「家族葬」を自宅で行う事は可能かどうか。
実際に行う際の注意点や周囲にバレないための方法
家族葬は小規模のため、場合によっては自宅で執り行うことができます。
しかし、斎場での葬儀が一般化した現代において、自宅で行う葬儀は色々と不便に感じられる点が多いものです。
また、斎場があるのにあえて自宅を選ぶ家族には、それ相応の事情があるケースも珍しくありません。
今回は、自宅で家族葬を行う際の注意点、周囲にバレないための方法などについてご紹介します。
家族葬を自宅で行う世帯が考えるメリット
自宅で家族葬を行う世帯は、全体としては少ない傾向にあります。
家族葬とはいえ人が集まりますから、自宅で葬儀というのは色々と不便に感じられる点が多いのかもしれません。
しかし、自宅での葬儀を選ぶ世帯が未だ存在するということは、そこに何らかのメリットがあるからだと考えられます。
以下に、主な理由・メリットをまとめてみました。
終の棲家で最期を迎えたいと考える
一軒家を購入している世帯は、おそらくその場所を「終の棲家」にする目的で購入しています。
人生の最終段階を過ごす家を購入したのですから、そこで命を終えたいと考えるのは自然なことなのかもしれません。
末期がんの患者が「いったん自宅に帰りたい」と話すように、やはり住み慣れた我が家に愛着を感じている人は少なくないようです。
畳の上で大往生ではありませんが、親しい人に見送られたいと考える人は、日本でも一定数存在しているものと考えられます。
斎場を利用しなくてもよい
葬儀の一般的な会場として使われるのが斎場で、首都圏・地方問わず利用されています。
葬儀社・企業が運営しているものもあれば、各地域で運営されているものもあり、種類は様々です。
こういった会場を確保するためには、どうしてもお金がかかります。
家族葬の場合は小規模な会場を選びますが、それでも比較的大きな金額が動くことになります。
もし、葬儀に参加する家族・親類の数が少ないなら、あえて斎場を利用せず、自宅で葬儀を行った方が安価です。
参加者の人数も限られているため、それほど非現実的な選択肢ではありません。
ホテルのように手の込んだ料理を用意する必要もなければ、巨大な祭壇を設ける必要もありません。
家族・親類も落ち着いて葬儀に臨めるため、精神的にリラックスできることでしょう。
葬儀の自由度が高い
斎場を使った葬儀では、どうしても形式が一定のものになりがちです。
比較的自由度の高い無宗教葬であっても、やはりフォーマットは存在しますし、全くない状況から葬儀を行うのは逆に難しいものです。
しかし、自宅で家族葬を行う場合、基本的な型から離れたとしても非難されることはまずありませんし、参列者の気持ちを考えた式次第をイメージする必要もありません。
喪主の想いを反映した葬儀にすることができますし、逆に格式ばらない葬儀を徹底することもできるでしょう。
お坊さんとのやり取りなど、ごく限られた状況以外では、ルール・マナー違反をおそれる必要がありません。
多数の参列者が集まる一般葬と比較すると、その負担度は大きく違って見えるはずです。
実際に家族葬を自宅で行う際の注意点
続いては、家族葬を実際に行う場合の注意点をいくつかご紹介します。
自宅での家族葬は、葬儀というジャンルでは気にする部分が少ないものの、一般社会で見ればマイナーな部類に入ります。
また、すぐ近くには他の家庭の日常があるため、周囲の環境に配慮した施行が求められます。
そもそも「自宅で葬儀」ができるスペースはあるか
自宅で家族葬を行うには、遺体を安置したり簡易的な祭壇を設けたりするスペースがあるかどうかが問題になります。
平屋などの場合は、安置するのに十分にスペースがあった家も多く問題になりませんでした。
しかし、2階建て・3階建ての家の場合、限られた土地を有効活用するために階数を増やしているケースもあるため、横にフラットに広いスペースの確保が難しい場合があります。
最低限、お布団・枕飾りを置ける「6畳」ほどのスペースがあれば、自宅葬は可能とされています。
しかし、親族を招く場合は、どうしても手狭になってしまうでしょう。
遺体を安置した後、その近くに家族・親族が集まってもスペースに余裕がある場合に限り、自宅葬は成立するものと言えそうです。
葬儀社側では手の届かない部分が生じる可能性がある
自宅で家族葬を行う場合、葬儀社のスタッフがどこまで式に関与するのかが問題となります。
これは、プラン別に料金が分かれているといった直接的な意味合いではなく、自宅のことをよく知っているのは、間違いなくその家の居住者であるという意味です。
準備・式の進行・片づけについては、一般葬に比べるとスタッフが対応する場面は限定的です。
自宅に来てくれた親族に対し、台所の勝手も分からない葬祭スタッフがお茶やお菓子を出すというのは、冷静に考えると自宅葬にはふさわしくありません。
よって、接待の対応は家族がほぼ全面的に行うことが想定されるため、節度ある立ち居振る舞いは必要です。
また、自分たちで食事を用意したり、出前を取ったり、親族の宿泊先の手配をしたりと、セレモニーに関すること以外は家族が手配することも珍しくありません。
