皆が知ってると思いがちな「お通夜」について。
改めてお通夜の意味や由来と基本のマナーや知識

  • 2020.07.04

葬儀

「お通夜って、どうしてお通夜って言うの?」
このように聞かれて、正しく答えられる人は少数派です。

また、同じようにお通夜ってどういうマナーがあってどういう流れで行われるのかということをしっかりと説明できる人も少ないはずです。

日本人にとって当たり前の習慣ほど、多くの人はあまり細かいことは気にして過ごさないものです。
お通夜もその一つで、古くからある習慣だからこそ、あえて詳しく知ろうとしないのかもしれません。

この記事では、改めてお通夜とは何なのか、その意味や由来・基本的なマナーなどの知識をご紹介します。
言われて「なるほど」と思うこともあれば、知っているようで忘れていることも多いと思いますので、これを機会に日本の常識を復習する機会になれば幸いです。

お通夜とは何なのか

「夜を通す」と書いてお通夜と読みますが、一般的には「夜通し」といったニュアンスが感じられる表現です。
また、仏教的な意味合いとして捉えられがちですが、お通夜の習慣は宗教を問わず存在しています。

古くは「死」を確認するための儀式だった

医師による死亡確認という概念がなかった時代、人が亡くなったかどうかは「時間」で判断するしかありませんでした。
具体的には、家族が本当に亡くなったのか、確認する時間が必要だったのです。

そのため、家族は一晩中つきっきりで遺体を見守り、遺体の状態が変化していくのを確認して、死者の「死」を認識していました。

そのために一晩の時間を設けていたものが、やがて遺体を見守る中で故人のことを思い返す時間として認識されるようになり、現代における「お通夜」の習慣に変化したものと推察されます。

ちなみに、故人が亡くなってから葬儀の段取りを進めるまでの間、棺に安置している死者を見守る習慣を「殯(もがり)」と言います。
お通夜は、その名残と言えるかもしれません。

多くの人が一夜を共にし、故人を見送る意味もあった

死亡確認の意味があったお通夜ですが、やはり人が亡くなった以上、ただ故人の遺体がどうなっていくのかを確認することだけで終わるのは不自然でした。
夜通し灯りを消さず、遺体の安らかな表情を見守りながら冥福を祈る時間が、故人と縁のある人たちには必要だったのです。

現代でも、遺族・親族は夜通し故人のそばにいて、死を悼む習慣が残っています。
斎場で宿泊施設が設けられているのは、遠方から来た方が宿泊できる環境を整える意味もありますが、遺族が故人をすぐそばで見守れる体制を整えるのにも役立ちます。

地方の大規模な斎場ほど、施設が充実している傾向にあり、親族もまた数多く集まれるよう工夫されています。

現代では半通夜のような柔軟な考え方も

本来であれば、遺体のそばで線香・ロウソクの火を灯しながら、遺族・親族等が故人を偲ぶことをお通夜と称します。

しかし、現代では一般参列者が多数お通夜に足を運ぶことも珍しくなく、さらには斎場の規模が都市部を中心に縮小傾向となっていることもあって、故人を夜通し偲ぶことが現実的に難しくなってきています。

そのため、現代ではお通夜の時間帯・習慣にも変化が生じており、いわゆる「半通夜」のスタイルが生まれました。
夕方以降にお通夜が始まり、僧侶による読経や参列者による焼香の後、遺族側の通夜振る舞いを終えてお開きという流れです。

斎場側が宿泊施設を用意できなかったり、火事を防ぐ意図から夜通し火を灯すことができなかったりして、半通夜を選ばざるをえないケースもあります。

そこで、近親者だけが夜通し故人を偲ぶ「仮通夜」と、一般の参列者を呼ぶ「本通夜」という二つのお通夜を設けるという習慣も生まれ、施設の設備に制限がある都市部で主に行われています。

参列者として知っておきたいお通夜の基本マナー

参列者がお通夜に関して想定しておきたいのは、主に一般参列者として斎場等に足を運ぶ場合です。

参列に際しての基準を理解しておくことで、自分が葬儀の席でどのように振る舞えばよいのか・どのくらいの香典を包めばよいのかなどが分かり、本番の席で焦らず対応できるでしょう。

会社などの組織で働いている場合、他の人の振る舞いを見れば、どう準備すればよいのかが見えてきます。
地域によって習慣が異なるケースもありますから、基本的なルールにこだわらず、できるだけ足並みをそろえることを意識することが大切です。

自分は参加してよい立場かどうか

お通夜の本来の意味を考えた時、参列者は故人との関係性が深い人がほとんどですから、遺族・近親者・友人などが集まってきます。
よって、自分が一方的にお慕いしていた相手であったり、そこまで親しくはないと感じていたりする相手のお通夜には、参列すべきではありません。

もちろん、同じ職場で働いていたなどの理由であれば、一般参列者として参列しても差し支えありませんが、現代では虚礼廃止を掲げる会社も少なくありません。
自分は礼儀のつもりで参列しても、かえっていぶかしいと感じる遺族もいることを念頭に、参列するかどうかを判断しましょう。

なお、お通夜と告別式のどちらに参列するかで悩んだ場合、そこまで親しい関係にない場合は「告別式」に参列するのが礼儀です。
ただ、仕事の兼ね合いもあって、昼間に足を運ぶことが難しいという理由から、多くの人はお通夜に参列しています。

