意外と知られていない「通夜振る舞い」とは?
通夜振る舞いの必要性や遺族側の基本とマナーについて
お通夜の席では、故人の家族・親族が集まり、故人の昔話に花が咲くものです。
現代では、それほど多くは見かけなくなりましたが、参列者が多数いる場合などに食事を振る舞う儀式があります。
これを「通夜振る舞い」と言い、主に故人を大勢で偲ぶ趣旨で開催されます。
都会から地方に引越した場合などは、通夜振る舞いの習慣に初めて遭遇するケースも少なくなく、どう振る舞えばよいのか分からない人も多く見られます。
この記事では、そんな通夜振る舞いについて、概要や必要性・行う場合の基本的なマナーについてお伝えします。
通夜振る舞いとは何か
通夜振る舞いの習慣を初めて知る人は、お通夜が終わった後に何をすべきなのか、イメージが湧かないかもしれません。
まずは、通夜振る舞いの概要や行う意味を知ることで、少しでも身近に感じることから始めましょう。
遺族側がお通夜の席で弔問客をもてなす儀式
通夜振る舞いとは、お通夜に参加してくれた弔問客のため、遺族が別室に招いてお礼のおもてなしをする儀式です。
弔問客は、遺族と一緒に故人の思い出話をして、故人を偲ぶ時間を作ります。
このような席が設けられることになったのは、故人の死のショックを少しでも和らげるという理由だけでなく、臨終を迎えたはずの死者が生き返る(実は死んでいなかった)ことに備えるため、料理を用意して多くの人で故人の死を見つめていたのが由来とされます。
現代では、医師による迅速な死亡確認がなされるため、単純に故人を想い、冥福を祈る場となっています。
義務ではなく任意で、家や地域によっては行わないことも
本来、遺族の立場としては、忙しい中駆けつけてくれた弔問客に対し、何らかの形でお礼をしたいと思うのが自然です。
しかし、現代では多くの人が日々の暮らしに忙しく、一席を設けて時間を取るのが申し訳ないという理由から、通夜振る舞いを行わないところも増えてきました。
あるいは、会場自体が大勢の弔問客を収容できないケースもあり、そうなると通夜振る舞いは省略されます。
代替手段としては、弔問客にお酒・折詰・商品券等を手渡す方法が一般的です。
また、そもそも地域・家によっては、通夜振る舞いの習慣が長年ないところもあります。
よって、全ての家で絶対に行うものではありませんから、無理をして会場を押さえる必要はありません。
あくまでも、故人が暮らしている地域のルールを主体として考えましょう。
どのくらいの費用を見積もっておくべきか
通夜振る舞いにかかる費用ですが、感覚的にはディナーにかかる料金を想定しておくと分かりやすいでしょう。
具体的には、1人あたりで2~3千円が相場と考えて差し支えありません。
原則として、メニューは大皿で用意できるものを選びます。
オードブル・寿司などをベースに組み立て、飲み物も別途用意するような流れです。
比較的規模の小さい葬儀なら、自家で料理を作って振る舞う方法もあります。
また、故人の嗜好によっては、フライドチキン・ピザなどを宅配してもらう形で進めることもできます。
葬儀社と相談しつつ、その点は柔軟に考えて差し支えありませんが、葬儀社側でメニューを用意している場合は、それに従った方がスムーズです。
遺族側がすべきこと
通夜振る舞いの概要が分かったところで、続いては遺族が主に何をすべきなのかについてお伝えします。
いわゆる作法については、そこまで格式張ったものが多いわけではありませんが、最低限これだけは遺族の側で準備しておかなければならない、というものがいくつか存在します。
一連の流れを確認しながら、自分たちが何をすべきなのかをチェックしていきましょう。
開会・閉会の挨拶を行う
通夜振る舞いは、お通夜の一部として認識されるイベントですから、喪主が挨拶を行います。
開会時は、始まりの挨拶として、弔問に対する謝辞を弔問客に伝えます。
そして、せっかく料理を用意しているわけですから、遠慮せずに料理を食べてもらえるよう、一言付け加えるのもよいでしょう。
挨拶の中には、故人の名前・食事の用意をしていること・あくまでもお時間の許す限り滞在して欲しいことなどを盛り込みます。
通夜振る舞いにかける時間は、概ね1~2時間が適当なところです。
ただ、時間は明確に決められているわけではなく、時間の都合で30分ほどの短い時間で離れる弔問客も少なくありません。
また、公共交通機関や道路状況・仕事の都合などから、どうしてもお通夜の時間に間に合わなかった人は、通夜振る舞いで香典を渡し、遺族と話をすることもあります。
そのため、あらかじめ遅れるという連絡をもらっている人がやって来るなら、それまで席を片付けないことも覚えておきましょう。
閉会を迎える際は、告別式の予定を伝えつつ、多くの方が集まってくれたことに感謝の意を伝えます。
料理の準備や取り分け
通夜振る舞いの料理を準備するにあたっては、できるだけ全員で平等に取り分けられるようにすることが大切です。
