弔電でよく悩む宛名や宛先について。
状況に応じた弔電の宛名の書き方を解説します。
お葬式に参列する機会は何度かあったとしても、遠方の親類や友人に弔電を送る経験をした人は、どちらかというと少数派かと思われます。
弔電はビジネスレターとは勝手が違い、宛名・宛先の書き方に戸惑う人が多く見られます。
この記事では、弔電を業者に依頼する際、どうすればよいのか悩ましい宛名や宛先について、状況に応じてどのように書くのかをご紹介します。
宛名・宛先によって文面の中身も違ってくることがありますから、その点についても触れていきたいと思います。
弔電における宛名・宛先の基礎知識
弔電の宛名を決める場合、重要なのは「誰に向けて」送るべきなのかを間違えないことです。
葬儀の主役は故人になりますから、故人の名義で送るべきなのではないかと勘違いしてしまう人も、少なからず存在しているようです。
基本は喪主の名前が宛名になる
葬儀の主役となるのは、送り出される立場の故人であることに異論はないと思います。
しかし、故人の名義で弔電を届けても、対処するのは喪主・遺族ですから、こちらはマナー違反となります。
弔電は、喪主の名前を宛名にして届けるのが正解です。
この点を間違えると、相手方に失礼にあたりますので、十分に注意しましょう。
また、このマナーは斎場スタッフの事情にも少なからず関係しており、斎場スタッフは故人の名前ではなく喪主の名前で会場を把握しているため、故人の名前でピンと来ないスタッフが出てくるリスクがあります。
もちろん、プロが対応している以上、速やかに適切な対応をしてくれるものと思いますが、それを期待して故人の名前を宛名にするのはNGです。
その他、喪主の名前について注意したいのは、フルネームで弔電を送ることです。
名字だけで送ってしまうと、喪主の特定がスタッフ側で難しくなるため、正確に届かない場合が考えられます。
斎場は広く、同姓同名のケースは少ないとしても、同姓が重なることはよくある話です。
例えば、佐藤・鈴木・伊藤・高橋など、よくある名字ほど注意が必要です。
社葬の場合は葬儀委員長を宛名にするのが基本
会社単位での葬儀が行われる社葬では、弔電の宛先がよく分からない状況にしばしば遭遇します。
このようなケースでは、まず社葬の案内状をチェックしてみると、葬儀委員長の名前が記載されていると思いますので、そちらを宛先にします。
案内状が届いていない・遠方で事情を知って葬儀の詳細を知らないといった状況では、会社名が分かるなら「○○株式会社 故○○ ○○葬儀 葬儀委員長様」といった書き方もあります。
ただ、可能であれば会社のサイトをチェックするなどして、正しい名前を確認した方が賢明です。
もし、取引先として会社単位で弔電を送る場合は、社内規定・過去の事例を確認しることを忘れないようにしましょう。
会社によっては、葬儀参列・弔電送付に際して規定を設けている場合があるからです。
特に、総務に確認しないで単独で弔電を送ると、十中八九混乱を招きますから、勝手な行動はくれぐれも慎みたいものです。
送り先は斎場?それとも自宅?
弔電を送る先は、故人の葬儀がどこで行われるかによって変わってきます。
斎場を予約した場合は、当然ながら斎場で葬儀が行われているわけですから、斎場の住所を確認して送付します。
このとき、弔電に書き加えておきたいのは、会場の住所と「気付」という単語です。
会場の住所を書き加えるのは、送り先が分からなくなることを防ぐため当然ですが、気付という単語の意味は分からない人もいると思います。
気付(きつけ)とは、書簡を送る場合に相手方の現住所に送らず、その人の職場・立ち寄り先等に宛てて送る場合に使う表現です。
弔電のほか、祝電にも使われ、ホテルに滞在中の滞在客に向けて送られる場合にも用いられます。
要するに、郵便物を仕分ける際に「これは現住所に送るのではなく、斎場に送ってください」という意味を強めるために用います。
書き方としては「住所 ○○斎場気付 ▲▲ □□ 様」のような表現になるでしょう。
ただ、気付に関しては、お願いする際に弔電を扱っている会社の側で配慮してくれるケースもありますから、そこまでかしこまる必要はないという意見もあります。
住所が近くて分かりにくい場合など、間違えそうな状況に限り使うものと覚えておけば問題ないでしょう。
宛名・宛先によって違う文例
宛名・宛先の書き方について知ったところで、続いては文例を見ていきましょう。
弔電でよく使われる文例というのは、ある程度形が決まっているものですが、個人に送る場合と取引先に送る場合とで若干ニュアンスが違うため、選ぶ際には注意が必要です。
個人の場合は文例も豊富
弔電を送る相手は、喪主が一般個人であるケースが大半のため、文例のバリエーションも豊富です。
以下に、主な文例をご紹介します。
文例紹介
○○様のご訃報に接し、ご遺族の方のご哀傷はいかばかりかとお察し申し上げます。
心よりご冥福をお祈り致します。
ご逝去を悼み、謹んでお悔み申し上げます。
突然のことで驚愕しており、未だ信じられません。
安らかにご永眠されますよう、心よりお祈り申し上げます。
○○様のご逝去、本当に残念でなりません。
遠方の為、弔問かなわぬ非礼をお詫びし、謹んで哀悼の意を表します。
突然の悲報に接し、誠に痛恨の極みです。
ご遺族皆さまのご心痛はいかばかりかとお察し申し上げます。
衷心より哀悼の意を表します。
文例全体を見てみると、突然のことであること、とても残念で悲しい気持ちであること、遺族の辛さを察することを伝えられる一言が必要と言えそうです。
