今更聞けないお通夜・葬儀・告別式の違い。
それぞれの違いや特徴と簡単なマナーや流れも紹介
お葬式に関する用語は、違う名称であっても似たような意味で解釈してしまうケースがよくあります。
その代表例とも言えるのが、「お通夜」「葬儀」「告別式」ではないでしょうか。
それぞれ、お葬式の場面で用いられる用語ではあるものの、具体的にどのような儀式のことで、どういった違いがあるのかを適切に説明できる人はそう多くありません。
お通夜の後に告別式を行うと知っている人は多いと思いますが、何が違うのか、それぞれの儀式が全く違うルーツを持っているといったことは、意外と知られていません。
また、葬儀と聞くと、お通夜から告別式・精進落としまでの仏式における一連の流れを想像するかもしれませんが、これは必ずしも適切ではなく、もっと広い意味を持っています。
今回は、そんな今更聞くに聞けない常識の一つ、お通夜・葬儀・告別式の違いについて、それぞれご紹介します。
お通夜とは
まずは最も耳にするお通夜から解説してみたいと思います。
お葬式に参列する場合、参列者の多くはお通夜に参加することになります。
何気なく参加しているお通夜ですが、実は昔のお通夜は現在のお通夜とは違う性質を持っていました。
そもそも「お通夜」とは徹夜を意味していた?
お通夜とは、亡くなった方を葬る前に、家族や親族・友人などが遺体の側で供養を行い、別れを惜しむ儀式・慣習でした。
そのため、昔は集まった人たちが夜を徹して故人を見守り、その間にお坊さんがやって来てお経を読み、振舞われたお酒と料理を楽しみながら故人を見送っていたのです。
集落や地方によっては娯楽が少なく、そのような場面でなければなかなか人が集まることがなかったため、ある意味では楽しみの一つとしてお通夜が機能していた一面がありました。
現代では参列者が増え「半通夜」が主流に
かつては人が集まる娯楽の一種として捉えられていたお通夜ですが、時代の変化とともに流れが変わっていきました。
もともと親族や友人といった、ごく近しい人の集まりだったお通夜は、次第に仕事関係・ご近所付き合いにまで発展するようになります。
すると、明日学校や仕事がある人もお通夜に参加するのは難しいため、お通夜を早める流れが生まれました。
その結果、18~19時という、比較的誰でも集まりやすい時間帯が選ばれ、それからお坊さんが読経を始めるようになったのです。
最終的に、故人との最後の食事の場である通夜振る舞いを用意して参列者をもてなし、夜のうちにお開きとなる「半通夜」が主流となりました。
通夜振る舞いは、親族などでない参列者が長居をする場所ではありませんから、振る舞いを受けても速やかに退席する心配りが必要です。
ちなみに、宿泊施設の整った施設なら、多くの場合はお坊さんの読経・セレモニー部分が終わった段階で、親族のみで通夜を迎えることも珍しくありません。
このあたりはケースバイケースと考えておきましょう。
お通夜(半通夜)の基本的な流れとは
現代において主流となっている半通夜ですが、参列者の立場としては以下のような流れを想定しておけば問題ないでしょう。
まず、参列したら受付を探します。
関係者別に受付が分かれている場合は、自分の立場に応じて選びましょう。
受付の方に対し「この度はご愁傷さまでした」と一声かけて香典を渡し、それから芳名帳(ほうめいちょう)などの帳簿に氏名・住所を記入します。
その後参列者席に案内されるので、指定された席に着席します。
その後定刻になると僧侶が入場します。
読経・焼香が行われた後、喪主・家族・親族・参列者などが焼香します。
一通り参列者の焼香が終わったら僧侶が法話を行い、セレモニーのプログラムなどがあれば、それを終えた後で閉会となります。
参列者として向かう場合は、基本的にスタッフの言う通り行動していれば、大きな問題となることはないでしょう。
葬儀とは
続いては葬儀です。
仏式のお通夜・告別式を総称したものと考えている方は少なくありませんが、厳密に言うともっと広い意味を指しています。
葬儀とは、死者を葬る儀式という意味
葬儀が持つ本来の意味は、親族・家族・友人など、故人と親しかった人が故人の冥福を祈り、死者を葬るために行う儀式のことです。
具体的には、僧侶による読経・神官の祭司や祝詞・歌の奉唱・聖書朗読・黙とう・祈祷・焼香・出棺・火葬といった、死者を葬る際に行われる一連の儀式を指しています。
キリスト教・神道など、宗教によって意味するものが違う点にも注意が必要です。
仏式においては、お通夜と告別式という認識が一般的
日本において圧倒的多数となる仏式の葬儀においては、葬儀と言うと「お通夜と告別式」を合わせて呼ぶケースが多く見られます。
このあたりは人によって認識は異なり、参列者の立場ならお通夜までを、喪主の立場では告別式や火葬までの段階を指すことが多いようです。
年代によっては、告別式を葬儀と認識している人もいますから、会社の上席から葬儀に参列する意向を聞かれた場合、お通夜か告別式かを確認するなどの心配りは必要かもしれません。
「葬儀」と「葬式」って意味が違う?
