最近増えてきているお墓の変わりの「納骨堂」。
そんな納骨堂の特徴や種類とメリット・デメリット
新しくお墓を建てるお金がない・見守る人のいないお墓を片付けるなど、お墓を持つことは現代人にとって次第に難しい状況が多くなってきています。
そのような中、低予算で永代供養もできる「納骨堂」が、最近増加の一途をたどっています。
この記事では、普及が進む納骨堂について、各種類の特徴・メリット・デメリットに触れつつ、各家庭のニーズにあった選び方についてご紹介します。
納骨堂にはたくさんの種類があり、それぞれに特徴がある
納骨堂にはいくつかの種類があり、どのタイプを選ぶのかによって金額が異なります。
運営元によって費用にも差があり、大きさやデザイン・使い勝手にも特徴があるため、自分たちが訪れやすい・お参りしやすいものを選ぶ必要があります。
運営元から見る納骨堂
まずは、運営元で納骨堂を分類した場合の種類についてご紹介します。
納骨堂を選ぶ場合、公営・民営・お寺が管理する納骨堂を利用することになります。
予算・供養の質・通いやすさなど、各家庭で優先順位は変わってきますから、自分たちで決めた基準に基づいて選びましょう。
公営の納骨堂
公営の納骨堂とは、主に都道府県・市町村で運営しているものを指します。
公営という事情から、申し込める条件が厳密に定められており、それを満たさなければ利用できない仕組みとなっています。
遺骨があるかどうか・自治体にどのくらいの年数居住しているのかなど、細かい条件を満たしても、最終的に抽選で結果が決まることもあります。
当選後、資格審査の後に許可証が交付されます。
時間と手間がかかる反面、使用料は安く抑えられます。
また、大都市と地方都市とで金額の差が激しく、都会で30万円以上かかっていたものが地方では1万円で済むなど、人口密度・ニーズに応じた価格設定となっているようです。
民営の納骨堂(宗教法人)
ここで言う民営とは、宗教法人などの法人が該当します。
公営との大きな違いはその柔軟な経営体制にあり、予算が合えば難なく利用できるため、面倒な条件・抽選に悩まされる心配がありません。
宗旨・宗派の別で区分けされていることも少なく、納骨堂のタイプを選べるところもあります。
その反面、公営に比べて費用は高く、地方でも10万円以上がスタートラインになり、都心なら50万円以上の値段も珍しくありません。
お寺の納骨堂(菩提寺含む)
広い意味では民営の一種ですが、お寺が納骨堂の維持・管理に携わっている納骨堂もあります。
いわゆる菩提寺のことで、檀家契約を結ばなければ使えないかどうかは、そのお寺の方針により変わってきます。
もちろん、お寺を選べば檀家契約とは別に考えてくれるところもあるため、正式な檀家になることが全国的に義務付けられているわけではありません。
供養塔など、永代供養を目的とした塔が建立されているところもあります。
価格帯は最も高い部類に入り、都会では納骨堂もハイテク化しているところが見られるため、お住まいの地域によっては100万円以上を想定しておく必要があります。
お寺の規模が大きい場合、屋内庭園として運営されているところもあるようです。
仏教以外の納骨堂
宗教の違いという意味では、神道・キリスト教でも納骨堂に準ずる管理施設・安置所を設けているところが見られます。
また、お寺に比べると金額も安価で、教会は10数万円の予算で済む良心的なところもあります。
納骨堂のために改宗するのは難しいと思いますが、どうしても予算の折り合いがつかない場合は、一度相談してみましょう。
タイプ別に見る納骨堂
次に、主に仏式の納骨堂につき、どういったタイプの納骨堂があるのか、主なデザインをご紹介します。
大きさや使い勝手がそれぞれで異なるため、骨壺の数やお参りのしやすさなども考慮して選びたいところです。
仏壇式
上段と下段が整備されている、仏壇を模した納骨堂です。
上段に位牌やお供え物を置き、下段には遺骨が入ります。
仏壇を持っている人にとっては、使い勝手はそれほど変わらないように感じられることから、あまり違和感なく利用できるでしょう。
注意点としては、宗派によってデザインが異なったり、使える人が限られたりする場合があるため、事前に相談が必要です。
ロッカー式
主に都会のような土地が少ない地域で選ばれる納骨堂で、小さなロッカー型のスペースに遺骨を安置する形をとります。
やや無機質な雰囲気に感じられますが、納骨堂の中に入ってみると、明るい雰囲気のところが多いようです。
価格は比較的安い部類に入るため、その後の出世替えを考えつつ、当面は利用させてもらうという方法も考えられます。
位牌式
ロッカー式よりも簡素なもので、内仏の脇に位牌を立てておくタイプの納骨堂をこのように呼びます。
礼拝の対象は位牌となり、遺骨は別のスペースに安置されます。
予算は数万円から検討できるため良心的ですが、骨壺が分骨される場合もあります。
また、安置スペースは他の契約者と同じなので、プライバシーの確保は難しいでしょう。
機械式
駐車場で言えば立体駐車場のような造りをしており、収納された遺骨を参拝者のところに機械で移動させ、そこで遺族が祈りを捧げるタイプの納骨堂です。
