色々な呼び名があるお坊さん。正しいのは?
住職や僧侶など宗派での呼び名の違いや呼び方について
葬儀の席などで、お経をあげてくれるお坊さん。
すでに関係ができている菩提寺の方ならいざ知らず、初めてお会いする場合、何とお呼びしてよいのか分からず困った経験はありませんか?
実際のところ、住職・僧侶・お坊さんなど、実に様々な呼び方があります。
今回は、そんなお坊さんの呼び方の違いについてご紹介します。
お坊さんの呼び方がたくさんある理由
お坊さんの呼び方が統一されていないのは、お坊さんの序列が一般人には分かりにくいことや、そもそも宗派ごとに呼び方が違っているなどの理由が挙げられます。
以下に、お坊さんの呼び方がたくさん存在する理由についてご紹介します。
そもそもの由来は「サンガ」
僧侶の「僧」というのは、サンスクリット語の「サンガ」を音訳した言葉で、本来は集団・群れ・組合などの意味を持つ単語でした。
すなわち、出家して仏門に入った人々・修行者の集団を意味する言葉でしたが、日本・中国などでは修行者個人を表す言葉として使用されています。
また、仏門に入る人は剃髪(髪を剃る)して悟りを開こうとするため、その髪型から坊さん・お坊さん・坊主などの表現が生まれたものと推察されます。
もちろん、浄土真宗などでは剃髪していないお坊さんが存在しますし、新興宗教ではそもそもお坊さんがいないことも珍しくありませんから、あくまでも「お坊さん」という言葉は一般的に広まっている表現の一つに過ぎないものと押さえておきましょう。
僧侶同士での格付けも関係している
一般人が知ることはほとんどありませんが、僧侶同士にも格付けがあります。
いわゆる「僧階」と呼ばれるもので、時代劇などで「大僧正(だいそうじょう)」などの僧階は聞いたことがあるのではないでしょうか。
以下に、主な僧階をご紹介します。
なお、下に行くにつれて階位は下になります。
- 大僧正
- 権大僧正
- 中僧正
- 権中僧正
- 少僧正
- 権少正
- 大僧都
- 権大僧都
- 中僧都
- 権中僧都
- 少僧都
- 権少都
- 大律師
- 律師
- 権律師
宗派によって名称は若干異なる場合もありますが、概ね上記のような階位が存在します。
階位は出家してからの年数で決まり、実年齢ではなく「どれだけの年数修行したのか」が重視されます。
分かりやすいのは法衣の色で、最高位の法衣は緋色・紫色となっていることが多く、身に着けている人が上位者であることが一目で確認できます。
大きな葬儀では、たくさんのお坊さんがいることも珍しくありませんから、念のため覚えておきましょう。
お寺の外に向けての呼び名・通称も
お寺の中で必要な階位・呼び方は、基本的にお寺の外・実社会ではあまり気にされません。
よって、例えば葬儀の席で「大僧正!」などと呼びたてる必要はありませんし、逆に失礼に当たる場合があります。
葬儀でお世話になるお寺が初めてのやり取りとなり、詳しく知らない場合、葬儀社の人とのやり取りでは「お寺さん」と呼ぶことがあります。
お坊さんに対して直接声掛けする場合もありますが、このような場合、わざわざお寺さんという名称を使わずともよいでしょう。
どう呼べば正解?基本的な僧侶の呼び方
お坊さんの呼び方一つで、実に様々な名称があることが分かりました。
それでは、具体的にどう呼ぶのが正解になるのでしょうか。
以下に、声掛けの際に役立つ、基本的な僧侶の呼び方についてご紹介します。
一般的には「ご住職さん」が無難
特段親しくなく、初めてお会いするような場合、一般的には「ご住職さん」と声掛けするとよいでしょう。
実際にはニュアンスが違う場合もあるのですが、一般的に仏門の階位について詳しく知っている人は少数派ですから、それでも失礼にはあたりません。
後述しますが、ご住職さんという呼び方は、基本的にそのお寺の代表であることが原則です。
よって、それ以外の人は該当しませんが、一目見て代表者かどうかを見極めるのは難しい場合もありますから、尊敬の意味を込めて「ご住職さん」と声掛けしても、コミュニケーションに支障はないはずです。
多くの宗派で「和尚さん」はOK
初めてお会いする場合に限り、「お坊さん」とお呼びすることも、失礼ではありますが間違いではありません。
ある意味、一番分かりやすい呼び方のため、僧侶の側も気を遣って抵抗なく受け入れるでしょう。
しかし、やはり面と向かってお坊さんと言い放つのは失礼にあたりますから、できるだけ「和尚さん」という言葉を使いましょう。
和尚とは、僧侶全体への敬称であり、用いられて失礼にはあたりません。
浄土宗・禅宗・真言宗・天台宗といった、日本で多数派の宗派で、和尚さんという呼び方は一般的です。
困ったら、とりあえず和尚さんと呼んでおけば無難です。
