法事・法要の案内状を送る時の書き方。
悩みやすい頭語や時候の挨拶などと例文も紹介
法事・法要の案内状を用意する場合、相手に正確な情報を伝えるだけでなく、独特の表現やマナーを守って文章を作成しなければなりません。
いざ書こうとすると、
- 俗名を使うのか、それとも戒名を使うのか。
- 何回忌かどうか説明する必要があるのか。
- 食事に関しては、用意していることだけを伝えればよいのか。
このような細々とした疑問が生まれるはずです。
この記事では、案内状の基本的な書き方と注意点に加え、頭語・結語や時候の挨拶についてご紹介します。
具体的な例文を基に、外してはいけないポイントなどもご紹介します。
法事・法要の案内状の基本的な書き方と注意点
まずは、案内状の文章を考えるにあたり、覚えておきたい基本的な書き方をご紹介します。
一般的な文章で当たり前に行っているものでも、実際にはやってはいけないマナーもありますから、その点についても触れていきます。
いつ・どこで・だれの法要が行われるのかを書き記す
法要を知らせる際には、その法要がいつ行われ、どこが会場で、誰の法要なのかを知らせなければなりません。
また、故人は誰なのかに加え、施主となる人物は誰なのかも書き加えます。
ハガキなどを使って大人数を呼ぶのであれば、できるだけ多くの人が集まりやすいスケジュールを組むことが大切です。
しかし、故人の命日は人それぞれであり、参列者もいきなりだと休みが取りにくいため、できるだけ参列者の多くが都合を付けられる日程を選びたいところです。
日程は、故人の命日の前にある休日を選ぶことが一般的です。
つまり、土日祝を用いて、できるだけ多くの人を集めることが目的となります。
ちなみに、日程を明記する場合は和暦を用いるため、元号から始まる書き方が基本です。
法要を行う場所については、自宅で行うのか、それともお寺や斎場・ホテルで行うのかを記載します。
会場名だけを書いても、遠方の参列者はどこに集まれば良いか分かりませんから、住所等も書き加えることを忘れないようにしましょう。
法要の種類を説明し、出欠確認ができる方法を選ぶ
参列者には、今回執り行う法要の種類は何なのか、事前に説明が必要です。
故人にとって重要な法要であると参列者が判断すれば、その分参加者は増えるでしょうし、死後年数が経過してからの法要なら、そこまで親しくない人が参列を辞退するケースも考えられます。
また、法要は単独で行われるとは限らず、複数の法要をまとめて一度に行うケースもあります。
例えば、四十九日法要を終えた後、そのまま建立したお墓に納骨する場合が該当します。
会場を出た後、お墓にも足を運ばなければならないため、限られたスペースにどのくらいの人数が集まるのかを想定して人数を絞らなければなりません。
逆に、それは面倒だと感じたら、法要を一つに絞り会食を優先する方法もあります。
最終的には施主の都合に応じて考えることになるものの、参列者に不安や不便を与えないよう配慮が必要です。
出欠の確認は、案内状で確認するのがよいでしょう。
返信用封筒・往復ハガキなどを使って、法要や会食への参加意思表示ができるようなレイアウトにします。
結婚式の出欠確認が参考になるでしょう。
法要と会食は、それぞれで出欠を確認すると、その分コストを減らせます。
時間的な都合で、法要には参加できても、会食には参加できない人もいるからです。
また、その方が参列者にとっては親切です。
やってはいけないマナーを知る
仏事に関わる案内状には、書き方にも基本的なマナーがあります。
通常の手紙では当たり前のことがNGになるため、十分注意が必要です。
まず、案内状を書く際には、句読点を使用しません。
句読点とは「、」や「。」といった記号のことで、その他の仏事に関する書面でも同様のマナーが適用されます。
なぜそのような理由が生まれたのかは諸説あるものの、幅広い年代が集まる法要ではしきたりに従った方が賢明です。
また、封筒の色は無地の白色を使います。
注意点として、二重封筒は「不幸が重なる」というニュアンスを思い起こさせるため、案内状の送付には使わないことを覚えておきましょう。
案内状は書き出しが大切
往復ハガキを使うにせよ、封筒に入れた書簡を送るにせよ、案内状は書き出しがある程度決まっています。
普段からハガキを出す習慣のある人にとっては難しくありませんが、年賀状くらいしかハガキを出すことがない人は、念のため基本的なルールを確認しておくとよいでしょう。
頭語と結語の関係性を知る
案内状も手紙の一種なので、いわゆる頭語と結語を使わなければなりません。
それぞれの役割は、口語で言うところの挨拶であり、頭語は「こんにちは」・結語は「さようなら」を意味しています。
この説明を聞く限り、そのまま書けばよいのではないかと考える人もいるでしょう。
しかし、いちいち挨拶にまで気を配っていると、肝心の本文を書く前に疲労してしまいます。
そもそも、公的な手紙の前文に頭語・結語を付けるようになったのは、相手への敬意や安否確認を行う理由があってのことと言われています。
文章が苦手な人にとって、あるいは重役に手紙を送るにあたって、その都度「あなたに敬意をはらっています」と断るような真似をするのは、書く側も受け取る側も面倒なのは十分理解できる話です。
そこで、先人は慣用句的な挨拶は単純に済ませるルールを作り、手紙を出す事情ごとに用途を分けたのです。
例えば、一般的な手紙であれば、頭語は拝啓・結語は敬具といったように、意味が分かればお互いに通じ合える仕組みとなっています。
