最近話題になる「エンディングノート」とは?
その基本や特徴、基本的な書き方と、書く際の注意点

  • 2019.10.21
  • 2020.04.17

終活・準備

誰しも、人生の最期を迎える場面では、病気などの理由で正常な判断が難しかったり、思うように身体を動かせない状況に遭遇する可能性があります。

そのような状況を想定して、自分の死後、家族や周囲の人に迷惑をかけないようにするため、エンディングノートを書こうと考える人が増えてきています。

今回は、そもそもエンディングノートとは何か、なぜエンディングノートが必要なのかなど、実際に書く際の注意点と合わせてご紹介します。

そもそも、エンディングノートとは?

エンディングノートという単語自体、あまり聞き慣れないという人も少なくないと思いますので、以下にエンディングノートの概要をお伝えします。
法的文書ではないため、連絡帳として利用する場合もあれば、自分の過去を振り返る目的で書く場合もあるようです。

「自分に関する情報」を書き残すためのノート

エンディングノートは、自分が納得のいく最期を迎えるため、自分自身についての情報を書き残すためのノートです。
遺族にとって必要な情報を書き出すために使う人が多いものの、自分を振り返る日記帳のように使う人もいるようです。

人生の終わりを迎える際には、過去の記憶が走馬灯のように流れると話す人がいるように、死ぬときには多くの人が過去を振り返るものと考えられています。
よく「年寄りは昔のことをよく覚えている」と言いますが、自分が輝いていたときの記憶・大切にしたい記憶というものは、誰にでもあるものです。

しかし、いずれはその記憶も年齢とともに風化していくおそれがあり、それらを書き残すために、エンディングノートが活用されます。
具体的に何を書くべきか分かるように構成されているノートもあり、あまり「書くこと」に慣れていない人でも、書きやすいのが特徴です。

遺言書と違い、法的な書き方のルールが定められているわけではない

人が自分の死に向けて用意する書面としては、代表的なものに「遺言書」があります。
自分が亡くなった後の財産等について記すための書面であり、民法で書き方が規定されており、法的な拘束力もあります。

これに対してエンディングノートは、主に自分が主体となって書くもので、人生の記録に通じる部分が大きいものです。
これまでの人生で起こったこと・家族への感謝など、テーマも自由です。

また、遺書を補完する意味合いとして、財産の目録など具体的な情報をまとめておけば、遺族の混乱を予防する目的にも使えます。
かなり自由度の高い書面になるため、遺書と違って堅苦しさを感じさせません。

家族への負担を減らす・人生を振り返るためなど、書く理由も人それぞれ

日本では、エンディングノートを書く法的義務がないことから、特段ノートをまとめる必要はありません。
しかし、人が一人亡くなった後で遺族がやるべきことは幅広く存在し、さらには故人本人しか知らないことも意外と多いものです。

代表的なものに「銀行預金」の情報があります。
相続時に細かい情報が必要になってきますし、場合によっては借金が発覚するかもしれません。

また、そもそも故人が持っていた金融資産全てを、家族が知らされていない場合もあります。
こういった情報を一覧にしておけば、いざ相続の段になったときスムーズに手続きを進められますし、揉めにくくなります。

ちなみに、遺言書を作成した場合、その場所をエンディングノートに書いておくという方法もあります。
意外とありがちなのが、せっかく遺言書を作成したはいいが、しまった場所を遺族が知らされていないというケースです。

遺言書の存在自体を知らないまま手続きが進んでしまうリスクもありますから、口伝だけでなく書面でも場所を書き記しておいた方が、遺族にとっても分かりやすいでしょう。

エンディングノートに、具体的には何を書けば良いのか

エンディングノートの概要が分かったところで、書き記す内容を具体的にまとめていきましょう。
正直「ここまで書く?」というものもありますが、実際に書き出してみると、本来書こうとしていた内容から脱線してしまうことも珍しくありません。

風呂敷を大きく広げておくことで、結果的に書くべきことを漏らさず書けるようになるため、今回挙げたもの以外でも構いませんから、あまり決め込まずに書き出していきましょう。

自分史

おそらく、エンディングノートを書き始めるにあたって、もっともポピュラーなテーマの一つです。

家族に知っておいて欲しい思い出や嬉しかったこと、葬儀の案内状などを送る際に必要な交友関係・お世話になった人への感謝の気持ちなど、書けることは何でも書き出していきます。

文章としてまとめられないようであれば、箇条書きのような形で残しておくだけでも、遺族としては葬儀の取っ掛かりになります。
可能であれば、その人との関係性や、葬儀の案内を送るべきかどうか、電話番号・住所といった連絡先など、プチ情報を書いておくことをおすすめします。

資産に関する情報

こちらも、エンディングノートをまとめる際には、比較的書きやすいテーマになるでしょう。
サラリーマンなら、現時点で実際に所有している資産情報をまとめるのは、それほど難しいことではありません。

しかし、株式・不動産・外貨・仮想通貨など、各種資産を保有しているようであれば、その情報はきちんと伝えておかなければなりません。

それぞれで相続にあたっての手続きが必要になってくるため、何が・どこに・どれだけあるのか十分に知らない状態で相続を検討すると、遺族が遠回りをしてしまいます。

少額の資産があるなら、相続ではなく毎年の贈与を検討した方が、結果的に節税となるケースもあります。
比較検討の材料としても、情報は生前に多くまとめておいた方が有利です。

