今更聞けない「喪中はがき」の基本。
正しい書き方や出すタイミングなど基本とマナー
新年のご挨拶として、親しい人に出す年賀状。
しかし、今年身内が亡くなった場合、来年度の年賀状を出すことはマナー違反とされています。
そこで、年賀状に代わるものとして、ほとんどの家庭で「喪中はがき」を出します。
誰しもその存在については知っているものの、実際に出す場合はどのようにすればよいのか、多くの方が戸惑ってしまいます。
毎年のように不幸が続くことは、決してないわけではありませんが、そう多くはない現象です。
そのため、過去に出した経験があったとしても間が空いていて、次に出すときにはもはや覚えていないという方が大半です。
今回は、そんな喪中はがきの基礎知識について、いくつか紹介していきたいと思います。
改めておさらい。「喪中はがき」とは
改めて基本からおさらいしてみましょう。
まずは、喪中はがきにはどのような意味があるのか、なぜそのような習慣が広まったのかについて紹介します。
もともとは儒教の「喪に服す」習慣から派生した考え方と言われていますが、近年では単なる儀礼として考えている方も少なくありません。
喪中はがきとは「年賀欠礼挨拶状」のこと
喪中はがきの性質を一言で表すと、年賀欠礼挨拶状となります。
これは要するに、「今年は身内に不幸があったため、喪に服し新年の挨拶を行わない」ことを意味しています。
もともと儒教では、親の葬儀をあげることを「人の道」と説いており、親が他界したら「三年間は喪に服す」ものと教えています。
この教えに基づいて喪中を考えてみると、故人の一周忌さえ迎えずに新年を迎える中、「今年一年はおめでたい年だったから来年もよろしくお願いします」と親族・知人・友人に回答する年賀状を送ることは、一般常識に即しても不謹慎なものとして考えるのが自然です。
よって、昨年はめでたかった・今年もめでたい年になりますようにと送り合う年賀状は、本質的に不幸のあった家にはそぐわないとなるのです。
現代では、精神的な意味合いが強くなってきている
儒教の概念から広まった喪中はがきの習慣ですが、現代では必ずしも宗教観・常識に限った話で行われているわけではありません。
大切な人を失った悲しみが強くなってしまい、とても新年を祝えない気持ちだから喪中はがきを出すという家庭も見られるようになりました。
特に、長年連れ添った配偶者を失った家庭のショックは計り知れず、立ち直るのにかなりの時間を要するケースもあります。
そのような心境で年賀状が送られてきたとしたら、心がかき乱されたとしてもおかしくありません。
現代における喪中の習慣は、宗教観以上に遺族の精神的な問題が重視されているものと考えられます。
年賀状を送るな、という意味ではないことに注意
喪中はがきを送る上で大切なことは、喪中はがきは決して「今年は年賀状を送らないで欲しい」という意味合いで送るものではないということです。
あくまでも、新年のご挨拶を遠慮させていただきますという意味合いになります。
間違って自宅に年賀状が届いた場合に、その相手を非難するものではないということです。
確かに、常識がある方なら、喪中はがきが届いた時点でその宛先には年賀状を送らないはずです。
しかし、何らかの理由で喪中はがきが届いていなかった可能性は否定できませんし、そもそも自分が喪中はがきを送っていない方から年賀状が届くこともあります。
このような場合、喪中だからといって何の便りもしないというのは、かえって人間関係に亀裂を生じさせる可能性があります。
寒中見舞い・年始状といった形で、年賀状ではない便りを使い、相手を気遣うお返事を心がけましょう。
喪中はがきに関する基本マナー
続いては、喪中はがきを送る際に覚えておきたい、基本的なマナーについて紹介します。
どこまでの付き合いなら喪中はがきを送るのか、親族の誰が亡くなった場合までは喪中にあたるのかなど、考えると意外と悩むポイントをまとめてみました。
「身内の不幸」は、具体的には何親等までか
喪中とは、簡単に言ってしまえば身内の不幸が発生した年のことです。
しかし、この「身内」というのが難しく、自分にとっては親しい親族だったとしても、法的には全くの他人というケースは珍しくありません。
基本的な考え方としては、同じ屋根の下で暮らすのが自然な直系血族である、兄弟・祖父母・孫までの2親等までが該当します。
ただ、これはあくまでも一般的な概念に過ぎません。
法的には3親等でも、本当にお世話になった人だから喪中だと判断することは、決して間違いではないのです。
各家族・親族の関係性に応じて、喪中はがきを出すかどうかを決めましょう。
喪中はがきは誰に送るべきなのか
喪中はがきを送る相手は、本来は年賀状を毎年送付している相手であり、当然身内や親しくしている人が該当するでしょう。
しかし、こちらも具体的に範囲を決めようとすると、意外と悩んでしまうものです。
例えばですが、既に不幸を知っている身内に喪中はがきを送る必要は、本来はありません。
それだけ親しい間柄なのだから、察することができるだろうという判断です。
しかしながら、マナーとして喪中はがきを出すものと考えている人も少なくありませんから、念のために出しておこうと考える人も多いです。
また、喪中はがきを出す場合、自分たち家族より故人の人間関係を優先します。
故人とどれだけ深い付き合いがあったのか、どんな関係だったのかを考慮して、喪中はがきを出すべきかどうかを決めたいところです。
しかし、故人との間に関係があっても、家族はその存在を知らなかったケースもあります。
そのような場合は、喪主の名義で喪中はがきを出すことになるでしょう。
喪中はがき、書き出しはどうする?
