み、合掌・焼香します。

御焼香が終わった後も合掌し、先に座った場所に戻って、再び遺族に一礼します。
それから立ち上がり、自分の席まで戻ります。

回し焼香

自宅での葬儀に参列者を迎える場合や、立礼焼香を参列者それぞれのタイミングで既に終えている場合などに行われます。
香炉と抹香を乗せたお盆や小さな移動式の焼香台を移動させて、参列者が順に焼香していくという流れです。

回し焼香では、隣の人が焼香台を回してくれますから、それを軽く会釈して受け取ります。
自分が御焼香を済ませたら、隣の人に回します。

椅子に座っている場合は、お盆を膝に乗せながら、あるいは移動式の焼香台を自分の位置にとどめて焼香します。
お座敷の場合は、自分の目の前に台を置いて焼香するのが一般的です。

御焼香は「故人と距離が近しい人」から始める

参列者の場合、出席した順番や来賓から始まるのが一般的ですが、親族同士の中では原則として順番があります。
喪主を皮切りに、故人の配偶者、両親、喪主の妻、子ども、喪主の兄弟姉妹……というように続いていきます。

しかし、これらの順番は絶対というわけではなく、家族・親類を主体とした葬儀においては、それほど格式ばったものではありません。
基本的な考え方として、喪主や故人と距離が近しい親類順に、御焼香を進めていけば問題ありません。

親族・参列者それぞれの立場で御焼香をする際の注意点

喪主や親族として御焼香をする場合と、参列者の立場で御焼香をする場合とでは、いくつか手順等に違いがあります。
また、御焼香の際に用意する仏具についても、使用にあたって最低限守るべきマナーがあります。

どちらの立場に立っても滞りなく御焼香ができるよう、一度確認しておきましょう。

基本動作に大きな違いはないが、順番に注意が必要

親族側と参列者側とで、御焼香の動作・作法などに大きな違いはありません。
しかし、親族側は祭壇に足を運ぶ際、親族→参列者の順に一礼します。

参列者への一礼は覚えていても、親族に対して一礼するのを失念するケースは十分考えられますから、親族側に立ったときは両方に一礼すると覚えておきましょう。

数珠の種類に悩むなら略式を選ぶと無難

仏式の葬儀をあげるなら、参列者としても親族としても、葬儀やお仏壇でのお勤めにおいて数珠を使う機会は多いものです。
参列する際に、普段自宅で使っている数珠を持って行くかどうかで悩んでいる人をたまに見かけますが、自分が日常的に使用している数珠をそのまま葬儀に持ち込むことは、まったく問題ありません。

仮に、社会人になってから葬儀に参列した経験がなく、今後に備えて数珠を用意することを考えているのなら、ほとんどの葬儀で使える「略式数珠」を用意しておきましょう。

人から数珠を借りるのはマナー違反

自宅にお仏壇がなく、急なことで数珠を用意できなかった場合は、そのまま出席・御焼香しても差し支えありません。
しかし、参列者や親族から数珠を借り、そのまま御焼香を行うのはマナー違反です。

数珠を持つことには、魔よけ・厄除けなどの意味があります。
よって、数珠とは自分だけのために使用する仏具と言えます。

大きな斎場であれば、現地に売店を構えていることもありますから、そちらで購入するのも選択肢の一つです。

この記事のまとめ

仏教的価値観においては、一つひとつの仏事や作法に、深い意味が込められています。
御焼香もまた同様です。

お香を指でつまんだり、手を顔の前にもってきたりといったような、動作の一部的なところだけ覚えているけれど、正しい動作やマナーは知らないという方は多いはずです。

お通夜・告別式は、久しぶりに集まった親族や、遠くから駆けつけてくれた参列者の方が、最期のお別れをする場所です。
一人ひとりが思い思いの別れを気持ちよく済ませられるように、正しいマナーを身に付けておきましょう。

  • 公開日:2019.08.08
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:葬儀

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