似てるようで違うお別れ会や偲ぶ会とは?
お葬式との違いやそれぞれの基本と流れやマナー
一般的なお葬式と似たようなものに、「お別れ会」「偲ぶ会」といったものがあります。
一般人が行うケースは少ないですが、社会的に地位のある人・芸能人などの有名人が行い、度々話題になることがあります。
どちらも同じようなニュアンスでとらえている人は少なくありませんが、その認識は間違っており、特にお葬式とお別れ会・偲ぶ会との間には大きな隔たりがあります。
今回は、お葬式とお別れ会・偲ぶ会との違いについて触れつつ、概要や参加する際の基本・マナー・注意点などについてご紹介します。
まずは、お葬式の復習から
最初に、一般的なお葬式が、どういう理由から執り行われているのか、常識的な範囲から振り返ってみましょう。
葬儀・埋葬の歴史を紐解くと、原始時代にまでさかのぼってしまうため、あくまでも現代におけるお葬式についてご紹介します。
お葬式は、原則として故人を弔うために行うもの
一般的なお葬式というものは、遺族や参列者が「故人の死後の安寧」を祈って行うもので、故人が安らかに旅立てることを目的とした行事の一つです。
その窓口として、日本では長らく仏教が死者を弔う立場にいましたが、現代では信教の自由という背景から、数多くの宗教で葬儀の型が作り出されています。
お葬式には、家族・親族・友人といった故人と過去に親交のあった人々が、故人と最期のお別れをするという社会的な意味合いがありました。
そのため、故人に関わる多くの人が葬儀に参列するという文化が根付いており、会社で勤めている場合は関係者も数多く集まります。
他には、社会生活を営む中で、土葬をすると墓を動物に掘り起こされてしまう危険性もあることから、細菌・病原菌の発生を防ぐため、火葬も含めた葬儀の習慣を一般化したという見方もあります。
お葬式には、生活に根差した「死者埋葬の知恵」としての側面もあると言えるでしょう。
式次第が各宗教ごとに定形化されている
お葬式をあげる際には、故人や故人の家族が生前信仰していた宗教を基に、式を執り行います。
このときの流れは、葬儀社主導で行われた場合、実にシステマチックに進んでいきます。
仏式を例に挙げると、圧倒的な施行件数や実例に裏打ちされた、隙のない丁寧なサービスが展開されていきます。
また、多くの葬儀社で社員教育が行き届いており、遺族感情を刺激するような対応はほとんどないものと考えてよいでしょう。
神式・キリスト式も、セレモニーの流れはある程度決まっており、施行にあたり大きな混乱は生まれにくく安心感もあります。
そのため、あらかじめ決められたルールやマナーを守っていれば、詳しいことを知らなくても場に溶け込めるというメリットがあります。
自由度は低く、形式を守ることが重要視される
長年かけて培われてきた形式ということもあって、葬儀の席では遺族・参列者ともに振舞いの自由度は低くなりがちです。
焼香の手順・お坊さんのお経・挨拶・香典・電報など、決まったプログラムを時間の経過とともに消化していきます。
また、遺族・親族・参列者の服装も厳密に定められており、間違っても白のワンピースで参列する人は見かけません。
これは、葬儀に関する習慣が長年かけて人々の間に浸透したということでもあり、形式を無視した人はそれだけで目立ちます。
あくまでもフォーマルな儀礼であり、参加者が皆同じように振舞うことが優先される点で、葬儀は故人を主役としたイベントと言えるでしょう。
お別れ会・偲ぶ会の意味合いについて
続いては、葬儀と似て非なるもの、お別れ会・偲ぶ会についてです。
葬儀が故人を弔うために行われるのに対し、お別れ会・偲ぶ会は周囲の要望によって執り行われる要素が強いという特徴があります。
どちらも故人との別れを惜しむ点に変わりはありませんが、名称が違うことから分かる通り、お別れ会・偲ぶ会の間で若干違う点もあります。
一般人が開くケースは少ないため、参加する機会はそう多くないはずですから、概要を押さえておくと参加する時に不安が少なくなるでしょう。
お別れ会・偲ぶ会は、故人を愛した人たちが集う会
お葬式が公的なイベントであるのに対し、お別れ会・偲ぶ会は、どちらかというと私的なイベントに分類されます。
あくまでも、故人を愛した人たちが集うための会であり、堅苦しい雰囲気の集いではありません。
葬儀の席と比べると、規則と呼べるものは特にない催しが多く、簡単な挨拶やイベントなどはあっても、総じて楽しい会になることがほとんどです。
リラックスして会に臨める点も、一定の礼節・緊張が求められるお葬式とは違います。
お葬式が「祈る」ための場所なら、お別れ会・偲ぶ会は「語る」ための場所です。
主催者に招待され、故人を想う気持ちがあるのなら、気軽に参加することをおすすめします。
主旨やセレモニーの内容も自由
お別れ会・偲ぶ会の特徴としては、大まかな部分がほとんど定形的なお葬式と違い、会を開く主旨・セレモニーの具体的な内容なども自由に構成できる点が挙げられます。