葬儀社によっては、宿泊可能な施設を用意しているところもありますが、自宅葬の場合はプラン対象外となっている場合が多いため、事前に確認した方が賢明です。
食事に関して言えば、人数限定で手配してくれる葬儀社もありますから、自分たちに合ったプランを探してみましょう。
マンション・アパートでの自宅葬は難しい場合も
集合住宅の場合、スペースの問題から自宅葬自体が難しいケースも考えられます。
最低でも1LDKほどのスペースがなければ、部屋の外などに片づける必要がある家具なども出てきますし、遺体を安置することさえ厳しいでしょう。
また、仮にスペース自体は十分にあったとしても、遺体を一度マンションに戻す際にはエレベーターなどを使う必要があります。
人一人分の体重を背負いながら長い階段を上るのは、葬儀スタッフとしても難しいはずです。
その他に気を付けたいのは、マンション側が規約を設けている場合です。
契約の段階で書面に記載されている場合もあれば、マンション側が新たに設けている場合もあるため、必要に応じてマンションの管理会社やオーナーに確認を取りましょう。
共有部分も大きい購入型のマンションでは、遺体を運ぶことはそこまで難しくないため、自宅葬を考えた場合に不可能ではないケースもあります。
そこで自己判断から自宅葬を行い、後に近隣の住民からクレームが来たら、最悪マンションから離れなければならないリスクも考えられますから、十分注意が必要です。
できれば近所にバレずに行いたい。そんな家族のための対処法
自宅で家族葬を行っていることがバレると、地域によっては「水くさい」と周囲の人から言われたり、「香典持ってきたんだけど」と言って近隣の人が急遽集まってきたりする可能性があります。
これは嬉しい反面、家族葬で想定していなかった「香典返し」を用意する必要に迫られるため、ありがた迷惑になってしまうおそれもあります。
住宅地で、しかも自宅で亡くなった場合、完全に隠すのは難しいかもしれません。
しかし、病院で亡くなったとしたら、工夫次第で葬儀が自宅で行われたことを隠すことも不可能ではありません。
以下に、できれば近所に葬儀があったことを知られたくない、そんな家族向けの対処法をご紹介します。
家族・親族以外には全く葬儀について事前に知らせない
スタートの段階で、葬儀に関する情報公開を限定するという方法は、周囲に葬儀のことを知らせないためにはある程度有効です。
季節や時期にもよりますが、故人の移動を深夜・早朝に行うことで、極力人目に付かないよう配慮してくれる葬儀社もあります。
遺体の搬送が隣近所に見つからなければ、そのまま何事もなかったかのように日常に戻れます。
式の際に親族が集まってきたとしても、よほど物々しい雰囲気でなければ、何かの会合だろうと近所は考えるでしょう。
ほとぼりが冷めてから近所の人に聞かれたときは、例えば「闘病中に遠くの病院で亡くなったので、その近くの斎場で葬儀をあげた」と説明すれば納得してくれるでしょう。
葬儀が行われることも、終わったことも、全て近隣の住民には伝えないのが基本です。
近隣にバレたくないなら全員平服で
近隣の住民にバレないためには、一般的な葬儀とは違う配慮も必要です。
家族が喪服を着ることは避け、親戚などの参列者にも平服での参列をお願いするようにします。
もちろん、スタッフも同様に平服となります。
ちなみに、ここでの「平服」については、スーツやワンピースとは限らない点に注意が必要です。
人目で葬儀だと分かるような色合い・雰囲気の服装は、近隣の住民が良からぬ噂を広げる一因となります。
家族・親族・スタッフが一丸となって、極力目立たないよう意識したいものです。
自宅でお経などをあげる場合、どうしても声が聞こえてしまうこともあるでしょう。
防音室を設けるのは難しいでしょうから、いっそお経をあげないプランを選ぶのも一つの手です。
駐車場は離れた場所を使い、極力公共交通機関を使ってもらう
遠方からやって来る親族への配慮としては、極力公共交通機関を使って自宅に来てもらうようお願いしましょう。
自宅近くに車が多数停まっていると、交通の迷惑になるだけでなく、不穏な空気を近所に感じさせます。
どうしても車でないと難しいという人は、多少遠くても駐車場を使ってもらい、そこからタクシーなどで来てもらう方法もあります。
どんな時でも目立たないようにするのが、周囲への配慮としては大切です。
この記事のまとめ
以上、自宅での家族葬に関する注意点や、周囲に葬儀がバレないようにするための方法についてご紹介してきました。
故人が自宅での葬儀を希望した場合など、近隣に人が住んでいる環境での葬儀というのは、斎場とは違う意味で気を遣います。
同時に、家族葬という特殊な葬儀形態から、周囲に極力配慮しつつも気を遣わせないよう心がけなければなりません。
とはいえ、地域の結束が固い地域は別として、住宅街やマンションなどの場合は、周囲は自分が思っているほど各戸のことを気にしていないものです。
夜逃げするわけではありませんから、目立たず・騒がず・粛々と葬儀に取り組んでいれば、大きな混乱に至るケースは少ないでしょう。