お墓を建てる時の基本をおさらい。
お墓の必要性と菩提寺の確認、寺院の選び方について
お墓は、日本人の心のシンボルの一つとなっていて、手入れをしたものも含め数百年単位で姿を保つお墓があるほどです。
しかし、いざ自分の家でお墓を建てようと考えた場合、それなりの費用がかかります。
維持したり処分したりする(永代供養する)場合にもお金と手間がかかり、家によっては新しく建てるのが諸々の理由で難しい場合も珍しくありません。
そこで今回は、お墓はそもそも必要なのかという視点も踏まえつつ、菩提寺の確認・寺院の選び方など、墓にまつわる基本的な情報についてご紹介します。
お墓を建てる際に考えるべきこと
お墓を建てるスタートラインに立つためには、いくつか検討しなければならない問題があります。
これからご紹介することが全ての家に当てはまるとは限りませんが、できるだけ後悔のないように考えておきましょう。
自分や家族にとって、本当に必要なものかどうかを考える
死者・先祖にとって、お墓は現世で暮らす人々とつながる中継地点として存在しています。
そして、現世で暮らしている我々にとっては、お墓が日々の祈りを捧げる場所として重要な意味を持ちます。
供養塔・地蔵菩薩などが道端に建立されているのを見かけるように、ささやかな石工物を見るだけでも、日本人はそこに過去の命を感じます。
また、現世で暮らす人間にとって、同じ時代を生きた故人・遠い時代から命をつないでくれた先人の存在は、強い心の支えとなります。
しかし、冷静に考えてみると、果たして中継地点・祈りの対象は、誰にとってもお墓であるべきなのでしょうか。
現代において、供養の方法は多様化しており、お墓を建てなくてもよい選択肢はいくつも存在します。
- 遺骨を安置しておける「納骨堂」
- 自宅の納骨棚に遺骨を収納して供養する「手元供養」
- 他の遺骨と一緒に供養してもらう「合葬」
ざっと挙げただけでも、現代ではこれだけの方法が存在します。
それをあえて否定してでも、自分たち家族だけのお墓が欲しいと思うのかどうかは、将来を見据えてしっかり考えた方がよいでしょう。
どのような流れでお墓を準備するのかを知る
お墓を建てるためには、墓地・霊園の余った土地を購入しなければなりません。
一部の地域における例外を除き、自宅の敷地内において無造作にお墓を建てることは、「墓地・埋葬等に関する法律」で禁止されています。
また、土地を購入した場合、土地そのものの所有権が得られるというよりは、使用権が半永久的に得られるといったニュアンスになります。
よって、必要なくなったからといって、土地の売買はできないことに注意しましょう。
土地を購入してからは、お墓に使う石材の種類・デザインなどを、各家庭の予算に応じて選びます。
石材自体の費用だけでなく、加工費・付属品・彫刻費・工事費など、素材に加えて様々な作業に料金がかかりますから、一連の作業に要する見積もりを出してもらい、予算・デザインなどを希望に沿ったものにまとめていきます。
完成まで概ね1~2ケ月、あるいはそれ以上の月日を見て、それから納骨となります。
葬儀をする前にお墓を建てたなら、葬儀後に納骨となります。
すでに葬儀を終えているなら、開眼供養と納骨式を一緒に行うため、お布施も必要になるでしょう。
費用や代替手段を考える
お墓を建てるのにいくらかかるのかは、各業者に相見積もりを取ってみるのが、見積もりを安くする近道です。
ただ、全く相場観を知らずに交渉しても、よい結果につながるとは限らないため、ある程度相場は知っておいた方がよいでしょう。
墓地の面積にもよりますが、お墓を建てる一通りの料金イメージとしては、概ね100~300万円という幅で考えておくとよいでしょう。
お寺の敷地に作った室内墓であれば、墓石やスペースが小さい分、お寺によっては安く済ませられることもあるようです。
これでは予算が高すぎて難しい、という人は、お墓を建てる以外の代替手段を考えるのがベターです。
先に挙げた納骨堂・手元供養・合葬などに加え、散骨なども含めると、お墓を建てるのに比べれば圧倒的に安くなりますから、自分たちが納得のいく範囲で当面は妥協し、後にお墓を建てることを検討してもよいでしょう。
供養する際に考えるべきこと
お墓を初めて立てる場合、自分の家に仏様を迎えることも初めてというケースがほとんどです。
そこで、今後数代にわたって供養を続けるにあたり、色々と考えておかなければならないことが出てきます。
宗派は先祖のものを踏襲するのか
お墓や仏壇を用意するにあたり、まず確認しておきたいのが宗派です。
死後、故人や先祖を供養するためには、その家に代々伝わる宗派を知っておく必要があります。
神道・キリスト教などを除き、日本人が「自分は仏教徒である」と自覚するのは、おそらく家族の誰かが亡くなった時でしょう。
つまり、それまでの間、家族構成によっては「誰一人として自分たちの宗派を知らない」ケースも珍しくないのです。