現代においては、ありがたいことに喪中はがきに必要な文言自体が既にプリントされているはがきが販売されています。
また、自分でパソコンを使って作成・印刷する場合、テンプレートの文章がはがきソフトなどに入っていることも珍しくありません。
ただし、固有名詞や故人・家族特有の事情や情報は書き足さなければならないため、やはり基本的なフォーマットを押さえておいた方が無難です。
まず、基本的なあいさつは「喪中につき年末年始のご挨拶を失礼させていただきます」のような、定型文で問題ありません。
この部分を自分で書くときは、筆ペンや筆文字などで大きく表現し、これが喪中はがきであることを相手にしっかりと伝えます。
続いて、故人の情報を書きます。
命日・氏名・年齢を記し、具体的な続柄についても書いておきます。
続柄を書く理由は、差出人と故人との関係を知らない人もいるからです。
その後、故人が生前お世話になった旨、感謝の意を伝え、最後にはがきを書いた日付を記しておきます。
ちなみに、喪中はがきに近況報告を書いている例を見かけますが、これはマナー的にはNGです。
本当に親しい人の間柄では構いませんが、長くなりそうなら松の内を過ぎてから書簡を送った方がよいでしょう。
喪中はがきを出すタイミング・喪中の期間・考え方など
最後に、喪中はがきをいつ出すのかや、亡くなった人と家族との関係性によって違う喪中の期間、イレギュラーケースの対応などについて紹介します。
杓子定規に考える必要はありませんが、迷った際の目安として考えておくと迷いません。
喪中はがきは、年末年始前に出すこと
喪中はがきは、自分たち家族が喪に服していることを相手に伝えるために出すはがきです。
よって、年末年始と同じタイミングで出してしまうと、年賀状が相手方から届いてしまいます。
そこで、喪中はがきを出す際は、10月中旬~11月下旬を目途にはがきを書き終えて出すものと覚えておきましょう。
故人が比較的早い時期に亡くなったのであれば、その段階で喪中はがきを送ってもよいのではないかと考える人もいると思います。
しかし、受け取る側のことを考えると、あまりに早い時期にもらっても、結果的に忘れてしまうリスクがあります。
喪中はがきを受け取る側の気持ちを考慮して、多くの人が年賀状を書き始める少し前に送ることを意識しましょう。
喪に服す期間や対象となる人は、故人との関係性で違う
あまり知られていないことですが、喪中すなわち喪に服す期間は、はがきを出す人と故人との関係性に応じて異なります。
自分たちの両親や義父母は13ヶ月・子どもは1年・祖父母や兄弟姉妹は半年というのが、一般的なルールとなっています。
ただ、この期間というのは、地域や家庭によって異なり、より短い期間で考えているところもあります。
また、年賀状を出す・出さないに関連していることですから、どうしても年単位で時期を考えてしまいがちです。
その他、故人と特に親しかったことを周囲が理解しているのに、亡くなった次の年に平気で年賀状を出すというのも非常識です。
客商売の場合、本来は喪中という概念をお客様との間に持ち込む必要はありませんが、開店当時から懇意にしてもらっていたお客様が亡くなった際、周囲に相談して喪中としたケースもあるようです。
また、会社や組織において特に慕われていた社員が亡くなり社葬を行った場合、会社が喪中対応することもあります。
一般的には、親族間での関係性に留意すれば、喪中対応については支障ありません。
しかし、あくまでも人間同士のやり取りが根底にあるわけですから、四角四面に考えないことが大切です。
地域によっては親族の定義があいまい
人間関係が濃密な地域では、親族という定義自体があいまいになる傾向があります。
かつて多くの人が集まって共同生活を営んでいた炭鉱などでは、遠くの親類より近くの他人といった状況で、血のつながりがない人同士の仲が非常に濃密だったと言います。
このような地域であれば、親族以上に仲の良い人がいてもおかしくはなく、身寄りのない人同士が一緒に暮らすことも珍しくなかったはずです。
こうなってしまうと、そもそも地域全体が家族のような関係性になっており、独自の風習が生まれていることは十分考えられます。
昔の風習を色濃く残す地域で暮らす場合は、一般的な概念に縛られず、その環境に順応することを心がけましょう。
この記事のまとめ
喪中はがきの基礎知識について、かいつまんでポイントをご紹介してきました。
大切なことは、故人が亡くなり喪に服していることを伝え、なおかつ受け取る相手の事情をおもんばかることです。
喪中はがきを送る場合、年賀状と比較して送る回数が相対的に少なく、どうしても戸惑いがちです。
だからこそ、基本的なルールを押さえた上で、個々の状況に応じて対応することが必要になると言えるでしょう。
今ではメールなどの台頭もあって、年賀状そのものを送らないという人も若い層を中心に増えてきてはいるかもしれませんが、やはり基本的なマナーとして知っておく必要はありますのでしっかりとおさえておきましょう。