多くの人が頭を悩ませる「お盆のお布施」
包む額やお布施袋の書き方と渡し方などの基本とマナー
仏事でお坊さんに来てもらったら、いくばくかのお布施を支払うのが基本です。
葬儀だけでなく法事の席でも、わざわざご足労いただいたことに感謝の気持ちを込めてお支払いします。
しかし、お盆は弔事ではなく、毎年行われるものですから、香典袋などにお金を入れてお支払いするのは不自然です。
また、金額にも一定の相場があり、菩提寺との関係性によっても金額が変わってきます。
今回は、お盆のお布施に関する基本的なマナー・お布施の相場についてご紹介します。
失礼のないよう、お布施袋の書き方・渡し方についてもお伝えしますので、合わせてお読みいただければ幸いです。
お盆のお布施に相場ってあるの?
まずは、お盆のお布施に関する基礎知識についてご紹介します。
基本的に、どのような仏事にもお布施はからんでくるため、お盆についても例外ではありません。
どのお布施でも「ないようである」のが相場
お寺とのやり取りでは、具体的なお布施の内容について相談する場面は少ないものです。
もともと、一部地域を除いて、普段からお金の話をするのは「はしたない」と思われることが多いため、相場を確認するのも難しい側面は否定できません。
ただし、相場と言えるものが全くないわけではなく、檀家同士のやり取り・菩提寺の住職への相談によって、金額の相場が見えてくる場合があります。
近所にある寺院が限られていて、地域の住民が大抵そのお寺を頼るのであれば、確認もしやすいでしょう。
都会でお寺を探す場合は、そもそも菩提寺という概念にとらわれる必要もありません。
お坊さんを派遣してもらうサービスもあり、料金体系が分かりやすいため、そのような方法を考えるのも経済的でしょう。
いずれにせよ、お坊さんにとってお盆の時期は忙しいので、地域に限られた数のお坊さんしかいないのであれば、相場も上がる可能性があります。
特定のお寺との付き合いがないなら、その点も考慮して選びたいところです。
毎年のお布施は「5,000~10,000円程度」を想定
お盆のお布施は、仏事の中でも比較的安い部類に入ります。
具体的には、概ね5,000~10,000円程度を見積もっておくとよいでしょう。
毎年行われることで、家族だけで供養を行ったとしても差し支えがないため、あまりお金を用意しなくてもよいと考える家が多いようです。
お寺の側も同様で、お盆の時期は檀家のところを回るのに忙しく、読経したら他の家に向かうため、正直時間が足りないというのが本音です。
挨拶もそこそこにお経をあげて、お茶を飲んだらすぐに家を出るお坊さんも珍しくありません。
また、お寺によっては「お盆のお布施は本当に気持ちだけでいいですから、無理しないでください」などと、あえて断りを入れてくれるところもあります。
もちろん、そこまでくだけた話をするのは、古くからの信頼関係があってのこと。
いきなり檀家の側から要望を伝えるのは、マナー違反だと覚えておきましょう。
初盆や法要は別格
このように、多くのお寺が時間に追われるお盆は、読経・お布施にそこまで力を入れる仏事ではないものと考えられます。
しかし、初盆・法要を迎える場合は別格です。
住職だけでなく、親族・故人がこぞって参加するため、その分だけお坊さん・お寺にお願いすることが増えます。
お寺に檀家が集まって、合同法要を行うケースもあることから、自然と相場も高くなります。
初盆の相場としては、概ね30,000~50,000円を想定しておくと安心です。
その他、会食があるなら規模に応じて御膳料・家にお坊さんが来てくれるなら御車代を包むことを忘れないようにしましょう。
お布施袋の書き方について
お盆は、多くの家庭にとって避けるべきでない仏事とはいえ、弔事ではありません。
そのため、シンプルな封筒調のデザインが用いられます。
以下に、お布施袋の書き方についてご紹介します。
表面はシンプルにまとめる
文具店・仏具店などで見かけるお布施袋には、墨字で「御布施」と印刷されている封筒が多いようです。
そのため、自分で白地の封筒に文字を書くなら、そのように筆字で書けば問題ありません。
封筒の表面中央・上段に、左右の白地が同じになるよう、バランスを整えて書きます。
ちなみに、あまり知られていないことですが、そもそも御布施と封筒に書かなければならない決まり事はありません。
下段には、こちらも中央に家の名前を書きます。
法要などを行うのであれば、施主の氏名を書いても問題ありません。
裏面は特に書かなくてもよい
お盆の読経をお願いするような間柄なら、おそらくお寺の方でも住所は把握しているでしょうから、香典袋のように住所を書く必要はありません。
また、香典袋のように、金額を細かくあらため香典返しを考えなければならないわけではありませんから、本来は金額を書く必要もありません。
しかし、複数の檀家を回るお坊さんのことを考えると、取りまとめる際に住所や金額が書かれていた方が親切だという意見もあります。
もし、他の檀家さんが書いている・お坊さんからお願いされるなどの状況に遭遇した場合は、旧字体の漢数字で裏面の右下に書きましょう。