親しくなるとお寺の名前で呼ぶことも
檀家契約を結び、葬式をお世話してくれたお寺が自分たちにとって菩提寺となった場合、毎月・毎年のスパンでコミュニケーションが発生します。
そうなってくると、さすがに担当してくれるお寺・お坊さんの氏名を覚えてしまうことも珍しくありません。
ここまで来たら、もはや「和尚さん」では他人行儀ですから、おそらくはお寺の名前やお坊さんの名字で呼ぶことになるでしょう。
お寺の場合は、徳大寺さん、神南寺さんなどのように、お寺さんの呼び方が固有名詞になるだけです。
また、仮にお坊さんの名字が徳田さんなら、そのまま徳田さん・徳田和尚などと声掛けする場合もあるかもしれません。
お互いの親密度に応じて、自然と適切な呼び方が決まってくるはずですから、まずは気負わずにコミュニケーションを構築することから始めましょう。
宗派ごとに呼び名は違う
細かく掘り下げていくと、日本における仏教の各宗派では、一般的な呼び名が異なっている場合があります。
和尚さんと聞くと、多くの方がお坊さんのイメージを思い浮かべると思いますが、実際には「和尚」という漢字の読み方から違っていたり、住職という言葉を使わなかったりと、色々な慣習が見られます。
まずは、その点を理解した上で、宗派ごとの呼び名を理解しましょう。
ほとんどの宗派では「和尚」が使われる
一休さんのアニメなどでご存じかと思いますが、お寺の住職を呼ぶ時、僧侶かそうでないかを問わず、ほとんどの宗派で「和尚」という呼び名が選ばれます。
実は、漢字は同じでも読み方が違うケースもあり、和尚を「おしょう」と呼ぶ宗派は、浄土宗・禅宗が主です。
ちなみに、真言宗では「わじょう」と、天台宗では「かしょう」と呼ぶお寺もありますが、基本的には「おしょう」で通じます。
和尚というのは、役職というよりも僧侶全体への敬称で、住職に対してのみ用いられる単語ではありません。
逆に、住職と呼ぶのなら、そのお寺の代表であることが原則です。
この違いを理解した上で、住職と和尚を使い分けましょう。
浄土真宗・日蓮宗の呼び名には注意
お坊さんの呼び名が独特なのは、浄土真宗と日蓮宗です。
浄土真宗で用いられるものとして「院家(いんげ)」・「御院(ごいん)」などの呼び名があり、これは本来皇族・貴族出身の僧侶を指す言葉です。
他の宗派同様、住職という呼び方も誤りではありませんが、葬儀の席などで複数人がいる場合は、お寺の代表者以外は副住職として分けて呼びましょう。
ただ、正式な呼び名を知らないことは檀家でも珍しくありませんから、仮にお坊さん・和尚さんと呼んだとしても、特にお寺の側で気に留めることはないでしょう。
日蓮宗におけるお坊さんの呼び名は「上人(しょうにん)」となります。
漢字は聖人と書かれることもあり、智徳を備えた僧侶への敬称です。
一般人にとってはそれほど気にする内容ではないものの、いわゆる高僧と呼ばれるような人は「御前様(ごぜんさま)」と呼ばれることがあります。
本山以外で、ある程度格式のある寺院の住職や、長らく貢献された僧侶を呼ぶ際の敬称としても用いられます。
新興宗教における僧侶的な立場は様々
現代において強い影響力を持つ新興宗教においては、仏教系であったとしても、住職的立場より教祖の立場が重要視される傾向にあります。
例えば、創価学会では会長が「池田大作先生」と呼ばれるように、教えを広めた人を最大の功労者として評価する傾向があります。
同じく仏教をルーツの一つとする「幸福の科学」では、本尊を地球の至高神「エル・カンターレ」とし、その下で大川隆法氏が総裁として活動しています。
創価学会には住職と呼ばれる立場は基本的に存在せず、僧侶を呼ぶという習慣がありません。いわゆる「友人葬」という形で葬儀は執り行われ、友人代表である儀典長が読経・唱題を行う流れです。
幸福の科学では、「導師(どうし)」というポジションの人が葬儀を行います。
仏教と似ていますが、「出家者」となった人が導師を務めることになります。
このように、新興宗教ではお坊さん・神父さんの力を借りることなく、基本的に自分たちで死を導いてくれる立場の人を探して葬式を行うスタイルができあがっています。
大枠で見れば「新しい宗派の一つ」と考えておくとよいのかもしれません。
この記事のまとめ
一口にお坊さんと言っても、数多くの呼び名があり、かえって戸惑ってしまった方もいるかもしれません。
しかし、親しみが生まれれば、自然とコミュニケーションの取り方も変わってきますから、あまり深く考えずに交流を図ることが大切です。
お坊さんもまた、数多くある職業の一つであり、仰々しく見えてもその実態は人間そのものです。
壁を作らず、お互いの関係が親しくなる中で、適度な距離間・呼び名を選びましょう。