遺言書の作成を依頼する場合の料金について
弁護士と司法書士に依頼する時に料金の違いはあるのか

  • 2024.01.29

相続・遺言

遺言書に関する疑問や不安を解消したい場合、やはり多くのケースを経験している法律の専門家に依頼したいと考えるのが一般的です。
ただ、法律の専門家にも色々なジャンルがあり、何でもかんでも弁護士に相談すれば解決するという話ではありません。

士業だけで見ると、遺言書の作成を依頼する場合、弁護士・司法書士が多く選ばれる傾向にあります。
しかし、税理士・行政書士など、他の士業に依頼する必要があるケースは往々にして存在します。
当然、料金の面でも違いが生じ、難しいことを依頼すればするほどコストが発生します。

単純に遺言書が正しい内容かどうか確認したいのか、それとも遺言書を執行する段階までサポートが必要なのかによって、依頼する相手も変わってきます。
この記事では、遺言書の作成を依頼する際に主な依頼先となる「弁護士・司法書士」について、料金の違いはあるのか、他のサービスで対応できるケースはあるのかについてご紹介します。

弁護士に遺言書の作成を依頼した場合

まずは、遺言書の作成を弁護士に依頼した場合についてお伝えします。
依頼内容によって、金額が大きく膨らむおそれこそあるものの、事務所を選べば安く済ませられるケースもあります。

士業で比較した場合、報酬額は高い傾向にある

士業全体で、遺言書作成・遺言書に関するサポートにかかる費用を比較した場合、弁護士はどうしても報酬が高くなりがちです。
できることが他の士業に比べて多いので、無料相談などでかんたんな内容を相談する場合を除き、法律面での全面的なサポートを依頼する人が多いことが一因と考えられます。

最低でも10~20万円ほどの金額を見積もっておく必要があり、そこから相続させたい遺産の額に応じて金額は増えていきます。
よって、それ相応の資産がある人だけの選択肢と考えてよいでしょう。

過去の報酬規程に沿った金額になっているかどうか

弁護士の報酬規程は、現代でこそ弁護士がそれぞれの基準を作って報酬を定めることが許されていますが、過去には細かく規定が定められていました。
この「過去の報酬規程」を現代でも適用している事務所は少なくなく、資産が多ければ多いほど報酬も高額になります。

ただ、逆に言えば事前にいくらかかるのか計算できるため、依頼する側が予算を定めやすいというメリットもあります。
もちろん、良心的な金額を提示してくれる弁護士も少なからず存在していますから、事務所のホームページなどに書かれている情報を参考に、依頼先を決めたいところです。

遺言書以外で依頼したいことがあるなら弁護士が有利

弁護士に依頼する大きなメリットとして、訴訟に発展した場合に代理人に立ってもらえること・示談交渉ができることなどがあげられます。
仮に遺言書を作成したとしても、遺言書無効の訴えを起こされるリスクが高い場合などは、当事者同士で争うよりも第三者が間に立った方が、話もまとまりやすくなります。

遺言書の文面・内容に関することだけでなく、遺言書を作成した後まで見越してサポートを依頼したい場合は、弁護士への相談を視野に入れておくと安心です。
逆に、円満に遺産相続が行われる可能性は高いものの、念のため遺言書の法的効力を確実なものにしたいというケースでは、司法書士に依頼した方が費用を安く済ませられるでしょう。

司法書士に遺言書の作成を依頼した場合

続いては、司法書士に遺言書の作成を依頼した場合についてお伝えします。
弁護士との大きな違いは「代理権」があるかどうかで、遺族・親族の間に入ってもらうことを想定していないなら、司法書士に依頼した方が経済的です。

専門家の中では比較的手ごろな部類に入る

司法書士に依頼した場合の費用感は、事務所によって多少の違いがあります。
大きく分けて、遺言書に関すること全般をまとめて依頼する場合と、相談・文案作成・証人準備といった項目ごとに料金が設定されている場合に分かれます。

一通りの作業をまとめて依頼できる司法書士の場合、報酬額を相続させる金額に応じて定めているため、資産が多ければ多いほど報酬額が高くなります。
しかし、弁護士の報酬と違って計算式が設けられているケースはあまり見かけないため、よほど目立った実績のある事務所でない限りは、10万円を切る価格で対応してもらえるでしょう。

各種項目ごとに金額を定めている場合は、相談に関しては無料となっていて、実際に文案を作成する段階から料金が発生するケースが多いようです。
例えば、文案作成は3万円~、証人準備は一人10,000円~、といった具合です。

無料相談については、例えば保険会社のように自社商品の宣伝を前提として話を進めることはありませんし、あくまでも「自分たちが対応する場合に何ができるのか」を伝えてくれますから、不用意にお金を支払うリスクも少ないでしょう。
遺言書に関することを相談したいけど、あまりまとまったお金をかけることはできない人は、司法書士事務所の無料相談を利用してみることをおすすめします。

