よく聞くけど知ってるようで知らない「檀家」
檀家になる意味とメリットやデメリットについて
歴史の授業などで、「檀家制度(だんかせいど)」とか「寺請制度(てらうけせいど)」などという言葉を聞いたことがあると思います。
檀家という概念は、現代においても広く日本中に知れ渡っており、葬式の折や葬式を意識するようになってから、その存在について考える家が多いようです。
実際のところ、お寺のお世話になる家のことを「檀家」ということは分かっていても、その仕組みはどうなっているのかよく分からないという人は多いようです。
今回は、知ってるようで深くは知らない、現代の檀家についてご説明します。
檀家になるとはどういうことか
まずは、檀家になることの意味について、過去から現代までの流れを確認していきましょう。
古くからある制度ということもあり、日本人にとって理解するのはそれほど難しくないものと思われます。
檀家とは、あるお寺に所属する家のことを指す
檀家とは、お寺が葬祭供養を取りまとめて行うことを条件に各戸と契約する「檀家制度」において、お寺側と契約する家のことです。
簡単に言うと、一度檀家になれば、家の側はお寺に対し「祭祀に必要な費用」を支払う代わりに、お寺がその家の「祈り事・供養の面倒」を見てくれる制度です。
もともとは、江戸幕府が宗教統制のために檀家制度を取り入れたことがきっかけで、祖先崇拝・家崇拝の根拠となった制度でした。
さらに古いところでは、鎌倉時代以前の権力者たちが仏教を信仰していたことから、お寺やお坊さんを護る立場の家のことを指していました。
明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により、形式上はなくなった
江戸時代以前、お寺は葬祭供養の一切を請け負っていたことから、檀家とのつながりは非常に強いものでした。
国民の信仰心が強かったこともあり、制度が導入されてから飛躍的に仏教は広まったものの、寺院が社会的な強さを求めて経営に熱心になると、その信仰は次第に形骸化していきました。
やがて、僧侶のモラルが低下し腐敗が進む中で、江戸時代末期から明治維新への流れを受けて、廃仏毀釈の動きへと進んでいきます。
これにより、多くの寺院が被害を受けたものの、その動きが日本における仏教の原点回帰につながり、現代の檀家の流れを作ったという声もあります。
現代においても檀家制度は存続しているが、法的な義務はない
江戸時代のような厳密な檀家制度は廃止されたものの、先祖供養自体は日本でも途切れることなく続いていたため、寺院と檀家のつながりは現在でも存続しています。
しかし、この関係性について法的な義務はないことから、地方から都会への人口流出に伴い檀家も減少するという現象が見られます。
地方によっては住職のいないお寺が目立つようになり、寺院の経営が成り立たない地域も見られるようになりました。
かと言って、市営墓地・公営墓地・納骨堂などが発展した現代では、過去の例にならって檀家を受け入れるのは難しく、募集という仕組みを設けていないお寺も珍しくありません。
よって、檀家という仕組み自体が形骸化する傾向は進んでいるものの、死後の安寧を求めてお寺にやってくる人は後を絶ちません。
全国的には未だその存在を必要としている世代が少なくないため、ニーズは一定数存在していると言えるでしょう。
檀家になったらどんなメリットがあるのか
細かい取り決めは宗派やお寺によって異なるものの、檀家になった家には以下のようなメリットがあります。
檀家の世話をするお寺のことを「菩提寺」と言いますが、菩提とは悟りのことであり、先祖の冥福を祈るにはこの上ない環境と言えそうです。
葬儀や法事の分からないことをすぐ聞ける
葬儀を迎えたとき、多くの家族は戸惑い、専門業者に諸々を依頼します。
これに対して、檀家となって菩提寺がバックに控えている場合、仏事に関するあらゆることに対応してくれます。
もちろん、葬式をあげることについても、事前に速やかに相談できます。
葬儀に関することは、毎日セレモニーに参加していない限り、まず間違いなく一般人は記憶が飛んでいます。
多くの人が葬儀に関わる場合、それは参列者として葬儀に参列することになりますから、喪主となった時の葬儀に関する振る舞いが全く分からないことも珍しくないのです。
それでも葬儀の場合は、何度か同じような場面に遭遇することから、大まかな流れは覚えていると思います。
これが法事・法要になると、おそらく自分で全ての式次第をイメージして遂行するのは難しいでしょう。
このような問題に対し、菩提寺の住職はその道の専門ですから、的確に答えて供養もつつがなく行ってくれます。
葬儀・法要について悩まずに暮らせるというのは、親族関係の付き合いが深い家ほどありがたく感じられるはずです。
ご先祖様を慰めるには最上の環境
市営墓地や市営納骨堂に遺骨を安置した場合、年に何回お墓参りに行けるかは、そのときの忙しさや体調に左右されます。
そのため、今年は1回しかお墓参りできなかった・きちんとお墓を清掃できなかったなど、せっかくお墓参りに行っても悔やまれる結果になることも少なくありません。
