よく聞く「開眼供養」や「開眼法要」について。
基本や法要の特徴と行う時期や必要性と費用のおさらい
新しくお墓を建てた時・お仏壇を購入した時などは、ご先祖様や故人にそれを伝え、浄土から現世をお見守りいただきます。
そのために行われるのが、開眼供養・開眼法要と呼ばれる法要です。
しかし、比較的大規模な法要を執り行うタイミングで一緒に行うことが多いため、具体的にどのような法要なのか、必要性はあるのかなど、疑問点が多いことも事実です。
今回は、開眼供養・開眼法要について、実際に行う時期やその必要性・かかる費用などの基本事項について紹介していきます。
開眼供養・開眼法要とはどのような供養・法要か
開眼供養・開眼法要は、単独で行うことも、他の大きな法要と同時期に行うこともできます。
多くの場合、お墓ができる都合も鑑み、四十九日・一周忌と同時に行うケースが多いです。
開眼供養のみを行う場合、その意味合いなどを知らずに行っている家庭もあるため、はじめに開眼供養・開眼法要の概要をお伝えします。
ご先祖様や故人の魂をお招きする大切な儀式
開眼供養では、お墓・仏壇(ご本尊)・位牌といったご先祖様や故人の霊の器となるものに対し行う供養で、入魂式・魂入れ・仏壇開きなどの別称があります。
霊魂は人の目に見えず身体を持たないため、現世での依代(よりしろ)となるものに魂を宿す儀式を行い、それが開眼供養となります。
仮に、開眼供養を行わずにお墓や位牌をただ用意しても、そこには魂はなく、祈りは霊魂に届かないとされています。
仏教では、お墓・仏具等に御仏の魂を迎え入れることで、ようやく礼拝の対象となる点に注意が必要です。
ちなみに、開眼という言葉の本来の意味は、御仏を模したもの・礼拝する目的で作成されたものに対し、魂を込めて安置することを指します。
すなわち、仏像の目を開くという意味で用いられていました。
開眼供養が始まったのは奈良時代のこと
開眼供養の最古の歴史として知られているのは、仏教を信奉していた聖武天皇が「東大寺の大仏」を建立した際の開眼供養です。
仏像があらかた出来上がった段階で、インドの高名な僧侶に大仏に目を書き入れてもらい、当時の重要なイベントとして盛大に執り行われました。
聖武天皇は天皇の中でも苦労人であり、父である文武天皇を早くに亡くし、歴史の荒波にもまれた結果、天皇になるまでに十数年の時間を費やしています。
そのせいか、仏教に対する思い入れは深く、当時の日本に降りかかってきた様々な災厄・過酷な出来事に対処すべく、信仰心を強めていきました。
東大寺の大仏は今なお現存しており、民衆の不安を仏教の加護によって鎮めようとした覚悟がうかがえます。
開眼供養を行わないとどうなるのか
開眼供養は、霊魂を迎え入れる依代を作ることに意味があるため、ほとんどの宗派で行われます。
お仏壇にご本尊や位牌を安置する以上、その中にきちんと御仏・ご先祖様・故人の魂が入っていなければ、礼拝しても何の霊験もない、という解釈になるからです。
逆に言えば、ただ形骸的に祈るだけなら、開眼供養の必要性はないことになります。
しかし、宗派によっては行わないこともあります。
代表的なものが浄土真宗で、死後は阿弥陀如来の力ですぐに浄土へ移ることができると考えていることから、位牌やご本尊に魂を迎え入れるという供養の概念そのものがありません。
お仏壇も、あくまでもご本尊を祀る意味合いになりますから、位牌等にご先祖様の魂をお入れする形にはなりません。
新しくご本尊をお迎えする際は「入仏法要(入仏式)」と言い、ご本尊を別のお仏壇に移す際は「遷座(せんざ)法要」を行います。
開眼供養はどのタイミングで行うのか
次に、開眼供養が行われる時期について、具体的にどのようなタイミングで行われるのか、いくつかシチュエーションをご紹介します。
お葬式から四十九日法要を行うまでの時期のほか、お墓を建立したり仏壇一式を購入したりする段階で、開眼供養について説明を受ける・意識することが多いようです。
仏壇・位牌を購入した場合
葬儀を終えた段階では、まだ納骨などのスケジュールを決めていないケースが多いはずです。
そのような中、御仏にお越しいただくためには、まずは取り急ぎ仏壇とご本尊を用意しなければなりません。
また、四十九日を過ぎるあたりで本位牌が出来上がると、仏壇に安置することを想定します。
この頃には、開眼供養が必要な仏具が増え始めるため、仏壇・ご本尊・位牌が揃った段階でお願いするケースが考えられます。
逆に言えば、四十九日を迎える前の段階で仏壇・仏具を一通り揃えておくと、今後の流れがスムーズかもしれません。
お墓を建立した場合
お墓の開眼供養を行う場合、自宅にお坊さんを呼んで供養を始めるわけではなく、お墓に納骨することも想定してスケジュールを立てます。
よって、納骨式と開眼供養がセットになるものと考えてよいでしょう。
お墓を建立した後の話で、しかも納骨がからんでくることから、規模が比較的大きくなるものと予想されます。