そのため、オードブル・サンドイッチ・寿司のような、単品ごとに取り分けられるメニューを用意すると親切です。
一般的なパーティーとは違い、通夜振る舞いで参列者の数を事前に100%把握するのは難しいため、人数の増減に対応できるよう、このようなメニューで考えます。
ちなみに、刺身・寿司は「生もの」のため、家によってはご法度とされることもありますが、多くの場合、あまり気にせず注文されることが多いようです。
食事と一緒にお酒をたしなみたい人のため、ビール・日本酒も別途用意します。
もちろん、お酒が飲めない人・子どものためにも、ジュース・アルコールの用意も忘れないことが大切です。
食事の量に関しては、きちんと参加者一人分の分量を確保しておく必要はありません。
通夜振る舞いでは、弔問客が最後まで長居するケースはまれで、少しだけ食べて帰ることがほとんどです。
よって、お通夜に参列する人の半数分を用意しておけば、不足することはないものと考えてよいでしょう。
ただ、参列者の中に大食漢がいる・人数が想定よりも多くなることが分かっている場合には、念のため弔問客の2/3ほどのボリュームを用意しておくと安心です。
粗供養品の準備が必要な場合も
通夜振る舞いは、会場の都合でできなかったり、家や地域の習慣として根付いていなかったりすることもよくありますから、弔問客にお土産を持ち帰ってもらう方法をとる場合もあります。
これは「粗供養品」と呼ばれ、お酒や折詰・ビール券・商品券などの形で配布されます。
都市部などでは、かなり簡略化されたお通夜が行われているケースもあり、受付から退場までの流れが係員の誘導で終わることもあります。
受付を終えてから式場で焼香を行い、通夜振る舞いが終わったら順次退席してもらうという流れです。
中には、まんじゅうや寿司の詰め合わせを持ち帰ってもらう方法もあり、地域によって意外とバリエーションに富んでいるのが特徴です。
どのような方法がベターなのかは、できるだけ親族・葬儀社を通して相談の上、考えるのがよいでしょう。
僧侶に対する配慮も考える
仏事に欠かせないのが僧侶の存在ですが、通夜振る舞いにはお経をあげてくれた僧侶も招くのが一般的です。
そのため、僧侶に対する配慮を忘れないことも、通夜振る舞いでは大切なことです。
基本的には、通夜振る舞いに参加してもらう
僧侶との付き合いの長さにもよりますが、すでに菩提寺としての関係ができている場合は、通夜振る舞いに参加してもらいましょう。
逆に、初めて読経をお願いしたような場合は、僧侶の側に他のスケジュールも入っているかもしれませんから、無理に引き留めないようにします。
地域に根差したお寺の僧侶であれば、同じ地域の事情に明るいこともあります。
故人が亡くなってから、今後どう対応すればよいのか不安に感じたら、仏事や手続きも含め相談する時間に充てるのもよいでしょう。
辞退した場合は「御膳料」を包む
もし、僧侶が通夜振る舞いを辞退した場合、本来であれば用意すべき食事の代わりに「御膳料」を包みます。
こちらは弔事用の袋を用意する必要はなく、無地の封筒に御膳料と表書きをして、お通夜の式が終わった後にお渡しします。
包む金額は、概ね5千円~1万円が相場ですが、地域によっては違う場合もあります。
御膳料は、僧侶が斎場まで来てくれた分の御車代と一緒に渡すことが多く、小さなお盆などに乗せて、菓子折りなどと一緒に渡します。
御膳料を渡すタイミングはどのように図る?
お寺の側とそこまで親しくない場合、僧侶の側も通夜振る舞いに参加することを控えるケースは少なくなく、お通夜の控室などで挨拶した際にことわってくれる僧侶もいます。
ただ、こちらから先に御膳料を御布施と一緒に渡してしまうと、暗に「お帰りください」という意味に受け取られるおそれもあるため、可能であれば事前に確認を入れておくとよいでしょう。
遺族の側で面識がない僧侶の場合、そこまで深くこだわらなくてもよいのですが、自宅に仏壇があり、定期的にお経をあげてくれる関係ができているなら、お通夜のお願いをする際に無知を装って一声かけるのも一手です。
「あまり詳しくなくて恐縮なのですが、初めて通夜振る舞いを準備しており、できればご参加いただけるとありがたいと思っております……」などと伝えれば、僧侶の側もそれならと参加の意を伝えてくれるかもしれません。
参加することが分かっているなら、御膳料の用意は不要ですから、あとは食事の準備に集中できます。
自信がなければ、葬祭スタッフに相談して意思を伝えてもらうのもよいでしょう。
この記事のまとめ
通夜振る舞いは、多くの弔問客に感謝の意を伝える機会のため、執り行うならできるだけスムーズに進めたいものです。
誰がどのくらい参加するのかを把握するのは難しいため、多少大目に参加者を見積もって料理を用意してもらうなど、多少の工夫は必要です。
挨拶や準備など、遺族の側で事前に打ち合わせできることは、通夜振る舞いを省略するかどうかも含め、可能な限り早めに話を進めておくとよいでしょう。