案内状を送る場合は、改まった内容となるため、頭語は謹啓・結語は敬具という組み合わせが一般的です。
他にも頭語・結語の組み合わせは見られるものの、現代で使い分けるタイミングは少ないことから、細かく気にしなくても差し支えありません。
時候の挨拶を入れる
案内状を書く際、頭語と結語があるだけでは、挨拶としては不足しています。
頭語の後で時候の挨拶を書き加えることにより、挨拶を完成させます。
時候の挨拶とは、各月の四季に応じた挨拶文のことで、手紙で本題に入る前の「クッション言葉」の一つです。
手紙は近況報告としての意味合いも兼ねていることが多く、その名残と考えてよいでしょう。
この挨拶は実に多種多様で、人によってはどのようにも書けるため、手紙を書くのに慣れていない人にとっては難しいものです。
そのせいか、頭語の後に「○○の候」という表現を書き加える方法が生まれ、各月ごとに単語を入れ替える形が一般化しています。
一例を挙げると、以下のような表現があります。
一月 | 厳寒・厳冬・酷寒 |
---|---|
二月 | 寒明・余寒・春寒 |
三月 | 早春・春節・春暖 |
四月 | 陽春・陽炎・暮春 |
五月 | 新緑・薫風・若葉 |
六月 | 初夏・梅雨・薄暑 |
七月 | 盛夏・炎暑・酷暑 |
八月 | 残暑・晩夏・納涼 |
九月 | 初夏・秋冷・野分 |
十月 | 秋雨・紅葉・初霜 |
十一月 | 晩秋・落葉・霜寒 |
十二月 | 初冬・寒冷・師走 |
これらを使って文章を組み立てるなら、例えば六月なら「謹啓 初夏の候……」といった書き出しになります。
どれを使うべき、という正解はありませんから、ハガキを送る時期の天候・気温などに合わせて選ぶとよいでしょう。
相手のことを考えた表現を考える
時候の挨拶を書き加えただけでは、何となくもう一つ足りない気がします。
そこで、「○○の候」の後には、相手の安否確認にあたる表現を追加します。
代表的な表現としては、以下のようなものが挙げられます。
- 皆さまにおかれましては 益々ご清栄(ご健勝)のこととお慶び申し上げます
- お健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます
ご清栄・ご健勝といった言葉は、かしこまった手紙でよく見られますが、どちらも「相手の健康を喜ぶ」内容で用いられます。
こちらも現代では慣用句的な扱いとなっており、かしこまった手紙に添える文章の一種です。
例文を参考に文章を考えよう
案内状の書き出しに関する説明を終えたところで、次に具体的な例文をご紹介します。
例文に故人や自分たちの情報を当てはめていけば、問題なく形にできるため、文章が苦手な方の参考になれば幸いです。
基本的な例文の紹介
まずは、簡単な例文をご紹介します。
ここでは、往復ハガキを縦書きで使った場合を想定して、文章を作成しています。
例文
謹啓 厳冬の候 皆さまにおかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
このたび左記の日程にて 亡母 ○○(俗名)の一周忌の法要を執り行うこととなりました
つきましてはご多忙の中誠に恐縮ではございますが ぜひともご列席賜りたくご案内申し上げます
敬具
日時 令和○年○○月○○日(○曜日)午前○時○○分
場所 「○○斎場」○○の間
住所 ○○市○○区○○町 ○ー○○
電話 ○○○ー○○○ー○○○○
なお 法要が終わりましたら 同所にて供養の粗宴をご用意致しております
お手数ではございますが ○月○日までに返信にてご都合をお知らせください
〒○○○ー○○○○
○○市○○区○○町 ○○ー○○ー○○
電話:○○○ー○○○○ー○○○○
田中 一郎
外してはいけないポイント
例文の中で確実に伝えたいことは、誰の法要がいつ・どこで行われるのかです。
家族以外は、戒名を伝えても誰のことか分かりませんから、手紙では俗名を伝えるようにします。
開催場所の情報は、住所だけでなく電話番号も記しておきます。
念のため、会場の電話番号もお知らせしておくと、道に迷った場合も便利です。
また、会食の会場が別の場合は、そちらも書いておきます。
事情があって手紙を送れない場合に備えて、施主の氏名・住所・電話番号を書いておけば、直接連絡を受ける際もスムーズです。
受け取る側に伝わりやすい表現を考えることも大切
かしこまった手紙は、どうしても仰々しい表現になりがちです。
しかし、受け取る側が意味を理解できるよう、極力分かりやすい表現を意識することも大切です。
例文の中には、故人の戒名を書くものもありますが、これは家族以外にとってはそこまで重要な話ではないと思われるため、省いても構いません。
また、四十九日や一周忌といった大規模な法要以外は、限られた人だけを集めれば事足りることも多いため、そもそも手紙を送らないという方法もあります。
最終的に、来て欲しい人に正確な情報さえ伝われば、どんな方法でも構いません。
参列予定者の年齢層が比較的若いなら、LINEを使う方法でもよいでしょう。
この記事のまとめ
法事・法要の案内状は、実際に送るとなると色々と頭を悩ませます。
文章を作成するにあたって主に注意すべき点は、正確な情報を分かりやすく、丁寧に伝えることです。
現代では半ば時代遅れに感じられる習慣もありますが、せっかく忙しい時間の合間を縫ってやって来てくれる方々に対し、失礼のないよう文章を作成しましょう。