このように、お通夜と告別式には一定の線引きがなされているわけですが、現代では参列者の事情によって形骸化しています。
四角四面に守る必要はありませんが、本来の順序を覚えておくと、万一葬儀がかぶった場合に優先順位をつけるのに役立ちます。

服装のルールは「目立たない」ことを基本に

参列者は、喪服にこだわる必要はなく、むしろ「取るものもとりあえず駆け付けた」というニュアンスから略礼が望ましいと考える地域が多いようです。
一般参列者は、準礼服・略礼服を選ぶのが基本ですが、仕事を終えてから参列することを鑑み、ブラックスーツ・グレースーツでも差し支えありません。

女性の場合は、白ブラウスなどを避け、黒のフォーマルスーツ・ワンピースを着用します。
できるだけ肌の露出は抑えるため、スカートを履くなら丈が長めのものを選びます。

足元は男女ともに黒で統一し、男性は黒の靴下・女性は黒のストッキングを選びます。
その他、ネクタイ・革靴・ヘアゴムなど、装飾品も黒で統一するのが基本です。

香典を包むなら関係性を確認する

香典で気を付けなければならないのが、表書きと香典の金額です。
大抵の場合、仏式の「御香典」や「御香料」と書くことが多いですが、神道・キリスト教などの宗教では別の書き方をします。

無難なのは「御霊前」で、浄土真宗を除いては問題ないとされます。
ただ、よほど厳密にルールを守っている家庭以外では、表書きを問題にするケースはないと考えてよいでしょう。

香典の金額については、故人との関係性・自分の立場・地域の慣習によって変わってきます。
参列者の立場で考えると、友人や勤務先の関係者なら3千円~1万円の間に収まりますし、親戚であれば親しさに応じて5千円~3万円が相場になります。

また、香典を包む時は袱紗(ふくさ)に包むのが礼儀です。
簡単なものは百均ショップでも手に入りますから、忘れずに準備しておきましょう。

地域の慣習として有名なのは「新生活」で、香典返しを辞退する代わりに香典の額を減らすというものです。
もし、香典返しが不要である場合は、周囲に相談してこのような慣習を活用するのもよいでしょう。

遺族として知っておきたいお通夜の基本マナー

遺族として喪主を務める場合、できるだけ事前に基本マナーを知っておきたいと思うはずです。
過去に親族として葬儀を手伝った経験があっても、近しい人が亡くなった場合、頭が混乱していることも珍しくないからです。

事前に知識を頭に入れておくことで、極力失礼のないよう振る舞うことができます。
ここからは、主に仏式のお通夜における、最低限の基本的なマナーをお伝えします。

臨終から納棺までの流れを知る

家族が亡くなったら、まずは遺体の搬送が必要です。
すでに故人が葬儀社とやり取りしていたら、連絡を入れて搬送依頼をかけます。

菩提寺が決まっている場合は、ほぼ同様のタイミングで連絡を入れましょう。

安置場所への搬送が終わったら、故人の枕元に「枕飾り」と呼ばれる祭壇を設け、通夜前には納棺を終えます。
棺の中には故人の愛用品・愛読書などを入れるため、事前に準備しておくとスムーズです。

臨終から納棺までの流れにおいて、もっとも重要なのは「葬祭スタッフ」との連携です。
臨終の確認後は、早めに取り決めることが数多く存在しており、主に以下のようなものが該当します。

  • 葬儀に関する打ち合わせ
  • 死亡届と火葬許可申請書の準備
  • お寺から戒名をもらうための依頼
  • お通夜の準備
  • 喪服の準備

他にも、場面場面で決断を求められることが多いため、少なくとも上記の点に関しては気構えを持ち、あらかじめ準備できることは済ませておきましょう。
葬儀の形式や規模に関しては、生前から家族で話し合いをしておけば、混乱を少なくできるはずです。

お通夜では式次第を把握しておく

お通夜当日は、喪主として式次第をあらかた把握しておきましょう。

司会は葬祭スタッフが行ってくれますが、喪主としてやらなければならないことも多く、特に、お坊さん・弔問客・手伝ってくれる親族への挨拶の仕方、通夜振る舞いの席での対応などは、事前に親しい人・葬祭スタッフなどに確認しながら詰めておきます。

葬儀の挨拶で言うべきではない「忌み言葉」や、黙礼への対応など、喪主は特に意識することが多いものです。
よって、あらかじめ頭に入れておけることは、できるだけインプットした方が賢明です。

挨拶は事前に考えておいた方がいい

喪主になると、諸々の場面で挨拶を必要とします。
特に、お通夜・通夜振る舞いの席で挨拶することは、人前に出る経験の少ない人にとって緊張するものですから、なるべくメモを取るなど事前に考えておいた方が戸惑いません。

文章を書こうとすると、取り留めのないことまで頭に浮かんでしまうことが多いため、だんだん文章量が増えてしまうことが考えられます。
挨拶自体は、長くても3分までにとどめることが、来席いただいた人に対する礼儀と覚えておきましょう。

この記事のまとめ

元来、死者が本当に亡くなったかどうかを確認するための時間として、お通夜は設けられていました。
しかし、その時間の中で本当に重要だったのは、遺族が故人にお別れの言葉を伝え、自らの気持ちを整えることでしょう。

現代になると、弔問客の立場や斎場の立地などといった事情によって、お通夜の概念も変わっていきました。
それでも、変わるものと変わらないものがありますから、故人を偲ぶためにも最低限のマナーは身に着けておきたいものですね。

  • 公開日:2020.07.04

テーマ:葬儀

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