知ってそうで知らない「香典袋の表書き」
宗派によって違う表書きの基本と書き方や注意点

  • 2019.11.18
  • 2020.04.17

葬儀

香典袋を用意する時、多くの方はコンビニ・文房具店などで、すでに表書きや水引が印刷されているものを選ぶことが多くなりました。
しかし、それほど親しくない間柄の人の葬儀に参列するならまだしも、特にお世話になった人の葬儀に参列するならば、それ相応の香典袋を用意する必要があります。

とはいえ、「香典袋の表書きなんて今まで書いたことがない」という人は多いと思います。
実際のところ、香典袋の表書きは宗派・宗教によって若干違いがあり、それを理解して使い分けている人も少数派です。

そこで今回は、宗派・宗教によって異なる表書きの基本の書き方や、表書きを書く際の注意点などについてお伝えします。
一度覚えてしまえば難しいことはありませんから、まずは宗派問わず利用できる方法を覚え、そこから例外を頭に入れると分かりやすいでしょう。

香典袋の表書きの基本

まずは、香典袋の表書きについて、基本的な部分をご紹介します。
宗派による違いは、大きく分けて浄土真宗とそれ以外の宗派と覚えておき、その他に宗教による違いがあるものと押さえましょう。

どんな宗派・宗教でも問題ない書き方

もっとも無難な表書きは「御霊前」です。
香典袋の水引をはさんで上部中央に書きます。

この御霊前は、仏教・神道・キリスト教問わず利用できる表書きのため、とっさの時に迷ったら、これだけでも覚えておくと対応が早いでしょう。
先方の家の宗派・宗教の状況は、親族以外はなかなか知る機会がないため、自分が会社の関係者に過ぎなければ把握するのも難しいはずです。

そのような時は、御霊前と書いておけば無難ですし、コンビニなどで手に入れようと思ってもすぐに揃えられます。
とっさの席で迷ったら、まず「御霊前」と覚えておきましょう。

同じ仏教でも、浄土真宗の場合は表現が少し異なる

香典袋の表書きが宗派により異なるケースは、実際のところそこまで細かく分かれていません。
古くからある宗派で言えば、浄土真宗かそうでないかで表現が異なる程度です。

浄土真宗では、人が亡くなった段階で即浄土に向かい、仏になると考えられています。
よって、霊という段階を踏まずに仏になることから「御仏前」もしくは「御佛前」と書くのが正式です。

ただ、もともと故人が浄土真宗であることを知らなければ、そもそも御仏前にするかどうかも判別できませんから、詳細が分からなければ御霊前でも失礼には当たりません。

事前に確認できる・知っている場合に覚えておくとよいでしょう。

神道・キリスト教独特の表現

神道・キリスト教でも霊魂の概念は存在しますから、御霊前と書いておくのが当たり障りのないところです。
しかし、神道・キリスト教には独特の表現があります。

まず、神道については「御榊料(おさかきりょう)」「御玉串料(おんたまぐしりょう)」「御神饌料(ごしんせんりょう)」といった表書きが用いられます。

これらのどれかを使い分けるということはなく、いずれかを用いていれば問題ないというのが基本的な考え方です。
ただ、良く使われているのは御玉串料が多く、現代においては特段使い分けはなされていないようです。

何か指定があれば、それに従うような形で問題ありません。

続いてはキリスト教です。
こちらの場合は、お香をたくことはありませんから、基本的に「御花料(お花料)」の表書きを使いますが、御霊前は問題ありません。

カトリックの場合、神父による聖書の朗読・説教が行われる「ミサ」と呼ばれる儀式があります。
そのため、「御ミサ料」という表書きも用いられます。

プロテスタントでは、御霊前は使用せず、「献花料」「忌慰料(きいりょう)」などという表現を用います。
これは、プロテスタントでは死後の魂は天に召され、神に仕えるものと考えられているため、遺族を慰める意味合いがあるからだと推察されます。

香典袋の表書き。書き方はどうする?

香典袋の表書きに、どのような文字を書くのかは分かりました。
続いては、どのように書けば失礼にあたらないかについてご紹介します。

字を書く場合は筆ペン・薄墨が基本

どの宗派・宗教であっても、日本において香典袋に字を書く場合、筆ペン・薄墨が基本です。
筆ペンを選ぶ場合も、葬儀用に使う薄墨のものがありますから、そちらを選びましょう。

字が下手で困っていて、パソコン・プリンタがある場合は、香典袋に印刷しても差し支えありません。
また、急な訃報で準備ができないような場合は、やむを得ずマーカーなどで書く場合もあります。

ちなみに、頻繁に自分の名前や慶弔関連の表書きを用意する必要がある場合は、あらかじめスタンプを購入しておくのも一手です。
ゴム印で安いものが用意でき、薄墨のインクなども売られていますから、探してみるとよいでしょう。

何人で香典を包むのかによって書き方が変わる

表書きに名前を書く場合、合計何人で香典を包むのかによって、書き方に違いがあります。

自分だけの場合は簡単で、香典袋の下部中央に、フルネームで自分の名前を書き入れます。
上部中央に書いた御霊前・御仏前などの文字と同じくらいの大きさだと、バランスがとれるでしょう。