ID・パスワード

デジタル化が進む世の中では、紙面・書面だけが契約の全てとは限りません。
スマートフォン・パソコンを経由して契約しているケースは、往々にして存在します。

このような場合、アプリ・有料ソフトの契約解除など、ひょっとしたら自分自身でさえ忘れているものがあるかもしれません。
エンディングノートを書くことをきっかけにして、記憶を洗い出すのもよいと思います。

具体的には、以下のようなサービス・情報を取り扱う際のID・パスワードが該当します。

  • 仕事上の資料を保管したクラウドストレージのID
  • 契約中のアプリ、サイト情報
  • 仮想通貨のウォレット
  • インターネットバンキング

ここでの注意点ですが、生前ないし死後に悪用されるおそれがあるため、直接ID・パスワードを書くことはおすすめしません。
信用できる人にだけ分かるように、暗号を残しておくことをおすすめします。

なお、パソコン・スマホなどに入っているデータも同様で、必要でなければ初期化で構いませんが、重要なものは別に分けておきたいところです。
専門家や電子機器に詳しい親類などに、話を通しておくのもよいでしょう。

自分の身の振り方(死に向けた今後のこと)

エンディングノートは、自分の死後に読まれる遺言書とは違い、生きている間に自分の意思を残すことが書く目的となります。
よって、死に向けた意思表示としての意味合いも持ちます。

具体的には、介護の問題・延命措置・臓器提供の意思など、自らの意思をエンディングノートで表明しておくと、遺族が対応に苦慮しません。
普段から、自分の身の振り方について家族に話を通しておき、最終的に書き出せるところまでまとめましょう。

また、葬儀社のこと・お墓に関することなど、葬儀・供養の話を書き記しておくことも大切です。

特に、お墓を新しく作る場合は、予算や親族の意見なども少なからず関係してくることから、手元供養などの比較的先進的な考え方は、自分の意思を強要しないよう注意が必要です。

エンディングノートを残す際の注意点

ノートをつけていくと、自分だけで書きつづっていることから、誰かが読むということを忘れがちです。
どのような理由であれ、ノートを残す場合は、読む側の立場を考えて書くことを意識しましょう。

自分の人生を振り返る際の注意点

純粋に、自分の人生を振り返り、死に向けて心の準備を整える目的でエンディングノートを書きつづる場合、それを死後「家族が見る」ことを想定して書かなければ、要らぬ誤解を招く可能性があります。

昔話を思い出す過程は重要ですが、配偶者や子どもが目にしたとき、ショックを受けるような出来事は書かないようにしましょう。
仮に、夫もしくは妻と出会う前の恋愛に関する話を書いたとしても、それは配偶者や子どもには関係のない話ですから、読んで気分を害してしまうリスクもあります。

自分のことを書くのは当然ですが、自分のそばにいてくれた人の目線を忘れないようにしたいものです。

また、一度書き終えた内容は、定期的に見直しておくと、思わぬミスや書き漏れなどを防ぐことができます。
自分以外の誰かの目に触れる前に、きちんとチェックしておきましょう。

遺族の面倒を避ける・無益な争いを避けるための注意点

遺族間の相続に関するゴタゴタ・無益な争いを避けるには、エンディングノートに「法的な力がないこと」を理解しておく必要があります。
全くもって効果がないとは言い切れませんが、やはり法的拘束力を求めるなら、遺言書は必要です。

基本的に、遺言書は「遺産の相続」を故人の希望通り行うための仕組みです。
相続人の廃除・相続分の指定・遺産分割方法の指定など、書けることのほとんどが遺産に関することです。

しかし、それらも含めてエンディングノートにまとめても、残念ながら希望通りに事が進むとは限らないのです。
遺族が遺産相続も含め、故人の希望を実現するためには、遺言書とエンディングノートの効力の差を理解し、それぞれを用意することが大切です。

認知症など、記憶が失われることに備えるための注意点

エンディングノートを書き終えた後、それがどこにあるのか、自分も含めてどこにしまったのか分からなくなってしまうと、せっかく書いた意味がなくなってしまいます。

よって、少なくとも自分が生きている間は、収納場所を覚えておく・記録しておく必要があります。
しかしながら、時間が経過する中で、認知症など何らかの事情により、記憶が失われる可能性があります。

そこで、家族が共有する場所・誰でも分かる場所に収納しておきます。

何よりも大事なのは、エンディングノートを書いたこと・エンディングノートが存在することを、きちんと家族に伝えておくことであり、書いただけで終わりにせず、見つけてもらうことも想定して、ノートがあるという情報を伝えるようにしましょう。

この記事のまとめ

エンディングノートは、最近になって話題になってきたキーワードの1つになります。
終活というテーマが目立つようになって、書く人も増えてきた一方、何を書けば?と悩む人も多くいるのが実情です。

そんなエンディングノートですが、人によって書く目的が異なります。
しかし、どのような内容を書くにせよ、書いた内容は家族が見つけて読んでくれます。

財産管理の面で言えば、遺産相続などの局面で資料として重宝する場合も想定されます。
遺言書と違って法的拘束力はないものの、自分と家族のため、残しておく価値はあるノートと言えるでしょう。

  • 公開日:2019.10.21
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:終活・準備

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