通夜振る舞いはどんな料理やお酒が必要?
料理の目安となる量や費用と僧侶への御膳料について
弔問客を招いて食事やお酒を振る舞う「通夜振る舞い」は、現代では行う地域と行わない地域に分かれており、都市部では施設や弔問客側の事情によって開かれない例も増えてきています。
しかし、大手葬儀社などで会食も含めたプランを用意しているところは多く、今なおニーズがある仏事の一つです。
通夜振る舞いは、事前に決めておかなければならない事項が多く、知らずに進めると思わぬ事態や出費を余儀なくされることもあります。
この記事では、通夜振る舞いの料理・お酒について、目安となる量や料理の種類・かかる費用などを、僧侶に支払う御膳料の相場とともにお伝えします。
一般的な通夜振る舞いにおける料理のチョイス
まずは、一般的な通夜振る舞いでどのような料理を出すべきなのか、主なチョイスをまとめました。
料理の種類を遺族の側で選ぶこともできますが、主に「どこに料理を頼むか」が、通夜振る舞いでは重要な視点になります。
どこに料理を任せるかによって、種類が変わってくる
通夜振る舞いは、大人数を招くことを想定しているため、自家で用意するのは現実的ではありません。
もちろん、少人数で葬儀を執り行うのであれば、自家の範囲でも問題ありませんが、斎場を借りてお通夜を行う予定を立てているなら、やはり専門業者に任せた方が安心です。
問題は、どこに料理を任せるかで、業者ごとに料理の種類も違いがあります。
以下に、主なケースを想定して、それぞれの業者に依頼した場合のラインナップをご紹介します。
葬儀社経由で注文する
葬儀社経由で通夜振る舞いの料理を注文する場合、対象となる会場・地域によって出し物が違います。
仕出し料理店に外注しているところも多いですが、ホテルの調理部門に依頼して作ってもらうケースもあり、会場でどのような料理を用意しているのかを事前に確認したいところです。
大抵の場合、定型的なオードブル・盛り合わせのメニューがあり、それを想定人数分だけ依頼する形になります。
どの葬儀社も、いくつかメニュー・プランを用意しているため、時間に余裕があればパンフレットを見ながら決めるとよいでしょう。
ネックとなるのは、あくまでも葬儀社が外注しているお店にしか頼めないため、イレギュラーな注文は遺族の側で行う必要がある点です。
参列者の好みの問題もありますから、この点は故人のキャラクターも尊重しつつ、柔軟に考える用意があってもよいのかもしれません。
仕出し屋に直接注文する
自宅や小さな斎場でお通夜を行う場合は、そこまで大掛かりな準備をしなくてもよいですから、仕出し屋に直接電話して料理を用意してもらうのもよいでしょう。
弔問客の数も限られ、人数もそこまで集まらないものと考えられますから、ある程度弔問客の好みを反映させることができます。
仕出し屋のメニューにも、冠婚葬祭それぞれの場面で食べられる料理が載っていますから、選ぶのに苦労はしないはずです。
よって、多少質の高いもの・高級品を注文しても、そこまで料金は膨らまないはずです。
葬儀料理は、夕食として弁当形式になっているものと、いわゆる「お斎(おとき)」としてまとまっているものがあります。
お斎の場合、お寿司とオードブルが一緒になってパッケージングされていることもありますから、予算に合わせて選べます。
また、お寿司とオードブルは別々に頼めますから、多少人数が増えそうでも安心ですし、別途出前で対処することもできます。
この点では、葬儀社経由で依頼するよりも柔軟な対応ができて便利です。
自宅で料理を作る・出前を取る
家族葬クラスの小さな葬儀では、お通夜で大掛かりな料理を用意する必要はありません。
よって、自宅で料理を作ったり、出前を取ったりすれば、十分対処できるはずです。
ただ、自宅で家族葬を執り行った場合、ご近所付き合いの兼ね合いから、何人か人を呼ぶ場合があります。
そのような時、出前は非常に便利です。
大きなメリットは、家族や弔問客の好みに応じて好きなものを作ったり頼んだりできる点で、たくさんの料理を複数の出前で用意しても問題ありません。
通夜振る舞いというよりも、会合に近いニュアンスで料理を頼めますし、親しい人に料理をお願いすることもできます。
ただ、料理する場合は材料から全て揃えなければならず、手間がかかります。
本当に身内や限られた人とだけ、故人の死を悼む場合にのみ選べる選択肢と言えるでしょう。
日本ではお酒が「生命の源」として扱われていた
他の一般的な会合・集会と違い、しめやかに通夜振る舞いは行われます。
しかし、お酒を全く飲まないというわけではなく、むしろ通夜振る舞いではアルコールを用意するのが普通です。
もともと、お通夜の風習が生まれた理由は、人が死んだかどうかを確認するためでした。
医療が進歩した現代では、人の死をすぐに確認できるようになりましたが、昔は本当に死んでいるのかどうかが分からないこともあったからです。
そこで、死者の霊をなぐさめる意味合いもあって、食事を供え、酒食とともに歌い踊る習慣がありました。
これは殯(もがり)と呼ばれ、通夜や通夜振る舞いはその名残と言われます。
古来の日本では、お酒と言えば日本酒を指し、生命力の源である米からお酒を作ってそれを飲めば死の穢れ(けがれ)を遠ざける効果があると信じられてきました。
よって、日本酒やビールなど、お酒をたしなむ人のために、通夜振る舞いではアルコールを用意するのです。
「生臭もの」を避ける風習は昔の話
かつて、仏教では精進料理を出すものと決まっており、肉や魚などの「生臭もの」は、料理として出さないものと決められていました。
しかし、現代の葬儀では、肉や魚をタブー視することはなく、基本的には何でも食べられます。
メニューの中にお寿司があることは珍しくありませんし、巻物やいなり寿司だけでなく、生寿司も食べられます。
また、オードブルでは肉や魚が用意されていることは一般的ですし、あまり格式にこだわらない家庭であれば、ピザなどの料理を頼むこともあるようです。
もちろん、精進料理がメニューに載っている仕出し屋もありますし、変わったところでは菜食主義者用のヴィーガン食・イスラム教徒用のハラルなどが用意されているところもあります。
価値観の多様化に従い、様々な料理の種類が選べるようになっていますから、弔問客の好みが分かっているようなら、別途注文してもよいでしょう。
通夜振る舞いの食事は、どのくらいの費用がかかる?
