今更聞けない「香典」の基本とマナーについて。
金額の相場や渡し方など基本と注意点を解説します。
葬儀の際に香典を包むのは、日本では一般常識として広く知られています。
しかしながら、これらの細かい部分まで聞かれると、途端に悩んでしまうものです。
- 親族の葬儀にいくら包むのか。
- 同僚の父親が亡くなったが、この場合の相場はどうか。
- キリスト教を信仰していると聞いたが、香典袋はこれでよいのか。
香典と言えばなんとなくわかるけど、このように掘り下げていくと、分からないことが次々に出て来るのが香典です。
そこで今回は、香典に関する基本的な知識について、おさらいしてみたいと思います。
香典の費用は、誰が亡くなったかで支払う額は変わる
まず大原則となりますが、香典の金額は、誰が亡くなっても一律の金額というものではありません。
自分にとって近しい人が亡くなれば、それ相応の金額を包むことになります。
しかし、具体的にいくら包むべきなのかを詳しく知っている人は、なかなか身近にいないものです。
そこで、自分との関係性に応じて、包むべき金額をまとめてみました。
親族が亡くなった場合
自分の身内が亡くなった場合、その関係性に応じて香典を包みます。
親しい順に相場をまとめると、概ね以下のような金額になります。
両親
結婚した配偶者の義父母が該当します。
自家の父母が亡くなった場合、喪主は自分や他の家族が行うため、実際には支払う場合と支払わない場合とに分かれます。
兄弟がいて、葬儀にかかる費用を折半するなら、そもそも香典という概念もなくなります。
実際に支払う場合は、5万円~10万円という金額が相場となっており、年齢に応じて金額が変わってきます。
20代なら5万円、30代なら7万円、40代なら10万円といった具合です。
祖父母
結婚した配偶者の義祖父母、自家の祖父母が該当します。
家孫だった場合は、状況によっては喪主になることもあるため、表立って香典を包むことは少ないかもしれません。
家族が祖父母と離れて暮らしていた場合は、香典を包むことがほとんどです。
金額は、20代で1万円、30代で3万円、40代で5万円が相場です。
兄弟・姉妹
血縁関係上、両親の次に近しいことから、香典の金額もそれ相応になります。
同居している場合を除いては、ほぼ例外なく香典を支払うことになるでしょう。
金額は、20~30代で3万円、40代で5万円が相場です。
叔父・叔母
血縁の面ではやや距離があり、そこまで高い金額を包むと、かえって喪主に負担を感じさせてしまうかもしれません。
しかし、子ども時代に特にお世話になった場合、例外的に多めの金額を包むケースは珍しくありません。
相場としては、20~30代で1~2万円、40代で3万円がそうばです。
育ての親のような存在だったのなら、5万円を包んでも失礼にはあたりません。
その他の親族
年に一度、親戚の集まりで会うような間柄であれば、そこまで多くのお金を包む必要はないでしょう。
しかし、いとこのように頻繁に遊んでいて仲の良い間柄なら、それ相応の金額を包みます。
年齢問わず、関係によって5千円~2万円が相場です。
職場や取引先の場合が亡くなった場合
会社でまとめて香典を支払ってくれる場合、総務担当者が相場を知っていて、役職に応じて一人いくら包めばよいかをまとめてくれる職場もあると思います。
しかし、自分で金額を決めなければならない場合は、常識を問われることになります。
知らないことが罪というわけではないにせよ、やはり立場をわきまえなければ、かえって遺族に負担をかけることになります。
自分の立場に応じて適切な金額を包めるよう、頭の片隅に入れておきましょう。
上司
自分が働いている職場の上司が亡くなった場合は、概ね5千円~1万円を包みます。
年齢にもよりますが、自分がその上司とどこまで親しかったのか、仕事上どこまで深く接していたのかによっても変わります。
また、部下同士で相場を合わせるケースも考えられますから、独断で判断しない方が賢明です。
上司の親や家族
自分が働いている職場の上司の親・家族が亡くなった場合は、相場としては3千円~1万円です。
こちらも、年齢だけでなく職場との兼ね合いがあります。
特別な付き合いがあった場合を除いては、職場の意向に従いましょう。
同僚・部下
同僚や直属の部下が亡くなった場合に包む香典は、5千円~1万円が相場です。
ただし、同僚・部下の家族が亡くなった場合は、会社の意向や関係性に応じて金額はまちまちです。
関係性によって、3千円ということもあれば、1万円になることもあります。
友人が亡くなった場合
自分にとっての友人が亡くなった場合、どのくらいのお金を包むかは、個々人の関係性に左右されます。
親しければ1万円、年賀状のやり取りのみだったなら5千円など、ある程度差が生じてしまうのは仕方がないことです。
遠方の場合は電報・お供え物だけを送るというケースもあるようですが、可能であれば現金書留で郵送した方が丁寧です。
香典を渡すときのマナーや注意点
香典を準備して、いざ斎場に向かおうと考えたとき、心配になるのはマナーです。
自分は厚意をもってお渡ししたはずなのに、それがかえって遺族側に失礼になっていては意味がありません。
そこで、葬儀に参列する際に多くの人が戸惑ってしまう場面に焦点を当て、香典を渡す際のマナーや注意点についてご紹介します。
そもそも香典はいつ渡すべきか
まずは、香典を渡すべきタイミングです。
一般的には斎場の入口に受付があって、そちらで名簿に名前を書く前にお渡しすることが多いと思います。
