昔と違い、今や様々な方法が存在する「納骨」
それぞれの違いや特徴と費用感について解説します
Mvrお盆やお彼岸などに、一年に数回家族・親戚がお墓に集まって故人をしのぶ習慣は、日本の風物詩として広く知られています。
しかし、子どものいない夫婦や独身の方が増えてきたことや、お墓を建てようにも土地が見つからないなどの理由から、日本国内で納骨という選択肢の幅が広がってきています。
そもそも、納骨という言葉の意味は「お墓に遺骨を埋蔵すること」を指しますが、お墓の概念が変化した、あるいは現代の事情にマッチしなくなったことなどから、日本人の中でも幅広いイメージで捉えられることが多くなりました。
事実、複数の納骨方法が考案され、各家族の予算に合う方法が選ばれています。
今回は、日本における納骨の種類や特徴、それぞれの費用についてご紹介します。
基本となるのはお墓への納骨
納骨という言葉の意味から考えていくと、基本となるのはやはりお墓への納骨です。
お墓に納骨することを考える場合、お墓自体がどこに建立されるかによって、費用感やメリット・デメリットが変わってきます。
お住まいの地域によっては、交通手段などに左右されることもありますから、予算を考えつつ、家族全員が納得できる納骨方法を考えましょう。
菩提寺にお墓を建立する
自分のご先祖様や亡くなった家族を手厚く弔うため、菩提寺にお願いしてお墓を建立する方法は、かつての日本社会では主流の一つでした。
その場合、お墓は菩提寺の敷地内に立っているということが多いです。
一方で、市営の霊園などに墓を建立するケースも増えてきたことから、お寺と親密なお付き合いをする家庭は次第に少なくなってきています。
菩提寺にお墓を建立する場合、丁寧な供養をしてくれる反面、お寺に支払う費用もそれ相応に高くなります。
お墓を購入する際にかかる永代使用料は、安いところで30万円、高いところだと200万円以上かかるところもあり、お寺によってまちまちです。
管理料も年単位で支払い、1~2万円程度の負担になります。
しかし、菩提寺にお墓を建立して大きな負担になるのは、実はこのような初期費用ではありません。
お寺を修繕・建て替えする際の費用や、法要の際のお布施など、檀家からまとまったお金を徴収することが多く、それがデメリットと言えるでしょう。
霊園にお墓を建立する
現代で一般的なのは、市民霊園などにお墓を建立するスタイルかもしれません。
必要となる費用は、霊園の区画を使用する権利を得るための使用料と、毎年お墓に支払うお金の管理料とに分かれます。
お布施や寄付金に該当するものは、お墓を維持するにあたってお寺を介する必要がないため省かれます。
よって、葬儀をあげるときだけお坊さんにお願いして、あとは自分で供養すると決めている方にはおすすめです。
管理料は良心的な値段となっていることが多く、千円~1万円程度を見積もっておくとよいでしょう。
注意すべきは使用料で、一等地の墓地は高値になり、郊外に移るにつれて安くなる傾向にあります。
都市部・地方の差もありますから、各自治体の市民農園情報をチェックして、交通の便も勘案しつつ、いくらかかるのかを確認してから権利を獲得したいものです。
身寄りがなく一人で暮らしている人や、子どものいない夫婦であれば、お墓を自分たちで守れないことから永代供養を考えている方もいると思います。
サービス料金は家族墓に比べると相対的に安くなり、地域によっては数万円単位から権利を得ることが可能です。
永代供養・合葬のケース
永代供養の年間費用としては、年会費・管理費などがかかります。
生前に契約している場合、契約者・納骨予定者の存命中は年間数千円を見込んでおけば問題ありません。
また、納骨後の費用はかからないケースがほとんどです。
まだお墓を持っていない人、自分の代で墓じまいにするつもりの人であれば、合葬してくれる霊園を選ぶという方法もあります。
合葬とは、不特定多数のお骨と一緒に埋葬されるスタイルのことで、骨壺からお骨を出したら「合葬墓」と呼ばれるお墓に移されます。
合葬であれば、家族のお墓を建てなくてもOKですから、お墓を建立する際にかかるお金がまるまるかかりません。
限られた予算で納骨を済ませたいと考えている方は、合葬も一つの選択肢として考えておきましょう。
お墓にこだわならい場合は納骨堂
納骨について、特段お墓という形態にこだわらず、ご先祖様に祈りを捧げられればよいと考えている方は、納骨堂という選択肢があります。
霊園に比べると、比較的都市部でも近所に納骨でき、永代供養などの方式をとることも可能です。
お墓の後継者選びに悩むこともないため、少子高齢化社会に適した納骨方法として人気を集めています。
種類が数多くあり、運営元による違いや納骨堂の形態によって特徴が異なるため、選ぶ際には自分たちのニーズに適しているかどうかを見極めることが必要です。