このとき、すぐに実家や親族に連絡が取れるなら、その時点で確認できるでしょう。
しかし、身内と疎遠になっていたり、事情があって家族関係が希薄になっていたりすると、確認する術がありません。
よって、当座の供養のしやすさ・教義の内容などをチェックして、各家にあった宗派を選ぶことになります。
あるいは、お寺との深い付き合いがないことを理由に、派遣サービスで完結させようとする方法もあるでしょう。
いずれにせよ、自分たちの独断で決めるのか、先祖代々の宗派にするのか、お墓を建てる前に選んでおかなければなりません。
立地は誰もが通いやすいところなのか
お墓を建てる場合、墓地自体の立地も重要になってきます。
自分たちだけでなく、親族や友人など、誰でも気軽に通えるところに建てなければ、墓参りの頻度も減ってしまうでしょう。
車などの交通手段を使う場合が多いなら、駐車スペースがあるかどうかを確認しましょう。
公共交通機関を使うなら、交通の便がよいかどうかも調べておきたいところです。
また、山奥にお墓を建てる場合、あまりにも高いところ・奥まったところに建ててしまうと、動物による獣害も心配になります。
土地や維持費が安いからといって、人里離れたところを選んでしまうと、思わぬ事故に巻き込まれてしまうおそれがありますから注意しましょう。
自分や家族がいなくなった場合にどうするのか
お墓を建てたら、その後自分や家族がいなくなった場合にどうするのかを考えておかなければなりません。
子どもがいれば、管理をお願いできるかもしれませんが、仕事の都合上そこまで頻繁に通えないかもしれません。
地方で生まれた人が都会で就職した場合も、実家から通う場合を除き、住み慣れた町を離れることがほとんどです。
都会に家を持つようになったら、通う時間も限られてくることでしょう。
家族構成によっては、誰もお墓を守る人がいなくなってしまうことを想定し、永代供養や合祀などの選択肢についても情報を集めておきましょう。
寺院(菩提寺)の選び方
お墓の開眼供養・納骨式・命日など、折々の仏事でお世話になる菩提寺ですが、初めてお墓を建てる場合、どのようにして菩提寺を選ぶべきなのか、戸惑う人は多いでしょう。
お墓・自宅の近所にあるお寺に頼むのが一般的ですが、すでに実家や親族が付き合いのあるお寺との関係を持つことも考えられます。
菩提寺が決まっていない場合、どこにするのか
現状、どの菩提寺にするのか全く決まっていない場合、まずは近所にあるお寺の中から、自家の宗派に該当するお寺を探します。
インターネットやタウンページなどで探せば、いくつか候補が絞れるでしょう。
宗派自体が決まっていないのなら、近所や市内でおすすめのお寺を調べて、そこにお願いするのも一つの手です。
電話や対面だけで話をまとめようとするのではなく、実際にお寺を見学させてもらい、住職の人柄も話をする中で確認しておきましょう。
葬儀でお世話になったお寺がある場合、引き続きお願いすべきなのか
葬儀の際にお世話になったお寺がある場合、原則としてそのまま継続して諸々の供養をお願いするのがスムーズです。
しかし、葬儀では単にお坊さんを葬儀社経由で呼んでもらっただけ、というケースもあると思います。
このような場合、必ずしもそのお寺でなければならない、という決まりはありません。
葬儀が問題なく進んだならともかく、多少なりともお坊さんの振る舞いに疑問を抱いたようであれば、あえて違うお寺を選ぶのも悪い選択肢ではないと言えるでしょう。
そもそも、菩提寺にこだわる必要はあるのか
新しい選択肢として、お坊さんの派遣サービスを利用して、各種セレモニーに限り供養してもらうという方法もあります。
よって、お墓自体は特定の宗派にこだわらないデザインにしてもらい、その上でお坊さんを都度派遣してもらう方法でもよいでしょう。
菩提寺の縛りがないので、場合によっては自由にご本尊などを選ぶこともできるはずです。
最低限、供養を依頼するお坊さんの宗派ぐらいは押さえておきたいところですが、少なくともお寺へのこだわりは気にする必要がなくなります。
お墓のデザインについて少し掘り下げると、現代では各宗派ごとの特徴にこだわらない墓石のデザインが増えてきており、漢字一文字・猫や犬などの絵・富士山など、墓地を歩けば実に様々な墓石が目を引きます。
宗派ありきではなく、自分の好きなお墓を建てることも視野に入れて、菩提寺との付き合い方を柔軟に考えましょう。
この記事のまとめ
お墓の必要性を考える時、やはり将来にわたり供養を続けられるかどうかが、考え方の起点となるでしょう。
亡くなった人やご先祖様の供養に関わることですから、建てた後の関わり方まで想定してお墓を建てることが大切です。
菩提寺との関係も、自分が死後もお世話になると覚悟した場合を除いては、長い付き合いを想定しないお坊さんの選び方を考える時代になりつつあります。
無理をせずにご先祖様と向き合えるような、お墓とのつながりをイメージしたいものですね。