友人・同僚同士で香典を準備する場合は、2人なら連名でフルネームを中央に書きます。
3名の場合は中央にバランスよく3人分の名前を書きます。

4名以上になると、さすがに全員をバランスよく書くスペースが確保できなくなるため、代表者1名の名前を書いた後、左側に「他○名」といったように書いておきます。

部署全員の香典を集めた場合は、「株式会社○○経理部一同」のように部署全員分の香典として書きます。

夫婦で出す場合、夫婦ともに故人と深い付き合いがあった場合は、夫の名前を中央に書き、その左横に妻の名前を書きます。
それほど親しくない間柄なら、夫の名前だけでも差し支えありません。

ケースとしてはそれほど多くありませんが、夫の代理として妻が参列する場合は、夫の名前を書いた後で左下に小さく「内」と書き添えます。

中袋がない場合は裏に住所・金額を書く

香典袋によっては、中袋がないものを使う場合があります。
このような場合、いくらお金を入れたのかを書き記すスペースが裏側にしかないため、香典袋裏・左下部分に住所と金額を書きます。

住所は代表者・会社のものなどを書けば問題ありませんが、お金の場合は漢数字の難しいものを使います。
具体的には、以下のような例となります。

  • 一→壱
  • 二→弐
  • 三→参
  • 五→伍
  • 七→漆
  • 十→拾
  • 千→阡・仟など
  • 万→萬

書く場所と漢数字の違いを押さえておけば、ほぼ間違えることはないでしょう。

ちょっと変わった習慣も。土地によって違う香典袋

表書きの書き方が分かったところで、続いてはちょっとイレギュラーな香典袋の選び方・書き方についてご紹介します。
通常は考える必要のないケースですが、地域によっては常識として捉えられているものも多いため、覚えておくと便利です。

また、遠方のため葬儀に参列できず、遠方から香典を送る場合の方法についてもご紹介します。

新生活の習慣がある土地では、左上にその旨を記載する

群馬県・北関東の一部地域において、葬儀の際に「新生活」という形で香典を包む場合があります。

この習慣が始まったのは戦後のことで、経済的に厳しい中で負担を少なくするため、葬儀の香典を減らして香典返しも辞退するという「新生活」運動が始まりました。

こういった習慣がある土地では、受付が「一般」と「新生活」の2種類に分かれています。
どちらを選んでも構いませんが、新生活を選ぶ場合、御霊前のところに「新生活」と書くのはNGです。

正しい書き方としては、御霊前と書かれた水引上部の左側に「新生活運動の趣旨に沿ってお返しを辞退致します。」と書きます。
あらかじめ印字された香典袋も売られているため、そちらを選んでも問題ありません。

黄色の水引を使う地域もある

京都府を中心とする習慣ですが、主に法事で黄色の水引を使う場合があります。
具体的には、四十九日・一周忌を過ぎた段階で黄色の水引を使うところが多いようです。

関東でも三周忌以降に黄色の水引を使うところがあるようですが、地域差もあるため、例外として覚えておくとよいでしょう。
特に、関西の法要に参加する場合は、念のため地元の人に確認しておいた方が確実です。

なぜ黄色が用いられるのかという理由は諸説ありますが、過去に冠婚葬祭で用いられていた色の位の中で黒が最も低い(弔事に使われる)ため、その次に位が低い黄色を使うことにより、少し意味合いを和らげる意図があるものと言われています。

主に仏式で用いられる習慣ですから、基本的には表書きに大きな違いはありません。
宗派によって御霊前・御仏前などを使い分けましょう。

遠方から香典を送る場合は現金書留を使う

亡くなった方の葬儀に参列したい気持ちはあるものの、遠方のため参列できないケースは珍しくありません。
北海道であいにく吹雪の日に葬儀が行われるような状況であれば、例えば四国などから参列しようにも飛行機は飛ばないでしょう。

このような場合は、現金書留を使って香典を送るという方法があります。
ただし、香典用の現金書留用封筒というものは存在せず、香典袋を現金書留用封筒に入れて送らなければなりません。

表書き・住所・金額などをきちんと書いた香典袋にお金を入れて、現金書留用封筒に収納して送りましょう。
ご祝儀・香典用の大きな封筒を郵便局で用意しているため、それを使えば問題ありません。

ちなみに、日本において香典を所定の口座に振り込むという習慣はありませんが、香典を代わりに届けてくれる「香典代行サービス」というものもあります。
どうしても時間が取れない場合、そのような方法も覚えておくと役に立つはずです。

この記事のまとめ

宗派・宗教によって、香典袋に書く表書きの内容は異なります。
ただ、プロテスタントなど一部を除いては「御霊前」で通ることが多いため、仏式・神式など日本で比較的メジャーな葬儀であれば、そこまで神経質になる必要はありません。

一部地域によっては、香典袋選びや表書きの内容が異なる場合もあるため、引っ越した際などに地域性の違いを押さえておくとスムーズです。
それでも分からないことがあれば、各地域の葬儀会社が相談窓口などを設けていますから、そちらに相談してみましょう。

  • 公開日:2019.11.18
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:葬儀

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