よく耳にする「菩提寺」について。
菩提寺の基礎と由来や特徴とメリット・デメリット
葬儀関連で耳にする事はあるけれどよくわかってないという代表格の1つに「菩提寺」があります。
菩提寺は「ぼだいじ」と読むものですが、意外と知ってるようで知らないという方も多いかもしれません。
初めて葬式を行う際、菩提寺についてよく知らない場合は、多くの方が葬儀社を経由してお坊さんにお経を読んでもらうと思います。
そこで、今後の供養やお墓の問題などを相談し、市営墓地などを選ばずお寺の墓地で供養をお願いすることにしたら、今後そのお寺は「菩提寺」となります。
現代では、費用の面から市営墓地や納骨堂を選ぶ人が多いものの、しっかりとしたお墓を建てたいと考えている人にとっては、未だ菩提寺の墓地も魅力的なものとして人気があります。
今回は、そんな菩提寺に関するあれこれを、由来・特徴・メリット・デメリットといった視点でご紹介していきます。
あらためて、菩提寺とは何なのか
まず、日本における菩提寺がどのようなものなのか、現代の意味やそもそもの由来について触れながらご紹介していきます。
日本人の宗教儀礼において、長年にわたり多くの魂を見送る役割を果たしてきたことから、誰でも一度聞けば合点がいくものと思います。
現代における意味は「代々の先祖」を祀るお寺のこと
現代において、菩提寺とは「先祖が代々祀られているお墓・位牌」を護るお寺のことを意味しています。
そのため、菩提寺に供養をお願いした時点で、その家は菩提寺の宗派に帰依する形となります。
帰依した家のことを檀家(だんか)と言い、檀家になることを入檀(にゅうだん)と言います。
入檀したら、およそ10~30万円ほどの入檀料を支払い、檀家契約書・墓地契約書といった書類に必要事項を記入します。
また、位牌を安置する位牌堂についても、初期費用として安置料にあたるものを求められる場合があります。
檀家になると、その家は墓地の管理料・寄付金・お布施などを折々で支払う代わりに、住職による丁寧な供養を受けられます。
先祖の安寧を祈るのであれば、これ以上の供養はないものとされています。
菩提寺の「菩提」とは、仏陀の悟りを表す言葉
菩提寺の「菩提」は、あまり普段の生活では聞き慣れない言葉ですが、これは仏教用語の一つです。
日本語の意味として訳すと「智・道・覚」という単語になり、煩悩を断ち切り悟りに達した、仏陀の涅槃の境地を表す言葉になります。
その意味合いが転じ、俗に冥福の意味でも用いられるようになりました。
故人・先祖を供養をするお寺を菩提寺と呼ぶようになったのは、飛鳥時代の「氏寺」を菩提寺と呼び始めたことが由来と説明されています。
氏寺とは、当時の有力氏族・王族の信仰の場として設けられた寺院のことで、組織の維持発展を祈念して建立され、祈願所としての役割も果たしていました。
祖先の追善・供養を行うとともに、血族の結束を強化し、今後の発展を祈る目的で建立されたものと考えられています。
菩提寺の意義について
古代のように、特定の氏族に偏った供養の形ではないにせよ、菩提寺の重要な機能である「死者を弔う」ことは、現代でも形を変えて現存しています。
市営墓地や納骨堂に遺骨・位牌を安置したとしても、法要の際にお経を読んでもらう際には、お坊さんのお世話になることが多いはずです。
故人の死後の安寧を祈るため、子々孫々の繁栄のため、菩提寺は多くの家庭の命を見つめてきました。
葬儀や埋葬・供養の形態は時代とともに変わっても、「故人の冥福を祈る」という概念は、菩提寺がある限り崩れることなく日本にとどまり続けるでしょう。
菩提寺にお墓の管理をお願いする(檀家になる)メリット
宗派に限らず、菩提寺にお墓の管理をお願いした場合、以下のようなメリットを享受できます。
檀家と聞くと仰々しいイメージがあるものの、今後に備えて入檀しておくと、家族・親族に何かあったときの安心感は大きいものです。
家族・親族の供養に関する様々なサポートを受けられる
檀家になると、家族が亡くなってから初めての法要・お盆・お彼岸だけでなく、折々における供養に関する相談などについても、住職に速やかに相談できます。
多くの方が「葬儀事は一度経験すると覚えるから、檀家になる必要はない」と考えがちですが、いざ2度目・3度目を迎えると、その度に細かいことを忘れているケースは多いものです。
また、法事・法要に関しては、過去に参列者として経験していることと、喪主側になって経験することとの間に、記憶・経験違いが生じることも珍しくありません。
ホスト側とゲスト側、それぞれの違いをきちんと理解するには、専門家である住職に、気兼ねなく相談できる環境を整えた方が安心できるはずです。
繁忙期でも優先して回ってもらえる
お盆・お彼岸のように、どの家でも同時期に法要を行う時期というのは、お坊さんもてんてこ舞いの忙しさです。
よって、檀家でない一般家庭がお経を読んでもらおうとお願いすると、スケジュールが後回しになってしまうことが多くなります。
