墓じまいをする場合の遺骨・骨壺について。
遺骨や骨壺の取り出し方と取扱いの注意点を紹介
墓じまいをすると、今までのお墓にあった遺骨や骨壺はそのままにせず、取り出して新しいところに納骨しなければなりません。
その際、注意して遺骨や骨壺を取り出さないと、骨壺の破損や遺骨の紛失につながるおそれがあります。
普段なかなか触らない遺骨・骨壺だからこそ、お墓から取り出す際の注意点を知っておく必要があります。
この記事では、墓じまいの際に移動させた遺骨・骨壺について、取り出し方や取り扱い方法についてご紹介します。
遺骨がどこにあるのかを知っておこう
まずは、お墓の中で遺骨がどこに納骨されているのか、場所を再確認しましょう。
よくお墓参りに行く人でも、建立した時や家族が亡くなった時だけしか遺骨を扱ったことがないケースはよくありますから、納骨の場面を思い出しながらお読みください。
大抵のお墓にある「カロート」
どのお墓にも、遺骨を納めるための場所があり、名前はカロート(納骨棺)と言います。
一般的なお墓では、入り口が石の板でふさがれていて、大抵の家では骨壺を納める際に開けるくらいしか使わないので、その存在を忘れていることも多いようです。
カロートは、場所や構造によって遺骨のしまい方が違うため、取り出し方にも注意が必要です。
具体的には、カロートが地下にあるか地上にあるかの2パターンで、遺骨・骨壺の取り扱いが変わってきます。
構造としては、棚状になっていて複数の遺骨を納められるものが多く見られます。
棚部分は、一段の場合と二段の場合があり、入り口が地下に面していない丘カロートという構造のものもあります。
ちなみに、カロートは英語ではなく、漢字では唐櫃(かろうと)と書き、日本語が語源となっています。
カロートが地下にある場合の取り出し方
カロートが地下にある造りのお墓は、敷地に合わせて深く大きく作られています。
また、二段に分かれているカロートの中には、骨壺をしまう部分が上部に・土をむき出しにしている部分が下部になっているものもあります。
底がそのまま土になっているものは、遺骨を土に還す目的でそうなっている場合があります。
過去に一度も土に還したことがなければよいのですが、最近遺骨を土に納めた場合は、お墓の解体作業の邪魔にならないよう、取り出して骨壺に入れましょう。
また、地下カロートに安置されている骨壺は、カロートの中に水がたまっていたり、中身が湿気でやられてしまっていたりします。
そのため、見た目以上に重くなっていることがありますから、ゆっくり取り出すことを心がけましょう。
湿気がひどい場合は、骨壺の高さまで内部に水が入っていて、骨壺が倒れ遺骨が散乱していることもあります。
その場合は丁寧に拾って、もう一度骨壺に入れておきます。
カロートが地上にある場合の取り出し方
カロートが地上にある場合、入口部分もかんたんに開けられる造りになっているものが多いため、個人で開けて中を確認することができます。
また、雨水・結露・地下水の影響を受けにくいため、骨壺の収納数に限りがあるというデメリット以外は、ほとんどネガティブな要素がありません。
多くの場合、観音開きの計上をしている扉があり、そこから骨壺を取り出せます。
一部、カギ付きの金庫のような造り・扉を外して中のものを取り出す造りになっているものもありますが、基本的な構造は同じです。
注意点としては、奥まったところに骨壺を入れている場合、取り出す途中で外部との段差に引っかかって骨壺を壊してしまうおそれがありますから、両手で支える準備をして取り出しましょう。
骨壺を取り出した後の取り扱いについて
無事骨壺を取り出したら、外見だけでなく遺骨の状態も確認して、新しい納骨先に納骨できる状態にします。
やるべきことは、骨壺・遺骨の状態によって増減しますが、基本的には安置する場所を清浄に保てるよう心掛ければ問題ありません。
新しい納骨先に迷惑がかからないようにするのがマナー
お墓に納めていた骨壺は、良い状態で保管されているとは限らず、ひどく汚れた状態になっているものもあります。
新しいお墓のカロートに入れてしまうなら、多少汚くても問題はありませんが、納骨堂など借り物のスペースに収納する場合は、できれば骨壺をきれいにした方がよいでしょう。
特に、新しい納骨先では、納骨に際してルール・マナーを設けているところがあるため、極力迷惑をかけないよう心掛けたいものです。
墓じまいで気分を一新する意味でも、納骨する場所に応じて骨壺や遺骨をメンテナンスしましょう。
骨壺は、外も中もきれいにすること
地下カロートに長年納められていた骨壺に多いのですが、湿気の多い環境で骨壺を保管していると、湿りや水の溜まりが見られます。
また、納骨時の都合で中に土が入ってしまったり、あえて土・灰を入れて保管していたりする場合は、骨と汚れが入り混じった状態になります。