都道府県・市町村が運営する納骨堂
予算面でもっとも安上がりになるのが、都道府県・市町村で運営している「公営」の納骨堂です。
各自治体によって申し込み条件が定められており、条件を満たさなければ利用できないという特徴があります。
具体的な条件としては、居住年数や遺骨の有無などが挙げられます。
申し込み時は抽選があるところも多く、当選してから資格審査を経て許可証が交付される流れが一般的です。
手間がかかる分、費用は民間に比べるとかなり抑えられます。
使用料の換算については、30年程度の長期間で支払う必要がある自治体もあれば、毎年更新の自治体もあります。
東京都のような大都市であれば30~40万円を一度に支払うことが多いですが、地方都市であれば1年で3千~1万円と、かなり安価に抑えられます。
また、使用料を数十年単位で支払う場合であっても、管理費は毎年の支払いになることが多いようです。
宗教法人などが運営する納骨堂
いわゆる「民営」の納骨堂です。
主な法人としては、宗教法人・財団法人などが挙げられます。
公営と比較したメリットは、申し込み時の抽選や条件がなく、予算さえ合えばすぐに利用できる点です。
また、宗旨・宗派の違いにとらわれず利用できる点も魅力です。
ただし、費用面ではやはり公営に比べると高くなる傾向にあり、選ぶ納骨堂の形態によってもさらに変動があります。
地方であれば10~20万円代のものが見受けられますが、都市部になると50万円からのスタートとなるケースが多いようです。
また、複数の骨壺を納める場合は、それ相応の大きさが求められるため、値段も高くなる傾向にあります。
寺院が運営する納骨堂
納骨堂の中には、寺院が維持・管理をする納骨堂もあります。
このような場合、ほとんどは寺院の敷地内に建てられることが多いようです。
寺院の納骨堂を選ぶ場合に気になるのは、檀家になる必要があるかどうかです。
しかし、多くの場合は分けて考えられているようで、正式な檀家になる必要はありません。
家族の間で意見の相違が生まれた場合でも、納骨堂を移動することが可能です。
屋内霊園などと呼ばれることもあり、規模が大きいお寺だと、永代供養のための塔が建立されているところもあります。
教会・神社の運営する納骨堂もあり、教会の場合は管理施設を別途設け、その建物の中や地下に設けられていることが多いようです。
神道の場合は、「納骨殿」と呼ばれる安置所が該当します。
寺院という特殊な環境にあることもあって、納骨堂の形態によっては、最低金額が100万円からというケースも少なくありません。
しかし、教会などでは使用料が10~20万円の間でおさまるところも珍しくなく、管理費も概ね年1~3万円と良心的です。
施設の新旧だけでなく土地の相場も関係してくるため、一概には言えませんが、寺院が設けた納骨堂は高い傾向にあり、それ以外の宗教施設は個々で異なると考えた方がよいでしょう。
形態別に見る納骨堂の種類
納骨堂は、運営元の方針に加えて、どのようなタイプの納骨堂を選ぶかによっても金額が異なります。
以下に、主要デザインをいくつかご紹介します。
仏壇式
自宅にあるようなお仏壇が並んでいる納骨堂です。
上段と下段があり、上段が位牌・お供え物を安置するスペースで、下段に遺骨が安置できる構造となっています。
一般的なお仏壇と勝手がほぼ同じなので、お参りの際に戸惑うことが少ない反面、費用が高額になりがちです。
また、寺院が運営している納骨堂の場合、宗派が限られるおそれがありますから注意が必要です。
一区画で想定したときの相場は、およそ30万円になります。
手ごろな家具調仏壇を購入するのと同程度の金額と考えておくと、イメージしやすいかもしれません。
ロッカー式
都市部で見られる納骨堂で、ロッカー型のスペースに遺骨を安置します。
遺骨の他、故人の思い出の品も一緒に安置できるスペースがあります。
雰囲気は全体的に明るい反面、一見するとコインロッカーのような印象に、違和感を感じるという声も聞かれます。
ただ、価格は一区画あたり15~20万円程度になりますから、安く済ませたい方にはおすすめです。
機械式
納骨堂の中では最新型の形態で、収納された遺骨が機械を使って参拝者のところに降りてくる構造になっています。
立体駐車場をイメージすると、分かりやすいかもしれません。
都市部の限られたスペースの中で遺骨を安置するというニーズを満たすため、このような納骨堂が生まれたという背景があります。
また、機械対応による管理が行われていることから、24時間対応となっているところも少なくありません。
機械を使って遺骨を管理するメリットは、同様にデメリットにもつながり、機械が故障するとお参りができないリスクもあります。
