墓じまいをした後の遺骨の供養の方法について
改葬すべき?永代供養?散骨などどう選べば良いのか

  • 2021.07.18

お墓

今まで通いなれたお墓を片付ける「墓じまい」は、遺骨ごとお墓を片付けるわけではなく、その後も遺骨を供養するために行います。
つまり、墓じまいを考えるなら、墓じまい後のことまでイメージしなければなりません。

具体的な方法としては、改葬・永代供養・散骨などの方法があげられます。
それぞれにメリット・デメリットがあり、遺骨やお墓に対する各家族・親族の考え方が問われるため、よく話し合って決める必要があります。

この記事では、墓じまい後の遺骨の供養について、主な方法をいくつかご紹介します。
墓じまいを検討しているものの、その後のイメージがなかなか浮かばない人は、まずは選択肢を増やすことから始めましょう。

改葬を選ぶ場合のメリット・デメリット

墓じまい後に、別の場所に新しいお墓を建てたり納骨堂を借りたりする方法は、改葬に分類されます。
以下に、改葬を選んだ場合のメリット・デメリットと、トラブルを避けるための注意点についてご紹介します。

通いやすい場所にお墓を移せて、後ろめたさがなくなる

改葬の際、家族が通いやすい場所にお墓を移せば、年に1回など限られた時期だけのお墓参りになることがありません。
都市部であれば、最寄り駅の近くにある納骨堂を契約することで、通う手間を大幅に減らせます。

自宅の近所にお墓や納骨堂があれば、散歩や買い物のついでにお参りすることもでき、なかなかお墓に通えないという後ろめたさを抱えずに済みます。
将来にわたり家族でお墓を守るつもりなら、やはりできるだけ一堂に会して供養ができる場所を選んだ方が、家族の絆も深まるはずです。

お金がかかるため費用のねん出が大変

ご先祖様が建立したお墓を片付けてから新しいお墓を建てる場合、墓じまいの費用に加えて新しいお墓を建てる費用をねん出する必要があります。
墓じまいの費用が数十万円かかるとして、それに加えてお墓を一から建てるとなると、最終的に数百万円規模の費用が必要になるかもしれません。

中古の家が一軒買える値段をお墓に投資できるかどうかは、各家庭の懐事情により変わってきます。
そのため、改葬は万人に勧められるものではないと言えるでしょう。

家族・親族への説明は避けられない

改葬をスムーズに進めるためには、独りよがりな決断をしないことが大切です。
ご先祖様・故人とのつながりを求めている人は、必ずしも家族だけとは限らず、遠い親族の中にも先祖代々のお墓を大切に思っている人がいるかもしれないからです。

ランニングコストの安さ・お墓への通いやすさを重視するのは理解できるところですが、中には毎年のお墓参りを楽しみにしている人もいます。
「いつものあの場所」が大事だと考えている親族もいるため、一方的に改葬を進めると、親族関係にヒビが入るおそれがありますから注意が必要です。

永代供養を選ぶ場合のメリット・デメリット

続いては、永代供養を選んだ場合のメリット・デメリットについてお伝えします。
お墓を自分たちで建てるのに比べて大幅に安くなりますが、一度永代供養にするとやり直しがきかないため、改葬以上に気を配らなければなりません。

目先のことだけで考えず、自分が死ぬ時にまでイメージを巡らせることが大切です。

費用が安くて管理が楽になる

個人でお墓を建てるのとは違い、永代供養では墓石を購入する必要がなく、墓地を区画で管理する手間もありません。
一度必要な料金を支払えば、管理費・お布施などに悩まされる機会がほぼなくなります。

後々、お墓を守る人がいなくなったとしても、代わりにお寺や霊園の側で供養をしてくれるため、死後は無縁仏になる心配がありません。
また、宗派を基本的に問わない立場の永代供養墓が多いことから、どんな人でも安心して申し込みができます。

契約を結ぶ際に、自分が入ることも含めて契約ができるため、死後のことを任せられる安心感もあります。
ただ、このケースでは年会費・管理費の支払いが発生する場合がありますから、念のため事前にプランを確認しておきましょう。

後々個別に供養したいと思っても、遺骨が取り出せなくなる場合がある

永代供養を選ぶと、納骨後から一定期間が経過すると、他の遺骨と一緒に納骨されてしまいます。
これは合祀と呼ばれ、他の遺骨と一緒になると、その後故人の遺骨を取り戻すことはできません。

将来的にお金の都合がつき、新しく家族のお墓を建てて遺骨を移動させたいと思っても、残念ながら時すでに遅し、ということもあり得るのです。

一定期間は個別に遺骨を安置してくれるところもありますが、原則として三十三回忌が合祀の一つの基準となっているため、いつまでも個別納骨してくれることはないものと考えてよいでしょう。

また、永代供養墓によっては、最初の段階から合祀してしまうケースもあるため、詳しくはお寺や霊園のルールの確認が必要です。
値段や手間の少なさから気軽に決めてしまうと、こちらも後々親族ともめる原因になりますから、決断する前に仲の良い親族に相談することをおすすめします。