限られたスペースに遺骨を安置する目的で用いられ、なおかつ丁寧な供養をしたいと考える遺族に好まれます。
定期的なメンテナンス・24時間管理と、さながら新築マンションのようなメリットが享受できる機械式ですが、その分費用も高い傾向にあります。
都市部で親戚も暮らしていて、訪れる人が多い場合は検討すべきなのかもしれません。
室内墓地
建物の中に墓地があるものを言い、その石造りのお墓を納骨堂としてカウントする場合があります。
天候の影響を受けにくく、永代供養OKのところもあることから、これから人気が出る可能性のある墓地です。
墓石を使う分、納骨堂が持つ費用面でのメリットは享受できません。
よって、機械式と迷った場合の選択肢の一つになるでしょう。
納骨堂を選ぶメリット
納骨堂は、お墓に比べて費用や管理の面などでメリットが多く、特に都市部で重宝されます。
以下に、具体的なメリットをいくつかご紹介します。
費用がお墓に比べて安価
納骨堂を選んだ場合、墓石や墓地のスペースを用意する必要がないため、お墓を新しく建てるよりも費用が安くなります。
もちろん、複数の遺骨を安置するなどの事情が発生したり、永代供養にかかる費用などを勘案したりすると値段は上がるものの、災害などで墓石が壊れた場合の突発的なメンテナンス料金などを支払うリスクは少なくなります。
費用に応じてタイプを選ぶ自由度も高いことから、まず費用面で納骨堂を検討する家庭は多いようです。
天候に左右されず都心でも通いやすい
納骨堂は、建物の中に安置場所を設けています。
これは大きな長所で、外にあるお墓にお参りするよりも、日程調整が楽になります。
お墓参りは原則として晴れの日しか行けず、日程を合わせるのが大変です。
小雨なら勢いでお墓参りできるものの、土砂降りになると日程を再度すり合わせる・もしくは中止するなどの決断を迫られることになります。
また、墓地は多くの場合都市部から離れたところにあり、お墓参りのために何らかの交通手段を確保しなければなりません。
その点、街中にある納骨堂であれば、最寄り駅から徒歩数分で訪れることも可能です。
通う側の面倒を省くという意味では、納骨堂のメリットは大きなものになるでしょう。
管理の手間が少なく安全
納骨堂は共用部分が多く、自分たちで清掃・管理するのは基本的に納骨スペースなど一部に限られます。
墓地や霊園を選んだ場合、お墓を掃除したり草むしりをしたり、お参りする前にキレイな状態にするまでの時間がかかります。
また、気象や動物などの影響を気にする必要がありませんから、安心して祈りを捧げられます。
仕事の都合などでお参りが夜になってしまったとしても、室内に照明が用意されているため、安心してお参りできる点も魅力です。
納骨堂を選ぶデメリット
建物の中に安置スペースがあることから、一見メリットの多そうな納骨堂ですが、その分制限もいくつかあります。
納骨堂は、全くデメリットのない選択肢ではないことから、メリット・デメリットそれぞれについて比較検討することが大切です。
スペースが狭い
ロッカー式にせよ仏壇式にせよ、お墓に比べて圧倒的にスペースが少ない点は否めません。
外のお墓なら、お供え物の数を考慮することは稀ですし、線香をあげることも何らおかしな話ではありません。
しかし、納骨堂によっては線香がNGのところもあり、お供え物を置けるスペースも限られています。
よって、LED式のローソク・線香を選ぶなど、火を使わないお供えを検討する必要があります。
建物が半永久的に残るとは限らない
日本には、古来からその姿をとどめる建物がたくさんあることから、建造物は永久不変であると考える人が多いようです。
しかし、石造りの建物さえ崩れ落ちてしまうように、建物には寿命があります。
現代では、不動産の寿命を延ばす技術が向上したこともあって、築80年の建物をリノベーションする技術が生まれるなど、今ある建物を修繕することは不可能ではありません。
しかし、マンション等の人が住む施設はともかく、納骨堂を半永久的に現在の形にとどめておけるかどうかは分かりません。
予算も絡む話なので、建物のオーナーも簡単に決断することはできず、時代が進んで納骨堂にとって代わる画期的な供養の方法が生まれた場合、利用者が離れる可能性もあります。
未来永劫納骨堂を使えるかどうかは、確証のないものと考えておきましょう。
契約期間と合祀の問題
納骨堂は、運営団体と管理委託契約を結びます。
その際、契約期間として一般的なのは「三十三回忌」のタイミングで、その後は合祀するか契約継続するかを選ぶことになります。
一度合祀してしまうと、遺骨を移動できなくなるため、災害など何らかの事情で大きなお墓に移そうと思ってもできなくなります。
誰しも三十三回忌のタイミングで家族がどうなっているのかは想像できませんから、長い間収蔵する場合は慎重に考える必要があります。
この記事のまとめ
納骨堂を選ぶ視点は、宗教・家族の事情・予算・スペースなど様々です。
供養の問題は、自分たちが亡くなった後も続いていくため、理想のライフスパンに応じた対処法を考えておかなければなりません。
家族全員が納得できる選択をするためには、情報を集めることが第一です。
その時の最善を尽くすつもりで、後悔のないよう納骨堂を選ぶように心がけましょう。