しかし、檀家になって菩提寺の敷地内にお墓を建てれば、家族の代わりに住職が供養を行ってくれるようお願いすることもできます。
それ以外にも、寺院内での法要や一括法要といった、やや特殊な対応も考えてくれます。
檀家に対するお寺の対応は、葬儀社を経由する場合に比べて柔軟であり、寺院の敷地にお墓がある分丁寧な供養を行ってくれます。
先祖代々の供養の習慣を大切にしている家では、これ以上ない供養の環境と言えるでしょう。
お盆・お彼岸には優先対応
毎年お寺が忙しくなる時期というのは、お盆・お彼岸の時期です。
故人によって違う命日とは別で、お盆・お彼岸は日本中の家庭で同時期にイベントが行われます。
このとき、檀家になっていれば、住職は檀家を優先して読経してくれます。
檀家でない一般家庭がお願いすると、日程をずらして欲しいとお願いされることが多いため、家族・親戚が集まってお盆を過ごす家なら檀家になった方がメリットも大きいでしょう。
とはいえ、核家族化が進む現代においては、そこまで重要視されない問題でもあります。
自宅が本家の場合・近所に親戚が多いなどの事情がない限りは、意識しなくてもよいメリットかもしれません。
檀家になったらどんなデメリットがあるのか
お寺と檀家契約を結ぶということは、すなわち「葬儀・法要・供養に関する専属契約」を結ぶことを意味します。
それだけに、お寺との関係維持にかかる費用や、付き合いの面での深いつながりが、現代においてデメリットとなる可能性があります。
毎月・毎年の費用がかかる
檀家になった場合、お墓は原則としてお寺の敷地に建立します。
ただし、スペースがない場合や予算の都合上、市営墓地にお墓を構える場合もあります。
新たに檀家となる場合、お寺に入檀(にゅうだん)するためのお金を支払います。
これを入檀料と言い、相場としては10~30万円となります。
契約ごとなので、その際に墓地や檀家契約に関する契約書を交わす場合があります。
位牌堂などを借りて位牌を安置する場合も初期費用を必要とするため、どのような形であっても、檀家になるためにはまとまったお金が必要だと覚えておきましょう。
また、墓地の管理料・清掃料も、年単位で5千円~2万円ほどかかりますから、支払いに備えて、月単位で積み立てておくと安心です。
お寺の行事・毎年の法要では、お布施・お車代などを包みますから、家によってはその分の蓄えを用意すること自体が難しい場合があります。
どのお寺にお願いするにせよ、費用についてしっかり確認した上で、入檀を検討しましょう。
「寄付」は義務ではないが、必須と考えるべき
もともと、檀家制度はお寺への寄進が関係しています。
現代でもその傾向は変わらず、寄付という形で存続しているのです。
寄付が何のために使われるのかというと、お寺にある諸々の設備・建物が老朽化して建て替えや改築が必要になった際、その費用の支払いに用いられます。
管理料などの年単位・月単位でかかる費用で賄えればよいのですが、家賃と違い金額も少額であることから、それだけでは対応できないのが現実です。
檀家の思惑としては、お寺との良好な関係を保つために寄付金を支払うわけですが、金額は決して安くありません。
また、そのお寺の規模に応じて金額も変わってきます。
事実上、お寺との関係を円滑にするためには、寄付は必須と考えるべきでしょう。
お寺を離れるのが大変
お寺との専属契約を解除し、菩提寺からお墓を移すことを「離檀(りだん)」と言います。
この離檀が大変な手続きで、せっかくお金をくれる檀家を手放すまいと、かなり強引な方法で離檀を防ごうとするお寺もあるようです。
離檀を考える人は、菩提寺との関係は長いもののお墓に足を運ぶ家族がいなくなってしまったり、生活していくだけでお金が精一杯だったりと、それぞれの家庭の事情を抱えています。
そのような中で、毎月・毎年・折々のランニングコストがかさみ、離檀に至るというわけです。
離檀する場合、費用としては3~20万円ほどの料金を見積もります。
もちろんこれ以上の金額がかかるケースもあり、意地の悪い菩提寺は何とかして檀家を離すまいと画策するようです。
事態がより悪くなると、訴訟問題にまで発展するケースもあることから、穏やかな話ではありません。
新しく檀家になる場合は、このような例を踏まえた上で、入檀するかどうかを判断しましょう。
この記事のまとめ
人間の死に対する価値観が変わったことで、やがては檀家という概念自体がなくなるかもしれません。
仏教に対する思い入れのない家では、家族葬・自由葬・直葬など、葬儀につき様々なスタイルを選ぶようになり、供養の手厚さに対する考え方も、個々人でイメージが変わってきました。
お寺を選ぶなら、誠実・丁寧な住職かどうかを見極めた上で、離檀も想定した話ができるところを選びましょう。
もちろん、日本に先祖を敬い故人を偲ぶ習慣がある限り、檀家制度はひっそりと続いていくはずです。
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