お盆の時期のお仏壇の祀り方。
お盆で必要な仏具の種類と置き方・飾り方について

  • 2020.03.03
  • 2020.04.17

法事・法要, 仏壇・仏具

一年の中でも特別な時期であるお盆は、お仏壇の祀り方も普段とは異なります。
自分たちの家族だけでなく、ご先祖様も一緒にもてなすことを考えると、その分だけ内容も豪華になるのは当然と言えるでしょう。

現代では、仏事に関する新しい考え方が広まり、お盆だけのために仏具を用意する必要はないと考える家庭も増えてきました。
しかし、わざわざお盆に仏具や飾りを用意するのは、それぞれにきちんとした意味があります。

今回は、お盆を迎えるにあたり必要な仏具の種類と、その置き方・飾り方についてご紹介します。
宗派や地域の違いもあるため、この記事でお伝えする全てを用意する必要はありませんが、参考になれば幸いです。

お盆の時に用意する主な仏具と飾り方

お盆には、故人以外の霊も自宅に招き入れることになります。
そのため、故人の好きなものだけを用意して待っていても、ご先祖様は戸惑うことでしょう。

古くから連綿と続く日本の文化を引き継ぐことで、ご先祖様も安心してやって来ることができます。
家にやって来る全ての霊に向けて、精いっぱいのおもてなしをしましょう。

精霊棚(しょうりょうだな)

お盆の代名詞的な仏具で、お盆以外の時期に使うことはありません。
自宅にある小机などを使い即席で設けるのが一般的ですが、初盆の場合は本格的な棚を購入・作成するなどして用意します。

古くから伝わる作り方には、篠竹と呼ばれる細身で群生する竹を使った方法があります。
篠竹を柱にして四方に立てたら、そこに柵を設けます。
その後、竹に縄をはって結界を作るようにしたら、野菜やほおずきなどを逆さに下げます。

簡単に用意する場合は、お仏壇の前に小机・経台などを置き、イネ科のマコモという植物の草で編んだござを敷きます。
マコモは日本全国で見られ、出雲大社の神事でも使われる神聖な植物の一つで、お釈迦様が病人を治療したエピソードに由来して用いられています。

また、精霊棚は、それだけで準備が完了するわけでなく、その上にご本尊・位牌・ロウソク立て・線香立て・りんなど様々なものを飾り、ご先祖様をお招きします。
以下に、配置する主なものをご紹介します。

胡瓜馬(きゅうりうま)・茄子牛(なすうし)

一昔前まで、お盆を迎えた家庭の多くで見られた飾り物です。
胡瓜と茄子に、割り箸・苧殻(おがら)などで作った足を4本刺して作ります。

ご先祖様などをお迎えするための乗り物として作られ、行きは足の速い馬がご先祖様を迎えに行き、帰りは歩みの遅い牛に乗ってご先祖様が名残を惜しむと言われています。

地域によって用意するモチーフに差があり、沖縄ではご先祖様の杖代わりとして、熟れていないサトウキビが用意されます。

閼伽水(あかみず)

蓮の葉を器に入れ、その上に少量の水をたらしたものを閼伽水と言います。
閼伽という言葉は、一般的にはあまり聞き慣れないと思いますが、供養に用いる水のことをそのように呼びます。

水を供養に用いる理由については、インドでお客さんの足をそそいだり、食後に口をすすいだりするのに水が用いられていたことから、それが仏教に取り入れられたという説があります。

また、器に入れるのは蓮の葉だけとは限らず、花を束ねたものを上に置く地域もあるようです。

水の子

御供えの一つで、無縁仏・餓鬼への供え物として有名です。
作り方は、胡瓜・茄子を賽の目に刻み、洗米と一緒に水を入れた器に盛りつけるだけです。

本来は、餓鬼道に堕ちた人を救うための食べ物ですが、お盆の時期には様々な霊がやって来るため、見知らぬ霊の方々も歓迎しますよ、という意味で用意します。
こうすることで、故人やご先祖様が恥ずかしく思うことなく、あの世に旅立てると言われています。

