身内だからこそトラブルになりがちで悩む?
家族葬では誰を呼ぶ?呼ぶ側と参列側の判断基準
少子高齢化が進む日本では、多数の人を呼んで執り行う一般葬を負担に感じる人が増えてきています。
長生きすればするほど縁故の人が亡くなっていくため、気が付いたら自分の周囲に知り合いが一人もいなくなっていることも珍しくありません。
そこで、現代では親しい家族や親族だけで執り行う葬儀の形式「家族葬」が増えてきています。
少数で葬儀を行うため、遺族側の肉体的・精神的負担も軽くなることから人気を集めています。
故人も生前からそのような事情を理解し、自分が亡くなったときは小規模な葬儀で弔って欲しいと考え、プランを選ぶケースが見られます。
ここで問題になるのが「参列者への対応」です。
いくら故人が家族だけに弔って欲しいと考えていても、故人の人間関係に応じて「参加したい」と思っている人は何人か存在しているはずです。
また、万一想定していなかった人が参列した際に備えて、香典の準備は結局やらなければならないのかと、不安を感じる人もいるでしょう。
そこで今回は、一般葬と家族葬の違いに触れつつ、誰を呼ぶ・呼ばないのルール概要についてご紹介します。
一般葬と比較して堅苦しく考える必要はありませんが、相手の気持ちを考えた最低限の心遣いは必要と心得ておきましょう。
一般葬と違う家族葬の規模、連絡を入れる人の関係性について
まずは、一般葬と家族葬の規模についてお伝えします。
名前の通り、何となく【家族葬=家族だけで行う葬儀】だとイメージしがちですが、問題はその家族の範囲です。
同じ屋根の下で暮らしていた家族だけで葬儀を執り行うのが原則であるものの、お世話になった親族や友人に何の連絡もなく葬儀を終えるのは、その後の関係性に禍根を残す場合があります。
呼ぶ際の迷いを捨てるために、家族の延長線上にある親族・友人につき、基本的な基準を考えてみましょう。
家族葬自体が比較的新しい概念
家族葬という概念は、核家族化が進み、親族の数が減少したなどの理由から広まったという一面があります。
そのため、一般葬と違って古いしきたりや決まりごとが少なく、それが混乱を招く要因の一つとなっている点は否めません。
よって、明確なルールと言えるものが、未だあるようでない状況です。
逆に言えば、誰を呼ぶかは家族の意思にゆだねられるため、明確な決まりはないと言えるでしょう。
そうは言っても、具体的な基準がなければ、誰を呼ぶのか決断できない場合もあると思います。
そこで、まずは喪主を含む参列者人数の規模感から、どれだけの親族・友人を呼ぶかを考える必要があります。
総人数が10名以下の場合
まずは、そこまで多くの人数が葬儀に参列しない場合です。
故人の配偶者や子ども、子どもの配偶者、親、孫世代までが該当します。
遠方にいる場合、呼び寄せるだけでも費用がかかるため、疎遠なら孫であっても葬儀に参列しないケースも珍しくないようです。
逆に、特に親しくしている甥っ子・姪っ子がいたなら、あえて呼ぶ場合もあります。
親族間の親密度に応じて、参列者が厳選されると言えそうです。
総人数が20名以下の場合
20名以下の家族葬を想定する場合は、故人の兄弟姉妹とその配偶者が参列する規模になるでしょう。
兄弟姉妹が多いとまた事情は異なりますが、会場がそれなりに大きければ収容可能な範囲ではあります。
総人数が30名以下の場合
30名ともなるとかなりの人数ですが、親族で言うと故人のいとこ・甥っ子・姪っ子までが該当するものと考えれば、それ相応の人数になるでしょう。
あるいは、特に親しかった友人も含まれるかもしれません。
呼ぶかどうかを決める一つの基準は「迷い」
人数に応じた参列者を挙げてみましたが、実際に家族葬を行うとなると、やはりふるいにかける段階で「迷い」が生じてしまう場合はあると思います。
今は疎遠だったとしても、かつて別の地で一緒に楽しく過ごした記憶は、何年経っても忘れられないものです。
もし、葬儀に呼ぶかどうか悩む人がいたら、できれば呼んでおくことをおすすめします。
虫の知らせではありませんが、心に引っかかるものがあるような場合、故人が特に何かを伝えたい可能性もゼロとは言い切れないからです。
また、共通の友人がいる場合は、その人も一緒に呼びましょう。
二人のうち一人は葬儀に呼ばれなかったというのは、当人でなくても「何かあったのか」と勘繰ってしまいます。
親族はその傾向が強く、呼ばれていないこと自体が後々トラブルを巻き起こす可能性があるため、生前の故人の人間関係については、ある程度把握しておくことをおすすめします。
呼ばない人にも葬儀の報告は行うこと
家族葬の場合、そもそもが少人数で行うこともあり、呼ぶ人と呼ばない人の境界線を明確に区切っておく必要があります。
一般葬の場合は参列者の数が読めないため、香典返しなどを業者に依頼して用意することになりますが、家族葬ではせっかく来ていただいた未連絡の参列者をもてなすことができません。
よって、この人は来ないだろうと思いながらも葬儀案内を出すと、本当に来たときが大変です。