すると、骨以外のものが骨壺に納められていることで、骨壺の内外が汚れ、骨自体の状態も悪くなります。
今後もお墓や納骨堂などに骨壺を納めるのであれば、墓じまいを機会に骨や骨壺をきれいに掃除することをおすすめします。
遺骨の洗い方
自分で骨を洗うことを「洗骨」や「お骨洗い」と言い、身近にある道具で骨は洗えます。
必要な道具は以下の通りです。
- 洗濯用ネット(大きいサイズ)
- バケツ
- 新聞紙
- マスク(遺骨の破片・土などが飛び散った時の備えとして)
まず、洗濯用ネットに遺骨を移し替えます。
その状態で流水をかけながら、水が透き通る状態になるまで、ネットの上から軽くなでたりもんだりして洗います。
この時、バケツを使って水をためながら洗うと、水の色の違いを確認できます。
しっかり洗えたら、十分に水切りをして、乾かす時はネットに入れたまま天日干しします。
十分に乾いたら、再度骨壺に戻して完了です。
骨壺の洗い方
骨壺は、洗う前に状態を確認します。
地面の下に収納することを想定している場合、大抵の家では陶器製の骨壺が使われていますので、今回は陶器製の骨壺の洗い方についてお伝えします。
陶器製の場合、ヒビが入っていたり、すでに一部が割れていたりすることもありますので、まずは遺骨を納められる状態かどうかをチェックしましょう。
問題がなさそうであれば、たわし・スポンジを使って、水で汚れを落としていきます。
バケツに水を汲み、その水を使ってコツコツ磨いていきましょう。
汚れが取れたら乾拭きして、蓋を外して中を乾かします。
遺骨を収納する際に、乾燥剤などを中に入れておくと、湿気の影響を少なくできます。
どうしても汚れが落ちない場合は、新しい骨壺を買って対応するのもよいでしょう。
余裕があれば、小さい水抜き穴を骨壺の底に開けておくと、お墓のカロートに収納した際の水抜きになります。
骨壺を変える・遺骨をきれいにする場合の注意点
骨壺を買い替える際、素材の特性を理解していないと、遺骨の状態が悪化してしまうおそれがあります。
また、遺骨をきれいにする場合、慣れない作業に手間取り失敗してしまうことがあるため、骨壺の取り扱いと合わせて注意が必要です。
続いては、骨壺の買い替えや遺骨を洗う際の注意点についてご紹介します。
骨壺の種類に注意すること
骨壺には多くの種類があり、素材によって特性が違います。
一般的に、お墓や納骨堂に収納する骨壺は陶器製を選ぶものですが、他にも木製や金属製・大理石製のものなどがあります。
例えば木製の場合、ある程度は湿気に強いため、室内で保管する分には保管状態に気を遣えば長く使えます。
しかし、湿気対策を行うのが難しいカロートの中では、逆にカビが侵食してしまうおそれがあり、長期的に遺骨を納めるには向いていません。
金属製は、フタの部分にネジの加工が施されているため、密閉性が高いという長所があります。
ただ、こちらはたくさんの遺骨を納められる大きさのものが見つからないため、やはりお墓に収納するには向いていません。
大理石製は、耐久性が強いのはメリットになりますが、重みがあるので人によっては扱えません。
このように、それぞれの素材にメリット・デメリットがあるため、事前に特性をきちんと調べてから用意することをおすすめします。
遺骨はできるだけ天日干しが望ましい
遺骨を洗った後は、カビの繁殖を抑えるためにも、できるだけ天日干しにすることをおすすめします。
室内で日光に当てる・陰干しするなどの方法もありますが、遺骨が十分に乾燥しないことでカビが再度繁殖してしまうおそれがあります。
梅雨の時期など、思うように日光を当てることができない時期は、あえて墓じまいを控えるのも一手です。
不安があれば専門の業者に依頼すること
遺骨を洗って乾燥させたり、骨壺をきれいに洗ったりする作業は、不器用な人だとトラブルを起こしてしまうかもしれません。
遺骨や骨壺に傷をつけてしまうと元には戻りませんから、不安があれば専門業者に依頼することをおすすめします。
遺骨の状態によって価格帯が変わってきますが、骨壺に入れてあった遺骨なら、15,000~30,000円ほどで洗浄から乾燥まで対応してくれるところもあります。
他にも、散骨を想定した粉骨などのサービスが用意されているため、墓じまい後にお墓を建てない選択肢を考えているなら、一度相談してみましょう。
この記事のまとめ
遺骨や骨壺を取り扱う機会は、多くの家でそれほど多くないため、いざ移動を考えると色々なことが不安になると思います。
骨壺を開けてみて水が溜まっていたり、骨がカビていたりすると、いたたまれない気持ちになるかもしれません。
しかし、時間が経過するにつれて、遺骨や骨壺の状態が変化するのは致し方ないことです。
遺骨や骨壺を丁寧に洗っている姿は、きっとご先祖様や故人にも見えているはずです。
取り出し方に注意して、安全にカロートから骨壺を取り出したら、真心を込めて洗いましょう。