盆花

お盆に飾るお花は、普段のものと違い「盆花」として区別される場合があります。
一般的なスーパーなどで手に入る仏花を備えることも、決して悪いわけではありませんが、地域ごとに決まった花がある場合もあるため要注意です。

もともとは、自宅や田んぼ・畑の近くに咲いていたものを捧げたのが始まりです。
ミソハギやキキョウなどは有名ですが、その土地でよく咲いていたことから飾られていたに過ぎず、全国的に同じ花を捧げる必要はないことに注意が必要です。

各種御供え物

その他、一般的な各種御供え物についても、精霊棚に御供えします。
お菓子や食べ物などを、故人やご先祖様に向けてお出しします。

盆提灯

盆提灯は、毎年飾るもの・初盆のみ飾るもの・灯籠型のものなどがあります。
いずれも共通しているのは、お盆の時期にご先祖様の霊が迷わないよう、家に招き入れるために提灯を灯すという考え方です。

毎年飾るものは、模様や絵が描かれており、涼やかなイメージを表現している提灯が多く見られます。
天井に吊り下げたり、お仏壇・精霊棚の近くに配置したりします。

初盆で用いられるのは白提灯で、一般的には紋様のない白紋天提灯が用いられます。
軒先や縁側といった場所に吊るして、初めてあの世から家までやって来る霊が迷わないようにする目的があります。

提灯は、あらかじめ電球が備えられているものもあれば、ロウソクの火を灯せるものもあります。
ただし、ロウソクは火事を起こす可能性もありますから、LEDを使った電灯を使うなど、工夫が必要になるでしょう。

霊供膳

精霊棚に食事を備える際に用いられます。
この時期は三食を用意して御供えするため、ある意味「器のお盆」の役割を担っている仏具です。

中身は本来精進料理と決まっていますが、現代では故人の好きだったものを混ぜても問題ありません。
ただし、地域やお寺によっては、献立が細かく決まっている場合もあります。

全ての家において必須ではないが用意することもある仏具

多くの家では、先に挙げたものを揃えておけば、お盆の仏具として必要十分な準備ができるでしょう。
しかし、中には諸々の事情から、別の仏具・飾り物を用意するケースもあります。

以下に、全国的にメジャーではないものの、お盆で用意している家も多い仏具・飾り物について、主なものをご紹介します。

祭壇

精霊棚は、それほど大きなサイズではなく、物を置けるスペースに限りがあります。
そのデメリットを解消する方法の一つとして、祭壇型の精霊棚を使う方法があります。

宗派・お寺の事情から、小さいサイズの祭壇型を選ぶケースもありますが、その多くはとても豪華です。
上段に位牌と灯(ともしび)を、中段に霊供膳と御供え物を、下段に水の子・閼伽水・馬牛を備えるイメージです。

また、経机のある家の中には、その下に「ヘギ膳」と呼ばれる風習を守っているところもあります。
「うらやましさから近づいてくる霊にもご飯を食べてもらおう」という布施の気持ちを示したものであり、ご飯とおかずを供えます。

十三仏掛軸

一部地域では、お盆の時期にお仏壇の扉を閉め、精霊棚に十三仏の掛軸を祀るところもあります。
一説によると、十三仏は室町時代から信仰の対象となったと言われています。

最後の法要となる三十三回忌までの間に、死者が仏になるべく導いてくれる仏様を描いた掛軸で、それぞれ以下の忌日に該当します。

初七日不動明王
二七日釈迦如来
三七日文殊菩薩
四七日普賢菩薩
五七日地蔵菩薩
六七日弥勒菩薩
七七日薬師如来
百箇日観世音菩薩
一周忌勢至菩薩
三周忌阿弥陀如来
七周忌アシュク如来
十三回忌大日如来
三十三回忌虚空蔵菩薩