また、これは友人関係に多いのですが、家族葬という名称から参列を遠慮したり、参加すべきかどうか迷ってしまったりするケースもあるようです。
よって、葬儀案内は「必ず来て欲しい人」だけに送るようにします。
しかし、故人の訃報は何らかの形でお伝えしなければなりませんから、葬儀案内と訃報連絡の意味を混同させないよう、理解と工夫が必要です。
ちなみに、呼ぼうと思っている人の体調を気遣うなど、葬儀には呼ばないがいち早く逝去の報を伝えたい人がいる場合は、身内だけの家族葬にすること、参列は辞退することなどを丁寧に伝えましょう。
事後報告は弔問客への準備ができてから
家族葬を終えて、葬儀には呼ばなかったが故人と親しい間柄だった人に事後報告をする場合、自宅に弔問客がやって来ることを想定しておきましょう。
十分な準備ができていないのに事後報告を行ってしまうと、ばたつく中でお客様をお迎えすることになってしまいますから、無理のない時期を選ぶことが大切です。
とはいえ、あまりにも時間が空いてしまうのも問題ですから、目安として四十九日を迎えるまでには連絡できるようにしておきたいところです。
参列する側のマナー
続いては、家族葬へのご案内をもらい、参列する場合のマナーについてご紹介します。
身内や近しい人ばかりであっても、折々で「親しき中にも礼儀あり」を忘れないようにしたいものです。
葬儀案内を受け取った場合は参列する
まずは、参列する条件について、もう一度確認しておきましょう。
遺族以外は、一言で言えば「葬儀案内」を受け取ったかどうかで、参列するかどうかを判断することになります。
非常に分かりやすいことですし、そもそも身近な親族の場合は知らせを受けてすぐに駆け付けてくれるでしょう。
遠方からやって来る人がいる場合は、そのような状況を想定して宿泊場所を手配するのを忘れないようにします。
あくまでも家族葬なので、葬祭スタッフ以外で特段お手伝いをお願いする人はいないと思いますが、何か手を借りることが想定される場合は事前に連絡を入れておいた方が賢明です。
香典を用意する必要はない
家族葬について、意外と勘違いしている人が多いことの一つに「香典に関する思い違い」があります。
家族葬は一般葬と違い、身内だけで故人を弔うものですから、基本的に遺族の側で予算を都合します。
よって、そんな遺族の負担を少しでも減らすことを考えたなら、返礼品を用意させないためにも香典を渡すのは控えたいところです。
ただし、参列者側の都合に合わせて、香典を受け付けている家族葬もありますから、このあたりはケースバイケースでしょう。
あらかじめ香典は受け取らないと断っている場合や、会場に香典は不要という旨が書かれているようであれば、あえて渡す必要はありません。
また、一般葬同様の金額を相場にしてしまうと、受け取る側にも負担になりかねませんから、親しい間柄で金額を相談することをおすすめします。
訃報連絡が届いた場合の対処
訃報連絡のみが届いた場合は、特段何かするということはありません。
その後、故人の自宅を訪問したいと考えるケースもあるかもしれませんが、特別の事情がない限りは、遺族の心情をくんで訪問は控えるべきです。
仮に、訃報連絡の中に「家族葬」という文言が書いていなかった場合は、葬儀に参列すべきかどうか判断に迷う場合があります。
そのようなケースでは、遺族に確認を取ってみてもよいでしょう。
ちなみに、訃報連絡と葬儀案内を一緒に受け取った場合は、葬儀に参列して欲しい意向があると判断して差し支えありません。
不安に感じるようであれば、こちらも遺族に確認してみると確実です。
事後報告を受け、必要性を感じるなら家に足を運ぶ
無事葬儀が終わり、家族葬の事後報告が届いた場合は、ある程度遺族の側も整理が済んだタイミングだと考えてよいでしょう。
弔問する場合も、原則として香典は不要と考えておき、遺族が負担に思わないようなお土産を持って行くと親切かもしれません。
また、自分が弔問すべきなのかどうか疑問に思うような間柄であれば、そこまで急ぎで弔問する必要もありません。
ハガキを送るなどしてお悔やみの気持ちを伝え、近況報告をするにとどめましょう。
逆に、どうしても気持ちの整理がつかないなら、足を運んでお線香をあげること自体は差し支えありません。
このとき、故人と自分が大変親しい間柄だったと思っていたとしても、遺族が呼ぶに呼べなかった事情を鑑みて、どうして葬儀に呼んでくれなかったのかを遺族に問い詰めないように気を付けましょう。
この記事のまとめ
家族葬は、家族関係を中心とした間柄で葬儀を行うことから、一般葬とルールが大きく異なる部分も少なくありません。
しかし、故人が家族以外とお付き合いしていた間柄について、葬儀の段階で関係を断絶するという意味合いではありませんから、やはり親しい人も含めて死を報告できるように葬儀を進める心遣いは必要です。
参列する側も、一般葬とは勝手が違うことや、数ある故人の関係者の中から選ばれた立場であることを自覚して、極力遺族に失礼・負担のないように振舞うことを忘れないようにしましょう。