遺言書に関することをどこまで任せるか

正式に依頼した際、一律で作業が決まっている場合を除き、自分が司法書士に「遺言書に関することをどこまで任せるか」を決めなければなりません。
文案を作成してもらうところまででOKなのか、証人も用意してもらう必要があるのか、戸籍の収集は代行してもらった方がよいのか、自宅の登記事項証明書はどうするのかなど、何をどこまで依頼するのかによって料金が変わってくるからです。

もちろん、一律ですべてを任せてしまった方が楽なことは言うまでもありませんが、証人はこちらで用意できるのに、あえて誰かにお金を支払って頼む必要はないでしょう。
支払うべきところは支払い、節約できるところは節約するのが、司法書士に依頼する際のポイントです。

遺言書の形式・内容だけしっかりしていればOKという人向け

司法書士に依頼してメリットがあるケースを考えてみると、遺言書を作成した後のサポートというよりも、遺言書自体を正確に作成したい・形式や内容が法的効力を持つようにしたい人向けと言えるかもしれません。
裁判の代理人にはなれませんが、将来のリスクを最大限考慮した遺言書を作成できるため、トラブルのリスクは低いものの万全を期して遺言を準備したい人は、司法書士に相談することから始めるとよいでしょう。

その他のサービスで遺言書の作成を依頼した場合

遺言書作成の相談は、弁護士・司法書士の専売特許というわけではありません。
他の士業に作成してもらった方が、相談者の意図を満たす文面が作成できることもありますから、最初から弁護士・司法書士への相談に決め込まないことも大切です。

行政書士はワンパッケージ価格で依頼できるところを探す

遺言書を作成するにあたって、一般人が気軽に相談できる士業の一つに行政書士があります。
行政書士に依頼した場合、遺言書作成におけるほとんどの部分を代行でき、各種相続手続きも一部を除いて代行できます。

また、遺言執行者として対応することもできますが、具体的な法律相談の案件や、相続登記の代行はできません。
その他、相続放棄に関する手続き・遺言書の検認・他の相続人との交渉など、一部対応できない部分もあります。

行政書士はできることの幅が広い反面、司法書士や弁護士にしか頼めない仕事も一部あることから、もし行政書士に遺言書作成を依頼するなら、一連の業務がワンパッケージ価格で提示されているところを選ぶと、不安が少なくなるでしょう。
「具体的な業務内容」と「自分たちでやらなければいけないこと」が、きちんと分けて書かれているプランを選ぶと安心できるはずです。

添削サービスは費用対効果を考えて選ぶ

もっと格安で、自分が作った遺言書の内容だけ確認して欲しいという人は、添削サービスを使う手があります。
添削は行政書士が担当しているケースが多いのですが、やるべきことが一つにまとまっている分、値段も数千円という金額から依頼できます。

サービス内容によっては、遺言書に関するガイドブックを無料で進呈してくれるところもありますから、添削を受けた後で書き直したい場合も安心できます。
文章作成に関する知識や、相続に必要な調査・手続きを自分でできる知識があるなら、ダブルチェックの意味で添削サービスを利用するのもよいでしょう。

また、郵送で一度だけ添削を受けるサービス、電話やメールで複数回サポートを受けられるサービスなど、回数や質にも違いがあり、手間がかかるほど料金も高くなります。
まとめる内容が大まかな内容しか決まっていない状況であれば、あえて添削サポートに依頼して時間をかけるよりも、司法書士に頼んだ方が安上がりかもしれません。

事業承継や税務に関する分野の知識が必要なら税理士を頼る

遺言者が会社を経営しているなど、法人に関する問題も遺言書で調整・解決したいと考えているなら、税理士に依頼するのも一つの方法です。
特に、税理士は税金に関するスペシャリストですから、高額の相続税が発生するおそれがある案件であれば、必ず税理士に話を通しておきたいところです。

税理士に依頼するメリットは、会社と家族の問題を一貫して解決に導けるところにあります。
遺言書の作成はもちろん、生前にやっておきたいこと・相続税の申告に関する準備・事業承継の手続きなど、複数の案件をすべて一人もしくは一つの事務所を通じて解決できます。

もちろん、部分的に司法書士・弁護士の力を借りるケースもあるでしょうが、税金や会社経営に携わっている人なら、信頼できる税理士に話を通した方が効率的です。
事業に関することを遺言書に書き含めたいなら、税理士に相談する選択肢も視野に入れておきましょう。

この記事のまとめ

弁護士と司法書士を比較した時、それぞれでできることは違いますし、料金も差が生じる傾向にあります。
ただ、どちらが良い・悪いということはありませんから、自分が何を・どこまで依頼するのかを判断して、必要な部分だけ頼るというスタンスを選ぶと無理がありません。

行政書士・添削サービス・税理士など、遺言者の置かれた状況によって、相談した方がよい相手も変わってきます。
遺言書=弁護士・司法書士というイメージをいったん捨てて、誰に相談したいのかを改めて考えてみると、意外な答えが見つかるかもしれません。

  • 公開日:2024.01.29

テーマ:相続・遺言

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