しかし、檀家になっていた場合、住職は檀家の法要を優先するため、大きな日程調整を要求されずにお盆を過ごすことができるのです。
親族を招いての法要ならなおさら、日程調整は重要になってきますから、家系的に本家となる方は檀家になることを検討してもよいのかもしれません。
手厚い供養ができる
ご先祖様・故人のために祈る習慣は、家族に心の拠り所を与えてくれます。
自宅で言えばお仏壇が中継地点となるものの、やはり最も故人の存在を身近に感じられるのは、お墓参りに行った時ではないでしょうか。
檀家になると、菩提寺の方で定期的に供養を行ってくれます。
また、一括法要・寺院内施設での法要など、柔軟な対応をお願いできる場合もあります。
市営墓地へのお墓参りだと、日々の生活でなかなか忙しく、年に1、2回行けるかどうか、というペースになる過程が多いようです。
しかし檀家になれば、事情があってお墓参りに行けなくても、お寺によっては住職に代わりに供養してもらうという方法もお願いできます。
ただ、現代では檀家制度の在り方も多様化しているため、明確に契約という形をとらなくとも柔軟に対応してくれるお寺は少なくないようです。
菩提寺にお墓の管理をお願いする(檀家になる)デメリット
檀家になることは、遺族の手間を省き、ご先祖様・故人への供養を丁寧に行えるメリットがある一方で、主にお金の問題を伴うデメリットも一定数存在しています。
以下に、主なものをご紹介します。
入檀料・護持費(管理費)などの支払いがある
檀家になると、お寺にある墓地スペースにお墓を建立することになります。
その際、ある程度まとまった費用を支払う他に、年会費にあたる費用も発生します。
先にご紹介した入檀料に加え、お墓の清掃管理・運営費用となる護持費の支払いが、年間5千円~2万円ほどかかります。
また、年間で何度か開催されるお寺の行事・毎年の法要などのお布施を支払うことも想定しなければなりません。
毎月・毎年の出費がそれ相応に大きくなるため、年金だけでは支払いが厳しいケースも珍しくなく、ある程度まとまったお金がなければ檀家を維持することが難しくなります。
現代において檀家となる家庭が少なくなってきているのは、人口の減少だけでなく、金銭面での負担も一因として考えられるでしょう。
檀家として寄付を求められる
檀家制度の特殊な一面として、お寺への「寄付」を求められる点が挙げられます。
お寺にある諸々の設備や建物について、建て替えや改築を施す場合、何らかの形で費用を捻出しなければなりません。
菩提寺の側としては、お通夜・葬儀の読経や戒名による収入が得られるものの、古いお寺などは建物自体が大きいことから、それだけでは足りなくなってしまう場合も珍しくありません。
よって、あくまでも任意ではありますが、お寺との良好な関係を保つため、寄付金を支払うケースが見られます。
具体的な金額はまちまちですが、1口を1万円とした時は、最低2口から受け付けるなどの条件を提示している菩提寺も見られます。
これを高いと思うか安いと思うかで、最終的に檀家になるかどうか判断することになるでしょう。
離檀する場合もお金がかかる
長年菩提寺にお世話になっていても、お墓に足を運ぶ家族がいなかったり、お金の面で支払いが辛くなってきたりすると、檀家として今後のやり取りを終えることを考えるケースが出てきます。
永代供養をお願いするという方法もあるのですが、宗派によっては永代供養を断られる場合もありますし、仮にできても公営墓地よりお金がかかるケースは多く見られます。
そこで、檀家をやめる(離檀する)ことを考える人が出てくるのは自然な流れですが、やはりここでもお金がかかります。
菩提寺には、いわゆる「離檀料」のような費用は設けられておらず、最低限かかる費用としてはお墓の魂を抜くための「魂抜き」です。
離檀にかかる費用の相場としては、概ね3~20万円といったところですが、金額が明確に決められているとは限りません。
また、菩提寺によっては離檀防止のため、高額の費用を請求したり、遺骨の移動に際し必要な書類の発行を渋ったりするケースもあるようです。
行政書士など法律の専門家を間に立て、お互いの妥協点を探るという方法もあるようですが、全額を支払わないようにするのは難しいようです。
そのため、新たに菩提寺と関係を結ぼうと考えているなら、今後のことを考えた慎重な判断が必要です。
この記事のまとめ
國學院大學の調査によると、2040年には寺院の1/3が消えてなくなるだろうと試算されています。
地方ではすでに空き寺が目立っており、建物が朽ちてしまったところも見られます。
現代におけるお寺の厳しい経営事情により、今後は檀家を囲う形での寺院経営は難しくなっていくものと考えられます。
それだけに、新たに入檀しようと考える人は少数派になりつつありますが、逆にその分だけ手厚い供養を受けられると考える人も出てくるかもしれません。
最終的に入檀を決めるにあたっては、そのお寺の住職の人柄を判断材料とするのも一つの方法です。
しっかりと話を聞いてくれる・丁寧に供養してくれる菩提寺を選びたいものですね。