後述しますが、喪主に向けて弔電を送る場合、できればこのまま文例を使うのではなく、複数の文例を組み合わせるか、オリジナルの要素を書き加えた方が、遺族に気持ちが伝わるでしょう。
取引先の会社に送る弔電は配慮が必要
仕事関係の相手に弔電を送る場合、基本的には会社の代表から弔電を送る形式になります。
よって、会社の顔役とも言える総務が、弔電の内容に配慮することになるでしょう。
以下に、主な文例をご紹介します。
文例紹介
貴社会長様のご逝去に際し、惜別の念を禁じ得ません。
謹んで哀悼の意を捧げますとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。
貴社○○様の突然のご逝去の報に接し、当社社員一同大変驚いております。
嘗てのご活躍、ご功績に敬意を表しますとともに、この度のご不幸を乗り越えられることを心よりお祈りいたします。
かねてよりご療養中とは存じ上げておりましたが、この度の○○社長様のご永眠の報に接し、未だ信じられない思いでございます。
弊社社員一同、語り尽くせない恩義を感じております。
安らかにご永眠されますよう、心よりお祈り申し上げます。
亡くなった方の事情が分かっていれば、その旨を書き加えた方がよいのですが、自社の弔電として送る以上、中身は失礼のないよう過去のものを踏襲した方が確実です。
社長・幹部の意向を事前に確認した上で、文面をまとめるのもよいでしょう。
親しみやすさと無礼の線引き
故人や遺族をよく知っている立場としては、できるだけ在りし日の故人について何か心が温かくなる話を盛り込んだ方が、遺族の気持ちに響きます。
とはいえ、あまりに込み入った話を盛り込んでも、自分とはそこまで親しくない人も参加している葬儀の席では、かえって浮いてしまうかもしれません。
故人と自分との間でしか交わされていなかった話を、弔電で暴露してしまうようなことがあっては、目も当てられない結果になってしまいます。
文章を構成する場合、どこまでが親しみやすく感じられ、どこまでが無礼になるのか、ある程度推測しながら内容を考えなければなりません。
ポイントとしては、ただ故人とのエピソードを語るのではなく、個人の性格・長所について触れるのがよいでしょう。
具体的には、以下のような例が該当します。
- 大学に合格した時、お祝いにフルコースをごちそうしてくれた
- 闘病中に病院を訪れたとき、痛みが辛いはずなのに終始笑顔で話してくれた
- 魚釣りをしていたとき、針の付け方からスポットの見つけ方まで丁寧に教えてくれた
自分に対してしてくれたことや、闘病中の振る舞いなど、心に残ることを弔電にしたためれば、遺族や参列者も目を細くすることはあっても、失礼に感じることはありません。
逆に「あの日の出来事は忘れません」といったような、含みを持たせる表現を入れてしまうと、遺族の側で困惑してしまうおそれもありますから、変な誤解を招く表現は避けましょう。
弔電のタブーを知っておこう
葬儀の席で読まれる弔電は、葬儀同様にいくつかタブーが存在します。
以下に、主なものをご紹介します。
故人と弔電受取人との続柄が敬称に反映される
自分自身が、遺族の友人・知人という立場で弔電を送る場合、受取人と故人との関係に応じて、呼び方が変わってきます。
具体的には、以下のような敬称例が挙げられます。
故人の立場と呼び方
故人が受取人の父 | ご尊父様、お父様 |
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故人が受取人の母 | ご母堂様、お母様 |
故人が受取人の兄弟 | ご令兄様、ご令弟様 |
故人が受取人の姉妹 | ご令姉様、ご令妹様 |
故人が受取人の祖父母 | ご祖父様、ご祖母様 |
故人が受取人の妻 | ご令室様、奥様 |
故人が受取人の妻の両親 | ご岳父様、ご岳母様 |
故人が受取人の夫 | ご主人様、旦那様 |
故人が受取人の夫の両親 | お舅様、お姑様 |
あまり使い慣れない表現も多いため、事前に弔電を送る相手の立場を確認してから文章を作成しましょう。
宗教上用いない表現に気を付ける
日本人の多くは仏式の葬儀を挙げますが、他の宗教で葬儀をあげる人に弔電を送る場合も往々にして存在します。
この場合は、その宗教では用いない・用いるべきでない表現を避けることが大切です。
確実な方法は、その宗教に合った文例を選ぶことです。
特殊な例であれば、直接宗教施設のサイトで確認したり、故人と同じ宗教に近しい人に相談したりすると解決が早いでしょう。
忌み言葉を避けるのは葬儀同様
お悔やみの言葉には、いわゆる「忌み言葉」を避ける習慣があります。
これは弔電でも同様で、繰り返しの表現・繰り返しを予想させる表現・生々しく感じられる表現を避けます。
例えば、重ね重ね・くれぐれもといった表現は、悪いことが繰り返し起きるという意味合いを想起させるものとして嫌われます。
次に・引き続きなども、直接的な繰り返しの意味合いではありませんが、次回も同様の不幸が起こることを連想させ、使うべきではありません。
死亡・死ぬ・急死・生存中など、生死の状態がありありと感じられる表現も、セレモニーにはふさわしくありません。
ご逝去・ご永眠・旅立ちなど、上品なニュアンスに書き換えることが大切です。
この記事のまとめ
弔電は、遠方でも気軽に弔意を伝えられますが、文章はともすれば誤解を招きやすく、誤った表現を用いると相手方に失礼となります。
基本的な注意事項を理解した上で、自分と故人との間にあった関係を思い返し、思いやりのある言葉を送ることが本旨です。
弔電を送る際には、故人のこと以上に遺族の立場を考えて、失礼のない範囲で気持ちを伝えましょう。