通夜振る舞いの費用を計算する場合、そもそも「どのくらいの弔問客が来るのか」を正確に把握するのが難しいので、ある程度概算で費用を見積もっておかなければなりません。
そこで、1人あたりの予算を想定しつつ、故人の人間関係から参列者の数を見積もって、予算を計算するのが一般的です。
目安は1人2千円以上
通夜振る舞いは、弁当のように1人前単位で注文するのではなく、オードブルや寿司などを1パックで注文するのが一般的です。
よって、それぞれが何人前にあたるのかをメニュー等で確認し、一人が30分程度で食べる量を概算して計算します。
そもそも、最初から最後まで通夜振る舞いに参加している人たちは少数派ですから、きっちり1人前で計算する必要もありません。
予算として、1人2~3千円の範囲で、弔問客も含めた参加者のの50~70%の人数を見積もっておくとよいでしょう。
例えば、100人の弔問が想定されるなら、以下のような計算になります。
【100(人)×50~70(%)×2,000~3,000(円)=100,000~210,000円】
1人あたりの予算が高くなればなるほど、予算も大きくなりますから、親しい人の人数に応じて単価を別に計算してもよいでしょう。
パーティー形式で、単品ごとに取り分けられるものがよい
仕出し料理店のプランやパッケージを見ると、そのほとんどが単品ごとに取り分けられるようになっています。
よって、葬儀社経由・仕出し料理店への電話を行うなら、弁当形式ではなく複数人が食べられるよう、パッケージングされている商品を選びましょう。
料理の種類が選べる場合もある
寿司やオードブルが多く見られるのは、取り分けるのが簡単だからという理由が主ですが、中には焼きそばのように自分で食べたい量を取り分けるものもあります。
また、葬儀社の中には仕出し屋も兼業していて、温かい料理が出てくることを売りにしているところもあります。
取り分けに困らないほどの人数しか来ないと分かっているなら、あえて贅沢な料理を頼むのも一つの方法です。
ただ、料理の好みの問題もありますから、好き嫌いが分かれるエスニック料理などは頼まない方が賢明です。
御膳料の相場や支払いに関するマナーとは
通夜振る舞いの席には、お経を読んでくれた僧侶にお越しいただくのが原則です。
しかし、僧侶は檀家を数多く抱えているため、意外と忙しいところが多いので、御膳料を支払って終了という家も少なくありません。
もし、御膳料を支払う場合、どのくらいの金額が相場にあたるのでしょうか。
以下に、相場観や手渡し方など、基本的なマナーをご紹介します。
会場によって若干相場が変わる
斎場や自宅でお通夜が行われる場合、一般的な通夜振る舞いで考えられる相場同様の金額で考えますから、飲み物代も含めて「5千円~1万円」を相場として考えておくとよいでしょう。
もし、高級ホテルの調理部などが料理を担当するような場合は、少し金額を増やして2万円ほど包むと安心です。
切手盆・袱紗を使って渡すのが礼儀
御膳料を渡すとき、お金を封筒に入れてそのまま渡すのはマナー違反です。
香典袋などを載せる小さなお盆「切手盆」や、袱紗(ふくさ)に載せてお渡しするのが基本です。
お通夜を執り行う場所によって、どちらを選ぶのかが変わってきます。
自宅なら切手盆を使って渡せますが、斎場やお寺の場合は自分たちが出向く立場のため、袱紗を使った方がよいでしょう。
他の御布施と一緒に渡すのも可
御膳料を渡すタイミングを考えるなら、他の御布施・御車代と一緒に渡すのが効率的です。
よって、お通夜が終わった後・通夜振る舞いが終わった後の、いずれかの場面が想定されます。
あらかじめ参加しないことが分かっているなら、お通夜が終わってから声掛けすれば済む話です。
御布施・御膳料・御車代をひとまとめにしてお渡しした方が、お互いに手間がかかりません。
このあたりは、最初の打ち合わせで通夜振る舞いに参加していただけるかどうかを確認してから、タイミングを計ってもよいでしょう。
この記事のまとめ
通夜振る舞い自体は、お通夜という弔事ではありますが、食事の内容は簡単なパーティーとして捉えるとよいでしょう。
誰もが気軽に食べられるような料理を選べば、参加者に負担をかけることなく取り分けることができますから、弁当形式ではなくオードブル形式のものを選べばスムーズです。
予算も、弔問客の全員分を想定する必要はなく、5~7割で考えておけば問題ありません。
僧侶への御膳料も含め、ある程度金額を見積もることが可能ですから、事前にいくつかプランを検討しておくことをおすすめします。