葬儀と葬式は、時折似たような言葉で紛らわしく感じることがあります。
しかし、結論から言えばこれらはほぼ同じ意味と考えてよいでしょう。
葬儀とは「死者を葬る儀式」のことで、それを略したものが「葬儀」という単語です。
ということは、例えば「葬式」と略したとしても、何ら不都合はありません。
結局のところ、葬儀と葬式は同じ意味でありながら、どの漢字を残したかという点での違いしかありません。
よって、特段使い分ける必要もありません。
ただし、たまに葬儀屋さんによっては「葬儀」を「お通夜」の意味で用いていることがあります。
使い分けとしては意味のないことですが、特段間違いというわけでもありませんから、開始時間や式の内容で理解して差し支えありません。
告別式とは
次に、告別式についてご紹介します。
告別式とは、遺族・参列者問わず、故人と最期のお別れをするタイミングです。
そのため、基本的に式の途中で離れることはできないものと考えておきましょう。
故人を現世から送り出すための儀式
お通夜が最後の別れを惜しむものであったのに対し、告別式は家族・親族・友人などが故人とお別れするための儀式です。
お通夜との大きな違いは、お通夜がどちらかと言うと親族主体だったのに対し、告別式は一般会葬者も含めた別れの儀式としての性質を持っている点です。
よって、告別式の主役は、ある意味遺族も含めた参列者と言えます。
また、本来は宗教儀礼としての意味合いは強くないものでした。
告別式が最初に行われたのは、1901年に亡くなった日本の思想家、中江兆民氏の葬儀だと言われています。
もともと無神論者として知られていた中江氏は、自分が死んでも宗教的儀式は必要ないと考えており、それと同時に葬列を組んだ葬儀の代わりとして告別式が認知されるようになったようです。
明治時代以前の葬儀は、少なからず遺族に負担を強いていた
告別式という形式が生まれた背景には、必ずしも中江兆民の個人的な意向だけがあったわけではありません。
一般人の中にも、既存の葬儀の形式に対して負担や疑問を少なからず感じていた人たちがいたのです。
明治以前の葬儀には、葬列という概念がありました。
これは、遺族や参列者たちが葬列と呼ばれる行列を組み、遺体を火葬場や墓地まで運ぶ行為です。
中江兆民が告別式を行うまでは、葬列は単なる移動としての意味だけでなく、故人を送り出すための重要な儀式として認識されていました。
しかし、明治時代以降は葬列が派手になる傾向にあり、さらには交通機関の発達により路上での葬列進行が難しくなりました。
また、会場が遠い場合、葬列をなさずに直接会場に現れる人も出てました。
このような時代の流れを見通して、葬儀に代わるものを考えた結果、中江氏が告別式を葬儀に代わるものとして実施したのかもしれません。
この流れは広く世間一般に知られることとなり、法曹関係者・学者といった層が告別式を取り入れていきました。
その名残として告別式が行われている現代では、本来は宗教に関係のないプランが取り入れられるべきところ、次第に宗教色を反映した告別式も増えていきます。
その結果、一般人にとってお通夜・告別式・葬儀などの違いがあいまいになってしまいった部分は否めません。
告別式に参列する場合の基本的な流れ
一般参列者は、日程の都合がつかなかった場合を除いて、多くはお通夜に参加することがほとんどです。
しかし、遠方に住む親戚が亡くなった場合など、告別式のみに参加することも決して少なくないため、参列時の流れは理解しておきましょう。
地域によって多少の違いこそありますが、告別式は基本的に午前に行われます。
10:00頃からスタートし、およそ1時間半ほどで終わることが多いようです。
会場にて香典を渡し、受付を済ませるのはお通夜と同様です。
方名帳に住所・氏名を記帳します。
その後、席に案内されたら、自分の立場に応じて座る場所を選びます。
お坊さんの読経・弔辞が読み上げられた後は、焼香を行ってから火葬場に向けて出棺となります。
出棺前には、故人に近い人物から順に、棺の中にお花を入れていきます。
副葬品を入れる場合もありますが、原則燃えるもの限定です。
その後、棺にふたを閉めて出棺となります。
火葬場に向かう場合、基本的には遺族・親族のみが向かう形になりますから、自分から行きたいと申し出ないようにしましょう。
この記事のまとめ
お通夜・葬儀・告別式の違いについて、簡単に紹介してきました。
葬式については、似たような名称の儀式がほぼ同じタイミングで行われることから、知識のない方にとっては混同しやすい部分が多いものです。
しかし、一つひとつの儀式が生まれた経緯と実際の流れを理解していると、実際に葬儀に参列する際にスムーズです。
お通夜と告別式に関しては、折々で注意すべき点はあるものの、振る舞いについては葬祭場のスタッフに確認しながら進めていけば問題ありません。
また、他の参列者の行動を見るだけでも、大きな間違いを防ぐことはできます。
違いを理解した上で適切な振る舞いを心がけるだけでも、故人に思いは伝わるはずです。
葬儀の席では、マナー以上に故人を想う心が大切なことは忘れずに。