よって、開眼供養に誰を招くのか事前に考えておき、会食も想定しながら出欠確認を行います。
会食については、参列者だけでなくお坊さんも呼びますが、お坊さんが参加できない場合は御膳料を用意することも考えておきます。
一通り人数の目途が立ったら、お寺もしくは葬儀社などと相談し、式次第と式に必要なものの準備を行いましょう。
納骨式と一緒に開眼供養するなら、参列者が墓前に移動してからの供養となりますが、お寺によっては寺院・斎場などで読経してから供養に進む場合もあります。
どのような流れで行うのかは、開催側の都合で決まるため、式次第は事前に確認しておきましょう。
その他の場合
開眼供養の時期を決める場合、故人が亡くなってから経過した年数は基本的に関係ないため、故人の家族次第でスケジュールを決められます。
ご本尊や位牌のように、開眼を必要とする仏具があれば、その段階で依頼できる供養の一つです。
また、位牌が古くなったり、お墓やご本尊に何らかの理由で傷が付いたりすると、新しいものを用意しなければなりません。
その場合は、今宿っている魂を抜く「閉眼供養(魂抜き)」を行った後、新しい仏具に魂を入れます。
お墓や仏具を新しいものに替える場合も、開眼・閉眼供養が必要だと覚えておきましょう。
開眼供養を行う場合、費用はどのくらいを想定するか
開眼供養は、一般的な葬式の流れには含まれておらず、お墓や仏壇が用意できていなければ急がずともよい供養です。
しかし、仏事としては重要な供養の一つですから、それ相応の費用を用意しておきたいところです。
相場は年忌供養と同等の額を想定する
開眼供養の相場は、一周忌・三回忌など、年忌法要と同等の額を想定しましょう。
もともと、御布施の額に明確な決まりがあるわけではありませんが、開眼供養は今後長年にわたり祈りを捧げるための供養ですから、お彼岸・お盆のように気軽に考えるわけにはいきません。
具体的な金額としては、概ね3万円を想定しておきましょう。
お寺や地域によっては5万円を包むところもあるため、近所に同じお寺の檀家がいるなら相談してみることをおすすめします。
年忌法要の相場が比較的低めなら、少ない額で問題ないケースもあるからです。
また、少ない金額とは言え、あまり極端に少ない額だったり、端数が出たりするようなら、3万円を包んでおいた方が無難です。
特に、4や9が含まれる額は不吉と考えられるため、他の親族に金額を悟られないとしても、できるだけ避けましょう。
他の法要と一緒にお願いする場合、少し色を付ける
開眼供養は、単体で行うこともできますが、多くの場合別の仏事と一緒に行われます。
そのような場合、まとめて一度に行ってもタブーではありません。
御布施を支払う場合の注意点は、法要を一度にまとめて行ったとしても、決して同じ金額にしないことです。
同じ日に複数の法要を行ってくれているわけですから、その分色を付けて包まなければ失礼です。
例えば、納骨式に加えて開眼供養を行う場合、納骨時と開眼時にお経をあげていただく形になります。
それを考えると、相場の1.5~2倍を想定しておいた方がよいでしょう。
具体的な金額で、なおかつ相場に合致する考え方としては、開眼供養だけなら3万円、納骨式も加わるなら5万円というように、数が増えるだけ金額も増やすという方法がシンプルです。
もちろん、丁寧に供養していただいたり、ねぎらいの言葉をかけていただいたりした場合は、それ以上の金額を包むことも想定しておきましょう。
交通費や御膳料が必要なケースも
菩提寺の敷地内で供養の全てが済むなら、基本的には御布施の支払いだけで問題ないでしょう。
ただし、会食や墓地への移動を考えているなら、別途お包みする金額がある点に注意が必要です。
市営墓地などにお坊さんを呼ぶ場合、その分のタクシー代・ガソリン代がかかります。
わざわざ出向いてくれた移動費としてお包みするのが「御車代」で、相場としては5千円もしくは1万円です。
また、開眼供養後は、一般的には会食にお坊さんが出席します。
しかし、お坊さんのスケジュールの都合上、一緒に食事できないケースも珍しくありませんから、その場合は御膳料を準備します。
相場は、御車代と同じく5千円、もしくは1万円です。
その他、卒塔婆供養を行う宗派では、そのための卒塔婆料を支払います。
こちらは、故人の家族だけが支払うとは限らず、参列者もできる供養です。
よって、各人で払う場合もあれば、施主側がまとめて支払う場合もあります。
金額としては、2千円~1万円が相場になります。
この記事のまとめ
開眼供養は、すぐに行う義務はありませんが、将来的には必要となる供養です。
できれば、お墓や仏壇を用意した段階で、開眼供養を想定したスケジュール・予算を立てたいところです。
また、一度開眼の対象となる仏具等を揃えてしまえば、その後の環境が変わらない限り、同じ供養は必要としません。
宗派・お寺によっては別の供養を必要としたり、逆に開眼供養を行わなかったりするケースもありますから、よく分からなければ菩提寺や葬儀社に確認してみましょう。