将来的に誰もお墓を守れなくなるおそれがあるなら、選ぶ価値はある

永代供養墓は、改葬と比べると、今後大幅に増える可能性がある埋葬方法です。
日本の少子高齢化・孤独死の増加などを考えると、将来的に自分たちのお墓を守れない人が数多く出てくるものと考えられるからです。

日本は特に、ご先祖様との精神的な結びつきを大切にする文化があり、自分のせいでご先祖様や故人に迷惑をかけたくないと考える人が多く見られます。
そういった「自分の死後」に対する家族への責任感から、永代供養を選んで責任を取ろうとする人が、今後は単身者やDINKSの間で増えるものと予想されます。

実際に、ご先祖様や故人にとって、お墓がどれだけ重要なものなのかは差し測ることができません。

しかし、今まで自分たちの生活を見守ってくれた御霊に対し、自分たちがいなくなった時のことも考えて供養する点で、永代供養墓は非常に優れた供養方法の一つと言えるでしょう。

散骨などの方法を選ぶ場合のメリット・デメリット

最後に、改葬・永代供養とは違う、散骨などの比較的新しい方法についてご紹介します。
どの方法も、お墓を建てて生活する場合に比べて、人生の選択肢が大幅に増える点で特徴があります。

供養という面で考えると、それぞれの方法にメリット・デメリットはあるものの、お墓の建立や納骨堂の契約に比べれば選択の自由があります。
改葬や永代供養を検討したものの、どうしても決めきれない人は、以下の方法を検討することをおすすめします。

散骨は人生の自由度が高められる反面、ご先祖様と向き合う機会が少なくなる

遺骨を海や山にまく散骨は、非常にリーズナブルな値段で行えて、しかも維持費がかかりません。
菩提寺との付き合いがなくなるため、自分が住みたいところに住めるようになりますし、お寺や霊園が何らかの理由で破産してしまってもダメージを受けません。

散骨に関する専門業者も多く、国内だけでなく海外にも遺骨を散骨できます。
お墓の継承問題も起こらないため、供養する方法にこだわらない限り、トラブルは起こりにくいでしょう。

デメリットとしては、お盆に親類が集まって話をする場が失われ、親族関係が希薄化することがあげられます。
故人を弔う方法として、お仏壇とお墓がなければ始まらないと思っている人にとっては、抵抗感のある方法かもしれません。

また、一度散骨してしまうと、遺骨を探し出して集めることができなくなるため、気が変わってお墓を建てようとしても後の祭りです。
もっとも、散骨を検討する時点で、そのような人は既存の仏教観とは違う価値観を持っているはずですから、あまり問題にはならないかもしれません。

樹木葬はエコな方法だが、交通アクセスが悪いリスクがある

お墓の代わりに木を墓標とする樹木葬は、エコな埋葬方法として静かな人気を集めています。
死後の安寧を祈って、自分の好きな木を選ぶことができるため、ある意味ではお墓よりも自由度は高い埋葬方法かもしれません。

お墓を建てないため、樹木葬を認めている墓地の中には、檀家になる義務を設けていないお寺もあります。

また、一般的な霊園だけでなく、里山のような自然がいっぱいの場所を選ぶこともでき、自然に還ることに憧れを抱いている人にとっては、この上なく魅力的な選択肢と言えるでしょう。

費用は改葬に比べると安く、納骨堂よりはやや高いといったところです。
地域によって違いは見られますが、概ね30~70万円が相場です。

ただ、木を植樹するということは、それ相応に自然が残っているところが選ばれます。
例えば、里山型の樹木葬墓地になると、クマが出るような山奥まで足を運ばなければならず、墓参りに車が必要になることも考えておかなければなりません。

自然の美しさを取るか、アクセスの利便性を取るかで、判断が分かれる方法です。

手元供養は精神的な落ち着きを得られるものの、災害に弱い

自宅や身近な場所で故人をしのぶ手元供養は、現代の事情にマッチした新しい供養方法の一つです。
特に、故人と仲が良かった家族なら、逆にその方法を選んだ方が故人の魂も喜ぶはずです。

また、基本的に骨壺があれば家に祀るだけで供養が成立するため、費用を大幅に抑えられます。
アクセサリーなどにして肌身離さず保管すれば、安心感から気持ちも落ち着いて、ストレスが少なくなるなどの副次的効果も期待できるでしょう。

ただし、手元供養はその仕組み上、災害には弱い傾向にあります。
例えば、地震などに遭遇し、とりあえず生きるために必要なものだけを持って行こうとした場合、どうしても遺骨は後回しになります。

災害の後、自宅が津波で流されてしまうようなことがあれば、遺骨を見つけ出すのは絶望的です。
また、火災などで焼失してしまうおそれもあります。

どうしても遺骨を残しておきたいなら、供養の方法を工夫する必要があるでしょう。

この記事のまとめ

墓じまい後の遺骨の供養方法は、実にさまざまな種類があります。
改葬や永代供養のような仏教と縁のある方法だけでなく、生きる者の自由度を考える方法や、将来に負担を残さない方法なども選べます。

今回ご紹介した方法のどれが正解ということはなく、墓じまい後の供養方法は、各家庭の事情を考えて判断すべき問題です。
今後のことを当事者同士で話し合い、できるだけ多くの人に負担をかけない、後悔しない方法を選びたいものですね。

  • 公開日:2021.07.18

テーマ:お墓

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