とはいえ、定期的にメンテナンスが入っているところがほとんどですから、その点をことさらに心配する必要はないでしょう。
金額は80~100万円と、納骨堂の中では高価な部類に入ります。
どちらかというと、都市部が地元で親戚もたくさんいる方向けの方法と言えるでしょう。
位牌式
内仏の脇に位牌を立てておくタイプの納骨堂です。
基本的には位牌に対してお参りする形になり、遺骨の安置スペースは別になっている施設が多いようです。
遺骨を納めるスペースを取らない分、相場としては安めです。
5~10万円程度の金額で済むことから、突然のことで予算の都合がつかなかった方でも安心です。
ただし、骨壺自体は別になっていたり、分骨したりして安置する必要があります。
また、他の方と同じ安置スペースに置かれるため、プライバシーを気にする人には向かないかもしれません。
室内墓地
建物の中に、石造りのお墓が設置されているタイプの墓地になります。
納骨堂の一種として分類されることが多いですが、人によっては明確に墓地として分けて考えるケースもあります。
天候に左右されずお参りができ、永代供養などにも対応しているところが多いため、人気を集めている形態の一つです。
繁華街に近いところに立地している施設もあることから、機械式と同じく都市部でのニーズが強いです。
金額はやはり墓石を使う分高額になりがちで、総額100万円以上からの想定となります。
ただし、特に墓石の種類や専有面積などにこだわらなければ、100万円を切る施設も見られます。
その他の納骨方法
ここまで、お墓や納骨堂を前提とした納骨方法をご紹介してきました。
しかし、時代の変化とともに納骨の概念も変わり、必ずしもお墓・納骨堂などの施設に安置する必要はないのではないかとの考えが生まれています。
その結果、既存の宗教観から離れた、新しい納骨方法が生まれ、選択肢の幅を広げています。
樹木葬
墓石ではなく、墓標として樹木を使用するお墓の形態です。
主に、一人に対して一本の樹木を植える場合と、一本の樹木を植えた区画に複数の遺骨を埋蔵する場合とに分かれます。
植物園のような場所に遺骨を埋めたり、山林に埋めたりするタイプの樹木葬もあります。
樹木葬を選ぶメリットとして、墓石を使用するお墓よりも初期費用が安く、事実上の永代供養として利用できるというものがあります。
これは、手入れに手間がかかる墓石ではなく、比較的自由度の高い剪定が可能な植物を墓地側が管理することで成立しており、遺族・管理者ともにメリットのある方法です。
全国の相場では50万円程度の金額で樹木層は可能となっていますが、プレートの設置や埋葬する人数によっては、金額が上昇する可能性がありますから、注意が必要です。
海洋散骨
遺骨を海にまくことを「海洋散骨」と言い、故・石原裕次郎氏が散骨されたエピソードは有名です。
その後も芸能人や著名人のお骨が次々と海洋散骨され、日本でも広く認知されている方法です。
あくまでも納骨という概念で言えば、海に納骨した(自然に還した)という理解になるでしょう。
海洋散骨には、主に三種類の方法があり、葬儀業者に散骨を代行する「代理散骨」、複数の遺族が船に乗って一緒に散骨する「合同乗船散骨」、船を貸し切って散骨する「貸切乗船散骨」とに分かれます。
いずれも海に散骨する点では変わりませんが、できれば遺族が散骨する方法を選んだ方が、気持ちの整理もつけやすいでしょう。
金額の相場としては、代理散骨で5万円程度、合同乗船散骨で15万円程度、貸切乗船散骨になると20万円程度となります。
手元供養(自宅保管)
新しい供養の方法として、あえてお骨を墓に埋蔵せず、自宅で管理するという方法があります。
これは手元供養と呼ばれ、法的にも問題はありません。
自宅で保管し続けることから、基本的に納骨堂やお墓にかける費用が一切かかりません。
しいて言えば、骨壺を安置するための仏壇は必要になってくるでしょう。
よって、費用の面では骨壺・仏壇の金額次第になり、他の納骨方法に比べるとはるかに安上がりです。
金属製で、片手~両手で持ち運べるものを選ぶと、骨を劣化させず気軽に安置場所を変えられますからおすすめです。
可能であれば、湿気で骨がカビるのを防ぐために、桐箱に入れて保管しておきましょう。
この記事のまとめ
以上、オーソドックスな納骨方法から、比較的歴史が新しい方法まで、多種多様な納骨の種類についてご紹介してきました。
納骨の方法は、宗教や家族の事情・予算に応じてさまざまです。
できる限り丁寧に供養したいと思う方がほとんどでしょうが、自分がいなくなった後のことも考えて、家族や親族にとって最も負担のない方法をイメージしておく必要があります。
最善の選択をするためにも、家族全員が生前にきちんとそれぞれの特徴・費用観などを理解して、時間をかけて後悔のない選択をすることが大切です。