先人たちは、これらの仏様に祈りを捧げることで、追善供養としたものと推察されます。
特に丁寧に供養をしたいと考える人は、お盆の時期に飾ってもよいでしょう。

鬼灯(ほおずき)

赤色の植物で、提灯のような形をしていることから、お盆に飾られることの多い植物です。
必須というわけではありませんが、御供え物が寂しい場合の彩りに用いられていました。

また、霊魂は身体がないことから、中が空洞のほおずきに身を宿すとも言われ、それゆえ鬼灯の漢字が当てられたものと推察されます。

宗派に応じて異なるお盆の祀り方

様々な仏具・飾り物があるお盆は、宗派ごとに祀り方も変わってきます。
各宗派の開祖を輩出した、天台宗のスタイルを基本とする地域・お寺が多いようですが、いくつか違いが見られます。

霊供膳の配置の違い

お盆の期間に御供えする霊供膳は、宗派によって若干配置が異なります。
そもそも、霊供膳で用いられるお椀には、以下の5種類が存在します。

  • 飯椀:白米
  • 汁椀:味噌汁またはお吸い物
  • 壺椀:おひたしなど
  • 平椀:煮物
  • 高杯:漬物

この5種類のお椀の中で、飯椀と汁椀の配置は各宗派共通となっており、膳における左下に飯椀・右下に汁椀にそれぞれ配置します。
その他、各宗派で通例となっている配置があり、それぞれ禅宗・浄土宗・その他の宗派で以下のように分かれています。

  • 禅宗 :平椀が左上、高坏が右上、壺椀が中央
  • 浄土宗:壺椀が左上、平椀が右上、高坏が中央
  • その他:平椀が左上、壺椀が右上、高坏が中央

まるで間違い探しのような配置ですが、混乱しないように気を付けましょう。
なお、お寺によって違う可能性もあるため、事前に確認すると確実です。

宗派別の特徴

霊供膳の他にも、飾り物や仏具にちょっとした違いが見られます。
例えば、真言宗は鬼灯を飾ったり、精進料理を作ったりするお寺が多いです。

また、浄土宗・臨済宗は、水の子の代わりに施餓鬼幡(せがきばた)を白米に刺して飾ったり、短冊のように精霊棚の縄に結んだりします。
曹洞宗のお寺では、苧殻(おがら)を御供え用の箸とする場合があります。

詳細は、家族がお世話になっているお寺に確認すると確実ですが、在家信者でそこまでこだわらなくてもよい、という考え方もあります。
宗派によって多少の違いがある点だけ、簡単に押さえておくとよいでしょう。

浄土真宗は特別な宗派

浄土真宗では、阿弥陀如来の浄土に往生したものは「即成仏」する、という考え方を持っているため、お盆に行う一般的な飾りつけ・御供えは行いません。
そのため、魂が家にやって来る、という考え方はしないのが普通です。

とはいえ、やはりお盆の習慣は祖霊信仰の一環ですから、どこの家でも宗派問わず祈りを捧げているものです。
普段通りで構いませんから、ご先祖様や故人に感謝の気持ちを伝えましょう。

この記事のまとめ

お盆に準備する仏具は、精霊棚といい霊供膳といい、ご先祖様に喜んでもらうこと・ご先祖様をお迎えすることに特化したものが多く見られます。
それだけ、昔の人にとってご先祖様の存在が重要なものだったと考えられます。

また、亡くなってから日が浅い故人についても、少しでも早く成仏して欲しいという気持ちからか、十三仏掛軸のような「御仏への信仰」を形にした仏具などもあります。
仏具を用意すること以上に、ご先祖様・故人の安寧を祈る気持ちが大切と言えるのかもしれませんね。

  • 公開日:2020.03.03
  • 更新日:2020.04.17

テーマ:法事・法要, 仏壇・仏具

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