多くの人が悩むのは、告別式だけ参加する場合、あるいはどちらにも参加できない場合でしょう。
告別式にのみ参列するなら、斎場スタッフや遺族に直接渡せば取り計らってくれる場合もあります。
しかし、葬儀の後で渡した方が負担が少ないと考える人もいるようです。
実際のところ、香典を渡すタイミングは、葬儀が終わった後でも差し支えありません。
遠方で葬儀に参列できなかった親族・友人が、後日現金書留で香典を送付することも珍しくない話です。
遺族にかける負担と自分の状況を比較して、最善のタイミングを考えましょう。
香典袋に入れるお札の種類
昔から言われている習慣の一つに、香典袋に入れるお札は「ピン札(新札)を避ける」というものがあります。
新札をわざわざ用意して香典として包むのは、亡くなった方の死期を予測していたかのように思われ、遺族にも不快感を与えるというのが理由です。
気にしない・知らない人にとっては問題ない話ではあるものの、地域を問わず広く知られている常識の一つですから、親族が名前を知っていると後で指摘を受けることもあります。
マナーとしては、極端に古いお札は避けつつも、お札の中央に折り目がくっきりと付いているものを選んだ方が無難です。
どうしても手元に新札しかなかった場合は、折り目をつけてから香典袋に入れましょう。
地方ルールも覚えておくと安心
香典に関する決まりごとは、都道府県・地域ごとに独特のローカルルールが定まっているところもあります。
遠方の方なら知らなかったとしても無理はありませんが、万一に備えて知っておくと便利です。
北海道を一例にとると、お通夜の日に香典を渡すと、その日に香典返しが受け取れます。
また、香典返しと一緒にハガキ型の領収証ももらえ、必要であれば宛名も書いてくれます。
また、群馬県には「新生活」と呼ばれる風習があり、香典金額を少なくして香典返しを辞退するケースもあります。
そのため、一般的な相場よりも包む金額は安くなります。
あらかじめローカルルールを知っていると、出費を抑えたり、移動時の荷物の量を調整したりできますから、遠方に親戚がいる場合は世間話がてら聞いてみるとよいでしょう。
香典袋の選び方や名前の書き方
香典袋と聞いて思い浮かべるイメージとして、多くの方は仏式の袋を想像すると思います。
しかし、香典袋にも様々な種類があり、金額に応じてデザインが異なるなどの違いがあります。
多くの方が気にしない部分ではあるものの、やはり失礼のないよう準備を進めたいものですから、せめて違いだけでも押さえておきたいところです。
包む金額・宗教によって香典袋の種類も違う
香典袋と一口に言ってもいくつか種類があり、包む金額や宗教によってデザインが違います。
一般的に、水引が印刷されたものは5千円~1万円までの金額に使われます。
1万円を超える場合は、黒白・黄白・双銀のような水引と中袋が付いた封筒を用意します。
また、ハスの絵が描かれているものは仏式で、十字架が描かれているものはキリスト式で用いられます。
神道の場合は無地のもの、あるいは水引が別途付いている封筒が必要です。
キリスト式の封筒は、コンビニなどでは見つからないことも多いため、可能であれば文具店・斎場の売店などで手に入れるとよいでしょう。
どうしても見つからなければ、無地の水引がプリントされた香典袋に「御花料」と書いてお渡しします。
ちなみに、仏式であれば「御霊前」や「御香料」と、神式であれば「御玉串料(おんたまぐしりょう)」や「御榊料(おんさかきりょう)」とします。
表書きを書く位置と、個人・連名の違い
現代で市販されている香典袋には、あらかじめ表書きが気さ入れているものも多いです。
しかし、自分で書かなければならないものを購入した場合、御霊前などの表書きは、水引を挟んで袋上部に記入します。
下段には、会葬者のフルネームを書きます。
夫婦で持参した場合は、夫の名前を中央に、妻の名前を右横に添える形で書きましょう。
会社の部署一同など、複数人が連盟する場合は、封筒の表面には「○○株式会社経理部一同」などと記載し、中袋に「山田太郎 金壱萬円・吉田次郎 金五阡円」のように、連名とそれぞれがおさめた金額を書いていきます。
丁寧に取り扱うなら「ふくさ」が必要
香典袋を取り扱う際は、ふくさに香典袋を入れておき、受付ではふくさから取り出してお渡しするのが丁寧です。
現代では斎場で受付をはさむため、そのままお渡しすることが必ずしも失礼にあたるとは限りませんが、香典袋を汚さない意味でもふくさを使うとよいでしょう。
ふくさについては、風呂敷のように布でくるむものと、あらかじめ財布のような形状を整えているものとがあります。
百均などで売られているものもありますから、急遽必要になった場合は探してみましょう。
この記事のまとめ
香典として包む金額や封筒の種類など、細かく見ていくと知らないことが見えてくるものです。
自分が参列する葬儀にはどのような準備が必要なのか、何かの折に事前に目を通しておくと、対応がスムーズです。
ローカルルールなどは、知っていればメリットのあるケースもありますが、何もないのに聞くのも不謹慎な話です。
連絡を受けてからお通夜まで時間が空く場合は、そのタイミングでルールを調べておき、当日に不備のないようにしましょう。
もし、何か不安がある場合は、斎場のスタッフに確認すれば、概ね正しい答えが返ってくるはずです。
せっかく足を運ぶのですから、大事なことを知らないまま対応して、恥をかかないようにしたいものですね。