あまりイメージすることはないかもしれませんが、広義には社葬・生前葬などもお別れ会・偲ぶ会の部類に含まれます。
コンセプトこそ決まっているものの、式次第やイベントの種類などは自由です。また、そもそも密葬などを先に行っているはずなので、遺骨はすでにお墓などに安置されていることがほとんどです。
よって、遺族らに気兼ねすることなく、会そのものを楽しみ、故人との思い出にひたることができます。
カジュアルな葬儀を求める一般人にも広まりつつある
ひと昔前には有名人に限られていた形態でしたが、堅苦しい葬儀をあげたくないと考える人が、お別れ会・偲ぶ会をあげてほしいと業者に相談する例も増えてきています。
あるいは、親しい友人・仕事の関係者の呼びかけによって、賛同者が集まって開かれることもあります。
お別れ会・偲ぶ会に絞ったプランニングを、オーダーメイドで行う業者も増えてきており、今までの葬儀のイメージに抵抗感を抱く人が目立ってきたとも言えるでしょう。
場所の選定なども斎場一択ということはないため、カジュアルな葬儀をあげたいと考える人にとっては、一般葬より身近に感じられるかもしれません。
ちなみに、お別れ会と偲ぶ会の違いは、基本的に呼称の違いだけであり、明確な定義があるわけではありません。
しかし、運営会社・組織によっては、密葬してから何日後に執り行うかで区別している場合があります。
具体的には、お別れ会なら密葬から30~40日後、偲ぶ会は期限が定められていないものを指す、といった定義です。
これは社会通念上スタンダードな解釈ではないため、名称についてはそれほど重要視する必要はないでしょう。
お別れ会・偲ぶ会の基本的なマナーや注意点
お別れ会・偲ぶ会は、基本的にはカジュアルなスタイルで行われるものですから、お葬式に比べて厳密なマナーがあるわけではありません。
しかし、多くの人が集まる場所だからこそ、守らなければならないマナーや心がけ・注意点なども存在します。
各種お葬式とは違い、一つひとつの動作レベルで決まりごとが設けられているわけではありませんから、そこまで堅苦しく考える必要はありません。
社会人として、常識の範囲で考えられる振る舞いをしていれば、問題ないと考えてよいでしょう。
基本は平服だが、カジュアル過ぎる格好は敬遠したい
お別れ会・偲ぶ会においては、いわゆる「準喪服・略喪服」の着用は不要です。
主催する側も、案内状には「平服でお越しください」と書いて送ることが一般的ですから、男性はダークスーツ、女性は黒のワンピースといったところが無難でしょう。
平服と指定されているからといって、あまりにカジュアルな服装で出向くと、結果的に周囲の雰囲気に溶け込めず浮いてしまう場合があります。
ドレスコードとしては、スマートカジュアル程度のレベルを意識しておいた方がよいでしょう。
香典・会費を求められるかどうかはまちまち
お葬式と同じように、お別れ会・偲ぶ会でも香典を支払う場合があります。
ただ、必要になるかどうかは会によって異なり、案内状に香典を辞退する旨が書かれているケースも見られます。
香典としてではなく、明確に会費として金額が設定されている場合もあります。
その場合は、必要な会費を準備すれば差し支えありません。
会費を求められた場合の相場ですが、概ね1~2万円程度を想定しておくとよいでしょう。
ちなみに、香典を包む場合は、一般的な仏式と同様に「御香典」や「御香料」などの名称で包みます。
お別れ会・偲ぶ会は、もともと無宗教葬に近いスタンスとなっているため、そこまで格式ばらなくても問題ありません。
会場がホテルという場合もあるため、TPOに即した振る舞いを心がける
お別れ会・偲ぶ会の会場は、斎場以外にもいくつか考えられます。
建物の敷地内に遺体・遺骨を運ぶことがないため、柔軟に会場設営ができる点がお葬式と異なります。
もちろん斎場を使う場合もありますが、多くはホテル・レストランなどで開催されることが多いようです。
この場合、会に参加する人以外の出入りもあることから、あまりに建物全体の雰囲気を壊してしまうような服装・立ち居振る舞いはNGです。
先ほど、喪服は控えるようにお伝えしましたが、それは会場面での配慮もあってのことです。
ホテルで結婚式が行われることは頻繁にあっても、葬式やそれに準ずるイベントを一般人が大々的に行うことは、まだまだ少数派です。
あくまでも、参加者としては楽しい会にすることを心がけるにとどめ、少なくとも会場外では暗い雰囲気を醸し出すような服装・態度は控えたいものです。
この記事のまとめ
以上、お葬式とお別れ会・偲ぶ会について、概要や違い・参加する際の注意点などについてお伝えしてきました。
一般的な葬儀に比べると、カジュアルなイメージで執り行われるお別れ会・偲ぶ会ですが、斎場を会場に選ばないことによる注意点もいくつか存在します。
やや特殊なイベントではあるものの、基本的には故人を想って参加する会ですから、社会通念上失礼のないようにしている限りは問題ありません。
会場の雰囲気に合った振る舞いと、故人を偲ぶ気持ちがあれば、参加者の資格はあるものと考えてよいでしょう。