よく聞く「忌明け」とは?をおさらい。
挨拶状の書き方などの基本とルール・マナー
慌ただしかった葬儀が終わり、故人とのお別れを済ませて悲しみと向き合ったら、参列者の方々に改めてお礼を伝えなければなりません。
一般的には、いわゆる「忌明け」の時期を迎えた段階で、挨拶状をお出しするのが通例です。
現代では、葬儀後のお礼状とは別に、香典返しのタイミングで挨拶状を送るケースが増えてきています。
そのため、一般的な時候の挨拶と少々の近況報告で済ませようと考える人もいるようですが、あくまでも仏事の一環であることから、おろそかにはできません。
この記事では、忌明けを迎える際の挨拶状の書き方・ハガキや封筒の違い・印刷と手書きの違いなど、挨拶状に関するルールについてご紹介します。
忌明け(きあけ・いみあけ)とは?
まずは、忌明けの時期や意味について確認しましょう。
時期をイメージできている人は多いと思いますが、細かいことはよく知らないというケースも多いため、特に覚えておきたい基礎知識をまとめました。
忌明けとは、忌中の終わりを指す
忌明けとは、各家において「喪に服す時期が終わった」状況を指しています。
特に日本で分かりやすい例を挙げるため、仏教を例にとって説明します。
仏教において、故人が亡くなってから極楽浄土へと旅立つまでの時期を「中陰」と言います。
この時期は、閻魔大王が七日ごとに故人を様々な観点から裁き、最終的に極楽浄土へ旅立てるかどうかを判断します。
最終的な結論が出る時期は「四十九日目」で、これがいわゆる仏事の四十九日として知られています。
それまでの間、遺族は故人が極楽浄土に行けるよう供養し、その供養期間は忌中(きちゅう)と呼ばれます。
宗教によって経過日数に違いがある
忌明けという習慣自体は、仏教に限らず、他の宗教でも同様に存在します。
しかし、宗教によって忌明けまでの経過日数は異なる点に注意が必要です。
仏教では、四十九日を忌明けの基準としていますが、神道では五十日(五十日祭)が忌明けに該当します。
神道では閻魔大王による裁判という考え方はなく、あの世に旅立つため五十日をかけて魂を清めるという目的があります。
また、神道における魂磨きのタイミングとして、十日・二十日・三十日・四十日と、十日ごとに祭を行うことも特徴です。
キリスト教もまた仏教徒は違い、宗派にもよりますが、あまり厳密に日数を決めて集会等を行うことはありません。
カトリックでは一年に一度の命日が追悼ミサの時期で、プロテスタントは亡くなってから一ヶ月目が「召天記念日」となり、その後に式典を行う決まりは特にないものとされています。
もっとも、教会側で定めたルールもありますから、詳細は事前に確認しておきましょう。
今後の仏事につき色々なことが動き出す時期
宗教・宗派問わず忌明けについて役割をまとめると、今後の仏事や行事につき、色々なことが動き出す時期と考えてよいでしょう。
忌明けを迎えるまでは、精神的に故人が亡くなったことを受け入れにくいかもしれませんが、四十九日を過ぎると多くの人が心の整理を付け、忌明け後の仏事に臨みます。
遺骨を埋葬するタイミングは家庭により異なりますが、その多くは忌明けだと言われています。
お墓だけでなく、納骨堂に預ける場合も、同様のスケジュールが組まれます。
忌明けには、葬儀に足を運んでくれた人に挨拶状を出す
忌明け後は未だ喪中ではあるものの、大切な人の死を乗り越え、これからも続く人生に向けて準備を進める段階に移ります。
前に進むためにも、葬儀に協力してくれた・参列してくれた人々に対し、正しいマナーを押さえて挨拶状を出したいものです。
正式には封筒を使うが、略式としてハガキの送付も可
挨拶状を送付する場合、正式なマナーとしては封筒を使うのが正解です。
ただし、二重封筒は「不幸が重なる」などの意味合いでとらえられるリスクがありますから、避けるように気を付けましょう。
封筒を使う場合、その封筒の大きさに合わせて、便せんは二つ折り・三つ折りにしましょう。
できれば、開封する際に取り出しやすいよう、折った方が開く側にあるのが理想です。
また、葬儀社などにセットで依頼している場合、ハガキで挨拶状を送ることもあるでしょう。
こちらは礼儀としては略式のため、ハガキを使うなら手書きを選んだ方が丁寧です。
ただ、家族・親族関係によっては、あまり堅苦しく考えていないところもありますから、挨拶状用の簡単なカードを選んで送るのも一つの方法です。
逆に、会社関係の人に数多く参列していただいたなら、礼節をわきまえた対応を心がけ、封筒での送付を考えましょう。
印刷よりも手書きの方が丁寧
便せんを使うにせよ、ハガキを使うにせよ、できれば印刷ではなく手書きを選んだ方が丁寧です。
とはいえ、多数の来客に対し一言ずつ添えるだけでも忙しくなるはずですから、無理のない範囲で構いません。
例えば、特に故人と親しかった人には手書きで一筆添え、そこまで深い付き合いではなかった人には印刷物を送るといった対応が考えられます。
署名を入れるという方法もありますが、わざわざ署名だけ入れられても戸惑うだけでしょうから、人によってメリハリを付けた対応を意識することが肝心です。