例えば、3,000円の場合は「金参阡圓也」といったように書いて、金額を修正できないようにします。
もっとも、お坊さんが金額を改ざんしても何の得もありませんから、慣習として覚えておくだけで差し支えないでしょう。
墨の色に注意が必要
封筒に文字を書く場合、墨の色は黒を使います。
葬式の香典袋には薄墨を使いますが、これは「悲しみのあまり涙で墨がにじむ」という心情を表現したもので、弔事で用いられる色です。
お盆のお布施は弔事で用意するものではありませんから、その点を誤解しないようにしましょう。
お布施の包み方
お布施を渡す場合、弔事でないとはいえ裸でお金を渡すのはマナーに反しています。
包み方にはルールがあるため、失礼のないよう覚えておきましょう。
一般的なのは奉書紙に包んで渡す方法
お布施を渡す正式・一般的な方法は、奉書紙を使う方法です。
奉書紙は、半紙に似た紙ですがやや分厚く、市販のコピー用紙より厚みがあるものも見られます。
手近になければ、半紙を使っても差し支えありません。
折り方は、以下のやり方がスタンダードです。
- 半紙を右斜めに置いて、上下に三角形を作るように折り目を作る。このとき、上下がお布施袋を隠せる長さにまとめる。
- 折り目を確認し、お布施袋の幅に合わせて上下に折る。
- 左側をお布施袋の左端に2度折り込み、お布施袋が隠れるようにする。
- 右側を巻き込むように折って、完成。
ちなみに、この方法でお金を包むなら、裸で包んでも差し支えありません。
その場合は、人物の顔を包みの表側に向けましょう。
封筒に包む方法
奉書紙の準備ができない場合は、封筒を使います。
クラフトの茶封筒ではなく、白色で無地の封筒を選びます。
このとき、郵便番号欄がプリントされていないもの・模様などがないものを選ぶことに注意が必要です。
二重封筒は偶数で、不幸が重なるという縁起につながる意味で受け取られることもあるため、できるだけ避けましょう。
水引って必要?
お布施袋は、原則として水引を必要としません。
しかし、関西など一部地域では、黄白の水引がついたものを用意する場合があります。
その他、法要の際に紅白の水引を使うケースもあります。
地域によってマナーが違うため、関東から関西に、あるいは古い習慣が残っている地域に引っ越した場合は、念のため確認しておきましょう。
お布施の渡し方
お布施をそのままお坊さんに渡すのは、本来は礼を失する行為です。
とはいえ、どのタイミングでお布施を渡せばよいのか分からず、帰り間際になって慌てて渡してしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。
ここでは、お布施をスムーズに渡すにはどうすればよいのか、主な方法をご紹介します。
お盆を使う
自宅にお坊さんを招いた場合は、お盆を使ってお布施を渡します。
その際に使うお盆は「切手盆」と呼ばれる四角い黒塗りのお盆で、絵や宗紋がデザインされているものも見られます。
よって、食べ物を運ぶ一般的なお盆は使わない点に注意が必要です。
ちなみに、菓子折りがある場合は、菓子折りの上にお布施袋を乗せて、菓子折りごと渡せば問題ありません。
ふくさを使う
自宅以外の場所で法要を行う場合、自宅と勝手が違うため、屋外・屋内問わず渡す機会を想定しておかなければなりません。
そのため、ふくさを用意しておくとスムーズです。
ふくさは、古くからある風呂敷のものでも、ケース型のものでも、どちらでも構いません。
渡すときは、そのまま渡すのではなく、一度ふくさからお布施袋を出して、その上に乗せて差し出します。
会場でお坊さんに手渡すタイミングとしては、やはり読経の後が一般的です。
菩提寺が用意した会場でない場合は、会場のスタッフに相談してみましょう。
初盆であれば、御車代・御膳料なども用意するでしょうから、それらもお布施袋と一緒にまとめて渡せば問題ありません。
切手盆・菓子折り・ふくさを使うのは、自宅・自宅以外のいずれでも同様です。
渡す際にはお礼を伝える
周囲がバタバタしていると、意外ときちんとできていないのが「お礼」です。
お布施をお坊さんに渡す時、感謝の気持ちを伝えることで、今後も良い関係を築くのに役立つでしょう。
ちょっとした一言が、お坊さんの心にあなたの存在を留めます。
「今年も無事にお盆を迎えられました」や「本当に心ばかりですが、どうぞお納めください」という一言を添えるだけで、気持ちの良い時間が流れるはずです。
この記事のまとめ
お布施袋の書き方や包み方は、葬儀に比べるとルールは簡素ですが、全く知らなくても差し支えないものではありません。
毎年のことですから、正しいやり方を知っておけば、年々焦ることはありません。
また、香典に相場があるように、お布施にも相場があります。
全国的にこの額、という設定があるわけではないものの、できるだけ相場を外さない金額を包みたいものです。
不安を感じることがあれば、檀家や近所に相談するのもよいでしょう。
どうしても金銭的につらい状況であれば、お坊さんに話してみるのもよいかもしれません。
最終的にお坊さんの心を打つのは、日ごろのやり取りや感謝の気持ちです。
「ありがとう」の気持ちを忘れずに、お盆をつつがなく過ごしてくださいね。