薄墨は必須ではない
忌明けを迎えるまでは忌中にいるわけですから、マナーとしては薄墨を使うというイメージがあります。
しかし、忌「明け」というくらいですから、忌中は過ぎているため、薄墨を使う必要はないという意見が一般的です。
もちろん、薄墨を使うことが間違いではないため、結局のところどちらでも構いません。
人によっては、本文に薄墨を使い、封筒の表書きは通常の墨を使うケースもあってまちまちです。
自分が挨拶状を用意する場合、文字に関しては「墨の色を指定することはない」ことだけ押さえておき、内容をきちんとまとめることに集中しましょう。
挨拶状を書く際の注意点
実際に挨拶状を書く際、簡単な挨拶を書き記せば問題ないと考えている人も多いでしょう。
しかし、仏事に関係している以上、その内容や書式につき、細々とした取り決めがあります。
人によって大きく内容を変える必要こそないものの、仏事ならではの注意点がいくつか存在します。
以下に、主なものをご紹介します。
句読点を使わない
普段、文章を書く際に私たちが意識するのは「句読点」です。
句読点を使わなければ、文章が読みにくくなり、誤読の可能性も高まるからです。
しかし、忌明けの挨拶状では、句読点を用いないというルールが設けられています。
理由はいくつか挙げられますが、葬式がセレモニーという点から考察すると、セレモニーが「滞りなく行われる」性質を持っていることが大きな要因と考えられます。
冠婚葬祭に関する案内や挨拶に関しては、原則として句読点を用いないのが基本的なルールとなっていることから、句読点に「途切れる」ニュアンスが含まれるから避けていると考えると筋が通ります。
他にも、広く伝わっているものには以下のような説があります。
- 古くは書状を筆で書いていたことから、句読点を付ける習慣はふさわしくないという説
- 句読点は読み手のことを考えたものであるから、参列者に送る文章に句読点を付けると、参列者は文章読解力がないという意味に捉えられるからやめるべきという説
どちらも、よくよくイメージすれば間違いとも言い切れませんが、やはり仏事でゲンを担ぐ意味合いが強いものと思われます。
とりあえず、ルールとして句読点を付けない、という点だけ頭に入れて、文章作成にあたりましょう。
忌み言葉を避ける
葬式の現場でもそうですが、不幸があった際、いわゆる「忌み言葉」は避けなければなりません。
具体的には、不幸が「繰り返す」・「重なる」などの表現をする言葉を、挨拶状に用いることを控えます。
一例を挙げると、続々と・再々の・重ね重ね恐縮ですが、といった表現が該当します。
要するに「悲しみが続く」ことを連想させるような表現を避けましょう、という理由です。
ビジネスシーン・プライベート問わず使い慣れている言葉もあり、選び取るためには意識しなければ難しいのですが、使ってはいけない言葉について理解し、言葉選びを慎重に行うことが大切です。
その上で、変な言い回しにならないよう気を付ける必要があります。
困ったときは文例を参考にする
自力で文章を作成しようと思うと、細かい表現に気を遣いながら書くのはなかなか難しいため、困ったら文例(テンプレート)を参考にしましょう。
全て同じようにまとめる必要はなく、最低限外してはいけない部分をまとめれば十分です。
文例は多数あるため、確認する場合は自分の宗教・宗派にあったものを選び、そこから必要に応じて表現を工夫します。
仏式を例にとると、以下のような内容が一般的です。
テンプレートの例文紹介
謹啓
先般 故 △△ △△(俗名)儀 葬儀に際しましては
御多忙の中にもかかわらず御会葬を賜り
かつ丁重なるご厚志を賜り
心より厚く御礼申し上げます
おかげをもちまして ### 月### 日に四十九日の法要を滞りなく営み
忌明けを迎えることができました
つきましては供養のしるしとして心ばかりの品をお届け致しましたので
何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
本来であれば拝眉の上御礼申し上げるべきとは存じますが
失礼ながら書中をもってご挨拶申し上げます
敬具
令和### ### 年### 月### 日
住所 ### ### 市### ### 区### ###
喪主 ### ### ### ###
親族一同
注意点として、挨拶状では故人の俗名を使う点が挙げられます。
仮に戒名を入れたい場合は、四十九日の法要を問題なく行ったという件の前に「### ### の四十九日の」という形で書き加えるとスムーズです。
この記事のまとめ
忌明けの挨拶状を書く場合、葬儀の席に比べると気持ちも落ち着いているため、比較的軽い気持ちで文章を書けると思います。
しかし、参列者に失礼のない内容を書かなければなりませんから、事前に注意点を把握しておかなければ、赤っ恥をかいてしまうかもしれません。
また、忌中は過ぎても、未だ喪中であることを忘れてはいけません。
故人の安寧を祈り、故人に恥をかかせないようにするためにも、最低限のマナーは押さえておきたいものですね。